2020
03.21

初めに(必ずお読みください!!)☆2014/6/17追記あり

Category: 未分類
皆様、はじめまして! こちらは管理人AL0908が運営するファイナルファンタジー4のエッジ&リディアの二次創作サイトです。

2013年末、何かの拍子に(本当に偶然)エッジ&リディアの小説サイトに辿り着いてしまい、それまでただ単にプレーしてクリアしていただけの私が、いっぺんにこのナイスカップルの虜になってしまいました…。お恥ずかしいことに、FF4本編もTAもプレーしてたのに、エジリディは完全スルーだったんです…。


それにしても、たくさんの方がエジリディのオリジナル小説を書いていらっしゃるのですね…。本当にビックリ&読んでて胸がキュンキュンするようなものが多くて、すーっごく楽しかったです。


そして最近iPhone版のTAをプレーしたら、エジリディ好きにはたまらない場面がいくつもあることに気付いたわけです。


そうこうしてる間に、私も妄想が広がり、色々とエッジとリディアのストーリーを作り上げてしまいました!(それを公開するためにこのブログを開設しちゃったんですが…。)これから順次アップしていこうと思ってます。


時間軸としては、TAエンディング後です。基本的にFF4本編、インタールード、TAのストーリーに沿って書いたつもりです。一部FF4本編からTAまでの間の話もありますが、皆様、良ければ読んでやって下さい(^^)よろしくお願いいたします。

当サイトは二次創作サイト様に限り、リンクフリーです。なお、バナーはありません。


☆ご注意☆
ストーリーは完全に私の趣味で書いたものです。一部捏造設定もあります。

もちろん、版権元様とは一切関係ありません。コピー、転載はおやめ下さい。また、中には性的描写を含むものもあり、二次創作以外にも管理人の日常を描いた日記もございますので、苦手な方はご遠慮下さい。

誹謗中傷はおやめ下さい。お気に召さない点があっても、スルー対応でお願いします。




以上の事を了承いただける方のみ、閲覧をお願いします。


目次…タイトルの後ろに★がついているものは性的描写ありですので苦手な方、及び18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。各SSに別記事であとがき有りです。)

(クリックすると各SSにジャンプします。)

◎TA後エジリディSS(ストーリーはだいたい時系列になっています。甘々、シリアス、ギャグなど色々。)
「ずっと一緒に」 前編  「ずっと一緒に」 後編  「初夜」★  「君は僕だけのもの」★  「誓い」  「The Expiration」  「Full Moon in Late Autumn」★  「Before Her Period」★  「愛しくて…」★  「忍びの妻」  「饅頭怖い!?」  「発熱」  「Share with Me」★  「As King, As Queen」  「Jealousy」★ 

◎季節ものエジリディ(季節の風物詩を題材にしたエジリディSSです。基本的にほのぼのラブラブ系) 
 「夜の八重桜」  「Rose Garden」  「Hydrangeas at Dusk」  「きもだめし」  「夕涼み」  「香り立つ金木犀」 

◎ラブラブエジリディ(2014/7/20追加。TA後の2人がとにかくいちゃいちゃラブラブするSS。あまりストーリー性はないですが、お好きな方はどうぞ♡)
「微睡む」 


◎FF4エジリディSS (FF4本編エンディング後)
「The First Time」★

◎その他 (エジリディSSに関する記録など)
「ちょっと反省…。」

◎日記 管理人の日常を書いたものです。
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2015
08.17

「Jealousy 」 あとがき

Category: あとがき
やーっっっっと更新できましたっ!!!


前回の更新がお正月、SSに至っては去年の10月以来…あぁ~、月1更新なんて夢のまた夢やった(涙)そして10ヶ月ぶりのSSがR-18という、下衆な管理人…。けれど戻ってこれて嬉しいです!( ̄^ ̄)ゞ


更新が滞っている間も拍手を下さった方々がいらっしゃって…とても励まされました。過去全てのSSに拍手をいただいたりもして、皆様本当にありがとうございます♡♡♡


今後も遅いペースではありますが、更新は続けていきます。長編もなんですけど、中途半端に書いた数々のSSを1つ1つ皆様にお届けしたいと思っているので、どうぞこれからも宜しくお願い致します!(>_<)
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2015
08.16

「Jealousy」

かなり久しぶりの更新です!こんなこともエッジとリディアにあるんじゃないかな~と思って書きました。但しお館様の過去を捏造&R-18です。苦手な方は御遠慮下さい。






「Jealousy」








「あ~、リディア…どうしたら許してくれるんだよ…。」
「何故にこんなものを残していらっしゃったのですか!奥方様がご覧になったらご立腹されることぐらい予想できたでしょうに!」
「んな事言われたってよ…まさか残ってるなんてよ…。」





執務室で家老に窘められるエッジの机の上には、男性用のエブラーナの御守りと1通の手紙。







昨日のこと―――







「リディア、行ってくるぜ。」
「うん…行ってらっしゃい。」


今日はエッジが朝から公務で他国へ赴くため、城を1日留守にする。見送りに城門まで来たリディアは、彼の顔を見上げながらじっと見つめていた。自分を少し寂しげな表情で見つめる妻が愛おしくて、エッジの手は自然と彼女の背中と腰に回る。


「やだぁ…エッジ。」
「んだよ、お前がこうしろって顔するからじゃねぇか。」


家臣や衛兵達がいる前でぎゅっと抱き寄せられ、恥ずかしくて思わず夫の胸に顔を埋めるが、その姿がまた初々しくて、これから仕事だというのにエッジの胸は高鳴ってゆく。


「リディア…勘弁してくれよ。仕事行けねぇじゃねぇか。」
「バカ。」


自分への想いを耳元で囁かれ、愛される女の悦びと羞恥心が入り混じる。


「…行かなくていいの?」
「行くけどよ…」


もう出発しなければ仕事に間に合わないというのに、リディアを抱きしめるエッジの腕の力は弱まらない。リディアは思い切ってエッジの胸から顔を離し、彼を仕事へ送り出そうとする。エブラーナ王妃として、国王である夫への他国からの信頼を壊すわけにはいかない。



「リディア…。」
「早く行かないと…遅れちゃうよ?」


早く仕事に行けと促され、頭を掻きながらふーと大きく息をつくと、ついさっきまで愛する妻を胸に抱いて緩んでいたエッジの表情は、精悍な忍びの国の王のものに切り替わる。


「…じゃあ、行ってくる。」
「うん。気を付けてね。」
「おぅ…。そういや昨日言った仕事、頼んだぜ?」
「大丈夫よ、こないだちゃんと教えてもらったから。」
「そうか。…夕方には帰ってくるから、夜は覚悟しろよ?」
「もうっ…。」



エッジが仕事で城にいなかった日の夜は、そうでない日と比べると一層熱いものとなる。今夜もそうなることを想像してしまい、リディアの頬は赤みを帯びる。そんな姿を見たエッジの口元は緩み、ふっと笑う声が漏れる。


「じゃあ…行ってくる。」
「うん…。」







仕事へと向かう夫の背中を見送ったリディアは執務室の椅子に座り、仕事を始める。しかし、少し進めたところで必要な資料が揃っていないことに気が付いた。


「えーと、ここだったかしら?」


執務室にある本棚を覗いたり、引き出しをいくつか開けてみるが、目的の資料は見つからない。



「ん~、どこだったかしら…エッジにちゃんと聞いておけばよかったなぁ…。」



資料の在り処をあやふやにしか把握していなかったことを後悔しながら探し続けるリディア。そして大きな本棚の下部にある引き出しを何となしに開けてみると…



「あ!あった…!はぁ…見つかってよかったぁ。」


やっと目的の資料を発見し、これで何とか夫が帰ってくるまでに仕事を仕上げられそうだと安心するリディア。すると…



(この箱は…?)


引き出しの資料の間に、挟まるように入り込んでいる小さな木箱。濃紺の絹の紐で括られたその箱は、おそらく桐でできているのだろう。安物の木箱には決してない重厚さと気品が漂っているように感じられる。


木箱を手に取り、紐を解いて蓋を開けてみると、そこには深みのある青色の布地に金と銀の刺繍が入ったエブラーナの御守り。


(この色は…エッジの御守り?)


エブラーナでは御守りを持つことで神の加護を受けることができ、悪しき事から守られると信じられている。近年はそういった信仰は薄れているものの、少し前までは多くの者たちが御守りを所持し、身の安全を祈っていたのだ。



木箱からそっと御守りを取り出し、それを眺めるリディア。何と無く高貴な白檀の香りがしてくるようである。そして箱の蓋の裏側には三つ折りにされた高級な和紙。



「手紙かしら…。」



蓋の裏にある切れ込みにセットされた小さな文をそっと取り出し、広げてみると…



『親愛なるエドワード様

いつまでも貴方様と御一緒できることを願い、この守りを贈ります。』




文章の終わりには、リディアの知らない女性の名前。




寒気のような衝撃が、リディアの全身を走り出す。とても整った字で書かれたその文は、上品なエブラーナの女性が書いたのだと思わせるのに十分だった。文を持つリディアの手が微かに震え出し、胸の奥からふつふつと不快な感情が湧いてくる。









*****



「お館様、お帰りなさいませ!」

「おぅ、ご苦労さん。…あれ、リディアはいねぇのか?」

「奥方様にはお館様がもうすぐお戻りだとお伝えしたのですが…。」

「ん…そうか。」




エッジはリディアがいるであろう執務室へエッジは執務室へと向かう。そしてドアを開けると、愛しの妻の後ろ姿が目に入って来た。


「リディア~、ただいま~。」


甘えた声を出して後ろから妻をギュッと抱きすくめ、柔らかな緑の髪から香る優しい匂いを堪能する。


「あぁ~、いい匂い…たまんねぇなぁ~、ぐふふふふ。」


執務室に家臣が誰もいないことをいいことに、エッジは手をするするとリディアの胸のふくらみへと伸ばしていった。


「…何するのよ。」

「ん~?」


低い声で発されたリディアの一言は、何やらただならぬものを感じさせるには十分だった。しかし仕事を終えた後の妻の温もりの格別さに支配されたエッジの思考はあまり機能せず、そのまま柔らかなふくらみを撫で回す。



「…リールって、誰?」

「…へ?」



聞き覚えのある女性の名前を聞き、エッジの手は漸く動きを止めた。







(リールって…まさかあの…?いや待てよ、何でリディアが知ってるんだ?)







思いがけないリディアからの一言に、何があったのかとエッジの思考は急速に回りだす。



「えーと…リディア、お前何で…」
「これ、どういうこと?」
「?」



やっとエッジの方を向いたリディアの手にある御守りと手紙。手紙を手に取って読んだエッジは突然ハッとして切れ長の目を見開いた。



「こ、これは…!」



リディアの方を見ると、普段は愛らしい翡翠色のぱっちりとした瞳はエッジを睨みつけていた。彼女がそうしている理由を察したエッジは訳を話そうと口を開く。


「これは昔付き合ってた女がくれたんだけどよ、決して未練があるとかじゃねえぞ?リールは…」


リディアと出会う、何年も前の昔の彼女。やや気まずい思いをしつつも何もやましいことはないのだから、堂々と説明をしようとするエッジだが、リディアが先ほどよりも殺気立っていることに気付き、思わず話を中断してしまう。




「…何黙ってるの?」

「いや、その…そんな怒るなよ…。リールはさ、俺に…」



さらに殺気を増す妻を前に、話ができなくなるエッジ。やましいことがないのなら、何故スムーズに説明できないのかと勘繰るリディアの表情は険しく、ますますエッジは委縮し、言葉が出なくなってしまうという悪循環に陥っていく。



「あ、あの…リディア?」
「…。」


リディアは黙って俯き、エッジから視線を逸らすと身体の向きを変えてしまった。さすがに危機感を感じたエッジは、恐る恐るリディアを背後からそっと抱きしめる。




「リディア…あのさ、聞いてくれ。リールと付き合ってたのは事実だけどよ、もう20年以上も前の話で、お前と出会う前に関係は終わってたんだ。だから…」


だから何らやましいことはないのだが、現実は彼女がくれたものが残っている。いくら何もないと言われようと、その事実はリディアに不快な感情を呼び起こさせてしまう。





「…だから何?」


可愛い声がすっかり威圧感を含み、エッジは思わず後退りする。幾多の戦火を切り抜けてきた忍びの一族の長が唯一恐れている爆弾が、今まさに爆発しようとしている。


「え、えーと…いや、すまねぇ、リディア。」


エッジにしたら、妻を怒らせてしまったことを詫びるしかない。だがリディアはそんな夫とは視線を合わせず、自分の仕事道具をさっさと手に持ち、執務室を出て行ってしまった。



「お、おいリディア…!」




自分の名を呼ぶ夫には目もくれず、執務室から遠ざかっていくリディア。今までに何度も喧嘩はしてきたが、他の女性が原因となったことはなかったため、リディア自身もどう思いをぶつければいいのか分からない現実。エッジの方も、若かりし頃は多くの女性を見てきたものの、リディアと恋仲になってからは彼女一筋。本気で惚れ込んだがためにすっかり不器用になってしまい、どう対処したものか分からず、右往左往する始末。













その夜―――









(リディア…まだ起きてるよな?)



早めに仕事をひと段落させ、湯浴みを済ませて妻のいる寝室へと急ぐエッジ。夕食もリディアが別室で食べたいと申し出ていたため、話すチャンスがないままこの時間となってしまった。




(あれ?)


部屋の中はすっかり暗い。いつもならエッジが遅くなってもついているはずのベッドサイドの明かりすら消えている。忍びとして暗い中でも見えるように訓練はされているから困ることはないのだが、普段とは違うシチュエーションがエッジを何となく身震いさせる。



大きな音を立てないようにベッドに上がると、リディアはエッジに背中を向けた状態だった。特に指示されたわけでもないのに、正座してしまったエッジは、妻の背中と向き合う。そして…





「リディア…もう寝ちまったか?」


絶妙に張り詰めた雰囲気の中、思い切って声をかける。何とかして仲直りするきっかけを作りたい。





「あのさ、今日の昼間のことだけどよ、例の手紙と御守りは別に残そうと思って残してたわけじゃねえし、ましてお前以外の女と遊んでるなんてことは一切ないからな?あんなもんが残ってるなんて俺もびっくりした。もう俺には必要ないし、処分する。それでよ…」




何の反応もないリディアの背中を前に、何をどう言えば分からなくなってきたエッジ。徐々に語気が弱まり、言葉に詰まってしまった。暫し正座したまま首を項垂れた後、どうしようもなくなって布団の中に潜り込むしかなかった。




(そうだ!明日は公務でトロイアに行くから…)









******




「ではエドワード陛下、お気を付けてお帰り下さいませ。」
「おぅ、また次回よろしくな。」



翌日正午前、早々に外交の仕事を終え、トロイアの神官達に見送られて城を後にし、城下町を歩くエッジの足は、トロイアで1番の品揃えを誇るジュエリーショップへと向かう。



「いらっしゃいませ…あら、これはエブラーナのエドワード陛下!」
「よぅ。…あのさ、大陸の女の人の間で流行ってるアクセサリーがあったら見せてくれねぇか?」
「ありがとうございます。こちらはいかがでしょうか?バロンの御婦人達にも人気ですのよ。」









(よーし、これで準備万端だ…。)



帰りの飛空挺に向かうエッジの手には、ジュエリーショップで購入したネックレスが入った箱に、大陸産の紅茶とクッキーが入った紙袋。すると…




「きゃー!エブラーナのエドワード様よー!!」



俗にいう黄色い声が耳に入り、何事かと振り向いたエッジの目の前には、昼間から客引きをする、かの有名な会員制パブ・「王様」の女性店員達。エッジに群がる女性達からは、強烈な香水の香りがプンプン。慣れない女の香りに、忍びの長は顔を顰めてしまった。


「エドワード様ぁ、せっかくトロイアにお越しになったのに、もう帰っちゃうんですかぁ?」
「私達とお茶でもいかがですか?うふふ…」



バッチリ化粧に露出の多い服装の若い女性達に擦り寄られ、逃げ場を失うエッジ。男ならば普通は喜ぶシチュエーションだが、今のエッジには非常に困る状況。一刻も早く帰ってリディアと仲直りしたいのに、ここで時間を食ってしまっては余計な疑いを招きかねない。













「あー…気持ち悪りぃ…。」


何とか女性達を振り切り、全力疾走でトロイアの郊外にある飛空艇まで辿り着いたエッジは疲労困憊状態。息切れに加え、まだ鼻に残る香水と化粧の匂いの相乗効果でエッジは吐き気を覚えた。あまりに顔色が悪いので、主君を待っていた家臣たちは何事かと心配げな表情である。


「お、お館様…いかがなされました?ご体調でも悪いのでは…。」
「!い、いや大丈夫だ!それより早く出発してくれ…。」
「???はぁ…では離陸いたします。」









(ふ~…)


飛空艇のプロペラ音が響き、空高く飛空艇が舞い上がると、鼻からすっと入ってくる上空の空気がエッジの全身を晴れやかに浄化してくれるようだった。最早リディアの優しい香りに慣れたエッジに、こなれた女の匂いは耐え難い。昔ならば女の匂いがする場所へと繰り出していたというのに、自分も落ち着いてしまったものだと、飛空艇の甲板でしみじみとするエブラーナ国王の脳裏に浮かぶのは、リディアの花のような笑顔。





(リディア…待ってろよ。)


トロイアのジュエリーショップで買ったのは、エメラルドのネックレス。ダイヤモンドのネックレスを勧められたが、リディアが気に入るものをと考えたエッジは、エメラルドを選んだ。きっとリディアは喜ぶに違いない、そう確信するエッジの足取りは軽く、エブラーナ城に着くと挨拶する兵士や家臣達を尻目に颯爽と妻の元へと向かう。



「リディア、ただいま!」



意気揚々と執務室のドアを開けるが、そこは無人だった。肩透かしを食らったような気分になるエッジだが、妻と仲直りするためにはこの程度で気落ちするわけがない。おそらくリディアは気まずくて、自分とあまり顔を合わさないように別室にいるのだろう。すぐさま執務室を出て、そこから数部屋離れた書斎へと向かう。







(よし、あいつの気配がするから間違いない。)


部屋の前で深呼吸し、ドアをノックすると…


「はぁい。」


昨日からまともにリディアと会話ができていないエッジの耳に、彼女の可愛い声は大きく響く。



「リディア、ただいま!」


ドアが開き、リディアの姿が見えた瞬間、満面の笑みを浮かべるエッジは両腕で彼女の華奢な背中を包み込み、自分の胸元へと抱き寄せる。エッジにとって一番落ち着く香りがすっと全身を駆け巡り、色白のおでこや頬、瞼や耳の後ろにちゅ、ちゅ、とキスを降らせた後、ゆっくりと息を吸い、愛する妻の香りを堪能する。


「リディア、お前が好きだって言ってたクッキーと紅茶買ってきたんだ。丁度3時回ったとこだし、一緒に食おうぜ。それと、これはお前にプレゼントだ。大陸で流行ってるデザインなんだってよ。着けてやるから、後ろ向い…」

「…の匂いがする。」
「んっ??」




小さいが、怒りのこもった声に、エッジは一瞬にして固まった。


「エッジ、女の匂いがする…。」



(あの女どもの香水の匂いか…!)




リディアの言っていることを理解したエッジの全身からは、冷や汗が吹き出す。服に付いていた匂いの原因にもちろんやましいことはないが、またしても妻が機嫌を損ねる失態を犯してしまったエッジの全身に寒気が走り出す。事情を説明しようと考えたものの、激しく回転するエブラーナ国王の思考回路には、余計な疑いを生むかもしれないという懸念が浮上し、結局何も言えずに黙ってしまった。



「…トロイアに行ってたんだもんね。」



完全に自分の行動が裏目に出てしまっていることを物語るリディアの一言。石のように固まってしまったエッジからすっと離れるリディアは俯いており、表情を窺い知ることができない。







(あぁ…何でこうなるんだよ…。)



違う部屋へと移動してしまったリディアを追う力もなく、とぼとぼと執務室に戻ったエッジ。そこにいた家老に事情を聞かれ、お説教をくらったのである。



「長年お想いだった奥方様とやっと夫婦になったというのに…離縁にでもなったら、じいは自害いたしますぞ!」
「おいおい、気が早いって!何とかするから大丈夫だよ…。」




とは言ったものの、リディアはあからさまに自分を避けている。どうにかして話し合うチャンスをもてないかと思案したエッジが思い付いたのは…




(くそ~、こうなったら強行手段だな…。)














「ふー…。」



湯浴みを済ませ、ゆっくりと寝室への階段を上るリディア。今夜も夕食は別々に食べたため、エッジが今どうしているのか分からない。彼は必死で仲直りしようとしているようだが、簡単に許したくないという嫉妬心からか、今はまだあまり口を聞く気になれない。エッジが寝室に来る前に寝てしまおうと思いながら寝室のドアを開けると…



「よ、リディア。待ってたぜ。」


ベッドに寝そべっていたのは、いつもはリディアより遅く寝室にやって来るのがお決まりのエッジ。



「ほら、早く来いよ。寒いだろ?」



顔を背けてその場に立ち尽くしていると、夫は身体を起こし、腕を広げてリディアを優しく招く。



「リディア、こっち来いって。」



エッジの行動に、嫉妬で頑なになっていたリディアの心身は少し緩んだ感があった。しかし簡単に許したくないという気持ちがまだ働いていて、なかなかリディアの足はベッドへと向かおうとしない。



「…ったく、手のかかる奴だなぁ。」


エッジはドアの近くから動こうとしないリディアの元へと行き、さっと横抱きしてベッドへと戻り歩いた。



「ちょ、ちょっとエッジ…!」
「あんなとこに突っ立ってたら風邪ひくじゃねーか。布団あっためてあるからよ。」



ベッドにそっと下ろされると、目の前に座るエッジの深い色の瞳がじっと見つめてきた。





「…。」



気まずくて、リディアは顔を背けると同時に、座ったまま身体の向きも変え、エッジと目を合わさない姿勢を取った。エッジがふー、と息をつくのが聞こえたと思ったその時…



「リディア…。」





背中がエッジの体温にそっと包まれ、大きな両手がリディアの身体の前で緩く交差する。いつもならきつく抱き締められ、熱く深い口づけのひとつでも交わされるが、リディアが動こうと思えば動けるほどの優しい力加減。決して自分の気持ちを無理強いしない、そんなエッジの気遣いが伝わってくるようで、全身が温かい何かでふわりと包まれ、嫉妬と疑いの鎖で縛られていた心は確実に解放されてゆく。



「リディア…。」




再び名を呼ばれ、耳にエッジの穏やかな吐息がかかる。その微かな温もりに反応するように、リディアは僅かに視線をエッジに向けた。



「んっ…。」



色白のきめ細かい頬に、エッジの唇がそっと触れる。ほんの数秒ののち、リディアはようやく肩越しにエッジと視線を合わせた。



「…やっとお前の顔が見れた。」


リディアの視界に入ったのは、嬉しそうに微笑むエッジ。





「…身体ごとこっちに向いてくれよ。」



少し俯き気味に、いつもより弱めの声で妻にお願いするエッジ。その様子からは、今回の1件を許してもらえるのか不安な彼の心情が見て取れる。黙って少しずつリディアがエッジの方に身体を向けると、忍刀のような切れ長の彼の目は、しっかりとリディアの翡翠色の瞳を捉える。そして数秒間の沈黙を破ったのは…



「リディア、俺は断じて、浮気はしてねぇ。」



先程とは全く異なる声のトーンでそう言い切るエッジの表情は、とても真剣。その疑う余地のない正々堂々さに、リディアはたちまち釘づけ。見つめ合うふたりの瞳は一寸のずれもなく、ぴたりと視線が合わさっていた。



「確かに俺はリールと付き合っていた。けどそれはお前と出会うずっと前の話で、20年以上前の話だ。あの御守りと手紙は、もらったことも忘れていたし、残っているのも俺は知らなかった。…まぁ、お前にしたら単なる言い訳に聞こえるんだろうけどよ。」



エッジのしっかりとした口調に、リディアはただ黙って頷いた。



「それと、今日帰って来た時に女の匂いがしたのは、トロイアのパブの姉ちゃん達に絡まれたからなんだよ。ほら、あの王様って名前のでっかいとこ。仕事でトロイアにはちょくちょく行ってるから、どうやら顔を覚えられちまったみたいでさ。逃げるの大変だったぞ~。」



苦笑するエッジに、リディアは何となく口元が緩むような気がした。女の扱いに慣れているであろう夫が、こんな不器用な一面を見せるなんて、何となく愛おしく感じられる。





「…もう1つ言っておくと、リールはもうこの世にはいねぇんだ。」




予想外の夫の言葉に、リディアのぱっちりとした翡翠色の瞳は驚きを隠せなかった。



「…そう、なの?」



「あぁ。付き合って1年ぐらいたった頃、めっきり姿を見せなくなったんだ。あの子はエブラーナ貴族の娘だったし、その一族の関係者に聞いたら、病で伏せっているって。見舞いに行った時は、もう長くはないって聞かされてよ。あの時はまだ若かったし、そんな真剣に付き合ってたわけじゃねぇけど、さすがに一大事だって思ったな。」



全く知らなかった夫の過去に、リディアは驚きつつも耳を傾け続ける。



「見舞いに来た俺の姿を見た途端、病気で苦しそうな表情が一変してすげぇ嬉しそうな顔してたな。」





“エドワード様、私はいつまでも貴方様の幸せを祈っています―――”









その2日後、リールが亡くなったという知らせがエッジの元に届いた。















「…こいつが残ってたってことは、病気で死にそうになっても俺の事を気にかけててくれてた子にもらったもんを捨てるのはさすがに気が引けちまったのかもな。」




そう言ってエッジが懐から取り出したのは、あの桐の箱。



「…持ってきたんだ。」
「おぅ。…お前の手で、こいつを焼いてくれよ。」
「え??焼くって…」



エッジの言っている意味がよく分からずに戸惑っていると、桐の箱がそっとリディアの手に乗せられた。


「こないだ神社で破魔矢を焼いてたの見ただろ?あーいう縁起物は捨てずに焚き上げるんだ。…こいつを神社に持って行くのは大袈裟な気がするし、お前の手で焚き上げてもらったらいいかなって思って。」



今の俺には、お前がいる



だからリディア、その手で焚き上げて欲しい







「…いいの?木と紙だし、焼いちゃったら何も残らないよ?」


大陸育ちのリディアにとって、まだまだエブラーナの文化は理解できない部分があるだけに、何となく怖気付いてしまう。


「いいんだ。そうすりゃリールも浮かばれるだろうしよ。俺は今すげぇ幸せに暮らしてる、ってことでな。」


エッジの太陽のような笑顔は、今まさに彼が幸せ真っ只中であることを物語っていて、リディアは照れ臭くて少し目を逸らした。


「エッジ…?」



さっきと同じぐらいの力で、緩く優しくエッジの腕がリディアの身体を包み込むと、両頬とおでこ、鼻先にちゅ、ちゅ、と小さな音を立ててエッジの唇が触れてくる。じっとリディアを見つめる夫は、切れ長の目のせいで少し威圧感があって、真面目だけれど優しい表情。



「…焼くから、窓辺に行かせて。」



ベッドから下りて寝室のバルコニーへと向かい、窓を開けると、リディアの手のひらの桐の箱は月の光で白く照らし出された。一歩外に出たリディアが目を閉じて3秒も経たない内に、小さな火が桐の箱の端に灯る。



みるみる橙色の光に包まれた箱は原型を失い、小さな灰となって細い煙と共に天へと登っていく。その様子を見ながら、エッジはリディアの元へと歩み寄って行った。



燃えるところが無くなって、自然と橙色の光は消え去り、リディアの手のひらに残ったのは、数片の残骸。


「エッジ…焼いたわよ。」


リディアが背後にいるエッジの方を向いた途端、緩やかな風が華奢な手のひらの上をひゅうっと通る。


「あっ…。」


あっという間に風に攫われていった残骸。決して強くない、ふわりとした風だったが、燃え残った木と紙の欠片を吹き飛ばすには十分なものだった。


「…飛んでっちゃったね。」
「あぁ。」


喧嘩する原因となった過去の思い出は、風と共に天に召された。やや複雑そうな表情で見つめてくるリディアを、エッジは両腕でしっかりと抱きしめる。どう反応して良いか分からず、エッジの胸に顔を埋めると、大きな手がリディアの緑の柔らかな髪を撫でてくる。


「…そうだ、肝心な事を言ってなかったな。」


そう言って髪を撫でる手を止め、リディアの顔をじっと見つめる。夜の帳の中、月の光が優しく降り注ぐバルコニーで、エッジがゆっくりと口を開く。


「リディア、嫌な思いさせちまってごめんな。」


まだいくらかリディアの中に残っていた不快な感情は、エッジの真っ直ぐな言葉と視線を前に、すっと消え失せていった。代わりに何かとても心地良く、むずかゆい様な感情が湧いてきて、頰は少し薄紅色を帯びる。彼に対する言葉も浮かばず、ただ小ぶりの唇を微かに動かす。



エッジの腕に力が入ったのを感じた直後、優しくほっとする柔らかい感触が唇を温かく包み込んでいるのに気が付いた。ついさっきまで口を聞きたくなかった夫の口づけに、全身の力が忽ち抜けていってしまう。だんだんとリディアの唇を吸い上げるような力が加わってきて、鼻で呼吸していると、エッジの抱き寄せる力がぐっと増した。それとほぼ同時に、リディアの細い手はエッジの胸元にきゅっとしがみつく。


「はぁ…。」


長い長い口づけを終え、息を整えながら見つめ合っていると、お互いに口元が緩み、自然と笑い声が漏れ出す。


「もう~、苦しかったぁ。」
「何だよ、いいじゃねぇか。」


文句を言うふたりの表情は笑顔でいっぱい。エッジもリディアも、両腕を相手の背中に回し、しっかりと身体をくっつけて、愛おしい体温を感じ合う。


「…そうだリディア、今日トロイアで買ってきたネックレス、着けてやるよ。」


ベッドサイドのテーブルの上には、昼間見せられた箱。リディアが小さく頷くのを見たエッジは、彼女の肩を抱いて、夜の光で青白く照らされるバルコニーからベッドへと移動した。


「リディア、後ろ向いてくれ。」


エッジに背を向け、ネックレスを着けやすいようにと、長い緑の髪を束ねて左肩へと流した。緑の髪と色白のうなじがベッドサイドの明かりに照らされるその光景は神秘的で、尚且つ妖艶な雰囲気を醸し出す。


「…綺麗だ。」


まだネックレスを着けていないのに発された言葉に、リディアはふっと笑みをこぼす。箱からネックレスを出し、金具を留めると、エッジはリディアのうなじを舌でべろりと舐め上げた。


「やっ…!」


エッジの舌の感触に、思わずビクリとして軽く跳ね上がるリディアの身体。耳元でくくっと笑われたので、振り向いて文句のひとつでも言おうとしたら、背後から回されたエッジの両手がリディアの寝間着の襟元を大きく広げていた。


腰紐を緩めると、リディアの寝間着は華奢な肩に沿って、きめ細かく滑らかな肌をするすると滑り落ちる。


「やぁん…。」


リディアは両腕で胸元を隠したが、肩から背中はエッジの削ぐような視線に晒され、すぐさま彼の唇が肩に触れてくる。


「あっ…や…。」


肩から背骨に沿ってキスが次々と落とされ、その度にリディアの肢体は小さく跳ねて、艶かしい吐息が漏れる。腰の方へとキスが下りてゆき、リディアの寝間着はエッジが少し引っ張るだけでするする滑り落ちていった。


腰と脇腹、二の腕にもちゅ、ちゅと小さく音を立てて、隈なくキスをしていくエッジ。優しく刺激され続け、リディアは脚の間の奥が熱くなるのを感じていた。その間、エッジの器用な指が緩んでいたリディアの腰紐を解き、隠されていた色白の素肌を露わにする。そのままベッドに横たわるよう、エッジの手がリディアを促す。うつ伏せと横寝の間に近い状態となったリディアは、胸元とベッドの間にプレゼントされたエメラルドのネックレスのチャームの硬く冷んやりとした感触があるのを感じながら、脹脛から爪先に向かってちゅ、ちゅと音を立てる柔らかな刺激が与えられているのに気付く。


爪先の後は足の甲、脛、膝、太腿へとキスが上ってゆき、だんだん下腹部にエッジの顔が近付いて来て、身体の奥がいよいよ疼き、リディアは思わず身を竦めて彼を見つめる。視線に気付いたエッジは口元が緩み、リディアを仰向けにして覆い被さるように体勢を変えた。


「何隠してんだよ?」


ちょっと意地悪そうな表情で見下ろしながら、指を絡めた両手をベッドに押し付けてくるエッジ。エメラルドのネックレスは、ツンと上を向くリディアの胸のふくらみの間で色白の肌によく映える、緑の光を湛えていた。双頭の桃色の柔らかい蕾には、刺さるようなエッジの視線。もう彼からは逃れられない。一種の危機感のようなものを感じながらもぽかぽかと心と身体が温まる様な幸せな気持ち。男女の悦びを分かち合う瞬間がもうすぐそこまで来ているのだと感じながら、リディアは彼を見つめていた。


「リディア、ネックレス似合ってるぜ。すげぇ綺麗だ…。」
「ほん、と…?あッ…!」


リディアの首筋を這い回るエッジの舌と唇。温かいような熱いような刺激に、甘い声が上がる。敏感な部分に対する刺激が堪らず、リディアはイヤイヤと言うかのように首を左右に動かす。


「リディア、嫌か?」


問いかけには答えず、悦びの世界へと近付いているいやらしい女の顔で見つめるリディアを前に、エッジはもう理性を保つ余裕がなかった。


「あんッ…!」


柔らかな胸のふくらみがエッジの大きな手で揉みしだかれ、桃色の蕾は舌で弾くように舐められる。全身が甘く淫らな快感で満たされ、それに反応して蕾は硬く立ち上がる。


「お前も限界なんだな…。我慢することねぇよ。」


何度も感じる部分を揉みしだかれ、鎖骨から下腹部まで余すところなくキスをされている間、リディアは両脚を何度も捩っては、愛撫を続けるエッジを切なげな表情で見つめ続ける。彼と目が合うと、大きな手がリディアの下着の中に入り込み、秘所を覆う小さな茂みから柔らかい裂け目に器用な指が辿り着いた。


「すげぇ…ぐっしょりだ。」


誰のせいでこうなったのか、リディアはエッジを責めてやりたい気分になる。つい小一時間程前までは彼と口も聞きたくなかったというのに、今リディアの身体は愛する男性を一刻も早く受け入れたいと言わんばかりの反応。


「あっ…やだぁエッジ…!」


下着の中で花弁を指で開かれ、露わになった花芯が指の腹で何度もなぞり上げられた。溢れ出す蜜が滑りを良くしており、快感が増してゆく。


「リディア…脱ぐか?」


自分の手業に悶える妻を、さらなる悦びの世界に導こうとするエッジの言葉。その表情は優しそうで、けれど卑猥な笑みが見て取れる。度重なる愛撫で、すっかり気怠くなってしまったリディアは少し視線を反らせたが、エッジにするりと下着を脱がされ、両脚を開かれた。



エッジもすぐに着衣を脱ぎ去り、熱く張り詰めた自身の先端をリディアの花弁に触れさせる。微かにくちゅ…という花芯が割られる音がした後、自身をしっかりと包み込む、熱く潤った道を滞りなく進んだエッジは、リディアと奥深くで結合した。


「エッジ…。」
「リディア…!」


結合したふたりは互いの名を囁き合い、唇を重ね合わせると、自然と舌が縺れ合った。熱い吐息と、ちゅぷちゅぷと淫靡な音が静かな寝室内に響き、月の光で青白いはずの夜の帳は、悦びを共有する男女の色に染まる。


「気持ち…いい…。」
「…すげぇな。」


高ぶる感情の影響か、少しでも動くと、そのまま達してしまいそうなほどの快感を伴う結合に、ふたりの鼓動が少し早まり、体温はじわりと上がった。


「んッ…ふぅ…。」


細くて白い両腕がしっかりとエッジの背中に回ると、さっきよりも濃く、熱い口づけが贈られる。角度を変えながら、もっと欲しいとばかりに唇を吸い上げ、器用に舌を口腔内に侵入させてくるエッジに、リディアは自分のそれをエッジの舌の動きに沿わせ、精一杯応えた。


「リディア…愛してる。」


いつもなら恥ずかしくて目を逸らしてしまうが、肌を合わせながらの愛の言葉は、素直に受け入れる気分になる。


「ごめんな…嫌な思いさせて…。」


真っ直ぐに見つめながら再び発される詫びの言葉。エッジの手がリディアの髪を撫で、頬を優しく擦り寄せてくる。心も身体もしっかりと繋がって、胸は高鳴り、結合部がますます熱くなるのを感じるリディアは、エッジの頬にそっとキスをした。


「リディア…!」


しっかりとリディアの細い身体を抱くと、腰を揺らして温かい彼女の内部を行き来し始める。


「あっ…あ…エッジぃッ…!」


まだ激しく動かれていないのに、いつもよりエッジのそれを感じてしまうのは、自分に対する彼の想いがそうさせているのか。秘所の奥から脳髄へ、そして全身へと快楽があっという間に支配していく。身体を揺らされ、眉間に眉が寄り、眦からは涙の粒が零れてきそうな表情が、ますますエッジの征服欲を増長させる。もう妻は自らの腕の中で乱れているのに、まだ足りない。もっと強く突き上げて、2度と出られない快楽の檻の中に閉じ込めてしまいたい。


「ひ…あぁっ…い、やッ…。」


自分の意思も何も言葉にできないぐらいに、エッジの熱く硬いそれがリディアの奥を突き上げる。激しさを増す腰の動きに、リディアは自らの思考も理性も何もかもが壊れてしまいそうだった。リディアが息絶え絶えに猥らな女の声を出すたびに蜜がエッジの動きを助長し、くちゅくちゅといやらしい音が立つ。


「はうッ…あぁぁぁぁ…ッ…!」


絶え間ない刺激でリディアの意識が快楽の園へと旅立とうとしている中、律動するエッジへの締め付けが強くなる。もっと乱れさせたい、こんなあられもない姿は自分にだけ見せてほしい。支配欲に駆られるエッジのそれが、狭くなる内部を執拗に擦り上げると、エッジは締め上げが急にきつくなるのを感じた。



「あ…ッ…!あぁぁぁっ…。」


柔らかい体内が不規則な収縮を起こし、身体をびくびくとさせてリディアが達するのを見届けると、エッジはギリギリ抑えていた欲求と熱をそのまま一気に解放した―――。










リディアはすっかり体力を消耗し、エッジに寄り添いながらウトウトとしている。乱れた緑の髪を直してやると、そこにはエッジがプレゼントしたエメラルドのネックレス。
愛し合ってる最中はリディアの胸元で激しく揺れていたが、今はリディア同様、静かにその場所で落ち着いている。おでこと頬に軽くキスをすると、リディアは目を開け、エッジを見つめてきた。


「リディア、ネックレス似合ってるぜ。」
「ん…。」


恥ずかしいのかお世辞だと思ったのか、あまりはっきりとした反応がない。優しく髪や頬を撫でてやると、心地良さそうに微笑んでくる。


「何だよ~。」
「うふふ…。」


やっと見せてくれた笑顔に、エッジは安堵の気持ちでいっぱいになる。リディアの表情一つで自分の心理状態が左右されてしまうなんて、いかに彼女に惚れ込んでしまっているかを物語っている。一国の王として、忍びの一族の長としてはあるまじきことではあるが、こうして一人の男でいさせてくれるリディアは、唯一無二の大切な女性。


「…ネックレス、大事にしてくれよ?」


リディアへの大きな愛は、どんな言葉を使っても表し切れなくて、ただそう言って自分の胸に抱き寄せる。


「うん…ありがとうエッジ…。」




温かい体温に包まれるふたりの唇は夜の帳の中、優しく、そっと重なり合った。






―完―

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2015
01.01

明けましておめでとうございます&コメントお礼

Category: 日記
皆様こんばんわ☆約2か月ぶりの更新となってしまったAL0908です(^^;うぅ、月1更新の目標、破れたり…。

2015年のお正月、いかがお過ごしでしょうか?
管理人は年末から風邪をひいてしまい、今もまだ咳と鼻水との戦いです…あぁ~、SS更新したいと思ってたんですが(言い訳)。

新しい仕事が始まってから5ヶ月が経ち、相変わらず毎日くたくたではありますが、同じ部署のお兄さん達が皆温かくサポートして下さるおかげで、楽しく過ごしております。しかもアフターファイブのお誘いもよくして下さり、帰宅時間が明らかに以前より遅くなった私。SS更新したいのにな~…(また言い訳)。

そういえばいつかのあとがきか日記に書いた長編の連載ですが、年内に掲載開始しようと思っていたのに、年が明けてしまった…。あーっ、嘘つきですいません!!!

いや、アウトラインというか話の大筋は出来上がっているし、一部はすでに書き上がっているんですよ?ただ掲載できるような状態になっていないというだけで…(ハイ、また言い訳)
TA後のエジリディSSと話が繋がる内容なので、まだそのSSを掲載できてないから、もうちょっと先になるかと…
もし楽しみにして下さってる方がいらっしゃったら本当にすいません~(>_<)
こんな管理人が運営するサイトではありますが、今後もお付き合いいただけたら幸いです。皆様、今年もどうぞよろしくお願いします。

以下、コメントへのお礼です☆


♡ひこにゃん様♡

コメントありがとうございます!毎回楽しみだなんてもったいないお言葉です…。
真月の戦いの間のラブラブSS、実は1つ書いたものがあるんですが、これがまたとんでもないR-18ものでして…。
いくらなんでもこんなエロいのは載せられない…と思って(^^;もう少し健全な内容に修正できたら載せれるかなー?と考えております。更新ペースはかなり遅いですが、よかったらまた遊びに来て下さいね♡

♡甘夏様♡

新年のご挨拶、ありがとうございます(^^)
色々大変なことがあったのをお聞きしていただけに、最近よく更新されているのを見ていると、お元気にされているのが伝わってきて嬉しいです!また遊びに行かせて下さい♪

♡トンヌラ様♡

ずいぶん前にコメントいただいてたのに、遅くなってすいません…。金木犀のSS、お気に召したようで嬉しいです!
トンヌラ様もお忙しいようですが、お互い体調に気を付けて頑張りましょうね。またサイトへお邪魔させていただきます(^^)

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2014
10.22

コメントお礼☆

Category: 日記
皆様こんばんわ☆すっかり秋ですね〜。
そしてかなり更新ペースが遅くなったというのに、私のエジリディSSを読んで下さって本当にありがとうございます!毎日仕事から帰宅すると疲れて強烈な眠気に襲われる日々ですが、皆様の拍手・コメントが大きな励みになっております。


久しぶりに日記も書きたいなぁと思っているので、また良かったら遊びに来て下さいね〜(^ー^)ノ


以下、コメントへのお礼です☆


♡R様♡

またまたコメントありがとうございます♡相変わらずラブラブいちゃいちゃばかりのエジリディSSですが、楽しんでいただいてるようで何よりです(^^)

例のコンサート、私も行きますよ〜♪実は知人がその楽団に所属しているんです。前回の兵庫県でのコンサートにも行ったんですが、FFシリーズだけでなく、ドラクエもあったりしてワクワクしながら聞いてましたよ〜。ラストの曲がエクスデス戦の曲で、その迫力にゾクっとしちゃいました〜(^-^)
仕事のこともお心遣い、ありがとうございます。まだまだ分からないことだらけで大変ですが、何とか毎日乗り切ってます。今後も更新は続けるので、また良かったら遊びに来て下さいね♡
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2014
10.18

「香り立つ金木犀」 あとがき

Category: あとがき
ふー、今月も何とか更新できました(^^;

先月も季節ものSSを書こうとしていたものの、「As King, As Queen」を仕上げて力尽きてしまい、9月10月合同のような内容になっちゃいました。あぁ~、許して下さい

毎年金木犀が咲いては気付くと散ってしまっている儚さを盛り込んでみたつもりなんですが、結局いつもと同じラブラブな2人というオチですね(笑)悲しい・切ない終わり方の作品はとても書けないので、変化をつけるならば「発熱」のようなギャグになっちゃうなぁ…と思っている管理人です。


例年になく、寒いぐらいの気温になっていますが、皆様どうか風邪など召されませぬように。
ではまた(^^)

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2014
10.18

「香り立つ金木犀」

9月なのか10月なのかよく分からない内容になっちゃいましたが、季節ものエジリディSS第6弾です☆




「香り立つ金木犀」








蒸し暑い夏が過ぎたエブラーナ王国。涼しく心地良い外気が漂うようになったこの国では、1年の中で最も過ごしやすい季節の訪れを誰もが感じていた。


「ん…。」


夏と違い、夜眠りにつきやすくなった季節のある朝、王妃リディアは少しひんやりとした空気を感じながら目を覚ました。

(エッジ…もういないや。)


眠りから覚めた視界がゆっくりと焦点を結ぶと、まだ微かに夫の温もりが残る枕と布団が見えた。


いつもリディアが目を覚ます時、エッジの姿は朝の稽古ですでにベッドにはない。その光景を目にするたび、リディアは毎日忍びの一族の長として鍛錬を欠かさない夫を想うのが日課となっていた。


「エッジの着替え、用意しておかなくちゃ。」


まだ完全に目覚め切っていない身体を起こし、窓を開けて爽やかな秋の朝の空気を吸い込む。肺がすっと浄化され、全身が秋の色に染まっていくような気分になった。稽古で汗をかいて戻ってくるであろう夫のために箪笥を開け、着替えを用意していると…


「ん…?」


何やらほんのりと甘い香りが漂っているような気がしたリディアは、クンクンと鼻を利かせてみる。

「いい香り…何の花かしら?」

目を閉じて深く呼吸すると、その香りは鼻の奥でふわっと広がり、全身の力が抜けて行くような心地良ささえあった。ミスト地方では嗅いだことのない香りに、リディアは夫の着替えを手に持ったまますっかり酔いしれていた。



「お前何でそんな立ったまま寝てんだよ?」
「!」


夫が寝室に入って来たことにも気付かず、甘い香りに夢中になっていたリディアは軽く飛び跳ねた。

「ね、寝てたんじゃないわよ!エッジの着替え用意してたのよ!」
「お前は昔から寝坊助だからな~。俺がいねぇと起きられねぇのか?」

エッジはニヤニヤしながらリディアの顔を覗き込みながら指で色白の柔らかな頬をつつく。

「目を閉じてただけなの!寝てないもん!」
「しょうがねぇ奴だな~。なら目が覚めるように朝の夫婦の運動するか?今から汗かいた服脱ぐし、丁度いい…」
「バカッ!!外からいい香りがしてたから、それを堪能してたの!」



リディアの一言でエッジは何かピンと来たようで、卑猥な笑みを浮かべていたのがすっと穏やかな笑みへと変化した。

「お、そうか。この香りは金木犀だぜ。」


きんもくせい?

やはり聞いたことのない名前である。リディアが軽く首を傾げていると、エッジは歯を見せながらにっこりとした。


「確かミストには金木犀咲いてねぇよな。昔ファブールからエブラーナに伝わったって言われてるんだ。」
「へぇ、そうなんだ。」


エブラーナの王妃となったものの、リディアにはまだまだ知らないことがいっぱいである。そんなリディアにエブラーナ文化を教えてくれる夫はいつも笑顔。リディアはエッジのその笑顔が大好きで、口元が自然に綻ぶ。


「毎年この季節になると咲いて、甘くていい香りがするんだ。今朝の稽古に行く時、そろそろ見頃だって思ってたんだぜ。」
「そうなの?じゃあ…」


リディアの手がエッジの逞しい腕をきゅっと掴むと、彼は待ってましたとリディアを抱き寄せる。


「朝飯食ったら、金木犀見に行くか?」
「うん!」

笑顔でいっぱいの2人はしっかりと抱き合い、見つめ合いながら流れるように、自然と唇を触れ合わせた。













「いやぁ、それにしてもよ…。」
「?」


朝食を終え、家老や侍女達に見送られ、手を繋いでデートへと出掛けるエッジとリディア。エッジが何か言いたそうにしているので彼の方を見ると、とても嬉しそうである。


「俺達、夫婦だなぁ…。」


一国の王らしからぬ、締まりのない表情で発されたエッジの一言。リディアは彼の意図がはっきりと汲み取れず、不思議そうな顔をしている。


「金木犀が見頃だって言ったら、お前は俺がデートしたいって思ってるの分かってくれたもんなぁ~、すげぇ嬉しいぜ。」


好きで好きでたまらない妻が自分の気持ちを汲んでくれて、エッジは実にほっこりとしている。

「ふふふ…そんなに嬉しいの?」
「…当たり前じゃねぇか。」

よく見ると、エッジの頬はほんのり赤い。リディアがこうして彼の好意に応じてやると、子供のように嬉しさを表現する。国王としての立場柄、妻である自分の前でしか見せない、そんな夫の可愛い様子もリディアは大好きだった。


「エッジ…ちょっと寒い。」


城門をくぐり抜け、城の者達の目が無くなったところで、秋の朝の外気に少しぶるりと震えながら、リディアはエッジにぐっと身を寄せる。その行動がエッジの鼓動を速まらせることを未だに理解していないのだから、彼にしたらたまったものではない。


「ったく…お前は手のかかる奴だなぁ。」


言葉は相変わらず悪いが、大きな手はリディアの肩を温かく包み込む。それを感じたリディアは、一層身を夫に密着させ、チラリと彼の顔を見上げた。

「…あっためてやるから、俺のそばにいろよ?」

優しい笑顔のエッジにリディアがうっとりとした笑顔で頷くと、柔らかく温かい彼の唇が、リディアの少し冷えたそれをそっと優しく包み込んだ。







*****






「あ…この匂い。」


しっかりと身を寄せ合って2人がやって来たのは、エブラーナ城近くにある、金木犀が立ち並ぶ林。澄み渡る秋空の下、黄金色の小さな花は濃い緑の葉を背景に甘い芳香を放っていた。


「きれいね…金木犀って名前の通りの色ね。」

夏ならばむせ返るであろう甘い香りだが、秋の涼しげな空気の中ではその香りは心地良く、品良く仕上がっている。島国のエブラーナだからこそ感じることのできる季節ごとの趣の違いは、大陸出身のリディアの興味をそそる。

「あぁ~、いい香りだなぁ。この香りがすると秋が来たって気分になるぜ。」
「そうなのね。エブラーナには何回も来てたのに、金木犀があるって知らなかったわ。」
「んー、金木犀は小せえから雨や風で簡単に散ってしまうんだよ。咲いてるのも長くて5日ぐれぇだからな。」


美しい花の短い命。その儚さゆえ、エブラーナの人々は金木犀を愛で、毎年その香りを堪能するのが楽しみなのだ。

「そっかぁ…こんなにきれいなのにね。」
「あぁ…。ほら、行こうぜ。」




林の中に入ると、早速甘い香りが寄り添う2人を包み込む。金木犀の木の近くで鼻を利かせると、少し柑橘系が混じったような香りがした。甘ったるくなく、スパイスのような爽やかさも兼ね備えたバランスのある心地良いその香りを、リディアは蕩けるような表情で堪能していた。


「ははは、お前すげぇマヌケな顔してるな。」
「何よぉ、いい匂いがするんだからしょうがないじゃない。」




(本当に可愛い奴だな…。)




出会ってから10数年、すっかり落ち着いた大人の女性となったリディアだが、その純粋さは出会った頃と変わらない。エッジ自身も年を重ね、王子時代と比べれば落ち着きを増したが、リディアのこととなるとたちまち表情が緩んでしまうのは止められない。


林の中をゆっくりと見て回るエッジとリディア。短い開花時期の花をこうして2人で楽しめるのは、夫婦となってずっと一緒にいられるからこそ。それを実感するエッジの鼓動はやや落ち着きがないままだった。


「いい香りね…この香りって何かに使われたりしないの?香水とか。」
「あー、ファブールになら金木犀の酒があるぜ。毎年ヤンが気を利かせてエブラーナによこしてくれるんだ。甘くて美味いぜ。」
「そうなの?じゃあファブールから届いたら、一緒に飲みたいな。」
「結構強い酒だぞ?お前大丈夫なのか?」
「少しだけなら大丈夫よ。エッジ、お酒好きでしょ?…結婚してからお酒飲んでるのほとんど見たことないし、たまには飲んでもいいんじゃない?」


エッジはリディアの言葉でハッとした。独身の頃、仕事の辛さや彼女を妻として迎えたいのになかなか実現しないそのもどかしさを忘れようとしては晩酌をし、眠ろうとしていたことも珍しくなかった。だが彼女を娶ってからは他国との会合や何かの祝い事の時以外、自然と酒を口にしなくなっていた。愛する女性と身を固めたことが自分を大きく変えているのだと気付き、エッジは何となく照れ臭くて頭を掻く。


「そ、そうか?…なら届いたら飲もうか。毎年この時期に来るはずだしよ。」
「うん!」


飲み過ぎては身体に悪い酒だが、愛するリディアと飲むなら良薬になるに違いない。夫と杯を交わすのを嬉しそうにしている彼女を見ていると、そんな都合のいい解釈も間違いじゃないだろうと思えてくる。リディアの細い肩を抱き寄せる腕に自然と力が入り、色白の頬にちゅっとキスをした。

「んもぅ、エッジったら…。」
「いいじゃねぇか。…唇にした方が良かったか?」
「スケベ。」


言葉とは相反し、顔を鍛え上げられた胸元に埋めてくるリディアの行動に、エッジは彼女を押し倒したくなる衝動に駆られるが、ここは城の外。昔ならば所構わず愛情表現を行っていただろうに、今では欲求よりもリディアの気持ちを優先しようとする理性が勝る。


(俺…本当に変わったもんだな。)


年を重ねて枯れてしまったとも言えるだろうが、本当に惚れてしまった相手だからこそ自分の勝手は通せない。それを身を以て教えてくれたリディアを腕に抱くと、彼女の体温と匂いがエッジの全身を満たし、痺れるような感覚を起こす。

「エッジ…あったかい。」
「…そんなこと言ったら、離さねぇぞ?」
「うん…。」

エッジの顔を見上げるリディアの瞳はすっかり潤み、柔らかな可愛い唇は口づけして欲しそうな動きを見せている。エッジがそれに応えないわけがなく、リディアの後頭部をしっかりと支えて深い深い口づけを贈る。

金木犀の香りを含んだ秋の涼風が、リディアの柔らかな緑の長い髪をふわりと浮かせ、彼女の後頭部を支えるエッジの指に緩く絡んだ。

細い背中を抱きしめて顔の角度を変えながら、もっと欲しいと唇を侵入させていくエッジ。鼻で必死に呼吸して応えるリディアだが、苦しくなって唇を離し、顔を背ける。

「はぁっ…はぁ…。」

少し俯いて必死に息を整える妻を見てやり過ぎたと感じたエッジは、労わるように彼女の髪と背中を撫でる。

「悪りぃ…。」
「…エッジのバカ。」

透き通るような色白の頬にそっと詫びのキスをした時、舞い上がるような少し強めの風がエッジとリディアの頬を掠める。


「…あ。」


2人の目に映ったのは風に乗って散り、ぱらぱらと地面に落ちていく小さな黄金色の花々。

「散っちゃったね…。」
「あぁ…。」


少し悲しげな表情で、散った金木犀を眺めるリディア。そんな表情するなよ、と語りかけるようにエッジの温かい手が風で少し乱れたリディアの髪を撫で、耳にかけてやった。


リディアはその場にしゃがみ、散った金木犀を手に取り始めた。色白の掌の上で、金色のような橙色をしたその花はまだ少し芳香を放っている。


「こんなに簡単に散っちゃうんだね…。小さくてきれいだし、髪飾りか何かに加工できないかしら?そうしたらいつでも見ていられるのになぁ。」


気に入ったものをずっと手元に置いておきたい、人としての自然な心理。掌に乗せた金木犀の花を眺めるリディアに寄り添うようにエッジは腰を落とした。


「…そうだな。けどよ、リディア。」
「?」

リディアがエッジの方を向くと、彼はとても穏やかで優しげな表情。

「確かに金木犀が咲くのはごく短い間だし、散る時はすげぇ悲しい。だから大事にしたいって思うんだよ。」


エッジの言葉に、リディアは胸が何やら苦しくなるような気がした。いつか散ってしまう花の運命。それと同じように、いずれ人もその生涯を終え、愛する人との別れがやってくる。普段は忘れてしまっている事実が頭を過ぎり、ゆっくりと俯いてしまった。



「…リディア?」
「…。」



言葉を発することなく、黙り込んでしまった妻。何か自分が気に障ることを言ってしまったのだろうかと、エッジはリディアの顔を覗き込もうとするが、彼女はさっと横を向いて立ち上がった。


(何だよ、リディア…。)


「ねぇ、あっちにも金木犀がたくさん咲いてるわ。」


エッジの隣からすっと離れ、まだ散っていない金木犀の方へと歩き出すリディア。


また風が吹き、地面に落ちていた金木犀は軽く舞い上がり、リディアが向かおうとしていたところの金木犀がいくつか散った。


それを見た瞬間、エッジは衝動的にリディアの腕を掴み、自分の胸に抱き寄せた。


「…エッジ?」


伝わってくる夫の体温を感じていると心地良くて、さっきまで胸を苦しくしていたものは徐々に薄れてゆく。何が起こったのかと驚きを隠せず、エッジの顔を見上げると、彼は少し目を細めてリディアを見つめていた。



「…さっきはあんな事言ったけどよ。」
「?」


ぱっちりとした翡翠色の瞳を軽く見開き、リディアも何か言おうとするエッジを見つめる。




「俺は、お前と短い間でお別れなんて嫌だ。」




自分への想いが込められたエッジの言葉に、リディアはドキッとした。夫からは何度も愛の言葉を囁かれているというのに、速くなる鼓動と共に切ないような嬉しいような気持ちが沸き起こってくる。


「俺は、ずっと…できる限り長く、お前と一緒に暮らしたい。いつかはお別れだなんて、考えたくねぇ…。」


先程のリディアの思いを汲み取ったかのようなエッジの一言。リディアは堪らずエッジの背中に腕を回して力一杯しがみつく。



風に吹かれ、儚く散ってゆく、小さな金木犀。リディアがその方向へと歩いて行くのを見て、彼女が消えてゆきそうな気がしてしまったのは、どうしても失いたくないという想いから来る不安。



「うん…私もずっと、エッジと一緒に暮らしたいよ…。」





―――エッジ、私もあなたと同じこと思っているよ


だから心配しないで


ずっと一緒にいようね






まだ日が登り切らないエブラーナの秋の朝。香り立つ金木犀に囲まれ、2人の抱擁は強さを増すばかり。




自分達が共に、永き幸せな時を過ごせますように。




再び吹く秋風に舞い上がる小さな黄金色の花々の儚さに負けまいと、しっかりと抱きしめ合う2人はそのまま見つめ合い、指を絡めながら唇を重ね合わせた―――


―完―

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2014
09.14

「As King, As Queen」 あとがき&お礼

Category: あとがき
あぁ~、1か月ぶりの更新になっちゃいました(><)この1ヶ月の間にもポチポチと拍手を下さった方、本当にありがとうございます。
さて、今回は(も?)リディアを骨の髄まで愛してるエッジに仕上がりました。次回の更新こそはエッジ好き好きなリディアを書きたいです(笑)


まだまだ新しい仕事は慣れないことが多くて、帰りの電車ではほぼ毎日爆睡している管理人ですが、今後も月に1度は何らかの更新は続けますっ!!!なのでお付き合いいただけたらとっても嬉しいです~♡♡


以下、お礼文です。


♡9/2に20も拍手を下さった方へ♡

私のエジリディSS、お気に召したようで嬉しいです~♡ラブラブ系ばっかりであまり変化球がない作風ですが、これからもぜひ弊ブログに立ち寄って下さいね!

♡履歴書の書き方の見本 様♡(サイト訪問しましたが、コメント欄らしきものを発見できず、こちらでのコメントで失礼します。)

コメントありがとうございます!三室戸寺の魅力が伝わったようで何よりです(^^)あの記事は当ブログの主旨とは異なる記事ではありましたが、今後もおすすめの寺社仏閣を紹介する機会はあるかと思いますので、またよかったら覗きに来て下さいね♪



それでは皆様、また次回☆
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2014
09.14

「As King, As Queen」

TA後エジリディSS、第14弾です☆
エッジと共に執政に携わることになったリディアに早速試練が…。「Share with Me」の続きです。






「As King, As Queen」








「はぁ…どうしよう。エッジと顔合わせるの気まずいなぁ…。」



今日の仕事を終え、風呂に入った後、1人ベッドで薄明かりのランプに照らされながら何回も寝返りを打っては呟くリディア。




今日の昼過ぎのこと―――






執務室から離れた別室で仕事をしていたリディアのところに、エッジがやってきた。

「おい、リディア。」
「はぁい、何?」

笑顔でリディアは駆け寄るが、険しい表情のエッジを見てビクッとした。

「執務室まで来い。」
「え…?」
「いいから来い。」

いつもより低い声でそう言われ、リディアはますます怯えた。


(エッジ…怖い…。)


執務室に着くと、エッジは険しい表情を崩さず自分の席に座った。リディアは何を言われるのかと少し身を縮こませた。



「リディア、こないだお前が作った執政関係の書類に不備があったんだ。」
「えっ…?」

糸が張り詰めるような緊迫感に、リディアの鼓動はみるみる速まっていく。

「ちゃんと内容確認しながら作ったのか?」
「あ…いくつか分からないところがあったんだけど…。」
「誰かにどうしたらいいか相談したのか?」
「…ううん。その時誰も担当の人がいなくて…。」


その日はエッジが公務で城におらず、その上担当の家臣達も諸用で出払ってしまっていたのだ。


「じゃあ自分で判断したのか?」
「…うん。」

萎縮するリディアを前に、エッジは深く息をついた。

「…その不備が原因で、さっきまで家臣達が大騒ぎしてたんだ。それでそいつらの仕事が遅れて、他国から依頼されてた急ぎの物資の到着が約束の期日に間に合わなくなったんだ。」
「えっ…!ご…ごめんなさい…。」


自分のちょっとした怠慢が他国まで巻き込んでしまうなんて思いもしなかったリディアはますます萎縮し、どうすればいいのか分からなかった。





「リディア、俺は堅苦しいことは嫌いだし、細かい事をいちいち取り上げるのは好きじゃねぇし、そんなことをするのは時間の無駄だと思ってる。けどな、だからっていい加減にやっていいわけじゃねぇんだ。」


エッジの強い語気に、リディアは俯いてしまう。


エッジはリディアと結婚するまでミストに行くために何度も城を抜け出していたが、国の執政に影響が出ないよう仕事はこなした上でのことだった。それは非常にタフなことであったが、自由を愛しながらも責任感の強いエッジは一国を背負う者として、愛するリディアのいるミストへのお忍びと両立させてきたのである。





「…ごめんなさい、エッジ…。」




リディアの瞳からは大粒の涙が零れそうになる。いつもならエッジはここで優しく抱きしめてくれるのだが、今回ばかりは家臣や他国に大きな迷惑をかけてしまったため、そうはいかなかった。一国を統べる立場にいるからには家臣や他国との関係には常に気を配らねばならない。いくら愛しのリディアとはいえ、少しでも執政に関わっている以上、何もかも許すわけにはいかないのだ。





「…今日は担当の家臣達は城にいる。そいつらにちゃんと確認して不備を直して来い。」
「…。」




「リディア、返事しろ。」
「…はい。」





低い声で発される夫の言葉にリディアはぐっと涙をこらえ、執務室を出た。


(泣いてないで早く不備を直さなきゃ…。)



自分を叱責したエッジは、まさしく王としての顔だった。エッジのために何かしたいと思って、何も心配しなくていいというエッジの優しさに甘えたくなくて、自ら執政に関わっていくことを申し出たリディア。王妃として、彼と共に家臣や国民達、他国との良好な関係の構築のために行動せねばならない。




担当の家臣を見つけたリディアは、彼に駆け寄った。

「忙しいところごめんなさい。さっきエッジから聞いたんだけど…。」


事情を聞いた家臣は、必死に詫びるリディアに恐縮した。


「いえ奥方様、滅相もございません。確かに騒ぎにはなりましたが、私共が最初からちゃんと内容を確認すべきだったのですよ…。」
「…でも、他国へ送るはずだった物資が間に合わなかったって…。」

「あぁ、それに関しては大丈夫でございます。」
「え?」
「いえ、あの…奥方様、どうか私どもの事はお気になさらないで下さい。」

「…あ、うん…。」










そして夕刻。




「ありがとう、こういう風にすればよかったのね。次からは大丈夫だと思うわ。」
「それは何よりでございます。」

リディアと共に不備内容を修正した家臣は、笑顔で頭を下げた。



「ねぇ…さっき言ってた、間に合わなかったのに大丈夫ってどういうこと?」
「いや、それは…お館様は奥方様には言うなと…。」
「エッジにはあなたに聞いたなんて言わないわ。だから教えて?」


「…その、お館様は物資到着の遅れは全て自分が責任をもって各国に謝罪して期日の交渉を行うと…。私共外交担当のメンバーには何も影響が出ないようにするから心配するなと仰ってたのです。」





(エッジ…!)




家臣達がリディアに対して不満をもつようなことがあれば、今後リディアが彼らと仕事がやりにくくなってしまう。それを見越しての家臣達への対応に、リディアの胸中は彼への感服の念で満たされていった。








そして夕食の時間。







リディアはエッジと顔を合わせたが、どう言葉をかければ良いか分からず、会話のない気まずい食事であった。


「…ごちそうさま。」



リディアは胸がいっぱいであまり食が進まなかった。


「奥方様、もうよろしいのですか?」
「うん、いいの。ちょっと食欲がなくって。」
「はぁ、そうですか…。もしお腹が空かれたら、何かご用意しますのでお申し付け下さいませ。」
「ありがとう。」

心配する侍女にリディアは笑顔でそう言って、ダイニングルームを出た。



(さっき修正した書類、エッジに渡さなきゃ…。)



書類を持ったリディアが執務室に入ると、夕食を済ませたエッジがいた。


「…!あ…エッジ…。」
「ん?」

「あの…昼間言ってた書類、修正終わったから持ってきたの…。」
「そうか。なら預かるぜ。」

「…うん。」



リディアはエッジの顔を直視できないまま今日する予定だった仕事をしようと、執務室の机の上にある書類を取ろうとした。


「リディア、それは明日でいい。」

不備を修正した書類を読みながらのエッジの言葉に、リディアはビクッとしてしまった。

「え…でも…。」
「今週中に終わればいいんだよ。もう今日は休め。」






執務室を出たリディアは風呂に入り、部屋のベッドに寝転んだ。


「エッジ…責任取るって言ってたし、また大変になっちゃうんだろうな…。」



各国の王は戦友だが、夫はエブラーナ国王としての立場と責任があるため、正式な形で対処しなければならない。そして謝罪と交渉をするとなればそれなりの時間と労力を要するに違いない。エッジが部屋に来たら、何て言おうか、どんな顔をすべきかと、リディアは考えに考えていた。



(あぁ…エッジが来る前に寝ちゃいたい。)



そう思って寝ようとするが、疲れているのに目が冴えてしまい眠れない。それで寝返りを何度も打っていた、というわけである。しかも夕食をあまり食べなかったため、今になって空腹になり、余計に眠れない。


(何か食べ物もらいに行こうかなぁ…。)


空腹感と戦いながらそう思っていると、部屋のドアが開く音がした。


「!!!」


エッジがこっちに向かってくる足音がする。リディアはもう遅いと分かりつつ、エッジに背を向けて思わず布団をかぶって寝たふりをしてしまった。


(あぁ~、どうしよう…!)


エッジがベッドに乗る音にドキドキしていると、その大きな手がそっとリディアの肩に触れた。リディアの心臓がますます速く動き出す。


「リディア、起きてんだろ?」


エッジの問いに、リディアは答えずに黙ってしまった。そして恐る恐るエッジの方を向くと…


「腹減ってるだろ?食えよ。」



エッジの手にはお皿に乗った、おにぎりが2個。

「え…エッジ…?」
「お前夕食あんま食ってなかったじゃねぇか。」
「…。」


リディアのお腹がぐぅと鳴り、エッジはプッと吹き出す。


「ほら、食えって。」
「うん…。」


起き上がって手にしたおにぎりはまだ温かくて、空腹のリディアの食欲を掻き立てる。ぱくりとおにぎりを口にすると、程よい塩味と米の甘みが口いっぱいに広がっていった。




(美味しい…!!)





リディアは夢中でおにぎりを頬張り、あっという間に平らげた。

「ほれ、茶も飲めよ。」


エッジは淹れたての緑茶をリディアに渡す。さっきまで強張っていたリディアの心と身体はすっかり解れて、体の芯がポカポカしてきた。

「はぁ…美味しかった。エッジ、ありがとう…。」


エッジは優しい笑顔でリディアを見つめていた。

「そりゃそうだ、俺が握ったんだからな。」
「え…エッジが作ったの!?」
「おぉ。だから美味いんだぞ?」

得意げな顔をするエッジ。リディアが思わず笑みをこぼすと、エッジの腕がぎゅっと彼女を抱きしめる。


「!」

エッジの唇がリディアのそれにそっと重なった。

(エッジ…怒ってるんじゃないの?)


唇を離したエッジの顔はとても優しく、リディアは思わず見惚れてしまった。


優しいキスが何度も繰り返され、リディアがどう反応すればいいか分からず、ただポーッとしてそれを受け入れていると、エッジの舌先がリディアの唇を軽くつついた。リディアがそれに応じて口を開けると、絡み合う2人の舌がちゅぷちゅぷと淫靡な音を立てる。エッジの舌はリディアの口腔内に入り込み、歯と歯茎を余すところなく舐め上げた。


「はぁっ…ふぅ…。」


息継ぎをするリディアに、エッジはにっこりと笑った。

「これで口の中、スッキリしただろ?」

エッジの一言にリディアははっとして口に手を当てた。

「う、うん…。」

自分が食べた後の始末までしてくれたエッジ。リディアは何と言えばいいかますます分からなくなって俯いてしまう。


リディアがそうしていると、エッジは彼女の柔らかな緑の髪を撫で始めた。髪を少し束にして指にクルクルと巻きつけたり、長い髪を耳にかけてやったりと愛でるようなその優しい手つきに、俯いたままのリディアはどう話を切り出そうかと必死で考えた。


「エッジ…。」
「ん?」


「エッジ、怒ってるよね…?」
「いや?」


エッジの言葉にリディアは驚き、俯いた状態で目を見開く。恐る恐る顔を上げると、エッジはじっとリディアの瞳を見つめていた。

「え…どうして?今日私のせいでエッジも皆も大変だったのに…。」
「リディア、今日の事は俺が責任を取る。だから心配すんな。」


リディアが何とか言葉を紡ぎ出すと、エッジは昼間と打って変わって穏やかな声を発し、またリディアに優しく口づけした。


(あっ…。)


エッジの優しい言葉と口づけに、リディアは身体がみるみる蕩けてしまいそうな感覚に襲われた。頬はほんのり紅潮し、翡翠色の瞳は潤み始めた。


「責任取るって…またエッジが大変になっちゃうじゃない…。」


今にも泣きそうな声でエッジに訴えると、彼の手がリディアの頬をそっと包み込んだ。

「俺は国王だから、責任を取れる権限がある。だからそうしただけのことだぜ?」


そう言ってエッジは自分の胸にリディアを抱き寄せた。決して自分を咎めず、全て受け止めてくれる夫の姿勢に翡翠色の瞳からはみるみる涙が流れ出し、色白の頬を伝いだした。


「うぅっ…エッ…ジ…ごめんなさい…ひっく…」


自分のせいでただでさえ大変なエッジの仕事を増やしてしまい、リディアは彼の背中に腕を回してしがみついて、嗚咽を漏らしながら詫びた。そんなリディアをエッジはぎゅっと抱きしめ、髪を撫で続け、時折頬を擦り合わせた。


ゆっくりとエッジの胸から顔を離して見上げると、そこにはちょっと悪戯っ気のある、リディアの大好きな彼の笑顔。

「本当にお前は手のかかる甘えん坊だよなぁ…。」
「…だってエッジがすごく頼れるから…。」


涙で頬を濡らしたまま恥ずかしそうに、少し小さな声でそう言うリディアの姿が可愛くて、エッジはますます彼女が愛おしくなる。そしてまた口づけすると、リディアの身体の奥が疼き始めた。

(あっ…やだ…この感じ…。)


唇を離すと、今度はエッジが真面目な顔をしてリディアを見つめた。

「…リディア、よく聞いてくれ。」


リディアはエッジの低い声にハッとした。


「俺はお前の執政に関わりたいって意思の強さに説得されて仕事を任せることにした。関わるからには自分の責務はしっかり全うして欲しいんだよ。俺はお前のことすっげぇ好きだし、苦労かけたくねぇって思ってるから、今日のことだって何も言わずに俺が全部解決することもできた。けどな、それじゃお前が仕事をきちんと理解できねぇだろ?家臣達だって、お前が何しても許されてんのを見たら、いい気はしねぇだろうし。」


リディアはゆっくりと頷いた。


「…もし今日のことで、お前がもう仕事したくねぇって言うんならそれでいい…。俺がその分働きゃいいことだし。けど今後も執政に関わりたいんなら、任されたことは王妃として責任もってやり抜いてくれ。」



真剣なエッジの表情。


忍刀を思わせる切れ長の両眼は、ぱっちりとしたリディアの翡翠色の瞳をしっかりと捉える。決して逃げられない、そんな圧力すら醸し出すその視線にリディアは呼吸が止まってしまいそうだった。



「リディア、どうする?」



この国の王妃として、大きな選択を迫られたリディア。このまま自分が執政に関われば、また今日のような事を起こすかもしれない。










エッジは真面目な表情を崩さず、リディアを見つめて彼女の手を握った。温かくて大きなその手の中で、色白の手は微かに震えだす。








時が止まったように、見つめ合う2人。








私のことを大事にしてくれる、あなたの力になりたい―――






「…わ、私…。」

「うん?」






そう決めたの






「エッジの…役に立ちたいの。だから…。」
「うん。」




だからお願い―――






「これからも、執政に関わりたい…。」



震える声で発される辿々しく、必死に意思を伝えるリディア。まだ震えたままのその手をキュッと握ったエッジは微笑み、リディアの髪を撫でた。


「よし、分かった。じゃあ明日からもよろしく頼むぞ?」
「うん…!」


リディアの顔に笑顔が戻った。エッジは口元が緩み、思わずリディアに口づけした。


「もう…エッジったら。」
「お前のそんな可愛い顔見たら我慢できねぇっつーの。」

2人は笑い合い、手を握り合った。


一国の王として、家臣や国民達の事を常に考えているエッジ。お調子者で口が悪くて、城を抜け出したりしたことがあっても皆から信頼されているのは、上に立つ者としての責任感と思いやりがあるからこそ。10年以上の間ミスト復興のために働き、その中で自立した大人の女性となったリディアだったが、エッジの器の大きさには到底かなわなかった。

「エッジ…。」
「あ?」

リディアはもぞもぞとエッジの肩に顔を埋めた。

「何だよ~、この甘えん坊が。仕事でそんなに甘えたりしたら許さねぇぞ~?」
「ふふふ…。」

エッジはリディアの背中を抱き、おでこにちゅっとした。

最初はリディアが執政に関わるのを何としてでもやめさせようとしていたエッジだが、辛いことを分け合える相手がいるのは大きな支え。ましてそれが愛するリディアなのだから、エッジにとってこれ以上の幸せはない。


「…ありがとな、リディア。」


王族として生まれ、エブラーナを背負う国王としての運命からは逃げられない。けれど照れ臭くて言えなかった妻への感謝の気持ちを口にした途端、その重苦しさはすっと消えていくのを感じた。


「うふふ…エッジを助けられて嬉しいな。」


夫からの感謝の言葉が、自分の決断は正しかったのだと思わせてくれる。笑顔になった2人の唇は自然と重なり、背中に回された互いの手は、ゆったりとそこを撫で合った。


「ん~、あったかくて気持ちいい…。」
「へへへ…そりゃお前への想いだぜ?」
「やだぁ、エッジ…。」
「やだとか言うんじゃねぇよ。」
「ふふ…。」

リディアの華奢な手では夫の大きな背中をなかなか撫で切れなくて、身体を密着させて必死に腕を伸ばして手を動かし、湧き上がる彼への愛おしさを精一杯伝えようとした。


「リディア…気持ちいいぜ。」
「本当?」
「おぅ。…なぁ、リディア。」
「ん?」

エッジの手が、リディアの背中からするすると腰の辺りへと下りてきた。

「…王様と王妃様の時間は終わりにして、今から夫婦の時間にしねぇか…?」

「…やだ…エッジのスケベ。」


さっきまでの真面目な顔はどこへやら、すっかり卑猥な笑みを浮かべるエッジ。彼の言葉の意味を理解したリディアは羞恥心が働き、彼から視線を逸らした。


「旦那のこういうおねだりを聞くのが、嫁さんの仕事だろーが。」
「…バカ、変態。」

王と王妃として、果たさねばならない責務と大きなプレッシャー。しっかりと絡み合う2人の指に、この人と一緒に乗り越えていきたいという想いと共に力がこもり、切れ長の目と丸くぱっちりとした翡翠色の瞳が見つめ合うと―――


ちゅっ。




最初軽く触れ合っていた唇は、どんどん深く相手のそれに侵入し、互いに顔の角度を変えながらとても熱い、扇情的な口づけへと変わり、エッジもリディアも昼間の出来事など忘れていった。


「…!んっ…やだぁ…。」
「やだじゃねぇよ。俺のこんなになってんだぞ。」

エッジが片手でリディアの寝間着の腰紐を解き始めたのに気付き、思わずリディアが唇を離すと、エッジは自分の脚の間にある、すっかり膨張して硬くなった熱いそれを下衣の上から触らせた。


「んもぅ…変態。」


そう言いながらリディアがエッジに身体を預けると、2人はそのままベッドに沈み、王と王妃から夫婦の時間へと移行していった。


仕事上のトラブルを経て、ますます信頼関係を深めたエッジとリディア。大変なことがあっても一緒に乗り越えたい―――2人の心に浮かんだ想いは、感じ合う体温を通じ、互いの身体にじわじわと沁み入っていった。


―完―

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2014
08.18

「夕涼み」 あとがき

Category: あとがき
「夕涼み」、いかがだったでしょうか?前回の季節ものSSと違って、まともな涼しさをお届けしました 笑
そして定番のリディアLOVEなエッジに仕上がりました( ̄▽ ̄)


先月末から新しい仕事が始まった管理人ですが、仕事しながらのSS更新はなかなかに大変だと思い知りました(*_*)今後は月に一度の季節ものSSは最低でも仕上げるペースにしようかな…と考えてます。あ、もちろん時系列になってるTA後エジリディSSも創作していくつもりです。


そして昨夜はSSをUPしたところで力尽きてしまい、あとがきは明日(今日)書こうと思っていたら、今の時点ですでにSSに拍手を下さった方々がいて…ほんっとーーーにありがとうございますっ!!!(>_<)完全に私の自己満の世界だというのにお付き合い下さって、すごくすごく嬉しいですよ〜♡♡♡これからもよろしくお願いします!!!



お盆が終わり、今日から仕事だという方は多いんじゃないでしょうか。管理人も今日から仕事で、朝起きるのが辛かったです(^_^;)まだまだ暑い日が続きますが、皆様どうぞご自愛下さいませ☆
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2014
08.17

「夕涼み」


8月の季節ものエジリディSS、仕上がりました☆先月とは違う涼しさをどうぞ♡(笑)








「夕涼み」




「はぁ~、蒸し暑いなぁ。」


8月の真夏日の昼下がり、先月から続く暑さに加え、台風の影響で天気が不安定になって大雨が降り続き、晴れてもその湿気で蒸し蒸しとするエブラーナ王国。近隣の木々からは蝉の鳴き声が聞こえてきて、今まさに夏真っ盛りなのだということを言い聞かされているようである。窓を開けた執務室でリディアは手に小さなタオルを持ち、時折それで汗を拭きながら事務仕事をしていた。


「はぁ~、蒸し暑いなぁ。」

エッジが執務室に戻って来た。ついさっき自分が口にした事と全く同じ事を夫が言うので、リディアは思わず吹き出してしまった。

「あ?何笑ってんだよ?」
「ふふふ…。」


不可解な表情をしながら椅子に座り、団扇をパタパタと扇ぎだすエッジ。まだリディアがクスクスと笑っているので、指で彼女のおでこをつつく。

「何だよ~、何がそんなにおかしいんだよ?」
「だって~、エッジが私と同じ事言うんだもん。」
「そうなのか?」
「うん。エッジがここに戻って来る少し前に、私も『はぁ~、蒸し暑いなぁ』って言ってたの。」


ふっと笑うエッジ。仲良しの夫婦は似てくると言うが、自分達もそうなのかと思うと口元が緩む。


「そりゃ俺達は夫婦なんだから、同じこと言うことだってあるだろーな。」


ベタ惚れの妻が自分と同じ言葉を口にしていたことを嬉しそうに頷くエッジと、それをニコニコしながら見つめるリディア。そんな2人の醸し出す雰囲気はほんわかと温かく、誰が見ても仲良し国王夫妻と呼ぶに相応しいものだった。


「そうだリディア、今夜は浴衣着て川辺に夕涼みに行かねぇか?こうも暑いとダレちまうからな~。」
「え、浴衣で?」


リディアはふと、就寝用の浴衣は持っているが外出用の浴衣は持っていないことに気付いた。結婚前にエブラーナには何度も来ていたから浴衣がどんなものかは知っていたが、王妃となってからは夏用のエブラーナ様式のドレスやローブの様な衣服を身に付けていたため、浴衣を着る機会がなかったのだ。

「エッジ…私浴衣持ってないんだけど、夕涼みって洋服じゃダメかしら?」


リディアの言葉を聞き、エッジは優しく微笑んだ。

「お前の浴衣用意してあるから、心配すんな。」
「!そうなの?」
「あぁ。…俺が選んだ、お前に似合いそうな浴衣があるんだ。」


夫の思いがけない一言にリディアは嬉しくて、胸の奥から温かい何かが湧き上がって来るような気がした。


「エッジ…本当に?」
「おぅ。後で見せてやるよ。」
「…ありがとう、エッジ。」


瞳を潤ませたリディアの小さな花のような唇が自分のために何から何までしてくれるエッジの頬にそっと触れると、彼の腕は細い背中をギュッと抱きしめ、蝉の鳴き声が聞こえてくる真夏の執務室で2人の体温が溶け合った―――








日没前。




「リディア、浴衣見せてやるから来いよ。」



エブラーナ城の一角にある部屋には、エッジがリディアのために用意した浴衣。

白地に青みがかった淡い桃色の撫子と、薄紫の桔梗の柄。薄紅色を足したような明るい紫の帯は光沢のある素材で作られたものだった。清らかな色使いと、エブラーナの夏の花をあしらった上品なデザインが、リディアの色白の肌と、ふわふわとした緑の髪の美しさを引き立たせそうである。

「わぁ、きれい!…エッジ、これを私に?」
「おぅ、お前に着て欲しいんだ。」


リディアがこの浴衣を着たら、それはそれは艶やかに違いない。彼女の浴衣姿を想像したエッジは、少し頬が紅潮していた。












(あぁ…リディアの浴衣姿…やべぇ、ゾクゾクしちまうぜ。)


一足先に浴衣に着替え終わったエッジは、リディアが着付けされている部屋の前でそわそわしながら待っていた。


(髪は結い上げるだろうから、後ろから見たら綺麗なうなじが…あぁ~!!)


エッジの脳内で妄想が暴走する。すると…


「!」
「あら、エッジ。お待たせ、着せてもらったわよ。どう?」


部屋のドアが開き、浴衣姿のリディアが出て来た。


「おぉ…。」


エッジは呟くように感嘆の声を出した。

色白の肌に映える撫子と桔梗の柄、緑の髪とよく合う紫の帯。浴衣を着たことで歩幅が小さくなり、控え目に見えるその動きは品に溢れている。長い髪はエッジの予想通り結い上げられ、そこには白い花を模った簪。



「エッジ…どう?似合うかな?」

初めて袖を通す浴衣の着心地に戸惑いながら、エッジの反応が気になるリディアは軽く首を傾げながら彼を見つめる。


「…綺麗だぜ。」
「本当?」
「あぁ。」
「ふふふ…ありがとう。エッジもその浴衣、かっこいいね。」
「当たり前だ!男前の俺様は何を着ても似合うんだぜ?」


愛らしい表情をするリディアにかっこいいと言われ、照れ隠しに必死なエッジ。彼が着ている浴衣は、リディアの爽やかかつ艶やかな装いとは対照的な、落ち着いた濃い藍色。王子時代と違い、大人の男性の雰囲気を漂わせるようになった今のエッジが着れば、渋さと貫禄が十分なほどに滲み出る。


(あぁリディア…すげぇ綺麗だ…。)



エッジがリディアの浴衣姿をまじまじと眺めていると、家老がそこにやって来た。


「おお!奥方様、この浴衣をお召しになられたのですか。」
「あら、じい。どう?似合ってるかしら?」
「もちろんでございますぞ!お館様は奥方様に最高級の浴衣をプレゼントしたいと、職人にこの浴衣を誂えるように依頼してらっしゃったのですからな。」
「え…?」
「…っ!じい、余計な事言うんじゃねぇ!!」


愛する妻にさりげなく上等の浴衣を贈るつもりだったエッジの計画は見事に崩れ去り、彼の顔は真っ赤である。


「エッジ…この浴衣、いくらしたの?」
「そんな野暮なことは聞かないの!」

腕を組んでリディアから視線を逸らすエッジ。リディアの着付けを担当した女官達が国王の王妃への惚れ込みっぷりにクスクスと笑っていて、エッジはますます決まりが悪くなる。


「ほっほっほ、これはこのじいの口が過ぎましたかな?ではお2人とも、夕涼みを楽しまれませ。」

笑顔でその場を去って行く家老と女官達。リディアは不安げな表情でエッジを見つめている。


「…何だよ?」
「バカ。」
「何がだよ?」
「…何で最高級の浴衣なんて用意したのよ?」
「いいじゃねぇか、お前に安物着せたくなかったんだよ…。」
「…もう、ほんっとにバカ。」


瞳を潤ませ、少し俯いたままエッジを罵倒するリディアの指は、彼の骨張った指にゆっくりと絡む。少しの沈黙の後、頬を赤らめたままのエッジが口を開く。


「リディア…行くか?」
「うん…。」


浴衣姿の2人は身を寄せ合い、城の出口へと歩いて行った。










「あ、涼しい…。」



日が沈み、夜の帳が下りた頃の外気は、真夏だというのにすっかり快適なものになっていた。


「だろ?城の中にいるよりも、夏の夜は外に出た方が涼しくていいんだぜ。んでもってこの涼しさを感じながら川辺で食うスイカが美味いんだ~。」


(ふふ…エッジ、楽しそう。)


四季がはっきりしているエブラーナならではの季節ごとの楽しみ方。それを嬉しそうに話す夫の表情はとても誇らしげ。リディアは頷きながら彼の手を握る自分のそれに、きゅっと力を込める。



「なぁ、リディア。」
「ん?」
「あの…お前浴衣着る時にさ…」
「?」
「し…下着脱いだよ…な?」
「…!!変態!!」


ニヤニヤしながら聞いてくるエッジに、リディアは顔を真っ赤にして怒った。

「お、てことは今は…」
「バカッ!!言わない!!」








*****







2人がカランコロンと下駄の音を鳴らせながらエブラーナ城近くを流れる小川に到着すると、そこには用意された松明の光の下できゃっきゃっと言いながら楽しそうに遊ぶ幼子や線香花火を楽しむ者達、自宅の畑で採れたスイカを川で冷やして振る舞う農家達がいた。

「あ、お館様とリディア様だー!」


遊んでいた子供達が2人のもとに駆け寄ってきた。

「お、皆元気だな~。父ちゃんと母ちゃんに浴衣着せてもらったのか?」
「うん!僕と弟は同じ柄の浴衣着てるんだよ!」
「私はお姉ちゃんと色違いなのよ。お姉ちゃんは赤で、私はピンク!」
「ふふふ、そうなのね。皆いい浴衣着せてもらえて良かったわね。」



視線の高さを合わせ、自分達の浴衣自慢を聞いてくれる国王夫妻に、子供達はご満悦の様子。そんな彼らの姿に、エッジもリディアも笑みを零さずにはいられなかった。

「リディア様の浴衣、すごくきれいだね!」
「ほんとだ!…お館様からもらったの?」

エッジのリディアに対する行動パターンは、幼い子供達にまで知れ渡っている事実。エッジが苦笑する横で、リディアはクスッと笑う。

「そうよ、エッジがくれたのよ。」
「やっぱりそうなんだ~!」
「お館様はリディア様のこと大好きだもんね!」

子供の容赦ない正直な発言に、耳まで赤くなるしかないエッジ。



「もう、エッジったら…こんな小さな子達にまでそんな事言われちゃって…。」


子供達の前だというのに、恥ずかしそうにそっぽを向くリディア。エッジはやや決まりが悪そうに頭を掻くが、空いた方の手はしっかりとリディアの肩を抱いている。

「悪りぃ、リディア…。」
「バカ。」

「ねぇリディア様、線香花火しようよ!」
「あ、そうね。確か線香花火ってお願い事できる花火よね?」
「そうだよ。一緒にお願い事しよう!」
「おいおい、俺も誘ってくれよ~。」


子供達がリディアの手を引くと、エッジも慌てて付いて行った。








「綺麗ね…。」

子供達と一緒に線香花火をするリディア。牡丹から松葉へと変わった線香花火の火を、彼女の翡翠色の瞳がうっとりと眺めていた。

「なぁ、何お願いするんだ?」
「んー、そうねぇ。どうしようかな。」

リディアの隣をしっかりと陣取ったエッジは、うっとりとした彼女の横顔を見つめながら、その美しいうなじをチラチラと見ていた。


(綺麗だな…。)




「…リディア、スイカ食えよ。」
「うん。」

エッジはもらったスイカを花火中のリディアの口元に持っていって食べさせた。

「ん~、甘いわね。」
「そりゃスイカはエブラーナが原産なんだからな、美味くて当然だ。」
「ふふ、そうね。喉渇いてたから丁度良かったわ。」

リディアが齧った後のスイカをエッジが食べ、そしてまたリディアにそれを食べさせる。

「あっ、火が消えそう!お願いごとしなきゃ。」


リディアは目を閉じ、暫しの間何か考えているような素振りを見せた。

(リディア…何お願いしたんだ?)


リディアが何をお願いしたかが気になって仕方ないエッジは、彼女をじっと見つめる。リディアの線香花火の玉が落ちずに消えると、子供達から歓声が上がる。

「わぁ!リディア様の線香花火、落ちずに消えたよ!」
「本当だ!きっと願い事叶うよ!僕の線香花火、落ちちゃった~。」
「リディア様、何をお願いしたのー?」

子供達に尋ねられ、にっこり笑うリディア。どんな願い事をしたのかと、エッジも興味津々で耳を傾けると…


「ふふふ…秘密よ。」
「えー、どうして?」
「教えてよ!」

好奇心いっぱいの子供達にせがまれるが、リディアは優しく微笑み返す。


「お願いごとはね、誰かに教えると叶わなくなるって言われてるのよ。だから秘密なの。」


初めて聞く内容に、子供達からは落胆の声が聞こえてきた。

「えー、そうなの?」
「教えちゃダメなんだ…。だから今まで叶わなかったのかなぁ。」

(何だよ…俺も知りてぇのによ。)

「うーん、そうだったのかもね。じゃあこれから線香花火にお願いごとする時は誰にも言っちゃダメよ?」
「はぁーい。」


自分の願い事を知りたがっている夫を尻目に、澄ました笑顔で子供達と会話するリディア。エッジが内心ガッカリしていると、ドーンという打ち上げ花火の音が響いてきた。


「あら、打ち上げ花火もあるのね。」
「わー、大っきい花火!」
「きれーい!」


ついさっきまで線香花火を楽しんでいた子供達は打ち上げ花火に釘付けである。


「リディア、こっち来い。」
「えっ?」


子供達の注意がリディアから逸れたのを見計らい、エッジが小声で話しかけると、リディアは不思議そうに振り向いた。立ち上がったエッジはリディアの手を引いて走り始めた。


「えっ、ちょっと…やだ、浴衣だし走れない…!」


そう言った直後、リディアの身体はエッジに横抱きされ、ふわりと宙に浮いていた。そのまま忍者としての脚力を活かして何処かへと走るエッジに、リディアは振り落とされないよう彼の肩にしがみついた。

「ど、どこに行くの…?」
「花火見るのにいい場所があんだよ。」


リディアにウィンクするエッジは満面の笑みで走り続けた。







「よし、ここだ。」

そこは清らかな水がさらさらと流れ、周りが森で覆われた川の上流。リディアを下ろしたエッジは下流の方向を向いた。

「ほら、こっから下流の方に向けば花火がよく見えるんだぜ。」
「わぁ、本当だ…!」


人混みから離れ、涼しげな水の音を聞きながら見る花火は今まで見たどの花火よりも美しく、リディアは心が洗われるようだった。

「綺麗ね…。」
「あぁ…。」


下流域よりもひんやりと心地良い空気に包まれ、何と無く温もりが欲しくなったリディアがエッジに身を寄せると、大きな温かい手が彼女の肩を包み込む。

「リディア。」
「ん?」

「さっき…線香花火に何をお願いしたんだ?」


打ち上げ花火を見上げたまま問いかける夫の横顔を見ながら、リディアは密かに頬を赤らめた。

「…秘密。」
「何だよ、教えろよ。…俺に言えねぇようなお願いなのか?」
「そういうわけじゃないけど…。」


何をお願いしたのかなかなか言おうとしない妻をぎゅっと抱き寄せ、色白で滑らかな肌を湛えるおでこや頬にキスを降らせる。




「俺はお前の事、全部知りたいんだよ。」

「…バカ。」




次々と打ちあがる花火。リディアの身体を抱き寄せるエッジの力はどんどん強くなり、さっきよりも顔と顔の距離がうんと縮まった。


「なぁ、リディア…教えろよ。」

「…恥ずかしいからやだ。」
「恥ずかしいって何だよ。…俺ともっと激しいエッチがしたいとか?」
「っ!!違うもん!エッジ、本当にバカ!!」




顔を真っ赤にして怒るリディアだが、エッジはゲラゲラ笑っている。いつも自分の一枚上手を行く夫には敵わないと思っていると、エッジの手がリディアの結い上げられた髪を乱さないように優しく撫で始めた。



「ははは、悪りぃ。…言いたくないんなら言わなくていいって。」

(あ…。)




打ち上げ花火に照らされるエッジの優しい表情。怒って強張った身体の力が抜けていくのを感じ、リディアは再びエッジに身を寄せた。

(お…?)




「…さっきお願いしたのはね」

「うん?」



間を空けて、ゆっくりとリディアが話し出す。





「エッジと…ずっとずっと仲良く暮らせますようにって…。」




花火の打ち上げ音が響く中、ぼそぼそとした声で発されたリディアの願い事は、聴覚の発達した忍者であるエッジの耳に届かないはずがなかった。





何も言わずに、リディアを抱きしめる逞しい腕。その中で必死にエッジにしがみつく、色白の細い腕。






「…ありがとな、リディア。」



愛する女性に、望んでもらえる幸せ。




爽やかな水音が響く川の上流で、クライマックスを迎える打ち上げ花火に照らされながら見つめ合う2人。エッジもリディアも、もうそのまま唇を重ねることしか考えられなかった―――







―完―

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2014
08.09

リンクご報告

Category: 日記
こんばんは。


すーーーーっかり遅くなってしまいましたが、先日1件、リンクを追加したのでご報告です。(甘夏様、本当にマナー知らずですいませんでした…。)


♡色いろは/管理人・甘夏様♡

FF4サーチにも登録してらっしゃるのですでにご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、エジリディのSSとイラストのサイトです☆


甘夏様の文章はとても繊細で、いつも読むたびにグッときちゃいます。文章を読むのも書くのも苦手な私にはとても描けない世界です。特にエッジがリディアにじわじわとアタックして、それにドキドキしているリディアの様子にたまらなくきゅんきゅんしちゃうんです♡


そして甘夏様のイラストの最大の魅力は色使いです!コピックや水彩絵の具、色鉛筆など多彩な画材を使用してらっしゃるのですが、リディアの純粋さというかフレッシュさを湛えるその色使いに魅了される方は多いと思います。

それに加え、ブログへの写真のアップ方法やトップページにあるSSへのリンク作成の方法を私に教えて下さったのは甘夏様なんです。今年5月の末頃、私のブログに立ち寄って下さった形跡があったので御挨拶コメントをしたのですが、それ以来とても仲良くしていただいてまして。甘夏様がいなかったら私のブログはアナログなまんまだったんですよ~。

というわけで、ぜひ甘夏様のブログ・色いろはをご堪能下さいませ♡ではでは(^^)
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2014
08.02

変なおじさん(と、コメントお礼)

Category: 日記
こんばんわ。早速新しい仕事が始まり、未経験業界で分からないことだらけのため、毎日同僚の方々に泣きついている管理人です(苦笑)けど皆さん優しい人で助かってます~。早くお役に立てるように頑張らねば!


ところで先日、出会ってしまったんです。


誰にって?


本日の日記のタイトルをご覧下さい!


あ、ちなみに志村けんじゃないですよ( ̄▽ ̄)




インド人。


その日は友人と待ち合わせする前、マツキヨ某店にて買い物し、駅の方向へと向かっておりました。するとターバンは巻いていないものの、明らかにインドかその辺りの国から来たんだろうなーと思わせる風貌のおじさんに英語で話しかけられました。道でも聞かれるのかと思い、親切心からこちらも英語で話すと、自分はITビジネスの事で日本に来ているんだとか、住んでいるのは何処だとか、君は仕事何しているのとか、明らかに道聞きたかったんじゃねぇなこのおっさんと思うような内容の話ばかり。何やら嫌な予感が管理人の心に過ったその時…


「よかったら、どこかでお喋りしないかい?」


どこかってどこやねん!!!


私が「え?」と聞き返すと


「僕は悪い男なんかじゃないよ。」




えーと、怪しすぎますから。


まともな人はそんなこと言うはずないというセオリーの元、管理人はとにかく逃げなければと考えたのでございます。


そこでふと、もう待ち合わせの時間が迫ってるという事実を思い出し、

管理人 「ごめん、もう行かなあかんねん。」
おっさん「どうして?」
管理人 「友達と約束してるから。それじゃあね~。」


こうして足早にその場を去ることに成功♡


あぁ~、それにしても英語が話せるっていいことばっかじゃないなぁと思うことがあるとは…話せないふりすりゃよかった。親切心がアダになってしもたなぁ…。


そしてふとパソコンのインターネット検索で「変なおじさん」と入力してみたところ…(何で?とは聞かないで下さい。管理人のシックス・センスというやつです♪)





志村けんの変なおじさんのウィキペディアページ発見!!


服装の特徴、登場の仕方、ギャグの内容、研ナオコの変なおばさんとのコラボについてまで事細かに記載されてる!いやそりゃウィキペディアだし詳しく書いてあるのが普通なんですが、お笑いネタについて真面目な文体で書かれていて、読んでいると変な笑いがこみあげてきてしまいました。


そしてもう一つ、変なおじさんに関するかなりどうでもいい情報。



今の20代前半の若者には、だっふんだが通じないらしい。


これは私の大学時代の先輩が合コンに参加し、相手の女の子達(20代前半)を笑わせようとした時の事。

「そうです、私が変な○○さんです。だっふんだっ!」

と言ったところ、彼女達は何のことか分からないという表情でポカンとしていたそうな。あぁ~、さぞかし冷え切った空気になったでしょうね。ドンマイです。ちなみにその合コン、だっふんだのせいかどうかは知りませんが、収穫なしだったそうです。


またしてもくだらない日記になりましたf^_^;ここまで読んで下さって本当にありがとうございます♡



以下、コメントへのお礼です。

♡R様♡(お名前を出していいのか分からず、イニシャルで失礼いたします。)

拍手コメントありがとうございます!エジリディ歴20年の大先輩に初心者の私のSSを楽しんでいただけて光栄です~♡♡大変な中、少しでも息抜きになったなら嬉しい限りです♪ちなみに私が住んでるのは、R様の住んでる市のすぐ南の市ですよ(^^)

そして三室戸寺と中村藤吉がお好きだとはっ!両方とも宇治市に行ったら必ず行くべきスポットですよね。京都駅の中村藤吉にも行ったことあるんですが、めちゃくちゃ混んでて長時間並びました…。私は生茶ゼリィの抹茶アイスがどうしても譲れないため、持ち帰り用には手を出したことがないんです(笑)


専門性のある仕事ってほんと求人少ないですよね。見つけても選考のハードル高くて、書類選考通っても最終で落とされてがっかり、なんてこともよくありました。ご理解あるお言葉をいただけて、本当に嬉しかったです。R様も心身共に大変だと思いますが、お互いこの暑さで倒れないように気を付けましょうね。これからもよろしくお願いします(^^)
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2014
07.29

ご報告&コメントお礼

Category: 日記
こんばんわ☆

いつもこのサイトに立ち寄って下さる皆様、本当にありがとうございます(^^)


それにしても毎日暑いですね~私の住んでる京都は本気で暑いです。。
溶けそうです…。


盆地地帯の蒸し暑さをなめてもらっちゃあ困るんです!!!(←別に誰もなめてない)



まぁそれはおいといて、今日は嬉しいことがあったのでご報告です。

本日、転職先が決定いたしました~♪(^0^)*

あぁ~、本当にほっとしました~。ちょっと専門性のある仕事を希望していたのでかなり苦戦したのですが、何とかご縁あって希望の業界・職種に就くことができたんです。この3月から転職活動を始め、約4ヶ月間無職で時間に余裕はあったものの、落ち込むことが多くて精神的に辛い日々でした。しかもこの時期にスーツ着るのが辛いのなんの(涙)
けどエジリディSSを書くのがものすごーくいい気分転換になってました。おかげで鬱にならずに済んだので、エジリディ万歳です!!!

(何でAL0908はほぼ週1ペースでSSをUPできてんだ?と思っていらっしゃった方、そういう事情で時間に余裕があったからなんですf^^;)


なので、今後は更新ペースは間違いなく遅くなると思います。ですがこれからも二次創作は続けますので、もしお付き合いいただけたら嬉しいです♡また管理人の勝手な予定ですが、年内に長編のUPを開始できたら、と考えてます。
あ、あくまで予定ですよ!年内にUPできなくて、嘘になるかもしれません


これからも多くの方に楽しんでもらえるようにラブラブ、シリアス、ギャグ、そしてR-18なエジリディSSを創作しますので、皆様今後ともどうぞよろしくお願いいたします♡♡


以下、コメントへのお礼です。

♡甘夏様♡

いつも私のSS、読んで下さってありがとうございます(^^)「きもだめし」で少しは涼しくなったでしょうか?エッジは無事なはず…です(笑)私も新しい仕事で疲れたら、エジリディ妄想で自家発電します~♪転職活動中は励ましの言葉をいただいてありがとうございました。いつか縁のある職場へ辿り着けると信じながらも、就職活動ってやっぱり辛いですよね…。これからもよろしくお願いします(^^)♡
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2014
07.27

「きもだめし」 あとがき

Category: あとがき
今回も私のエジリディSSを読んで下さり、ありがとうございます。過去に投稿したSSに拍手を下さった方、本当に嬉しいです!ありがとうございますっ♡


お館様、呪われちゃったようです(笑)そしてもちろん、この話は次回へは続きません(笑)


この季節ものSS、今まで花を題材にしてきたのでちょっと変化球が欲しいなぁと思った結果がこのストーリーでした。実は最初は火の玉が呪いじゃなくて、エッジとリディアに何か愛の記念品のようなものを残して消えていく…という流れにしようかと思ったのですが、ここ数日の猛暑で涼しさが欲しいという管理人の執念が勝ってしまったようですf^^;


日本全国、猛暑に見舞われていますが、皆様どうぞお身体にはお気を付け下さいませ☆またのご来訪、お待ちしてます
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2014
07.27

「きもだめし」

今月の季節ものエジリディSS、出来上がりました~♪暑い夏が少しでも涼しくなりますように( ̄▽ ̄)








「きもだめし」






7月になり、エブラーナでは梅雨明け宣言がなされ、晴天に恵まれる日が一気に増えた。いよいよ夏本番といった気候になり、昼間は痛いぐらいの強い日差しが降り注ぐようになった。夜は暑さが幾分和らぐものの、決して快適とは言えない環境の中で就寝しなければならない季節。そんな中でも、エブラーナ国王エッジは日々執政に精を出していた。


「あー、あちぃなぁ…。」


執務室で団扇をパタパタと扇ぎながら仕事をするエッジの口から出てくるのは、先程から同じ言葉ばかり。今夜はエブラーナ城近くの神社で毎年恒例の夏祭りがあり、午後からはエッジも準備に参加するため、何とか昼までに事務仕事を一段落させたいのだ。


エッジの装いは袖なしの胸元が空いた前合わせの上衣に、膝丈の下衣を組み合わせた簡易忍服という、すっかり夏らしいものだった。まだ午前中だというのに蒸し返すような暑さの中、首にタオルを巻き、拭いては出てくる汗を拭いながら執政の書類と向き合っていると…



「エッジ、冷たい飲み物用意できたから、少し休憩してよ。」

妻リディアが、氷の入った大きめのグラスに注がれた麦茶をお盆に乗せて、暑い中仕事に励む夫のために執務室にやって来た。長い髪を緩く耳の辺りでひとつにまとめ、麻素材の涼しげなグリーンの半袖の夏用のエブラーナ様式のドレスを見にまとった彼女はとても上品で、エッジはたちまち笑顔になる。


「おぅ、ありがとなリディア。喉渇いてたんだ~。」
「ふふふ。はい、どうぞ。」

エッジは自分の前に置かれたグラスを手に取り、ごくごくと喉を鳴らせて麦茶を飲んでゆく。夫のその豪快な飲みっぷりを、リディアは自分の椅子に座り、一緒に用意した自分の麦茶を口に含みながらニコニコと眺めていた。

「あー、美味い!夏は冷えた麦茶だな~。」
「そうね、美味しいわね。」

リディアが用意してくれた麦茶なのだから、エッジにとってその味は格別。彼が飲み干した後のグラスの中では、机の上に置かれた振動で氷が動いてカラン、と涼しげな音を立てた。


「麦茶ってくせがないから飲みやすいわよね。お肌にいい成分が入ってるって聞いたわ。」
「そうだぞ?肌にもいいし、身体にもいいもんがたくさん入ってるんだ。うちの国が他の国と比べて平均寿命が長いのは、麦茶飲んでるからだっていう奴もいるぐらいなんだからな。」


自国文化を自慢げに語るエッジ。昔は彼がエブラーナ文化を熱く語り出すとうっとうしく感じ、適当に聞き流していたリディアだったが、深い仲になっていくにつれ、そんな彼の姿を愛おしいと感じるようになった。



「ねぇエッジ、今夜の夏祭り楽しみね。今までタイミング合わなくて7月のお祭りの日に来れなかったからなぁ…。」
「そうだったなぁ。年によっては雨のせいで中止になったりしてたしな。」
「うん。…色々お店回って、一緒に美味しいもの食べようね?」

「…おぅ。」

2人で寄り添いながら屋台を巡る様子を想像しただけで鼻の下が伸び、口元がみるみる緩むエッジ。


「またそんな顔して…。楽しみね、うふふ…。」


リディアに手をそっと握られ、耳元でそう囁かれたエッジは耳まで真っ赤になった。


「ぶふふふふ、楽しみだな~。あぁ…ところでよ、リディア。」
「ん、何?」
「7月の夏祭りに来たことねぇんなら、きもだめしも知らねぇよな?」
「え、きもだめし…?」

初めて聞く言葉にリディアが不思議そうな顔をしていると、何やらエッジはニヤリと笑っている。

「ん…知らないわ。それって食べ物か何か?」
「お、知らねぇか。なら今夜のお楽しみだな。」
「???え、何?」
「まぁまぁ楽しみにしておけって!」

首を傾げるリディアを前に、エッジは白い歯を見せてニヤニヤとするばかりだった。









そして夕刻。





「おーいリディア、そろそろ行くぞー。」


夏祭り会場での準備作業を終えて城に戻ってきたエッジが妻を呼ぶと…


「はーい。」
「…!リディア、お前…。」
「うふふ、暑いから着替えちゃった。」

エッジの前に現れた笑顔のリディアはすっかりお召し替えしていた。


鎖骨が少し見えるぐらいに首回りの空いた、ひざ下丈の水色のノースリーブワンピース。アップにした緑の長い髪にはエッジにプレゼントされた向日葵モチーフの髪留め、足元は歩きやすいヒールの低いサンダルと、爽やかな夏らしい装いであるのだが、エッジは眉を顰める。

「…エッジ、この服気に入らない?」


夫の表情を見て不安げに尋ねるリディア。エッジはふーと息をつきながら頭を掻く。


「そんな露出の多い服着るんじゃねーよ。あんまり肌見せるなっていつも言ってるだろーが。これから城の外に出るんだぞ?」
「え~?これはそんなに露出多くないじゃない。暑いのに長袖なんて着てられないわよ。」

「いや、長袖着ろとは言わねーけど、せめて袖のあるもん着るか、肩掛け使ってくれよ。そんな綺麗なうなじや二の腕丸出しにしてたら男が寄って来るじゃねーか。」


しかめっ面で妻を説教するエッジ。夏は人々の心が開放的になって犯罪が増えやすいため、愛する妻に肌を晒して欲しくないのだ。


エッジとのお祭りデートのために、せっかくおめかししたのに。エッジはしょぼんとする妻を優しく抱きしめる。

「っとにしょうがねぇ奴だな~。ほら、機嫌治せよ。」
「何よぉ、エッジが文句ばっかり言うからじゃない。」

顔を背けて不機嫌そうな口調だが、それはエッジが大好きなリディアの仕草のひとつ。エッジが背中や肩を優しく撫でながら、頬にちゅっとキスをすると、リディアは顔を上げ、上気した頬をエッジに見せた。


「…そんな可愛い顔すんなって。」
「バカ。」

抱きしめられたままのリディアがエッジの胸に顔を埋めると、彼の優しく、いつもより低目の声が耳に入ってきた。

「…その可愛い格好、今日は許してやるから、俺のそばから離れるなよ?」



夫の言葉に込められた自分への想いに、リディアの頬は赤らむばかり。

「…うん。」
「よし、じゃあ行くか。」







*****






エブラーナ城から少し離れた神社に行くと、境内に続く歩道には紅白の提灯に照らされた屋台がずらりと並び、食欲をそそる香りが早速2人の鼻を擽る。すでに多くの国民や城の使用人、兵士たちが夏祭りを楽しもうとやって来ていて、リディアは夏祭りの風景に目を輝かせた。


「わぁ、いっぱい屋台があるわね!何から食べようかな~。」
「お前食いしん坊だな~。食うことばっか考えてんだろ?」
「いいじゃない、お腹空いてるんだもん!」
「はいはい、じゃ何か食うか。」


エッジがリディアの肩を抱いて向かったのは焼きとうもろこしの店。国王夫妻の姿を見た屋台の主人が気さくに声をかけてくる。


「おっ、これはお館様に奥方様!いらっしゃい!」
「よう、ご苦労さん。リディア、こいつの畑で獲れたとうもろこし美味いんだぜ。」
「奥方様、今年も甘くて美味しいとうもろこしが獲れましたよ!お一ついかがですか?」
「本当?じゃあ一つもらおうかな。」


焼きとうもろこしをぱくっと口にしたリディアは、その香ばしさと甘味にたちまち笑顔になった。

「美味しい~!ほら、エッジも食べてよ。」
「おぅ、ありがとな。…んー、美味い!」

寄り添いながら1本の焼きとうもろこしを交互にもぐもぐと美味しそうに食べていく2人。その姿を見ていた屋台の主人は微笑まずにはいられなかった。


「ははは、お2人は本当に仲良しですねぇ。」


そう言われてはっとお互いを見つめ合う2人の頬は少し赤らんでいた。どう返せばいいのか分からず、エッジもリディアも黙ってしまう。

「さぁ、もう1本どうぞ!半分ずつじゃ足りんでしょうに。」
「お、おぅ!ありがとな。ほれ、これ2本分の代金だ。」


2人は境内の方向に向かってゆっくりと歩き出した。


「…リディア、食うか?」
「うん…。」

恥ずかしいような気まずいような雰囲気の中、自然と人目を避けるように歩道の脇へと足が進む2人。エッジに差し出されたとうもろこしを、口を小刻みに動かしてもぐもぐと食べるリディア。その姿は小動物のようで、エッジは思わず吹き出してしまった。


「何笑ってるのよぉ。」
「いや…お前リスみたいな食い方するなぁと思って。」

優しい笑顔でそう言われ、リディアは視線をそらして恥ずかしさを紛らわそうとした。

「こっち向けよ。」
「…やだぁ。」
「こっち向かねぇと、とうもろこし全部食っちまうぞ?」


リディアがゆっくりと視線を合わせると、またもエッジが吹き出した。

「お前とうもろこしに釣られてこっち見ただろ?やっぱりリスみてぇだな~。」
「バ、バカッ!」

からかわれて悔しい気持ちを込めた華奢な拳がポカッとエッジの肩を叩く。

「そんな怒るなよ~。ほんっと可愛いなぁ。」
「…!もう…。」

何をやっても満面の笑みで可愛いと言われてはこれ以上怒れないリディア。頬を赤らめて少し俯いていると、エッジの指がリディアの口元にそっと触れた。

「!」
「ほら、とうもろこしのカスが口のとこに付いてるぜ。」
「ん…どこ?」
「取ってやるからじっとしてろって。」

リディアの口元に付いていたとうもろこしの欠片をぱくりと食べるエッジ。リディアは唇に残る夫の指の乾いた感触の余韻を感じ、思わず唇に手をやった。彼の面倒見の良さに、リディアの胸はドキドキしている。


「ありがと…エッジ。」
「お前はいくつになっても手のかかる奴だな~、俺がいねぇと何にもできねぇのか?」
「…うん。」

(お…?)


てっきりリディアは不機嫌になって反発してくると思っていたエッジは不思議そうな表情になった。

(随分しおらしいじゃねぇか…。)


よく見るとリディアはうっとりとした表情でエッジを見つめている。常に自分のことを気にかけてくれるこの彼の愛情に、何度励まされ救われたことか。

「私…エッジがいないとダメなのかも…。」

ぽそりとそう呟き、身を竦めてエッジの胸に顔を埋めるリディア。愛おしい以外の何でもない妻の行動に、エッジの身体は興奮に支配されていく。

「リディア…。」

愛しの妻の名を呼ぶと、彼女はエッジの胸に身を委ねたまますっと上目遣いでこちらを見つめてきた。暑さも相まって、興奮のあまりエッジは鼻血が出そうになり、思わず鼻を手で覆う。

「エッジ、どうしたの?」
「いや…何でもねぇ。」

冷静沈着でなければならない忍びの長として、何事もないかのように振る舞うエッジ。べた惚れの妻だからこそ、カッコ悪い姿は見せたくない男としてのプライド。そっとリディアの肩を抱き、その翡翠色の瞳をじっと見つめていると、2人の唇は自然に重なった。


「うふふ…エッジったら。」
「何だよ、お前がキスしたそうにしてたからしてやったんだぞ?」

しばしの口づけの後、2人は笑い合い、何となく照れ臭くて会話が途切れた。



「あぁリディア…焼きそば食うか?腹減ってんだろ?」
「うん!私も焼きそば食べたいと思ってたの。ほら、そこの屋台で売ってるのおいしそう。」
「よし、じゃ買いに行くか。」


2人で食べるからと大盛りにしてもらった1人前の焼きそばを堪能するエッジとリディアの前に、数人の私服姿の若手の兵士達が何やら話しているのが目に入った。


「おいキース、今夜のきもだめしジェシカを誘うんだよな?」
「おう!今までデートしてきて手応えあったし、今日こそは俺と付き合ってくれって言うぞ!」
「頑張れよ!できるだけジェシカを驚かせてお前から離れられないようにしてやるから、絶対うまくいくって!」
「ホントか?ありがとな。」


彼らの話を聞いていたリディアは何だかよく分からないといった表情。一方エッジはニヤニヤしながらキースに話しかける。

「キース、頑張れよ。いい報告待ってるぜ!」
「お、お館様!は、はい!」
「お前らもしっかり協力してやれよ?」
「えぇ!お館様は奥方様ときもだめしに参加されるのですよね?」
「あぁ。今までは裏方やってたけど、今年はこいつと楽しませてもらうぜ。」

きもだめしが何なのか知らないリディアは首を傾げるような反応である。

「ねぇ、きもだめしって何なの?」

王妃の質問に、キース達はちらりとエッジの方を見た。

「お前ら、説明してやってくれ。」

「はっ。きもだめしはこの夏祭りで毎年恒例のイベントでして、男女2名がペアになり、明かりのない墓場や林の中に入って道なりに進んで出口を目指すものでございます。ただし特定の場所に用意された札を取って出口に向かわなければなければならないのです。暗い中で男女が2人きりになって行動しますから、それがきっかけで毎年きもだめしの後にはカップルが誕生するんですよ!」

「へぇ、そうなんだぁ。ミストやバロンでもお祭りはあったけど、そんなイベントはなかったわ。」

初めて聞くエブラーナ伝統行事にリディアは興味津々である。

「リディア、きもだめし参加するよな?」
「んー、何か怖そうね…。真っ暗な墓場や林の中を通るんでしょ?」
「大丈夫だって!俺が一緒なんだからよ!」

しっかりと肩を抱く、エッジの大きな手。いつも安心感を与えてくれるその温もりが、リディアの恐怖心を和らげる。

「ん…エッジが一緒なら、大丈夫よね。」

寄り添ってくるリディアに、エッジは部下達の前だというのに口元がみるみる緩んでいく。

「リディア…俺から離れるんじゃねぇぞ?」
「うん!」

熱々の国王夫妻を見守る若手達の視界に、数人の若い女性達の姿が入った。

「!おいキース!」
「あぁ!」

仲間に促され、意中の女性を見つけたキースは素早く彼女に駆け寄る。どうやら自分ときもだめしに参加しようと誘っているようである。

「ねぇエッジ、あの子がジェシカ?」
「あぁ。はは、キースの奴必死じゃねぇか。」
「ふふふ、上手くいくといいわね。」
「そうだな。さて、俺達は先に境内に行くか。そこでじいと若い奴らがきもだめしを取り仕切ってるからよ。」









境内に行くと、そこには家老と数人の若手兵士達がすでにきもだめし参加希望者や国民達に取り囲まれていた。

「お、今年も大人気だな。…俺ずっと裏方やってたからよ、お前と参加できるの、すげぇ楽しみだな。」

いつになく小声で話す夫の表情からは、何やら照れ臭さのようなものが見てとれる。

「そうだったの?…今まで他の女の人、誘ったりしなかったの?」

エッジが自分一筋であることを分かっていながらも、確かめたくなってしまうのが女の性。

「…お前と出会ってからは、他の女なんて興味なかったっつーの。」

リディアの肩を抱くエッジの手に、力がこもる。それを感じたリディアがふっと笑うのを聞いたエッジは、恥ずかしそうにリディアを見た。

「んだよ、野暮なこと言わせんじゃねぇよ。」
「うふふ、ごめんね。…でも、嬉しいな。」


10数年という長い間、自分だけを愛してくれたエッジ。恥ずかしそうに頬をほんのり赤らめる彼の体温を感じながら、リディアは全身が幸せな気持ちで満たされていくのを感じた。


「さあさあ皆の者、今年もきもだめしが始まるぞい!」

掛け声とともに家老の手を叩く音が響き、エッジとリディアははっと我に返る。

「これからいくつか参加上の注意点を説明するゆえ、参加する者達はわしの近くに寄るのじゃ!」

若いカップルを中心に、多くの男女が家老の周りに集まってきた。エッジとリディアはその後ろから耳を傾ける。

「まず1つ目。今年の場所はこの境内の裏じゃ。毎年の事じゃが、暗がりで足元が見えにくいので、怪我には十分気を付けるように。2つ目は、必ず途中にある札を持ち帰ってくるように。札がなければ景品はもらえぬから、怖くても勇気を出して札が置いてある場所を探し当てるのじゃぞ。そして最後に…」

参加者がふむふむと頷いていると…



「…怖気づいたなら、今の内に参加を取りやめることじゃな…ほっほっほ。」

家老の軽いジョークに、笑いが起こる。すると数人の子供たちが家老のそばに駆け寄ってくる。

「ねぇ家老さん、今年も怖いお話聞かせてくれるの?」
「私も聞きたい!」
「おぉもちろんじゃ。ではきもだめしの前に一つ聞かせてやろうかの。」

大人達も毎年恒例の怪談を聞こうと、家老に注目した。咳払いをした家老は少し間を取り、話し始める。

「昔々、エブラーナ大陸ではジェラルダイン家とバークレイ家がそれぞれの領地を治めておった。両家ともに、このエブラーナで皆が平和に仲良く暮らせるように毎日会議を開いて知恵を出し合い、人々の暮らしをより豊かなものにしようと努めておった…」

家老の話に、幼い子供も聞き入っている。

「しかしある日、会議で意見が分かれ、それが原因で間もなく戦争が起こってしもうた。戦争で両家とも多くの怪我人や死人を出し、もうこんなことはやめようとジェラルダイン家は言ったのじゃが、バークレイ家は譲らず、攻撃を続けた…。」


戦、怪我人、死人。月の大戦でルビカンテに城を焼かれた過去が思い起こされ、大人たちは神妙な顔つきになる。

「もうどうしようもないと考えたジェラルダイン家は、一気にバークレイ家の領地へと攻め入り、彼らを捕らえ、2度と争いを起こさせないようにと、当主、その正室や側室、子供全てを公開処刑で打ち首にし、バークレイ家を断絶させた。」
「…!」

戦に敗れし者は根絶やしにされる。命を大事にせよと唱える現国王エッジの治世ではもうあり得ないエブラーナの昔の習慣に、リディアは身震いした。

「その後は争いのない平和な日々が訪れたのじゃが、病気でも何でもなかった元気な者が次々急死する事件が相次ぎ、人々の間では奇妙な噂が立つようになったのじゃ。それは……『公開処刑が行われた場所に現われる火の玉に触れると、呪われて1週間以内に死んでしまう』と…。」


リディアは背筋がゾクリとし、思わずエッジを見つめるが、彼は余裕のある笑顔だった。

「遺族の証言から、亡くなった者達は死ぬ1週間程前に公開処刑がなされた場所を通っており、また死んだ者に同行していた者は確かに火の玉を見たと証言しておったためじゃ。人々はバークレイ家の怨念がジェラルダイン家への復讐を果たそうと、火の玉となってこの世を彷徨っているのだと考えるようになった。そして人々は供養をし、咒を唱えたりして亡きバークレイ家の魂を成仏させようとしたが、その後も元気だった者が急死する事件はなくならなかったという。そしてその公開処刑が行われた場所というのが…」


「これから皆の者がきもだめしを行う、この境内の裏だと言われておる…。」

家老の怪談を聞いていた者達からはどよめきが起こった。

「やだぁ…怖い。」
「お、なんだよビビってんのか?」

身体を縮こませてしがみついてくるリディアが可愛くて、エッジはニヤニヤしながら彼女の肩を抱いてやった。

「ほっほっほ、これできもだめしの準備が整ったようじゃな。さぁて、誰から行くのかの?」


参加しようと集まった者達はすっかり足が竦み、なかなか手を上げようとしない。すると…


「はい!私共が参ります!」

先程必死に意中の女性を誘っていたキースが手を上げた。

「おぉ、そなたらが行くのか。気を付けてな。」
「はい!さぁジェシカ、行こう!」
「えぇ~、やだ怖い…。」
「大丈夫だよ!俺がついてるじゃないか。」

せっかくのチャンスを逃すまいとキースは必死である。ジェシカはしぶしぶ彼の腕にしがみつき、2人は境内の裏へと消えていった。


「あの2人上手くいくかな?キースの奴、ずっとジェシカの事が好きだったらしいからな~。」
「ジェシカも満更じゃなさそうだよなぁ。これは戻ってきたら冷やかし決定だな!」

きもだめし会場担当の若手の兵士達はクスクスと笑いながら仲間の恋愛成就を祈る。

「はっはっは、若い者は楽しみがあっていいもんじゃな。さて、そろそろ次の組の番じゃが、誰が行くかの?」

「では次は僕達が!ほらイリーナ、行くぞ。」
「う、うん…。」

別のカップルが境内の裏へと進んでゆき、その後も時間差で次々とカップルが暗闇の中へと消えていった。

「よしリディア、俺達もそろそろ行くか!」
「…。」
「リディア、どうした?」
「やだ…怖いよ。火の玉が出たらどうするのよぉ…。」

怪談を聞いてすっかり怯えてしまったようである。今にも泣き出しそうなその姿が初々しくてたまらなく可愛らしい。

「ははは、あんなのじいの作り話だって。まさか信じてるのかよ?」
「そ、そんなの分かってるわよ!けど…。」
「大丈夫だって。…怖かったら俺にしっかりくっついてたらいいんだぜ?」


このままきもだめしに臨めば、間違いなくリディアは自分に縋り付いてくるに違いないと確信したエッジは満面の笑み。身を竦めるリディアを優しく抱き寄せる。

「お前そんな怖がりだったのかよ?今までこういう暗いとこ、何度も一緒に通ったじゃねぇか。」

それはそうなのだが、リディアにとっては同じ暗闇の中とは言え、実体のあるモンスターと戦うのとは違う。暗闇に加え、家老の怪談がリディアの恐怖心を煽るが、エッジが一緒ならと腹を決めるリディア。

「うん…じゃあ行く。」
「よし!…じい、次は俺達が行くぜ。」
「それはそれは。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」


笑顔の家老に見送られ、エッジとリディアは境内の裏へと進んでいった。






「うわぁ、真っ暗ね…。足元、気を付けなきゃね。」
「んー、昼間に石ころとか躓きやすいもんは全部よけてあるから大丈夫だぜ。」
「そうなの?」
「おう。こんなのゲームみたいだけどよ、主催するからには皆の安全保障しなきゃなんねーからな。」

エッジの話を聞いてほっとするリディア。しかし…


「きゃあああああっ!」
「おぉう、何だよ?」
「な、何か今気持ち悪いものが顔に飛んできたの…!」

得体の知れないものにすっかり怯え、夫の腕にしがみ付くリディアだが、エッジは笑いが止まらない。

「ははははは、今のは蒟蒻だって。」
「こ、蒟蒻…?」
「きもだめしの定番だぜ。あのぼよぼよした感触が気持ち悪いからな~。」

結婚するまで毎年きもだめし会場の裏方をやっていたエッジは参加者を驚かす小道具を知り尽くしているため、余裕の表情。だがリディアは早くも泣き出しそうである。

「んもう…。エッジ、私のこと置いていかないでよ…?」

暗闇の中で胸元にしがみついてくる妻。背中をさすってやると、しがみつく手にギュッと力が入ってくるのが分かる。

「大丈夫だって。ほら、俺にしっかりくっついてな。」
「う、うん…。」

妻が怯えているのをいいことに、身体を密着させ、肩をしっかりと抱いてやるエッジの手。そしてそこから奥に進んでいくと…


「ひっ!」
「ん?」
「エッジ…今向こうの茂みがガサガサ言ってた…。」

風で茂みが揺れただけでも敏感に感じ取っているリディア。完全に怯えている様子がエッジには可愛くてしょうがない。

「風で揺れただけだって。怖がりだな~。」
「ほ、ほんとに…?」
「本当だって。ほら誰もいねぇじゃねぇか。」

エッジにそう言われて納得したものの、華奢な身体の震えが止まらない。するとリディアは自分の肩を叩かれているのを感じ、エッジがそうしているのかと思いふと肩の方に目をやると…


「いやあぁぁぁぁぁっ!」
「あ?どうした?」

リディアの目の前には、白い着物を纏い、片目がつぶれている長い髪の女性。もちろんきもだめし会場担当の若手兵士が化けているのだが、見たことのない異国のお化けはリディアにとって恐怖以外の何でもない。


「いやああぁ…エッジぃ…。」


夫の胸に力いっぱいしがみ付くリディア。エッジは大好きな妻に抱き付かれてニヤニヤするばかり。

「よしよしリディア、俺がついてるから大丈夫だぞ?しっかりくっついてろよ?」

妻をギュッと抱きしめ、背中を撫で、頬やおでこにちゅ、ちゅとキスをしながらこの上なく優越感に浸るエッジ。愛する女性を守っているのだというプライドが湧いてくる。


抱きしめられ、落ち着きを取り戻してきたリディアはエッジの顔を見上げた。

「ほらリディア、もうさっきのお化けはどっか行ったぞ。」
「…。」
「先に進むか?」

無言で頷くリディア。エッジは彼女の歩調に合わせ、肩や背中をさすりながら進んでいった。


その後、ろくろ首や一つ目小僧、一反木綿やぬらりひょんが現れ、そのたびに王妃の悲鳴が境内の裏で響き渡った…。







「はぁ…もうやだぁ。」

何度も悲鳴をあげたリディアは疲れ切り、その歩き方は何とも弱々しいものだった。

「もう少しで出口だって。ちゃんと札も取ったしよ、最後まで頑張ろうぜ。」

夫に励まされ、何とか歩き続けるリディア。すると…

「!あれは…。」

青白い光が前方にふよふよと浮かんでいる。だんだんこちらへと近づいてきたのでリディアはエッジにしがみ付く。

「お?これ火の玉じゃねーか。」
「火の玉…!エッジ、逃げなきゃ!触ったら呪われて死んじゃうわよ!」

家老の怪談を思い出したリディアはエッジの手を引こうとする。

「何だよ、じいの作り話信じてんのかよ?へ~、本物みてぇじゃねぇか。今年は随分本格的だな。」

自分の目の前に飛んできた火の玉をまじまじと眺めるエッジだが、呪われるという恐怖に駆られたリディアは必死に彼の腕を引っ張り、その場から離れようとする。

「すげぇ、どうやって作ったんだ?」

火の玉を指でツンツンとつつくエッジ。

「エッジ、触っちゃダメっ!!」

泣き叫びながら夫を必死に出口へと引っ張ろうとするリディアだが、彼は面白がって火の玉を触り続けた。すると火の玉はエッジの周りをグルグルと飛び回り、上空へと消えていった。


「そんなに泣くことねぇじゃねぇか~。あれは作りもんだって。」


火の玉に触れたことを何とも思っていないエッジだが、リディアは震えながらその翡翠色の瞳から涙を溢れさせた。

「だって…エッジが…死んじゃったら…うっ…う…。」
「お、おいリディア…。」



肩を震わせて泣きじゃくるリディアをそっと抱きしめ、背中を優しくポンポンと叩く。

「…俺が死んだら嫌か?」
「嫌っ…。」



きもだめしのせいで普段と異なる心理状態とは言え、自分を心配してくれるとは何と愛おしいことか。片想い歴の長かったエッジにしたら、今のこの状況は天にも昇る心地だった。



「ん…そうか。ごめんな、泣かせちまって。ほら、もう出口が見えてっから行こうぜ。」

エッジは親指の腹で、白磁のように滑らかな頬を伝う涙を拭ってやり、そこにそっとキスをした。












「これはお館様と奥方様、お帰りなさいませ!」


出口に着くと、きもだめし会場担当の兵士、そしてエッジ達よりも先に行ったカップル達が談笑していた。

「いや~、楽しかったぜ。裏方で皆をびびらすのもいいけどよ、やっぱりこいつと参加するのが1番だな。」
「それはそれは!…奥方様の悲鳴がこちらまで聞こえてましたから、皆で大丈夫なのかと言っていたんですよ。」


笑いながら話す兵士を前に、そんなに大きな声を出していたのかと、恥ずかしそうに縮こまるリディア。

「だってあんなの初めてだったんだもん…。見たことないお化けばっかりだし。」
「ははは、そうでしょうねぇ。けどそこまで怖がってもらえたのなら私共もやったかいがありましたよ。」



2人が兵士と話していると最後のカップルが出口へと辿り着き、入口からこちらへやって来た家老が全員の無事を確認した。


「うむ、全員無事に帰ってこれたようじゃの。さて、もういい時間じゃ。皆の者、城へ帰るぞ!」









「はぁ…疲れちゃった。」


帰り道、泣いたせいですっかり疲れてしまったリディアを見たエッジはくっと笑う。

「ははは、お前意外と怖がりなんだな~。あーいうの平気だと思ってたけど。」
「だって武器も何も持ってないし、ああやって急に出て来られたらびっくりするじゃない…。」

終始夫に縋り付いていたリディアは不機嫌そうな口調だった。

「そんな怒るなって。俺がいたから大丈夫だっただろ?」
「…知らない。」
「何だよ~、拗ねやがって。」


エッジとリディアは喧嘩しているように見えるが、周りを歩く家老や兵士達はそれを微笑ましそうに眺めている。


「お館様、奥方様。お2人が仲睦まじくて、じいは嬉しゅうございますぞ。」


満面の笑みの家老に、2人は思わず顔を見合わせた。さっきまでご機嫌斜めだったリディアだが、エッジの顔を見つめている内にその表情は柔らかみを増していった。


「リディア…。」
「ん?」
「来年も…夏祭り一緒に行こうな?」
「…うん。」

リディアの指にエッジの骨太の指が優しく絡み合ってきて、思わずキュッとその手を握ると、彼もギュッとリディアの華奢な手を握ってきた。


「エッジ、来年は火の玉触っちゃダメよ?」
「ははは、そうだな。」


唇を少し尖らせ、不満げな表情でこちらを見つめるリディア。少しばかりふざけ過ぎたかと内心反省するエッジはふと、あの火の玉のリアルさを思い出した。


「そういやあの火の玉、どうやって作ったんだ?すげぇ上手くできてたじゃねぇか。」

エッジの問いに、家老や兵士達が何やら不思議そうな表情である。


「はて…?そなたら、そのような物を作っておったのか?」
「いえ…企画書には火の玉の項目はなかったと思いますが…。」

「へ…?」


その場にいた全員の背筋に、何やら寒気のようなものが這い回った。


「…誰か、秘密で火の玉を作っておったのかの…?」


家老の質問に、きもだめし担当の兵士達全員が一斉に首を横に振った。


「お、お館様…火の玉を見たのですか?」
「おぅ…出口の近くで見たぞ。なぁ、リディア?」
「うん…。」

顔色の悪い国王夫妻を前に、全員が顔を見合わせた。


「あぁ…しかし火の玉を見ただけならば問題ございませんでしょうに!呪われるのはそれに触れた者だけですから…。」


慌てて家老がフォローするが、エッジにとっては耳が痛い一言。頭を掻く彼の額からは汗が流れ出す。


「いや、それが…」
「も、もしやお館様…触ったのでございますか!?」
「…おぅ。」


全員が静まり返り、兵士達はどうフォローすべきなのか必死に考えを巡らせるが、言葉が出てこない。


「け、けどよ…あの怖い話って完全に架空の話だろ?毎年じいがきもだめしを盛り上げるために作ってんだしよ。」

「…いつもはそうなのですが、今年はさすがに話のタネに困りまして…昔の資料を元に作ったのです…。」


家老の言葉に、その場にいた全員の顔が青ざめた。

「お、おい…マジかよ…。」
「エッジ…やだぁ…。」





エッジのきもだめしは、ここからが本番である…。

―完―

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2014
07.20

「微睡む」 あとがき

Category: あとがき
エジリディ、執務室でラブラブしちゃいました(笑)しかも見られてるし(笑)


いつもSS書くと長くなってしまいがちな管理人ですが、今回の短編を書いてみて「やればできる!」という自信がつきました♪まぁ、だから何やねんって話ですが…。f^^;今までに思いついた、2人がとにかくいちゃつくだけのストーリー性があまりないSSは今後もUP予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします♡


ではでは☆
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2014
07.20

「微睡む」

ちょっと涼しくなったなぁと思いながらうたた寝していたら浮かんできたラブラブエジリディSSです♪短編ですよ~。







「微睡む」









ある日の昼下がり―――




「エッジ、入るわよ。」


別室で仕事をしていたリディアが、夫のいる執務室のドアをノックした。

(あれ…?)

返事がない。

「エッジ…?」

執務室に入ってみたが、いつも彼が座っている椅子にはその姿がない。

(おかしいな…どこ行ったのかしら?)


空いている執務室の窓からさわさわと心地良い風が舞い込んでくるのに誘われ、ふとそちらを見ると…


「あら、エッジ…。」


昼間の暖かな日差しが差し込む窓のそばにある大きなソファーの上で、すやすやと眠るエッジ。


(最近ずっと遅かったもんね…。)


ここ最近は深夜まで仕事をしていた上に、朝リディアが目を覚ました時は早朝の稽古ですでにエッジの姿はベッドにないという状態が続いていた。

夫が寝ている姿をあまり見ることがないリディアは、彼がこうして気持ち良さそうに眠っているのを見ると、とてもホッとする。国王として、そして忍びの一族の長として多忙な生活。今日のように急ぎの仕事が少ない穏やかな日ぐらいは休息して欲しい、そう思うリディアはエッジの寝顔を見て心が安らぐような気がした。


起こさないように、エッジが眠っているソファーにそっと座るリディア。




ゆっくりと、ゆったりとしたエッジの寝息。


こみ上げてくる愛おしさで、エッジの頬を優しく撫でる。


「ん…。」


何やらムニャムニャと言っているようなそうでないような口の動きに、リディアは思わず笑みをこぼす。


頬を撫でていた手で髪を撫でてやると、心なしか眠っているエッジの口元が緩んだ気がした。

(ふふふ…気持ちいいのかな?)


彼の呼吸に合わせ、ゆったりと髪を撫でるリディア。少し硬めの銀髪は時折リディアの指にちくりとするが、それすら愛おしく感じてしまい、頬にちゅっとキスをした。


(エッジ、寒くないかな…?)


髪を撫でるのをやめ、確か近くに毛布などの仮眠グッズが入った戸棚があったはずだと思ったリディアが立ち上がろうとすると―――


「!?」


急に腕を掴まれ、驚いて振り向くと目の前にはニヤニヤとするエッジの顔。


「どこ行くんだよ?」


エッジは眠そうに、口を閉じたまま大きく息を吐く。

「エッジ…起きてたの?」
「んー、まぁな。」


せっかく眠っていたのに起こしてしまったと申し訳なく思っていると、エッジの大きな手がリディアの細い背中に回された。

「きゃ…!」

エッジの身体に覆い被さる形で抱きしめられ、反射的に高く甘い声が出てしまう。

「へへ…さぁこれでもう逃げられねぇぞ?」
「やだぁ…離してぇ。」

毛布を取りに行こうとしていたリディアは身体をくねらせ、夫の腕の中から抜け出そうとするが、しっかりと抱かれてしまい、もぞもぞと動くしかできない。


「そこにある毛布取りに行くから離してぇ…。エッジ風邪引いちゃうよ。」
「そんなのいらねぇって。」
「?」


掌でリディアの色白の頬を滑るように撫で、エッジが優しい表情で笑いかける。

「こんなにいい掛け布団があるのに、毛布なんか必要ねぇよ。」

ぐいっとエッジの顔の位置まで引き寄せられたリディア。背中を優しく撫でられ、美しい翡翠色の瞳がエッジの深い色の瞳と向かい合っていると、エッジの唇がリディアの唇を柔らかく塞いだ。


「さっきのお礼だぜ?」
「…やだぁ。」


寝ていると思ったからキスをしたのに実は起きていたなんて、リディアは恥ずかしくて頬を赤らめた。


「んだよ、自分からしたくせに。」
「…。」


笑いながら発された言葉にリディアはますます恥ずかしくなり、横たわったままのエッジの肩に顔を埋める。その反応が可愛くて、エッジの手は彼女の髪を優しく撫でた。美しい花のような香りがエッジの鼻から脳へと伝わり、そのまま一面に広がる花園へと旅立てそうな気分になった。


香りをしばし堪能した後、エッジがリディアの長い緑の髪を耳にかけ、首の角度を変えて舌でペロリと耳朶の辺りを舐めると、くすぐったさに華奢な身体はピクンと反応した。

「もう~!」
「そんな牛みたいなこと言うなって。」
「!バカ!」

またしてもからかわれて、顔を上げてエッジを罵倒するが、彼は嬉しそうにニコニコするばかり。

(もう…結局こうしてエッジのペースになっちゃう。)


夫の笑顔を前になす術がないリディアが再び顔を彼の肩に埋めると、エッジの温かい手が彼女の背中や腰をゆったりと撫で始めた。


「ん~、すげぇあったかくて気持ちいい掛け布団だな~。」

嬉しそうな声でそう言いながら、リディアのこめかみ辺りにふんわりと柔らかいキスを浴びせるエッジ。慈しむようなその優しさは、リディアの気持ちを落ち着けてゆく。


ぴったりとくっついたエッジの身体から伝わってくる体温と、背中と腰を緩やかに撫でられる心地良さに、リディアの意識は次第にふわふわと温かい場所を漂い始めた。

「エッジ…あったかいよ。」
「いい敷布団だろ?」

エッジの喩えに思わずクスリと笑ったリディア。こうしていると、身体を離すと何処かへ消えていってしまいそうな、とても温かくて大切なものが、彼と自分の間に存在しているような気がしてくる。そんなリディアの心に浮かんだ思いは―――





もう、離れたくない











*****





「おい、何でそんなとこに突っ立ってるんだ?」
「あぁ、いや…その…お館様に回覧済みの通達を返却しに来たんだが…。」
「???」


執務室の前で立ち往生している家臣に声をかけた見張りの兵士がそっと執務室の中を覗くと…



「あぁ…そうか。別に後で渡せばいいんじゃないのか?」
「そうだな、急ぎじゃないし…。」









執務室の窓辺で、互いの体温を感じながら微睡む2人が目を覚ましたのは、夜の帳が下りた頃のこと…。

―完―
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2014
07.15

ついに…

Category: 日記
皆様こんばんわ☆暑い日が続いていますがいかがお過ごしでしょうか?


先週末に新作SS、「Share with Me」をUPした後…


ついにこのサイトの総拍手数が100を超えましたーーー♡


本当に嬉しいです!FF4サーチにも登録してなかったし、こんな僻地のエジリディサイトに足を運んで読んで下さった皆様に感謝です~♡♡エジリディの妄想が膨らみ続け、半ば勢いで立ち上げてしまい、自己満の世界だからと思ってやっていたのですが、拍手ボタンを押して下さる方がいらっしゃるのはやはり大きな励みです♡(^^)

そして驚いたことに、「Share with Me」をUPし、あとがきをつらつらと書いている最中に拍手を下さった方がいらっしゃったんです!他にも朝の6時とか昼間の2時とかにも拍手ボタンが押されてて、仕事前やその合間に読んで下さってたのでしょうか?どうもありがとうございます!!


というわけで、ついにFF4サーチに登録しました!

(別にそんな大したことちゃうやん、というコメントはお控え下さいませ・笑)


今後も楽しんでいただけるよう、いろんなジャンルのTA後エジリディSSを創作していく所存ですので、皆様どうぞよろしくお願いします(^0^)/

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2014
07.12

「Share with Me」 あとがき

Category: あとがき
あぁ~、またしても長くなってしまいました。読んで下さった方、本当にお疲れ様でした(^^;


今回のSSの発端になったのは私の好きなFF8の挿入歌、「Eyes on Me」の歌詞の後半の一部です。


愛する男性と嬉しいことも辛いことも分け合いたい、そんな一途な想いを綴った歌詞です。

「忍びの妻」で、リディアと夫婦として苦楽を共にすることの大切さを感じ始めたエッジですが、やはりまだエブラーナ国王として、リディアを愛する夫として彼女に辛い思いはさせまいという気持ちが先行してしまう不器用さ。そして何とかして彼に寄り添いたいリディアをこの歌詞のように表現したいと思い、こういう仕上がりになりました。あ、もちろんこのコンセプトが感じ取れない!と思われたなら、それは私の文章のセンスのなさに起因します

今回もご来訪ありがとうございました(^^)ぜひまた遊びに来て下さいね♪

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2014
07.12

「Share with Me」★

TA後エジリディSS第13弾です。エッジを支えたいと思うリディアは…。「忍びの妻」の後日のお話です。


エロありです、ご注意下さい!









「Share with Me」








近いようで、遠い



私はあなたの1番近くにいるはずなのに―――













「エッジ、お帰り!」


厳しくなる冬の寒さの中、1週間の公務から帰ってきたエッジを笑顔で出迎えるリディア。

「おぅ、ただいま。」

そう言ってエッジは家臣と何やら話しながら王の間へと向かって行った。


(あれ…?)


いつもなら抱きしめて笑顔でただいまのチューをしてくれるのに。




リディアが王の間へ行くと、エッジと家老、数人の家臣達が何やらピリピリした雰囲気で話し合っている。


「待てよ、最初と話が違うじゃねぇか!」
「はぁ…。先方が言うには、最初からそんな条件は聞いていないと…。」
「ったく、タチの悪い奴らだな…。とりあえず全員執務室に集合だ。」
「はっ…!」



何やらトラブルのようだ。リディアはその場に取り残され、どうしたらいいか分からなかった。




エッジと結婚し、エブラーナ王妃となったリディア。しかし独り身が長かったエッジはほとんどの執務を自分1人でこなしてきたため、結婚してからもその状態が続き、リディアはあまり責任のない仕事しかしておらず、執政に関わることはなかった。





エッジ達が王の間を去った後、リディアは執務室へと向かい、ドアをノックしようとした。すると…


「冗談じゃねぇよ!ケタが一つ違うじゃねーか!」


エッジの声が響いてきて、リディアはビクッとする。家臣達が宥めながら話を続けた。


「事前に書面で条件は全て提示してあったのでそれを出すよう頼んだのですが、今は他の者が管理しているからここに持ってくることはできないと…。」

「くそッ、完全になめてやがるな…。」

「申し訳ございません!私どもの力が至らず…。次回の交渉の時は、何卒お館様のご同行をお願い申し上げます!」

「あぁ分かった。確かそいつらの拠点はバロンだったよな?セシルにどういう奴らなのか聞いておいた方がよさそうだな…。」

「確かに…。ではセシル陛下に書状をお送りする手配をいたします。」
「ん、頼む。」
「ははっ!では私共はこれにて…。」
「あぁ、ご苦労さん。」


家臣たちが執務室を後にした。すると深いため息をつくエッジ。


(エッジ…。)


1週間の公務を終えて疲れて帰ってきた途端に内政のことでひと騒動。しかし家臣達とて国王であるエッジの判断なしでは動けない。仕方ないことなのだが、上に立つものとしての辛いところである。


様子を見ていたリディアが執務室に入ろうとすると…


「リディア、入れよ。」


こんな時でも自分の気配をちゃんと感じ取っていることに驚くリディア。執務室に入ると、エッジはさっきまで話し合っていた一件の書類らしきものに目を通している。


「あの、エッジ…。」
「ん?」

リディアは何から話せばいいのか分からず、言葉に詰まってしまう。

「何だ、どうかしたのか?」

書類に目を向けたまま、エッジはリディアの方を見ようとしない。疲れていて機嫌が悪いのだろう。元々口の悪いエッジだが、今日はそれに輪をかけるように刺々しいものを感じ、リディアは萎縮してしまう。しかし思い切って笑顔で話しかける。

「ねぇ、お茶でも飲んで休憩しない?おいしいお菓子あるのよ。」

しかしエッジは顔を顰め、俯いた。

「悪りぃ、リディア。今それどころじゃねぇんだ。後にしてくれるか?」

低い声で発されるエッジの言葉にリディアはビクッとした。

「…そう、ごめんなさい。」

いつもなら嬉しそうに話に乗るか、忙しくて無理な場合は詫びながら頬にキスの一つでもしてくれるのに。

「…ねぇ、何か私にできることない?エッジ疲れてるでしょう?」

リディアが申し出るが、エッジの視線は書類に置かれたままだ。

「…いや、大丈夫だ。お前こそ仕事終わったのかよ?」
「あ、ううん…。」
「ならそっちを先にやれ。」
「…うん。」

リディアはいたたまれなくなり、執務室を後にした。


(エッジ…。)


執政のことで大変そうな夫を目の当たりにしたリディア。故郷のミスト復興のために10年近く働き、年を重ねて自立した大人の女性となったリディアにしたら、彼のために何もできない今の状況はもどかしい以外の何でもなかった。



「はぁ…とりあえず自分の仕事を終わらせなきゃね。」







そして夕食の時間。





「あ、エッジ。」
「リディア。」

王族用のダイニングルームにいたエッジはさっきと違い、穏やかな表情だった。リディアはホッとし、思わずエッジに駆け寄る。

「エッジ、さっきの仕事落ち着いたの?」
「んー、まぁな。」
「そうなのね、良かった。」

リディアの笑顔を見たエッジは、表情が緩む。


「リディア…さっきはすまねぇ。お前がせっかく茶でも飲もうって言ってくれたのによ…。」
「ううん、いいの。私の方こそ忙しい時にごめんね。」
「いや…俺が悪かった。」

エッジは侍女や家臣達のいる前だというのに、すっと口布を下ろしてリディアを抱き寄せて頬にちゅっとした。

「ただいまのチューしてなかったよな?ごめんな。」

恥ずかしがるリディアを見てニヤニヤするエッジ。家臣達はもう見慣れたもので、微笑ましそうにクスクス笑っていた。


「さ、飯食おうぜ。腹減ったぁ~!」
「もう、バカ。」











夕食後、エッジは再び執務室で自分の留守中に提出されていた報告書をチェックしていた。リディアは様子を伺いながら執務室に入る。



「ん、リディア。」
「ねぇ、エッジ…。」
「あ?」


「さっき皆と話してたのって…何の事だったの?」

心配そうにじっとエッジを見つめる翡翠色の瞳。エッジは何となく恥ずかしくなってしまった。

「ん…な、何だよそんな顔して。」
「エッジ…私に何かできることはないの?」

彼女の美しい瞳は潤み、唇は何か言いたげに微かに動いている。どう答えようか思案していると…

「エッジが疲れてるのに、何もできないのは嫌なの…。」


色白で華奢な手が、寒さと仕事で疲れきったエッジの手を包み込む。ほんわりと伝わってくる温もりが心地良くて、精悍な忍びの一族の長の表情が緩む。

「あぁ、リディア…お前は何も心配しなくていい。俺はお前がこうしてそばにいてくれるだけで疲れは吹き飛んじまうからな。」

昔と変わらない明るい笑顔を見せるエッジだが、リディアは彼が疲れ切って無理をしているのを感じていた。

「嘘ばっかり…。」
「あ?」
「だってさっき、あんなに怖い顔してたじゃない…。」

エッジは言い返せず、頭を掻く。


「ん…悪りぃ。」
「…謝ることないじゃない。」
「…。」

「疲れてるんなら、そう言ってよ…。」

俯きながら小さな声で自分を気遣うリディア。だがエッジは嬉しいながらも、愛する妻の前では絶対弱音を吐くわけにいかないというプライドがある。



「リディア…ありがとな。今日はもう早めに仕事切り上げるからよ、後で疲れに効くツボでも押してくれねぇか?お前の指圧、すげぇ気持ちいいからな~。」

「…うん。」

「そういや、今日の仕事は終わったのか?」
「終わってるよ。」
「ん、そうか。ならもう風呂入ってゆっくりしろよ。」

そっと抱き寄せられたリディアの唇に、エッジのそれがそっと重なった。

「…1週間ぶりだから、覚悟しとけよ?」
「もう、エッジ…。」
「へへへ…さぁ、風呂入って来いよ。」








その後1時間ばかり仕事をし、エッジは執務室を出た。

「さーて、風呂入って来るか…。」

公務で他国に行くとシャワーしかないことが多いため、1週間ぶりに我が家の風呂を堪能しようと鼻歌混じりで服を脱ぎ、浴室へ入った。湯船に入っている薬草の香りが鼻を掠め、思わず深呼吸する。

「はぁ~、この香りがたまんねぇんだよな~。」

檜の風呂椅子に座って髪と身体を洗うと、ざぶんと豪快に湯船に入る。

「ふぅ~…極楽だぜ。」

湯船の淵にもたれ、目を閉じる。忙しい生活の中でリラックスできる、貴重な時間である。





『だってさっき、あんなに怖い顔してたじゃない…』




しゅんとした顔でリディアが口にした言葉を思い出し、ふーとため息をつく。


(そりゃあん時はすげぇイライラしてたけど…俺、そんなに険悪だったのか…。)


いつもは自分を尻に敷く妻に怖いと言われるような姿を見せてしまった。彼女の顔を見れば元気になれるなど、嘘もいいところである。


(小せぇなぁ、俺…。)


リディアには心配をかけまいと努力してきたエッジだが、結婚して以来、徐々にボロが出てきてるように思えて決まりが悪い。

「ここは一発、男らしく決めてやるか…。」

1週間ぶりにこの腕の中でリディアを乱れさせてやろうと、ニヤリとするエッジ。体内の欲求に満ちたどす黒い血がドクドクと脈打つ。



風呂から上がり、水分補給をしながら急ぎ足で寝室に向かうエッジ。こうしている間も自身がリディアを求めているのが分かる。

(あぁ~、もうすぐだ…!!)

ゾクゾクと欲求を高ぶらせながら寝室に着くと、リディアがベッドの上に座って待っていた。エッジの掛け布団が上げられ、すぐに横になれるように準備されている。

「お館様、1週間のお仕事お疲れ様です。どうぞ横になられませ。お疲れに効くツボを押して差し上げまする。」


ニッコリと笑い、エブラーナ言葉でエッジを迎えるリディア。可憐な花のようなその笑顔に、忍びの一族の長の精悍な顔はたちまち緩む。

「おぉ~リディア、すまぬなぁ。某は嬉しいぞ。」

エブラーナ言葉で返答し、ぴょんぴょんと小さく跳ねながらベッドへと向かってくるエッジを見たリディアはクスクスと笑う。

「もう~、子供みたいね。」
「お前からの誘いが嬉しくねぇわけねぇだろ?」

ベッドに飛び乗ったエッジは早速リディアに抱きつき、すかさず頬にちゅっとする。彼女の頬の柔らかな感触と温もりを感じ、ますます気持ちが昂ぶる。

「柔らかいなぁ~、食べちゃうぞ~。」
「バカ。ほら、横になってよ。」
「んー…。」

曖昧な返事をし、リディアと頬を擦り合わせながら、徐々に体重を彼女にかけてベッドへと沈む。

「えっ、ちょっとエッジ…待ってよぉ!」
「ダメだ、待てねぇ。我慢の限界だ。」

リディアの寝間着の浴衣の襟元をぐっと広げ、首筋から鎖骨にかけて唇を這わせる。

「やぁっ…エッジお願い…待ってよぉ…。」

夫の愛撫に反応し、身体をピクピクとさせながら必死に訴えるリディアだが、エッジはお構いなしに行為を続ける。

「ねぇ、エッジ…やめてぇ…。」
「1週間も我慢したんだぞ?もうやめられねぇよ…。」

エッジの唇は鎖骨から下へと下がってゆき、リディアの胸のふくらみの上部を食み始めた。

「くくっ…柔らかいな…。」
「あっ…エッジ…やめて…!」

必死に身体をくねらせてエッジの愛撫から逃れようとするリディア。脚をバタバタとさせて胸を腕で隠し、首を左右に振る。

「…何そんなに嫌がってんだよ?」

さすがに様子が変だと思い、愛撫をやめ、リディアと視線を合わせる。その表情はご馳走を目の前にお預けを食らった不機嫌な獣のようで、思わずリディアは身震いしてしまう。

「ご、ごめんねエッジ…。あの…。」

そう言うリディアを見つめるエッジはどこか苛立った表情。疲れている上に、行為を中断されるのは男にとって、この上なく自尊心が傷つくのだから。

「何だよ?もしかして月のもんか?」
「ううん、違うの!…エッジに話があるの。」

リディアがエッジの表情に怯えながらも何かを必死に訴えようとしているのを見て、エッジは猛っていた自分を落ち着けようと身体を起こし、頭を掻きながらふーと息を吐いた。

「…悪りぃ、リディア。何だ?」

リディアも身体を起こし、乱れた寝間着の浴衣を直しながらエッジの表情が落ち着いてきたのを見計らって話し出す。



「あのね…私…エッジの仕事をもっと手伝いたいの。」
「何言ってんだよ、もう手伝ってくれてるじゃねぇか。」

「…もっとエッジが楽になれるように、執政関係のことにも関わりたいの。」



思いがけないリディアからの申し出に、エッジは咄嗟に言葉が出なかった。

「バ、バカなこと言うんじゃねぇ!そんなもんに関わったらお前の身体がいくつあっても足りねぇぞ?」

「…ダメ?」
「ダメだ。夜遅くまでの会議もあるし、何日間もよその国に行ったり、お前1人で判断しなきゃなんねぇ場面も出てくるぞ?」

「…全部が無理でも、今よりもっとエッジの力になれることがしたいの。」


真っ直ぐに自分を見つめるリディアの言葉で、どうやら本気らしいということを感じたエッジ。執政に関わるのは非常にタフであるため、リディアの身体のことを考えると何とかして諦めさせたい。しかし先日のように高圧的に出ればまた喧嘩になってしまうだろう。



「あー…リディア。あの…。」



頭をフル回転させてどう返すべきかを思案するエッジだが、仕事で疲れ切った頭は思うように働いてくれない。



言葉につまり、時間だけが過ぎてゆく。





自分をじっと見つめる、翡翠色の瞳。





何とかして思い留まらせなければ。
そうしないと、大変な仕事でリディアが身体を悪くしてしまう。




俺はこいつを守ってやると約束したのだから―――










「私…エッジが辛そうな顔をしてるのに何もできないのは嫌なの。お人形みたいにニコニコ笑って座ってるだけの王妃になりたくないの。」

「…別に今だって仕事してるんだしよ、お人形みたいってことはねぇだろ。」
「してるって言っても、補助的な仕事ばっかりだもん…。今日だって、エッジが留守の間に私が何かできていればあんなに大騒ぎにならなくて済んだんじゃないの?」

「…ん、それはそうかもしれねぇ。けどなリディア、執政ってのはこの国の全てを背負うんだ。すげぇ責任が重いんだぞ?俺はそのせいで寝れなかったり、辛くて辛くて仕方ないこともあったぜ?」







一国を背負うということ―――







内政、外交、家臣、国民。どれも疎かにすることは許されない。







出会った頃は年齢の割に落ち着きがなく、お調子者の王子だったエッジが落ち着いた大人の振る舞いをするようになったのは、紛れもなく一国を背負う国王としての立場と責任があってこそ。本質的な彼は昔と変わらないものの、リディアは国王としての彼の姿を見るたびに、自分との距離があるのを感じられずにはいられなかった。



「私…エッジのそばにいたいの。」
「…いるじゃねぇか。」
「そういう意味じゃなくって…!」


じっとこちらを見つめていた翡翠色の瞳から、涙が零れ出した。

「エッジがね…すごく遠いの。」
「…どういう意味だよ?」

ぐずり出し、次の言葉が出てこないリディアをそっと抱きしめると、甘く優しい彼女の香りがエッジの鼻を掠める。









いつでもこうやって、私のことを受け止めてくれるあなた




大好き



だから嬉しいことだけじゃなくて、辛いことも分けてほしいの―――








リディアの背中を優しくぽんぽんと叩くエッジ。俺はいつでもお前の話を聞いてやるよ、というエッジの思いが伝わってくる。







「…エッジはね、私の旦那さんで、1番近い人のはずなのに、私はエッジが大変な時に助けてあげられなくて、すごく距離を感じちゃうの。」
「俺はもう十分助けてもらってるぜ?結婚するまでは1人でやってたことをお前に助けてもらってるし、すげぇ嬉しいぞ。」

「助けてないよ…。」
「助かってるって。」
「助けてない!」



譲らないリディアを抱きしめながら、エッジは顔を顰める。

「…俺が助かってるって言ってるのに、お前は信じてくれねぇのか?」
「えっ…?」

ゆっくりとエッジと視線を合わせると、彼の顔は真面目だけれどどこか悲しそうに見えた。

「俺は大好きなお前とこうして一緒に過ごせて、仕事手伝ってもらえて、すげぇ楽になったし幸せだし感謝してる。だからこれ以上の事は望んでねぇ。…寧ろ幸せ過ぎて怖ぇぐらいなんだ。」

「…エッジ、嘘ばっかり。」
「なっ…嘘じゃねぇぞ!」

「辛いこと全部1人で背負ってるじゃない…。少しぐらい私に分けてよ。」

「…俺はお前に辛い思いはさせたくない。」
「私だってエッジに辛い思いしてほしくないもん!」


ヘトヘトの頭で紡ぎ出した返答だからなのか、何を言っても言い返されてしまう。エッジの思考回路はもう限界に達し、首を垂れてしまった。

「…リディア、悪りぃけどその話はまた明日にしてくれねぇか?俺、もう疲れちまったよ…。」

「…分かったわ。明日必ず話してね?」
「おぅ。」

エッジがベッドに横になるとリディアは掛け布団をかけてやり、自分も布団の中に入った。


リディアの華奢な手が、エッジの手をキュッと握る。

「リディア…?」
「疲れに効くツボ押してって言ってたじゃない。」
「…あぁ、じゃあ頼む。」


リディアはエッジの掌の真ん中あたりにある、疲労回復のツボをぐっと押した。

「くっ…!!」

あまりの刺激に顔を顰めるエッジ。相当疲れが溜まっているのだ。


(この話するの、今夜じゃなくても良かったかな…余計に疲れさせちゃったよね…。)


善は急げだと思ったものの、余計にエッジを疲れさせてしまい、罪悪感を感じるリディア。

「はぁ…リディア、反対側も押してくれよ。」
「うん。」

身体をリディアの方に向けたエッジが手を差し出すと、反対側の掌のツボがぐっと押された。

「うぉっ…!!」

刺激に眉をしかめ、上半身を捩るエッジ。面白いような可愛らしいようなその姿に、リディアは思わず笑みをこぼす。

「ふふふ…効いてる?」
「…おぅ。」

リディアが掌への刺激をやめると、エッジは一気に脱力した。

「ふはぁ~、すげぇ効いたぞ。ありがとな、リディア。」

リディアの頬にお礼のチューをした後は、彼女の柔らかな緑の髪を撫でるエッジ。




こうしていると自分達は仲良し夫婦なのに、昼間は疎外感を感じなければならない現実。大好きなエッジを助けたい一心だったのに、結果的に彼を困らせてしまった。

(これって、私のわがままなのかしら…。)



「…リディア。」

自分の申し出が正しかったのかどうかとリディアが思案していたら、エッジの深い色の瞳がこちらを見つめていた。

「…うん?」
「確認したいんだけどよ、お前はどんなに大変なことがあっても執政に関わりたいんだな?」

突然の問いかけに、リディアは言葉に詰まる。

「もし単なる思いつきで言ってるんなら、俺は絶対許さねぇぞ。」

エッジにしては珍しく強い語気に、リディアはビクッとする。


「あ…えと…。」


自分をまっすぐ見つめるエッジの精悍な切れ長の目。全てを見抜かれてしまいそうな気がして、鼓動が早まる。

「…どうなんだよ?」

迷いを感じ取ったかのように問い詰めてくるエッジ。リディアの手が微かに震え出す。

「…思いつきなんかじゃ、ないよ…。」

少し俯き、視線をそらすと、エッジの大きな手がぐいっとリディアの顔を上げさせる。

「俺の目を見て言え。じゃねぇと信用しねぇぞ?」




国王としての真剣な表情。







ついて行きたい
助けたい




自分はこの人の妻だと胸を張って言いたい





「…思いつきじゃないよ。ずっともどかしくて、何とかしてエッジを助けたいって思ってたんだもの。」

エッジはじっとリディアを見つめている。






どれほどの時間が経ったか、もう分からない。次に彼の口から出てくるのは一体どんな言葉なのだろうか。リディアはそればかりを考え、布団の中でドキドキする胸に手を当てる。

「…そうか、分かった。」

「分かったって…何が?」
「お前の意思はよく分かったってことだ。」

ぐっと抱き寄せられる、リディアの華奢な身体。

「エッジ…じゃあ…」
「早まるんじゃねぇ。」

自分の言葉に対して間髪入れずに反応する低い声が耳に響き、一瞬寒気のようなものを感じ、小さく身震いする。




エッジの腕の中は、とっても温かくて、1番落ち着ける場所。



でも、どうして?


どうして今夜はこんなにさみしい気持ちになるの?







エッジと自分の間にある壁。
結婚する前からずっとお互いに一番近い存在だったはずなのに。





エッジにぎゅっとしがみつくリディア。

「…何だよ、この甘えん坊が。」




「エッジ、さみしいよ…。」
「あ?」

エッジは自分が疲れていてリディアの言うことが理解できないのかそうでないのか判断できず、どう反応すべきか思案していると…


「今はこうして一緒にいてあったかいのに、また明日になればエッジは大変なことを抱えて1人で辛い思いするんでしょ?そんな姿見てたら私も辛いし、さみしいの…。」

「俺は辛くなんかない。」
「…さっき辛いって言ったじゃない。」

「それはお前と結婚する前のことだぞ。」







どうあっても自分はエッジに近付くことはできないのか?どうすれば彼を楽にしてやれるのかと考えていると…


「…エッジ?」

夫は寝息を立てていた。

(エッジ、寝ちゃった…。)


リディアはしがみついていた腕を緩め、エッジから身体を離す。疲れているのだから休ませてやらなければ、そう思って彼の掛布団を直し、ベッドサイドの明かりを消して自分の布団をかぶる。寝ようと目を閉じるが、ついさっきまで感情が高ぶっていたためか、目が冴えてしまい眠れない。寝返りを打ちたいが、音や気配に敏感な夫を起こしては悪いと思い、じっとするリディア。


(どうしよう…寝れないや。)




月の明かりもない暗闇の中で、ただ時間だけが過ぎてゆく。





聞こえてくる、規則的な夫の寝息。





音を立てないように寝返りを打ち、身体を彼の方に向ける。


(エッジが私よりも先に寝るのを見たの、初めてかも…。)

共に旅をしていた時からエッジはリディアより早く起き、夜寝るのは遅かった。結婚した今でも朝は稽古があるから早く起き、夜はリディアが寝付くまで起きててくれる。

(私、本当エッジに甘えてばっかり…。)


ふーとため息をつくリディア。すると…


「…まだ起きてんのか?」
「はっ、エッジ!…起こしてごめん。」

眠そうに目をこすったかと思うと、エッジの手はリディアの背中に伸びてきた。

「…っとにお前は手のかかる奴だなぁ…。」
「ごめん、エッジ…。」

リディアを自分の方に抱き寄せ、寝かしつけようと背中を撫でるエッジ。

「…ありがとう。ごめんね。」

エッジに身を寄せ、彼の寝間着の襟元にきゅっとしがみつくリディア。

自分が何をしても優しく包み込んでくれる夫。その分彼は自分の気持ちを抑えて我慢してくれているというのに。今だって寝ていたいに違いない。


「エッジ…寝ていいよ。」
「…お前が言うんじゃねぇよ。」
「私が寝かせてあげるから…。」
「そんな事されたら余計に寝れねぇっつーの。」

それどういう意味よ、と怪訝な顔をするリディア。

「ほれ、いい子はねんねしな。」
「もうっ…子供みたいに言わないで。」

リディアが顔を背けると、エッジは身体を起こし、彼女を見下ろした。

「本当に言うこと聞かねぇ奴だな。」

そう言うとエッジはリディアに覆いかぶさり、唇を重ねてきた。

「ん…。」

暗闇の中でほとんど何も見えず、その分いつもよりも触覚が敏感になっているのか、その柔らかさと温かさは特別な気がした。エッジの体温を感じながらすごくホッとするその感触に酔いしれ、リディアは全身がとろりと溶けそうだった。手を伸ばし、触覚を頼りに自然にエッジの首の後ろに腕が回ると、それに反応して掛け布団を片脚で蹴ってベッドの端に寄せてリディアを組み敷くエッジ。

「エッジ…?」
「…今度はやめねぇからな。」

リディアは耳元にエッジの熱い吐息がかかるのを感じた。耳朶が柔らかく噛まれたかと思うと、うっすら湿気を帯びた唇が首筋を這いながらそこを食んでいる。

「んっ…やだ…はぁっ…。」

くすぐったくて、身体を捩るリディア。寝間着の浴衣の襟元が大きく広げられるのを感じた直後、唇は鎖骨から胸元へと移動しながらきめ細かいリディアの肌を食む。エッジの表情も動きもよく見えない緊張の中、決して乱暴にせず、じっくりと優しくやってくるその刺激でリディアの身体はじわりと熱くなり、奥が疼く。

「いやぁっ…はぁん…。」

エッジの大きな手がリディアの乳房を揉みしだく。暗闇の中で微かに聞こえてくる息遣いと、汗ばんで熱のこもったその手からは、彼がリディアと触れ合う事を渇望していることが伝わってくる。


結婚するまでの10数年間、1週間ぐらい会えないのは珍しくなかったというのに、結婚してからはそれすら長く長く感じられてしまう。感じる部分を刺激され、どんどん押し寄せる快感に身を任せる。

「エッジ…気持ちいい…。」

そう言うと乳房の先端に息吹く蕾にエッジの熱い吐息がかかるのを感じ、ぞくぞくするような高揚感に駆られ、ますます身体の奥が疼いた。

「あッ…やんっ…。」

さっきまで胸元で感じていた感触が蕾を包み込み、熱く濡れた舌がねっとりとそこを舐め回す。先で弾くようにつつかれた蕾はぷくっと立ち上がり、キュッと吸い上げられた。

「あんっ!」

快感に耐えられず、高い喘ぎ声で応えるリディア。そうすると乳房が優しくさすられ、悶えるその姿を楽しむような、くくっという笑い声らしきものが聞こえてきた。

「もう…何笑ってるのよぉ。」
「お、聞こえてたのか。お前は鈍いから聞こえねぇと思ってたぜ。」


自分を見下す夫の発言に、思わず手で彼を叩こうとするが、夜の闇の中では空振りするだけだった。

「ははは、何やってんだよ。」
「…エッジ、見えてるの?」
「おぅ、見えてっぞ。忍びは暗い中でも大丈夫なように、目も発達してんだぜ?」
「…!」

ほとんど何も見えない緊張感を味わっていたのは自分だけだったなんて。何においても自分よりも優位に立つこの人を助けるなんて無理なのだろうかと思いしょぼんとしていると、もう片方の蕾が吸われているのを感じた。

「あっ…やぁん、エッジ…!」
「くくくっ…ずいぶん感じてるじゃねぇか。」

硬く立ち上がる蕾を指で摘まれ、嬌声を上げるとそれを楽しむかのようにまたリディアの乳房を揉みしだくエッジの手。

「んぁっ、やだぁっ…エッジのバカぁ…。」

身体をリディアに密着させたエッジは、脚の間でいきり立って熱を孕む自身を彼女の太腿になすりつけた。

「いやっ…。」

寝間着越しでも分かるぐらいのその存在感に、思わずピクンと反応するリディア。するとエッジの指がショーツ越しにリディアの秘所を弄る。

「お前の方はどうなんだ?」
「そんな事、言わせないで…。」

リディアの寝間着の浴衣の腰紐が解かれ、あっという間に取り払われると、ごそごそと衣擦れの音が聞こえてきた。するとリディアは臍のあたりにエッジの熱い吐息がかかるのを感じた。それはさっきよりもずっと熱く、速いペースの息遣い。御馳走が目の前で余裕がない餓えた猛獣を思わせる。


リディアも先程からの愛撫で、秘所の奥から温かな泉がとぷとぷと湧き出てきており、もういつでもエッジを受け入れられる状態にあった。エッジのうっすら汗ばんだ手がリディアの腰の辺りに触れたかと思うと、その手はショーツの両脇にかけられた。

「リディア…お前のここ、どうなってるんだよ?」


「…聞かないで、自分で確かめて…。」

エッジの手がリディアとの結合を阻んでいた薄布をずり下ろすと程よく太く、器用な指が内太腿に滑り込む。その指が露わになった小さな茂みをかき分けて秘所へと辿り着くと、空いた方の手は薄布を爪先までずらしていく。


秘所に辿り着いた指が花弁をくちゅ、と開いて熱を帯びたそこへ入り込んで少し内部を刺激すると、とろとろと蜜が溢れ出てきた。

「すげぇ…。」

低く小さな声でそう呟くと、リディアの脚を広げ、彼女の腰を掴む。潤いをたたえる花弁に熱く張り詰めた自身の先端を触れさせ、そのまま前へと腰を進めて柔らかなそこを押し広げた。

「あぁんっ…。」

圧倒的な存在感を放つ熱いそれは、1週間ぶりの結合で何となく痛みを感じさせたが、どんどん自分の奥に向かってくる内に快感へと変わり、リディアは甘く切なげな声を上げる。

「うぁ…。」

最奥に辿り着いたエッジは、よく潤った熱い内壁にぐっと纏わり付かれる快感に浸り、ため息のような声を漏らす。今夜はもうありつけないと思ったこの蕩けるような感覚に、悦びはひとしおだった。


「リディア…すげぇ気持ちいいぜ。」
「私もよ…すごく気持ちいい…。」


繋がった悦びを共有し、エッジの手がリディアの手を握って指を絡めると、熱い吐息を発し合う2人の唇が重なり合った。


夜の闇の中で何度も響く淫靡な口づけの音は、部屋の空気の色すら変えてしまいそうだった。エッジの欲求は高まり、もう止められないと言わんばかりに腰を揺らし始めた。

「んっ…んんっ、んっ…。」

唇が塞がれたまま動かれ、リディアの声はエッジの口の中でくぐもる。せり上がってくる久しぶりの快感に理性はどんどん消えてゆき、ただエッジから与えられる刺激に身を委ねようとする本能が強くなってくる。


快感に眉を寄せ、息を切らせながらエッジの腰に脚を絡めると律動は早くなり、大きな快楽の波がどんどん押し寄せてきた。


「あっ…ぁ…エッ…ジ、すごく感じちゃうっ…!」


その言葉通り、エッジへの締め付けがぐっと強まってきた。もっと深く来て欲しいと訴えるように、リディアの腰は自然とエッジの律動に合わせて彼の身体に擦り付けるように動き、内壁が彼を呑み込もうとひくひくと波打つ。


自分を求める動作に煽られたエッジの律動は止まらず、熱い存在はリディアの奥を激しく行き来して突き上げ、その刺激が脳髄に響き、意識は遠のいていく。

「あぁっ…あっ…はぁッ…。」

身体を揺らされながら必死に意識を保ち、暗闇の中で微かに見える夫の輪郭を頼りに、悶えながら彼の顔を見つめるリディア。エッジの逞しい腕が自分の身体をしっかりと抱きしめるのを感じると、リディアは手探りで彼の脇腹から手を滑らせて背中へと腕を回し、ぎゅっとしがみつく。


その動作と連動するようにエッジが擦れ合う熱と蜜が混じり合う中を激しく律動すると、内壁の不規則な収縮が繰り返された。

「あっ…あぁぁ…ッ!!」

リディアが達し、身体をビクビクと痙攣させるのを感じると、自身を締め上げられたエッジもそのまま達し、ぶるりと震えながら抑えていた欲求を吐き出した―――










「ふぅ…はぁ…。」



2人は達した時の体勢のまま、呼吸を整えていた。


エッジがベッドサイドのランプをつけると、気怠そうな表情でこちらを見つめるリディア。次第に彼女はホッとしたように微笑んだ。

「そんな可愛い顔すんじゃねぇよ~。」
「だって暗くてエッジの顔が見れなかったんだもん…。」
「へへへ…俺の顔、見たかったのか?」
「うん…ふふふ。」


笑い合い、口づけを交わした2人はまたしっかりと抱き合う。

「すごく気持ち良かった…。久しぶりで嬉しかったよ。」
「俺もすげぇ気持ち良かったぜ…。」


互いに満足していることを確かめ合うと、ちゅ、ちゅ、と軽い口づけを何度も交わす。






*****







「んー…眠い…。」

横たわり、事後の疲れに襲われるエッジがそう言うと、リディアは絶頂の余韻で程よく眠気を感じながら身体を起こし、掛け布団をかけてやった。

「疲れてるのに張り切るからじゃない…。」
「お前が寝れないって言うからじゃねぇか。」
「え…?」

「…ちょっとは眠くなっただろ?」
「…!」


リディアが言葉に詰まっていると、エッジはニヤリと笑った。

「ま、俺がしたくなったってのもあったけどな。」
「…それが1番の理由でしょ?」

リディアは恥ずかしそうに顔を背けたが、疲れて寝ているのを起こされ、眠れない自分のために体力を使わせてしまい、夫に申し訳ないという気持ちになっていた。


そっぽを向いていると、エッジの大きな手がリディアの髪を撫でてきた。

「こっち向けよ。」

黙ってエッジの方を向くと、彼はとても優しい笑顔だった。

「エッジ…。」

何も言わずにそのまま抱きしめられ、エッジの心地よい体温を全身で感じていると、彼の手はリディアの華奢な背中を優しくさする。

(気持ちいい…。)

エッジの首筋に顔を埋め、細い腕を彼の背中に回して同じように撫でると、彼がふっと笑う声が聞こえた。

「気持ちいい?」
「おぅ。…なぁ、リディア。」
「うん?」

「俺はな、仕事がどんなに大変でも夜こうしてお前を抱けばすげぇ元気になれるんだ。そうすりゃ何があったって乗り切れるし、大丈夫だ。だからお前は何も心配しなくていいんだぞ?」


自分を案ずるリディアを安心させようと、穏やかな声で発された言葉。


妻を説き伏せるのに、これ以上の言葉はないと思ったエッジが見たのは…


「何だよ、その顔は…。」


夫が辛いことをこれからも1人で我慢しようとしているのを見抜き、唇をぐっと結び、今にも零れ落ちそうな大粒の涙をいっぱいためた、翡翠色の瞳。

「うっ…うっ…。」

細い肩を震わせるリディアを見て、エッジは顔を顰める。自分がこの女性に惚れたきっかけでもあるその涙は、エッジの最大の弱点。


「少しでいいの…。」
「あ?」



「エッジの辛いこと…少しでいいから…分けて…。」



涙を流し、声を震わせながら訴える妻に、最早説き伏せるための言葉は浮かんでこなかった。







「…分かったよ。」

震えていた色白の肩は落ち着き、まだ頬に涙が残っているリディアの表情がみるみる晴れていった。

「エッジ…嬉しい…ありがとう!」

ぎゅっと夫に抱きつき、喜びを露わにするリディア。エッジは妻の背中を抱きながら精悍な眉を下げ、呆れ顔でふーと息をつく。

「お前は言い出したら絶対聞かねぇなぁ…。」
「だって…エッジが無理するんだもん。」
「してねぇよ。…それより、本当に覚悟はできてるんだな?いくらお前が相手でも、俺は執政の事となったら容赦しねぇぞ?それだけ責任が重いんだからな。」

「うん…エッジを助けられるんだもん、大丈夫!」



これでやっと、この人の妻だと胸を張って言えるようになる―――





「うふふ、エッジのほっぺた赤くなってる~。」
「…お前がそんな可愛い顔見せるからだろうが。」

花のような笑顔の妻を見て頬を赤くして視線を逸らすエッジ。何をしても愛おしいと思ってしまう妻と共に執政関係の仕事ができるのなら、もう少し穏やかな気持ちでいられるかもしれない。それも悪くないなと思っていると―――



ちゅっ。



「お館様、明日よりわたくしに執政の事をご指導下さいませ。」

にっこり笑うリディアからの口づけに、エッジの全身が熱くなった。


「…もう寝ようと思ってたのによ~!!」
「エッジ…!?きゃあぁっ!」




興奮したエッジは、第2ラウンドに突入した。














(俺…こいつには一生勝てねぇんだろうな…。)


2度の絶頂を迎え、自分の腕の中ですっと眠りに落ちた妻の安らかな寝顔を見たエッジは、ふーと息をつく。威厳のある国王となったエッジだったが、リディアにせがまれては折れるしかなかったのだから。


(でもありがとな、リディア…。)


照れ臭くて言えなかった、自分を案じてくれる妻への感謝の言葉を心の中で呟き、柔らかな彼女の髪を撫でながら自身も眠りに落ちてゆくエッジだった。



―完―

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2014
07.05

夏になると…

Category: 日記
皆様こんばんわ☆昨日と一昨日、夕方に私のエジリディSSに拍手下さった方、ありがとうございます(^^)まだFF4サーチに登録していないから、ここまで辿り着くの大変だったでしょうに…しかも両方ともR-18のSSだったので、エロエジリディの需要はあるのだ!という変な自信を増した管理人です(笑)

さてさて、本日は管理人のくだらない日記の日です。(←勝手に決めた)興味のない方はどうぞスルーして下さいね〜♪


まだ関西は梅雨明けしていませんが、もう7月になり、暑い日が増えましたね。夏と言えば海や花火とか、楽しみなイベントがいっぱいです♡


しかし、夏になると管理人の悩みが増えます。それは…


夜、安眠できない日が増える。


暑いから?と思われた方、正解です。しかし私の場合、それだけじゃないんです。


蚊とゴキブリ。



奴らには夏、今まで何度してやられたか分かりません。今年もすでに奴らのせいで寝不足を強いられたんです。

まず、ゴキブリの場合。


お風呂でシャンプーをしていると、何やら左手の甲の上にゴムのような感触のものが乗ってきました。何かと思い、見てみると…


手の甲に大きめのゴキブリ。


ちょっと待って私今全裸やし新聞紙も殺虫剤も持ってへんし!!!!



風呂の中で大パニックの管理人。そのせいで何をどうしたのか記憶が定かではないのですが、確かシャワーのお湯で何とか排水溝へと追いやった気がします。ちゃんと流れて行ってくれたんやろうか…。あまりにショッキングな事件だったため、寝ようとベッドに横になり、電気を消した後もあの衝撃をフラッシュバック。おかげでなかなか寝付けませんでした…。


そしてまた違う日の出来事。

お風呂から上がり、2階にある自分の部屋に入ろうとすると…

いたんです、奴が。私の部屋の前に。


気付いた私はその場で一瞬硬直するも、殺虫剤を取りに行こうとしました。しかし、こともあろうに奴は動き出したんです。


いやいやそっち私の部屋やから!!!


(その時よりによって換気のために部屋のドア全開だったんです…。)


かさかさと管理人の部屋に不法侵入を果たしたゴキブリ野郎ーーー!!!!


すぐさま1階にある殺虫剤を取りに行き、部屋に戻ると奴が壁と本棚の間に入り込んでいるのを発見!殺虫剤を噴射!!しかし奴はカサカサと奥へと逃げやがったんです!!本棚は重くて動かすのは困難やし、仮に動かしたとしても、もし奴が急に姿を現しても素早く殺虫剤を手に取れるか自信がなかったため、そこから出てきたところを狙い撃ちしようと待ち構えることに。もし寝てる間に出てきて顔の上にでも乗っかられたりしたら大変ですからね。


そして待つことおよそ2時間…


もう日付は変わり、すっかり真夜中。めっちゃ眠い…しかし奴は姿を現す気配なし。

うーん、もうこれ以上起きてるのは限界かも…。
そう思った管理人が思い切って本棚を動かすと…。


ゴキブリ、すでに死んでました。


目を疑ったのですが、どうやら最初の殺虫剤噴射がちゃんと命中していた模様。



なーんだ…。

起きてる必要なかったやん…ハハハ。



すぐに電気消して寝ました。


次の日は当然寝不足でフラフラ。私の睡眠時間を返せ〜!!!

(最初から本棚動かしてりゃ良かったやん、などという野暮なコメントはご遠慮下さい♡)



そして蚊の場合。






先日の夜、寝ていたら耳元で…


プゥ〜ン


ほらあの音です、あの音。めっちゃイライラする。


何度も耳元で音がするので、こりゃもう退治せな寝られへんと判断。ベッドから起き上がり、部屋の電気をつけて精神を集中させて耳を澄まします。



そして…



パチン!!



手のひらを見ると見事退治成功!!!これで安眠できるぅ〜♡


電気を消し、横になって目を閉じました。




しかし…



プゥ〜ン


え、また!?



せっかく眠りにつけそうだったのに、再び起き上がって電気をつけ、精神を集中。



パンッ!!


あ、外した。

ふと横を見ると、壁に止まってるのを見つけ、思いっ切りアタック!!!


よし、仕留めた!はぁ〜、やっと寝れる…


電気を消して、横になりました。





プゥ〜ン…



ちょっと待ってーや。



仕方ないのでもう1回起き上がり、耳を澄ませて力の限りパチン!!!


今回も成功♡

けど何で3匹も部屋に蚊がいるんやろう?と思って部屋の網戸を見てみると…

網戸、ちょっとだけ開いてた。(1センチぐらい)


あー、だからか…ハハハ…


網戸、閉めました。



しかし!網戸を閉めているのに後日また蚊がいるのは何故!?
あんたら、そんなに私の部屋が好きなんか!?
そんなに好かれても何も出ーへんから!!



そして毎年暑くなると、クーラーの使用を抑えるために夜は母の部屋で2人で寝たりするのですが、部屋に蚊が入ると…



母は全く刺されないのに、私だけが何ヶ所も刺される。



蚊のせいで寝られず、結局自分の部屋に退散するハメに。私の部屋、他の部屋よりも暑いのに〜(泣)






さらに。



友人と公園のベンチでお喋りしていると…


蚊どもよ、何故に私だけを刺す!!??

外で、しかも公園ですよ!?友人も半袖生足なのに、何故刺されない!!??

「何でそんなに刺されてんの〜?」

ケラケラと笑う友人。


私が聞きたいわい!!!



それにしても、何で私はこんなに蚊に好かれるのだろうか?と思っていたところ、蚊に関するとある実験の結果を発見。それによると、血液型によって刺されやすさが違うらしいです。


まず、最も刺されやすいのは、A型。


…うむ、当てはまる。



そしてもう一つ刺されやすい条件が、汗かき。


…当てはまるなぁ。



と、こういった具合で、私は刺されやすい条件が整った人だったわけです。


けどそれにしたって、外で友人は全く刺されず、私だけが被害を受けるってひどすぎじゃないか!!??世の中不公平や〜!!



そういや大学時代、好きだった人に

「お前は虫に好かれる女やな。」

って言われたっけなぁ…あぁ嬉しくない_| ̄|○

楽しいイベント盛りだくさんの夏ですが、蚊の事を気にしながら遊ぶのも何なので、虫除けスプレー購入を考えてます。どこのメーカーのが効果的なんでしょうね(^^;


何の役にも立たない管理人の日記、読んで下さってありがとうございました♡新しいエジリディSS創作中なので、よかったらまた覗いてみてやって下さいね(^^)
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2014
07.03

三室戸寺のすゝめ

Category: 日記
皆様こんばんわ☆本日は先週UPした、季節ものエジリディSS「Hydrangeas at Dusk」のモデルになった三室戸寺をリポートします!

ちなみにギャグ要素はないので、期待は不要です(笑)





京都府宇治市にある、三室戸寺。ここでは毎年紫陽花目当ての観光客で賑わいます。紫陽花園の中には宇治抹茶スイーツが楽しめる喫茶店もありますよ~。

三室戸

(甘夏様、写真のアップロード方法をご指導いただき、ありがとうございます!おかげでこうして載せられました♡)


また、紫陽花の定番色である青以外にも、白や濃いピンクもあって、なかなか新鮮でしたよ☆

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ちょうど雨上がりの時に行ったので紫陽花が雨粒にまだ濡れていて、心が潤される気がしました(^^)

そしてSS中に出てきた、抹茶アイスと白玉のスイーツのモデルはコチラ。

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JR宇治駅から徒歩2分のところにある、宇治抹茶の老舗・中村藤吉の「生茶ゼリィ」です。(紫陽花園の中にある店ではありません!)濃厚な抹茶アイスと白玉につぶあん、そして抹茶のゼリーという絶妙なコンビネーションがたまらないんです~超人気店につき、土日に行く場合は最低でも1時間待ちなので、行くならば待つの覚悟でお願いします。


ちなみに、前回の季節ものエジリディSS、「Rose Garden」に出てきた、スウィート・リディアのモデルとなったのはこのバラです☆(あとがきに載せるつもりだったんですが、その時は画像容量縮小の方法が分からず…話が前後してしまい、すいません(><)!)

スウィート・リディアのモデル

可愛いでしょ♡

(スモカ様、このSSを特に気に入っていただけたようでありがとうございます☆またそちらへお邪魔させていただきますので、よろしくお願いします!)


以上、完全に私の趣味である寺社仏閣・ご当地スイーツ巡りの紹介になってしまいましたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございましたまたのご来訪をお待ちしております☆(^^)




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2014
06.26

「Hydrangeas at Dusk」 あとがき

Category: あとがき
季節ものエジリディSS第3弾、いかがだったでしょうか?このシリーズ、ほのぼのラブラブをコンセプトにしてるんですけど、かなりねちゃねちゃラブラブな方向に走っちゃったなぁと書いた後で感じました(笑)


ちなみに今回のストーリーのモデルになったのは、京都の宇治市にある三室戸寺です。紫陽花と蓮で全国的に有名なようですね(^^)ハート型に咲く紫陽花があるって、いつか新聞に載ったりもしてました。私は数年前に1度行ったことがあり、先週友人を誘って行ってきました。すーっごく見応えありますよ!


そしてJR宇治駅から徒歩2分程のところには、宇治抹茶スイーツの有名なお店もあります。また別記事に日記として写真などをUPするので、良かったら京都観光の際の参考になさって下さい*\(^o^)/*


それでは、またのご来訪をお待ちしています( ´ ▽ ` )ノ
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2014
06.26

「Hydrangeas at Dusk」

最近ちょっとバタバタとしていたんですが、何とか出来上がりました!!今月の季節ものエジリディです♡



「Hydrangeas at Dusk」





6月のエブラーナは梅雨入りし、雨の降る日が続いていた。雨のおかげで先月までの暑さは和らいでいるものの、この島国ならではの雨季という自然現象の中、エブラーナ城外に出て気分転換もあまりすることができず、リディアは執務室の窓から外を眺めては小さくため息をついていた。

(エッジ…きっとびしょ濡れで帰って来るだろうな。)

夫は今朝からこの国の食生活を支える米農家達の元を訪れている。以前梅雨にあまり雨が降らなかったがために米が育たず、食生活にも税収にも多大な影響が出て王族も国民も皆苦しい生活を強いられたことがあり、それ以来エッジはこの時期になると彼らの元を訪ねて生育状況を確認したり、労いの言葉をかけに行くのが習慣となっていた。

国王でありながらそのフットワークの軽さで一般国民との関わりを大事にするエッジ。エブラーナがどんなに栄えようともその伝統は失いたくない、いつだったか夫がそう言っていたことを思い出す。リディアはエッジのそんな情に厚いところが大好きだった。




数時間後…




夕方近くになり、雨は上がっていた。雨に濡れて帰ってくるであろう夫のために寝室で着替えとタオルを用意していると、ドアが開く音がした。


「ふ~、何で城近くまで帰ってきた時に雨が上がるんだか。」
「エッジ!お帰りなさい。」

用意していたタオルをびしょ濡れの夫に渡すリディア。

「おぅ、ただいま。ありがとな。」

渡されたタオルでゴシゴシと頭を拭いていると、リディアが着替えを差し出してきた。

「はい、着替え用意しておいたわよ。」
「そうか…ありがとな。気の利く嫁さんをもつと幸せだな~。」

エッジは着ていたびしょ濡れの服をあっという間に脱ぎ、下着姿になったため、リディアは思わず目を逸らす。

「ちょっ…何で一気に脱ぐのよっ!」
「あ?お前が着替え渡したからじゃねぇか。」

リディアが恥ずかしそうにする姿が可愛くて、エッジの中に悪戯心が湧いてくる。

「ほらほら、パンツ一丁マンがやって来たぞ~。」
「いやっ…!早く服着てよっ!!」

下着姿でニヤニヤしながらリディアに近付くエッジ。夫の悪戯に目を背けていると、何やらごそごそと布が擦れる音がした。服を着たのかと視線を戻すと…

「ハッハッハ、全裸マンにクラスチェーンジ!!」
「もうっ、エッジのバカッ!!!」

堂々と腰に手を当てた全裸のエッジに目を向けていられず、真っ赤な顔のリディアは背を向けた。

「リディア、こっち見ろよ~。」
「いやっ!!」

背を向けたままのリディアが可愛くてますます悪戯心が高ぶり、背後から抱きついた。普段は威厳のある国王のエッジだが、リディアが相手となるとすっかりリラックスしてエロ忍者ぶりか遺憾無く発揮される。

「つかまえたぞ~、ぐふふふふ。」
「もうっ、離してっ!早く服着てよっ!!」
「そんな嫌がるなよ~。雨も上がったことだし、デートに誘ってやろうと思ってたのによ。」
「へ…?」

リディアがエッジの方を向くと、優しい笑顔。

「紫陽花見に行かねぇか?たくさん咲いてる場所があるんだ。」
「そ、そうなの…?」
「おぅ。こっから歩いて行ける距離にあるからよ、どうかと思ったんだ。」

思いがけない誘いに、リディアの胸が高鳴った。雨も上がったことだし、外出するにはいいタイミングである。

「うん…行きたい。」
「そうか、なら今から行こうぜ!」

エッジは満面の笑みだが、何やらリディアが俯いている。

「リディア?」
「…行くから、早く服着てよ…。」
「もう着ていいのか?ほら、後悔しないようにしっかり見ておけよ。」
「バカッ!!!」






*****





「お、すっかり晴れたなぁ。」

服を着たエッジはリディアと手をつなぎ、エブラーナ城の門に続く屋外の通路から日が傾きつつある空を眺めていた。

「ふふ、雨上がりって、何か清々しいわね。」

雨でどんよりとしていた空気も夕暮れ近い太陽の光で澄み渡り、城壁から滴る雨水の雫はそれを反射してキラキラと光っていた。雨が降っている間は気分がどんよりするものの、晴れた時の爽やかさを感じると雨も悪くないものだ。





城から雨に濡れた道を歩いていくと、立派な寺の門が見えてきた。

「ここだぜ。毎年すげぇたくさんの紫陽花が咲くから皆ここに来るんだ。」

エッジの言う通り、2人の周りには雨上がりを見計らってやってきた多くのエブラーナ国民達。エッジがリディアの手を引いて門をくぐり、坂道を登って本堂の近くまで来た2人の眼下には、見渡す限りの紫陽花園だった。

「わぁ…すごい!たくさん咲いてるわね!」
「だろ?梅雨の時期はお前をエブラーナに連れてきたことなかったし、今年は絶対連れていってやろうと思ってたんだぞ?」
「そうかぁ、そうだったよね…。」

雨がひどいとエブラーナ上空を飛空挺で飛ぶのは危険な上、エッジの仕事の都合と天気のいい日はそうそううまく合致するものではなかったため、梅雨の時期はいつもエッジの方からリディアに会いに行くのがお決まりだった。


「エッジはいつも『この時期はエブラーナじゃ雨が多くて飛空挺乗るのは危ないから俺がここに来る!』って言って、ミストに来てくれてたよね…。」
「そうだぞ?俺がどんだけお前のために気を遣ったと思ってんだ。」
「うん…ごめんね。」

リディアはエッジの腕にきゅっとつかまって身を寄せ、長い間甘えさせてくれた夫への想いに瞳を潤ませながら上目遣いで彼を見つめた。

「…そんな顔すんじゃねぇよ。」
「だって…。」

見つめ合う2人の頬はほんのり赤らみ、エッジの指がリディアの色白の滑らかな頬をそっとなぞった。そのままゆっくりと唇同士の距離が縮まっていくと―――




「きゃー!お館様とリディア様がチューしようとしてるー!!!」

現場を見ていた幼い少女の声で、紫陽花を見に来ている国民達が自分達に注目していることに気付いたエブラーナ国王夫妻の顔は真っ赤だった。

「こらっ!大声出すんじゃありません!…お館様、リディア様、お邪魔しちゃってすいません、ほほほほ…。」

母親がさぁ続きをどうぞと言わんばかりの態度で少女の手を引いていった。国民達はエッジとリディアが熱々なのを知っているため、2人が仲良くしているのを微笑ましく見守っていたが、さすがに恥ずかしくて身体を離して気まずそうにする。

「あー…悪りぃ、リディア。」
「う、ううん…私こそ…。」

少しの間身体を離していたが、2人の手は徐々に近付き、自然に指と指が触れ合い、ゆっくりと絡み合う。

「んじゃ…行こうか?」
「うん…。」

しっかりと手を繋いだ2人は石段を下り、紫陽花園に足を踏み入れた。

「…きれいね。」
「おぅ、きれいだな。…けどよ、よく考えたらミストにも紫陽花咲いてたし、お前にしたらそんなに目新しくはねぇかもな。」

何と無く決まりが悪そうな表情のエッジは頭を掻いていたが、リディアは満面の笑みだった。

「ううん。ミストにも紫陽花は咲いてたけど、ピンクや紫っぽいのがほとんどだったから、こんなにたくさんの青い紫陽花見るの初めてよ?」
「あ、そうだっけ?なら良かった。」

この花のような可愛らしい笑顔が自分を虜にしているのを、理解していない様子がエッジにはまた愛らしい。

(くそ~、ドキドキさせやがって…。)

自然とリディアの手を握る力が強くなり、透き通るような翡翠色の瞳が不思議そうにこちらを見つめてくる。

「エッジ…そんなに強く握らないで。ちょっと痛い…。」
「…お前が悪いんじゃねぇか。」

リディアはエッジの言っている意味が分からず、怪訝な顔をするが、その顔がまた愛らしい。

「お前は本当に反則ばっかだな。」
「…何が反則なのよ?」

はぁ、と溜息をつきながら呆れた顔でリディアを見ると彼女はますます意味が分からず、何となく不機嫌な表情である。

「私…何か悪い事した?」
「いや、何も。」
「…意味分かんない。」

顔を背けて少し頬を膨らませるその姿は、エッジのお気に入りの表情。指でそっとその色白の頬をつつくと、リディアはピクッと反応して大きな目をぱちぱちとさせながら夫を見つめる。

「…やっぱりお前は卑怯な女だよな。そんな可愛いことして、俺がどんなにドキドキしてるのか分かってんのか?」
「そんなの、分かんないわよ…それより紫陽花見ましょうよ。」

深い色の目にじっと見つめられたリディアは恥ずかしくて思わず顔を背け、紫陽花に視線を移す。
エッジはやれやれといった表情で妻の手を握っていた力を緩めた。



2人を囲む雨上がりの紫陽花は雨水の雫に濡れ、活き活きと咲いていた。白から橙色に変わりつつある太陽の光がその雫をキラキラとさせ、見る者の目を惹きつける。青色の紫陽花は緑の葉との組み合わせが何とも涼し気で、自分の故郷ではあまり見かけないその色彩の美しさにリディアはすっかり見入っていた。

「何か心が落ち着く色合いね。ピンクや紫もいいけど、青の紫陽花って爽やかだわ。」
「だろ?紫陽花といえば青なんだ。雨が多くてじっとりする季節はこういう爽やかな色を見て楽しまねぇとな。」

自国ならではの美を誇らし気に語る夫。そうね、と頷きながら話を聞いてやるリディアの顔はニコニコしている。


「お館様、リディア様、本日はお足元の悪い中をかような場所まで足を運んでいただいてありがとうございます。」

紫陽花を見ている2人の元に、寺の住職が挨拶にやってきた。

「よう、今年も大人気じゃねぇか。」
「えぇ、お陰様で。そういえばお館様、ハート型に咲く紫陽花はもう見つけられましたかな?」
「ハート型?そんな紫陽花あんのかよ?」
「はい。何年も前に咲いているのが見つかって以来、それを見つけたカップルはずっと仲良しでいられるという言い伝えができたんですよ。」
「そうなの?見つけたいな…。」

話を聞いていたリディアの目が輝き出し、エッジをじっと見つめた。

「ったく、女はすぐそういうのに乗るよなぁ。んなもん見つけなくったって、俺はお前一筋だってのによ。」
「いいじゃない!そういうのも楽しみたいの!ねぇ、どの辺りに咲いてるの?」
「はっはっは、それは秘密にございます。どうぞお館様とご一緒に見つけて下さいませ。」

住職は笑顔でそう言うと、その場を去っていった。

「さ、リディア行くぞ。」
「もうっ、待ってよぉ!ハート型の紫陽花見つけたいからゆっくり見たいのっ!」
「はいはい、そうですか。」

リディアは夫の素っ気ない返事にムッとし、繋いでいた手を離すと紫陽花園の中をゆっくりと歩きながらハート型の紫陽花を探し始めた。エッジはリディアのペースに合わせ、両手を頭の後ろで組みながら彼女の後ろからついて行くように歩いていった。

「ん~、ないなぁ…。どこにあるのかしら。」

真剣にハート型の紫陽花を探す妻の姿を呆れ顔で眺めるエッジ。彼としてはリディアと手を繋いで一緒に紫陽花を愛でたいのに、彼女は最早それどころじゃないようである。

「なぁリディア、そんなに必死になることねぇじゃねぇか。」
「え~、だって見つけたいんだもん。ねぇ、エッジはそっち探してよ。」
「へいへい…。」

適当に返事をして紫陽花を眺めるエッジ。すると彼の目に留まったのは…

「!おい、リディア!」
「え、見つけたの!?」

嬉しそうに駆け寄るリディアの目の前には…

「ほら、見てみろよ。こんなでけぇナメクジ珍しくねぇか?」
「…。」

ニヤニヤする夫を無視し、リディアはハート型紫陽花を再び探し始めた。

「何だよ、そんな怒るなよ~。」

これからも仲良くしたいからハート型の紫陽花を見つけたいという女心を理解していない夫の悪ふざけに腹を立てたリディアは、彼の呼びかけに知らん顔を決め込んだ。

エッジが後ろからゆっくりと近づき、そっとリディアの細い肩を抱いてやると、華奢な身体はピクリとした。

「…そんなにハート型の紫陽花見つけてぇのか?」

囁くように尋ねてくる、いつもより低めで、甘いようなエッジの声。思わず身を少し竦めると、俯き気味にコクリと頷くリディア。

「…だって、エッジとずっと仲良しでいたいもん。」
「ん…そうか。」

自分とずっと良好な関係でいたい、10年以上も想い続けた愛しの女性にそう言われては、エッジの頬は赤くなる以外なかった。

「じゃあ、一緒に探すか。」
「うん!」



2人は手を繋ぎ、一緒にハート型の紫陽花を探した。







「んー…見つからないなぁ。」

紫陽花園の半分ほどを探したものの、ハート型の紫陽花は見つからない。リディアはやや元気がなくなった様子で、エッジの肩にもたれかかった。

「ちょっと休憩しねぇか?そこに茶店があるしよ。」
「うん…。」

2人は紫陽花園の中にある、簡易喫茶へと入った。そこは紫陽花を見に来た国民達で賑わっている。

「これはお館様に奥方様!いらっしゃいませ。」
「あれ?ダンカン、お前ここに店出してたのか?」

昼間訪れた米農家の主人に出迎えられ、エッジは目を丸くした。

「そうなんですよ!うちと緑茶農家の共同で特別なエブラーナ菓子を作ってましてね、この場を借りて売り出しをさせてもらってるんですよ。さぁさぁこちらへお掛け下さいませ!」
「へぇ、そりゃまた。どんな菓子なんだ?」
「はい、すぐにお持ちいたします!」

そう言ってテーブルに並んで座った2人にダンカンが出してきたのは、涼しげな透明の硝子の器に盛られた白玉団子と粒餡が乗せられた緑茶色をしたアイスクリームだった。

「これ…アイスクリーム?緑色なんて初めて見たわ。」

リディアの言葉を聞いたダンカンは笑顔で説明し始める。

「奥方様、これは粉末の緑茶を混ぜて作った、抹茶アイスクリームでございます。アイスクリームの甘さと抹茶の苦味の組み合わせが絶妙で、今年この紫陽花園で出店してからずっと若い女性を中心に大人気なんです!その白玉団子はうちで作った米を原料にした米粉で作ってあるので、白玉粉で作ったものよりもずっとコシがあって美味ですよ!」
「へぇ…じゃあいただくわね。」

リディアが抹茶アイスクリームと白玉団子をぱくりと食べると…

「美味しい!」

さっきまで少し疲れた顔をしていたのに、特別な菓子の甘さにあっという間に満面の笑みを浮かべたリディア。愛らしいその姿に、エッジの表情はみるみる緩む。するとそれを見たダンカンがクスクスと笑い出した。

「お館様、またそのような締まりのないお顔をなさって…。」
「あ?」
「昼間うちに来た時、奥方様の話になった途端同じ顔をなさってたではないですか。」
「え?」

ダンカンの話を聞いたリディアがエッジの方を見ると、彼は顔を背けた。

「昼間お館様がうちに来た時、私が奥方様はお元気ですかと尋ねただけなのに、お館様は笑顔で奥方様の自慢話を始められましてねぇ。挙げ句の果てに『うちの嫁は世界一いい女だ!』と仰ってたんですよ。」
「ダンカン!余計なこと言うんじゃねぇ!!」

エッジの顔は真っ赤だった。国王だというのに、リディアの事となると威厳も何もない弄られキャラと化す夫。

「んもぅ、エッジのバカ…。」

頬を赤く染めて食べかけの抹茶アイスクリームの硝子の器を持ったままもじもじとするリディア。

「はっはっは、これは余計な事を申しましたかな?ではお2人とも、どうぞごゆっくり。」

笑顔で仕事に戻るダンカンを見届け、2人が顔を見合わせると、相手の真っ赤な頬がそれぞれの目に映る。どう会話を始めたら良いのか分からず、お互い口をもごもごとさせた。

「ん…エッジ。」
「へ?」
「ダンカンが言ってたの、本当なの…?」
「…おぅ。」


リディアの顔はすっかり火照り、今にも火が出そうなくらいに赤くなっていった。



「…ダメだったのかよ?」
「ダメじゃないけど…恥ずかしいよ…。」

エッジが頭を掻きながら言葉を選んでいると、リディアの色白で華奢な手がそっとエッジの手に触れた。その手がきゅっと彼の大きな手を握ったので、エッジの深い色の瞳はリディアの翡翠色の瞳を見つめた。



何も言葉を交わさずとも、お互いへの想いが手の温もりと見つめ合う瞳から伝わり合っているような気持ちになり、目を閉じた2人の唇の距離がぐんぐん縮まっていくと―――



「あ!お館様とリディア様がまたチューしようとしてるー!」

さっきと同じ少女の声が響き、我に帰りとっさに身体を離す国王夫妻。またしても周りの国民達は微笑ましそうに2人のことを眺めていた。

「これっ!こっちに来なさい。お館様、リディア様、本当に邪魔ばっかりしてしまって…ほほほほ。」

少女の母親は今回もさぁ続けて下さいと言わんばかりの態度だった。


「あ、いや…その…あぁ…リディア、すまねぇ。」
「ううん、ごめんね…皆見てるのに。」

2人はしばし無言になり、出された抹茶スイーツを平らげる。エッジが食べ終わった硝子の器をテーブルの上に置くと、同時にリディアが自分の器を置く音と重なった。

「あ。」

2人の声まで重なり、自然に笑いがこみ上げてくる。

「ははは。」
「ふふふ。」

笑顔で見つめ合うと、離れていた手と手がそっと触れ合い、2人の体温がゆるりと溶け合っていった。心地良い温もりがエッジとリディアの身体を包み込み、自然と頬が紅潮する。

「美味しかったね。」
「おぅ。リディア…そろそろ行くか?」
「うん。」

椅子から立ち上がり、代金を払うと、2人はまたハート型の紫陽花を探すべく歩き出した。

「ハート型の紫陽花、見つけたいなぁ…。」
「ん、そうだな。まだこっちにたくさん咲いてるし、ありそうだけどな。」
「うん!」







*****



「あーぁ、見つからなかったなぁ…。」

結局ハート型の紫陽花を見つけられずに紫陽花園を後にしたリディアは、夕暮れ時の空の下でガッカリした様子で呟いた。

「そんなガッカリすんなよ。来年また行こうぜ?」
「うん…。」

エッジが歩きながらリディアの肩を抱いてやると、まだ赤みの残る空の光に染まる緑のふわふわとした長い髪がエッジの肩にかかってきた。エブラーナ城に近付いてきても、リディアはまだ浮かない顔をしている。

「…そんなに見つけたかったのか?」
「…うん。」
「ったく、しょうがねぇなぁ…。」

呆れた様子でそう言うエッジは、自分の懐から何やら取り出した。リディアの目に入ったのは…

「…!!エッジ、これは…!」

エッジの手には、昼間の明かりが無くても明らかにそれだと分かる、ハート型に咲く紫陽花。

それを手に持たされたリディアは、一瞬、驚きで思考が止まってしまった。

「エッジ…見つけてたの?いつの間に…。」
「…あのでかいナメクジの横に咲いてたんだよ。」




―――興味なさそうにしてたのに、本当は私の気持ち、ちゃんと汲んでくれてたんだね


どうしよう

嬉しくて胸がドキドキして、苦しいよ―――





速まる鼓動を落ち着かせようと、胸に手を当てるリディアは少し俯き、この気持ちをどうしたらいいか必死に思案していると、エッジの腕が優しくリディアを包み込む。

「…!エッジ…。」

黄昏時の空の色を背景にするエッジの顔を見上げると、薄暗い中でもふわりと温もりを醸し出すその表情はとても穏やかで優しくて、リディアの全てを受け入れてくれるような、そんな安心感を漂わせていた。

「…ありがとう。」

エッジの胸に思わず顔を埋めてそこに頬をすりすりさせると、彼の匂いと体温が心地良くって、リディアの顔が綻ぶ。

「何やってんだよ~、お前犬か猫みてぇだな。」
「だって、あったかくていい匂いがするから…。」

エッジのふっと笑う声がしたかと思うと、彼の大きな手がリディアの柔らかな髪を撫でる。ハート型の紫陽花の茎を握りしめたまま、ぎゅっと彼の背中にしがみつく。今の自分の気持ちをどう言葉に置き換えれば伝えられるのか分からなくて、ひたすらエッジの温もりに身を寄せた。



どんなわがまま言っても、優しく応えてくれるあなた

これからもずーっと、私と仲良くしてね?


寄り添って咲く、紫陽花のように―――





「…これで、俺とお前はずっと仲良しだな?」

エッジの問いかけにはっと顔を上げると、さっきと変わらない、優しい笑顔。彼への愛おしさがこみ上げ、翡翠色の瞳はみるみる潤んでゆく。

「…うん、ずっと仲良しだよ。」
「じゃあ…。」

きょろきょろと周りを見渡したエッジ。何をしているのかと不思議に思っていると…

「よし、誰もいねぇし今なら…」



ちゅっ。



「へへ、やっとキスできたな。」
「もう…恥ずかしい。」

エッジから少し視線を逸らすリディアだが、その表情は好きな男性に愛されて、幸せいっぱいな艶っぽい女の顔。



端正なエッジの唇と、小さな花のような瑞々しいリディアの唇が再び重なり合うのを見ていたのは、リディアの手に握られた、黄昏色に染まるハート形の紫陽花だけ…。

―完―
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2014
06.13

我が家の天然な人

Category: 日記
今日はよく見たら13日の金曜日!そうかぁ、だから明日のビジネス英会話レッスンの予習が進まないのか…。(言い訳)


皆様こんばんわ、本日も管理人のくだらない日記をお届けいたします☆んなもん興味ねぇ!という方は、どうぞスルーして下さいませ♪




今日、帰宅した後の話。



私の洗濯物を部屋に持ってきた母の一言。


「はい、これあんたのゴミ。」


えぇ!?



「あ、ちゃうわ。洗濯物。」



部屋を出て行く母。


…私の洗濯物=ゴミなのか!!??


そしてたまにいきなり私の部屋にやって来て一言。



「私、昨日シャンプーしたかしら?」



知らん!!!



いくら家族でもそこまでは把握してない!!!



こんな感じで、うちの母は天然な人なんです。

いつだったか、真夏の暑い日に友人がうちに遊びに来て、私が彼女を和室に案内した時の母の一言。


「暑かったらストーブつけなさいよ。」


私と友人を殺す気か!!??




そして時に父も巻き込まれる。



ある年、法事でお坊さんに来ていただいたんですが、そのお坊さんがレクサスに乗ってきていた事を私に話してきたんです。

その時は普通に話を聞いて終了。しかしその夜…


母「お坊さんがな、ペガサスに乗って来ててん。」

父「へぇー、ええもん乗ってるなぁ。」




父、話に乗ってるし!!!





何でしょうね、長年夫婦だと言い間違いもすっと訳せるんでしょうか。


そしてうちの母のこの天然ぶりは、祖母からの筋金入りの遺伝。


今は亡き母方の祖父が入院していた時のこと。

その日お見舞いに行った母は、病院で祖父に付き添っている祖母が何か食べれるようにとおにぎりやパンを持って行ったそうです。そして2人でそれを食べようとしたその時。


「あっ、入れ歯入れてへんかったわ。」



という祖母の一言に呆れたという話を聞かされた私。

私「あんたのお母さんやん。」
母「いや、私はあんなタイプじゃないし。」



どう考えても遺伝や!!!



そしてその遺伝子は、私にも脈々と受け継がれているという、抗えない事実。


はい、私もおかしなことをする人なんです…。


私の前の職場はお昼にお弁当が支給される会社でした。その日はお弁当の種類を選べる日で、肉じゃが弁当、すき焼き弁当、あとは確か焼魚弁当がありました。


「お、これにしよ。」

肉じゃが弁当のつもりで、すき焼き弁当を選んだ私。ハイ、この時点ですでにおかしな事をしていますね。そしてさらにおかしな事が起こるんですよ~。


すき焼きを肉じゃがと思い込んで食べていると、上司や同僚も食堂にやって来て、お弁当を選んで食べ始めました。いつもと変わらず、皆でワイワイ話していると、その内の誰かが発した一言。

「このすき焼き弁当、味が…」


そこでハッとした私の口から出たのは…


「あっ、これすき焼きか…。」


それを聞いた上司がニヤニヤしながらすかさず一言。

「肉じゃがと思って食ってたんか?」


速攻でバレてるし!!!


黙ってたら何もバレへんかったのに!!!
何故に口に出してしまったのだ私!!!



もちろん、その場にいた全員大笑い。そして…


「いや、この豆腐がじゃがいもっぽいから…」


という苦しい言い訳をしてしまい、余計に笑われたわけです。


おかしな事をしてしまうのは遺伝なんです!!
意図してるんじゃないんです!!
どうしようもないんです!!


けど皆笑ってくれるんならそれでいいか…。



今日の母の言い間違いから色んな思い出が蘇り、ついここに書きたくなって書いてしまいました。こんなくだらない日記を読んで下さった方は神様仏様です( ̄▽ ̄)ありがとうございました(^^)

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2014
06.10

スマホのブルーライト

Category: 日記
皆さんこんばんわ、AL0908でございます☆いつも私のエジリディSSに拍手して下さってる方、ありがとうございます。そしてずっとFF4サーチに登録したいと思いながら、変に小心者で登録を躊躇っております(苦笑)




以下は私のくだらない日記なので、興味なかったらスルーして下さって結構ですよ~( ̄▽ ̄)






最近は多くの人がスマホを使ってますが、目が疲れませんか?私はiPhoneユーザーなんですが、このブログに二次創作UPしたり、最近は調べ物したりするのにフル活用してるおかげでブルーライト浴びまくりでもう目が疲れるのなんの。寝る前まで見てるから、睡眠にも影響が出るし(見ーひんかったらええやん)、集中力も低下しちゃったりと、いいことないんです。



が!!





ある日の新聞を読むと、スマホのブルーライト軽減大実験の記事を発見!!こりゃ読まなあかん!!と思い読んでみると…





ふむふむ、専用のメガネや画面に貼るシートを使えばそれなりのブルーライトカット率があるのか。


ならメガネかシートを使ってみようか…




と思って読み進めると、何とそれよりも格段に効果があるという方法が載っていた。それは…



「スマホの画面の白黒を反転させる。」



そこには写真も載っていて、確かに明るい画面か暗くなっているから、目がチカチカしなさそう。というわけで早速iPhoneの画面設定を変更!!




結果…






目が疲れなくなりました!!!夜寝る前にSS書いたり、インターネット見ても、明らかに目が疲れないんです!



わぁ~い、これで健康になれそうや~♪



と、思ってFacebookを見てみると…






友達の投稿した写真まで全部色が反転してる!!!




顔は真っ黒、歯はお歯黒状態、髪は完全に白髪やし、鼻の穴目立ちまくり。あのほら、写真のネガと同じ。



めっちゃ笑顔で写真に写ってるのに、色反転したらこんなことになるとは…





それを見て、思わず電車の中で爆笑しそうになった管理人。そして他の友達がアップしていたどこかの水族館の写真は完全に火の海。みんな魚見てんと、早よ逃げな!!


それでふと思い出したのが、何年も前の「探偵!ナイトスクープ」での小ネタコーナー。(この番組って全国区放送なんでしょうか?関西だけの放送だったらすいません。)


その依頼内容は、

「写真のネガは実物と白黒が反転していますが、実物の白黒を反転させたら実物の本当の色と同じように映るのでしょうか?調べて下さい。」

でした。



探偵の清水圭が依頼人のところに出向き、メイクをし、髪は真っ白、顔と歯は真っ黒に。そして写真撮影をし、ネガを見ると…




実物と同じどころか、完全にバケモノ状態。すごすぎて爆笑してしまった管理人です。
動画はコチラ↓




http://www.youtube.com/watch?v=f8SBFe61bLQ&sns=em








話が逸れましたが、この色反転作戦、文章を読んだりするのはほとんど違和感ないんですよ。電池の持ちも良くなった気がします。




どうでもいい日記、読んで下さってありがとうございます。今後はエジリディSSだけじゃなくて、日記も更新していきたいと思ってますのでよろしくお願いします♡
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2014
06.07

「発熱」 あとがき

Category: あとがき
「発熱」、いかがだったでしょうか?実はこのSS、母が風邪をひいてるのを見て思いついたストーリーなんです。あ、母は座薬使ってませんよ(笑)エッジは風邪ひかなさそうですけど、健康に自信がある人ほど体調を崩す時はそりゃもうひどいという私の偏見に基づき、こういうことになりました( ̄▽ ̄)そしてこういう話が浮かぶのもエッジだからこそ!と思うのは私だけでしょうか?だってセシルやカインじゃこんなネタ、とても書けません(笑)


ストーリー中のエッジのセリフ、「嬉しいなぁ~」が、また志村けんみたいやなぁ…と書いた後で気付いた管理人。関西人なのでどうしても笑いに走りたくなるんです!(言い訳)そしてエロじゃなかったらギャグかよ!というツッコミも大いにありうる私のSSですが、また遊びに来て下さると嬉しいです(^^)
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2014
06.07

「発熱」

TA後エジリディSS第12弾です♪こんな話が出来上がっちゃいました。管理人は笑いに走る関西人だからということで許して下さい(^◇^;)






「発熱」







(うー…苦しい。暑いし動けねぇ…。)


エッジは今朝から何年振りか分からないぐらい久々の高熱に苦しんでいた。ここ最近は連日城を留守にする公務と、真夜中まで執務室にこもる多忙さに加え、日に日に厳しくなる冬の寒さも相まって、朝の稽古中にダウンしてしまったのだ。



部下達に部屋まで運ばれ、今は寝室で横たわっている。ぜぇぜぇといつもより浅く早い呼吸をするエッジの横には、美しい妻リディアが心配そうな面持ちで椅子に腰かけている。


「あー…この俺様が熱出すなんてなぁ…。」
「もう、最近あんな忙しかったんだから、体調崩さないほうがどうかしてるわよ。今日はおとなしくしててよ?」
「ん…。」


高熱のせいで会話をするのも辛い。しかも食欲がなく、リディアが解熱剤を持ってきたが、何も食べていないために服用できない。


「エッジ、何か食べられそう?」
「いや…。何か飲むもんくれ。食えそうにねぇ。」


リディアに支えられてやっとのことで起き上がる。

「ほら、飲める?」
「あぁ…。」

リディアが右手でエッジの背中を支え、左手で水の入ったコップを持ち、エッジの口元に持っていく。二口ほど飲んだ後、エッジは再びベッドで横になる。


いつもは元気いっぱいの夫だけに、リディアは心配でたまらない。そっとエッジのおでこに手を乗せると、彼を苦しめる高熱が伝わってきた。


(何も食べれないんじゃ薬飲めないし…。どうしたらいいかしら。)


とりあえずはおでこを冷やしてあげようと、リディアは寝室を出る。城の調理場へ行き、氷水とタオルを用意した。寝室へ戻ろうとすると、途中の廊下で家老と出くわす。

「おぉ奥方様!お館様のお加減は?」
「今部屋で寝ているんだけど、熱が高くて食欲がないの。何も食べていないから、薬も飲めなくて…。」
「うむむ、さようでございますか…。お館様も最近はご多忙でいらっしゃいましたからな…。」


数か月前にエッジはリディアと結婚して以来、王としての仕事に一層精を出すようになっていた。10数年想い続けた愛しいリディアが妻となってくれたのだからどんな過酷な公務も張り切って引き受けていたのだ。しかし人間には限界があるのだということを、新婚で浮かれていたエブラーナ王は忘れてしまっていたようであるが…。



しばらく考え込んだ後、家老は何か思い付いた。

「そうじゃ、あれならば食欲がなくても大丈夫ですじゃ!」
「え?何か効くものがあるの?」
「はい!しばしお待ち下され!」


そう言って家老は城の奥へと引っ込み、程なくして戻ってきた。その手には…

「奥方様、これならば大丈夫ですじゃ!」
「???これは…薬?」
「はい!座薬でございます。これをお館様に!」


ざやく?初めて聞く薬の名前に怪訝な顔をするリディア。


バロンやミスト地方では風邪や高熱の治療は飲み薬や点滴が中心で、座薬はあまりメジャーではなかったため、存在を知らない者も少なくなかったのだ。


リディアの表情に気付かない家老のもとに、執政に関わる家臣の一人がやって来た。

「お話中失礼いたします。ご家老、昨夜のエブラーナ港の建設の件ですが…。」
「何!?ならば急がねば!では奥方様、お館様をお頼み申し上げますぞ。」
「えっ?は、はい…。」


家老と家臣は会議室へと行ってしまった。


しげしげと座薬の入った袋を見つめるリディア。

「…変わった形の薬ねえ。けどこれなら大丈夫だって言ってたし、早くエッジに飲ませてあげなくちゃ。」


使い方を知らないリディアが寝室へと戻ると、相変わらずエッジはしんどそうにベッドに横たわっていた。

「エッジ、大丈夫?今からおでこ冷やしてあげるからね。」
「あぁ…。」

冷やしたタオルをエッジのおでこに乗せるリディア。


「ね、エッジ。何も食べてなくても大丈夫な薬もらってきたよ。じいやがこれなら効くって。」


そう言って嬉しそうにエッジに座薬を見せるリディア。するとエッジは高熱で苦しいながらも切れ長の目を見開く。

「そ、そうか、リディア…。入れてくれるのか。ありがとな。」

まさか使い方を知らないとは思わず、愛する妻に座薬を入れてもらえるのだと興奮したエッジの体が一段と熱くなる。

「ね、起き上がれる?」
「あぁ…。」

エッジは横たわったまま、布団の中で寝間着のズボンと下着を脱ぎ始めた。何やらもぞもぞと動く夫の様子を見たリディアは、不思議そうな顔をする。

「エッジ?何してるの?」
「何って、座薬の準備してんだよ。」
「え???準備?」


「あ?…お前もしかして、座薬知らねーの?」
「あ…うん。初めて聞いた。」


エッジは思わずニタリと卑猥な笑みを浮かべる。リディアは年を重ねる度に女性としての魅力を増しているが、純粋な心を持つがゆえに、世間知らずなところが未だに見受けられる。しかしエッジにはそれが新鮮で可愛くてたまらない。


「リディア、これはな…。」
「うん?」


エッジはリディアに座薬の使用方法を耳打ちする。



「えええええ!?お、お尻の穴に?」

顔を真っ赤にするリディア。

「そうだぜ。いやぁ、嬉しいなぁ。可愛い嫁さんに尻の穴まで見てもらえるなんて。」


そう言ってエッジは高熱でだるい体を起こそうとする。

「いやっ…!バカ!自分で入れてよ!」
「なんだよ~、旦那が病気だってのに冷てえ奴だな…。」

「だって…。」
「自分じゃうまく入れられねーよ…。なぁ、入れてくれよリディア~。うー…熱で苦しい…。」

「もう…分かったわよ。」
「うほっ!幸せだな~。」
「バカッ!」

バカという言葉もリディアに言われると嬉しいエッジは掛布団をベッドの端に寄せ、四つん這いになってリディアに尻を見せる。リディアは座薬を一つ手に取り、エッジの尻と向かい合う。


(やだぁ…エッジのお尻の穴がひくひく動いてる…。)


エッジはリディアに尻の穴を見られて興奮が止まらない。もっと見てくれと言わんばかりに、尻を左右に振っているように見えるのは気のせいか。



深呼吸してリディアは腹を決める。


「…エッジ、入れるよ?」
「おぉ。」


リディアは座薬をエッジの肛門に挿し込んだ。ひんやりとした刺激がエッジの肛門を満たす。


「ぬほっ…!くはぁっ…!」
「へ、変な声出さないでっ!う~ん、もうちょっと奥まで入れないと…。」

座薬を正しい位置に入れようと、リディアは人差し指の先をきゅっとエッジの肛門に押し込む。


「おおおぅっ!」


リディアの指が自分の尻の穴に入ったのを感じ、またしても奇声を発するエッジ。


「…はい、座薬入ったよ。」

恥ずかしそうにリディアが言う。



「はぁ~っ、ありがとなリディア。」
「もうっ…。早くパンツ履いてよ。」


四つん這いになっていたエッジはベッドに仰向けになり、リディアに視線を送る。


「な、何よぉ。」


下半身裸の夫を直視できず、顔を背けながら答えるリディア。


「なぁ、パンツ履かせてくれよ。」
「…!自分でしなさいよっ!」

「いいじゃねーかよー。今日は安静にしろってお前が言ったんじゃねーか。」
「そ、そうだけど…。」

「履かせてくれよぉ…。夜のエッチの後はあんなに優しいのに。」
「バ、バカッ!…しょうがないなあ、今日は特別だからね!」


リディアはエッジに下着とズボンを履かせ、掛布団をかけてやった。


「リディア…ありがとな。大好きな嫁さんにこうやって世話してもらえて、俺は幸せもんだよ。」

そう言われて、リディアは照れ臭そうに顔をそむける。


「…病気なんだし、世話するわよ。」


照れ臭さに加え、夫の尻の穴を見た上に中に指まで入れてしまうという、リディアにはショッキングな体験が続いたため、素っ気ない返事をしてしまった。




気付くとエッジは一連の騒動(?)で疲れてしまったのか、眠りに落ちていた。










数時間後。



「エッジ、気分はどう?」


仕事の合間を縫って夫の様子を見に来たリディア。


「ん…大分楽になったぜ。」
「薬効いてきたのかしらね。熱測りましょう。」


呼吸も表情も落ち着き、自分で起き上がれるようになったエッジ。


「お、微熱になったな。」
「あら本当ね。何か食べれそう?」
「あぁ、腹減ったぞ。何か食わせてくれねぇか?」
「じゃあ何か作ってくるわ。待ってて?」
「おぅ…。」




およそ30分後…



「エッジ~、お待たせ。」


リディアの持つお盆の上には、熱々のお手製たまご粥。

「う、美味そうだな…。」
「ふふ、美味しいわよ?じゃ、ここに置いておくわね。」


リディアがお盆をベッドサイドのテーブルに置こうとすると…


「なぁ、リディア…。」
「ん?」


「…食べさせてくれよ。」

「なっ…何甘えてるのよ!自分で食べてよっ!」


甘えまくりな夫に檄を飛ばすリディア。

「いいじゃねぇかよ~。」
「もう微熱まで下がってるんだから自分で食べれるでしょ?仕事しないといけないのにっ!」


リディアに突き放され、エッジは悲しげな表情になってゆく。


「ひでぇなぁ…俺、病気なのに…。」


声を震わせ、捨てられた子猫のような目で妻を見つめるエッジ。


「んもう…しょうがないわねぇ。」
「食べさせてくれんのか?嬉しいなぁ、ぐふふふふ。」


エッジの隣に座り、熱々のたまご粥をスプーンに取ったリディアは、それをそのまま彼の口元へともって行った。


「お、おいおいおい!ふーふーしてくれよ!火傷するじゃねぇか!」
「も~、わがままねぇ。」
「お前わざとやってんだろ!」



仕方なくリディアが息を吹きかけてたまご粥を冷まし、エッジの口元へともって行くと…


「リディア…『エッジ、あーんして♡』って言ってくれよ~。」
「もう!どんだけ注文が多いのよ!?」
「注文って何だよ?病気の旦那に対する愛だろーが。」
「そんなの恥ずかしいもん!」
「いいじゃねぇか~、ずっとやって欲しかったんだよ。」


病気なのをいいことに甘えたい放題の夫に呆れるリディア。


「まったく…1回しか言ってあげないからね?」
「言ってくれるのか?嬉しいなぁ~。」


リディアは照れ臭そうに息をつく。


「はいエッジ、あーんして?」

エッジが満面の笑みで口を開けると、リディアはスプーンに乗ったたまご粥をそこに入れてやった。もぐもぐと口を動かし、ごっくんと飲み込むエッジ。

「ん~、美味いなぁ!」
「もう、バカ。」


エッジのおねだり通りにリディアはたまご粥をエッジの口に運んでやると、あっという間に平らげた。


「あぁ…美味かったぞ。」
「本当?よかった。」
「ありがとな、リディア。」


愛する妻の手料理を食べさせてもらえたエッジはほっこりとした顔でリディアを見つめる。

「そんなに見つめないで…。ほら、薬飲んで寝なさいよ。」
「おぅ…。」



褒められて満更でもないリディア。エッジが薬を飲んで横になる姿を見届けると、再び仕事に戻った。











そして、翌朝。



リディアが目を覚ますと、隣のベッドには、すっかり元気になって服を着替えるエッジがいた。

「お、起きたか。おはようリディア。」
「お…おはようエッジ。もう大丈夫なの?」
「おう。すっかりよくなったぜ。」

それを聞いてほっとするリディア。

「よかったぁ。」

自然と笑顔がこぼれる。その可愛い笑顔を見て、思わずエッジはリディアにちゅっと口づけする。

「んっ…。もう、病み上がりなのにこんなことしてぇ…。」

翡翠色の瞳を潤ませ、頬を真っ赤に染めるリディアが可愛くて、エッジはますます嬉しくなる。

「お前のおかげで元気になったよ。ありがとな。」

エッジはリディアをそっと抱き寄せ、今度はおでこと頬にキスをする。

「何といっても、座薬入れてくれたからな。」
「そうよ、あんな恥ずかしいことさせて…。」


ニヤニヤするエッジに頬を膨らませて不機嫌な表情を見せるリディア。

「そんな怒るなって。今度お前が熱出したら、俺が座薬入れてやるからさ。」
「…!!いいもんっ、飲み薬で何とかするもん!」
「そんな照れるなよ~。もう何回もお互いの裸見てるじゃねえか。尻の穴ぐらい…」
「バカッ!!!!」


リディアの拳がエッジの頭に直撃した。







今日も、エブラーナの平和な一日が始まる…。


―完―
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2014
05.31

「Rose Garden」 あとがき

Category: あとがき
季節ものエジリディ第2弾、いかがだったでしょうか?ただのラブラブエジリディじゃなくて、ちょっとひねった内容にしようと思ってこういうストーリーになったんですが、結局ベタですねf^_^;


春バラを題材にしようと思ったのは、大阪の中之島公園のバラ園に友人と行ってきたのがきっかけなんです。それでもってクイーンエリザベスとか、プリンセスアイコとか、時の女王様や内親王様の名前がついてるバラもたくさんあって、これはぜひリディアの名前のバラを登場させよう!と思っていたらなんとイザヨイバラというバラも咲いていてそれとの絡みを入れたいと思ったわけです。(イザヨイバラは実在します!)


スウィート・リディアがなぜサーモンピンクかというと、見たバラの中で管理人が1番気に入ったフランス産のバラがその色だったからです( ̄▽ ̄)





ちなみに本数による花言葉ですが、

3本=「愛しています」
7本=「密かな愛」
99本=「永遠の愛」または「ずっと一緒にいよう」
108本=「結婚して下さい」


だそうです!何万種類もあるというバラにはそれぞれ花言葉があるんですが、本数によって花言葉が変わるなんて、花の王様ならではの貫禄ですね~。



以下、コメントへのお礼です☆


♡甘夏様♡

さっそくのお返事ありがとうございます!しかも初心者の私のサイトをブックマークしていただいてたなんて嬉しい限りです(*^^*)そして私のSSが甘夏様のBlogを立ち上げるきっかけの一部分になっていたこともすごーく嬉しいです!!本当、エジリディって素敵なカップリングですよね。色んな妄想が絶えません(笑)ちなみに私のSS、R-18ものが半分程を占めているのは、最初に読んだエジリディSSがそういう内容で、すんごくドキドキしちゃったからなんですよ☆健全エジリディ好きの方には目の毒以外の何でもないんですが、きっと需要があるはず!と信じていた私の勘は正しかったです( ̄▽ ̄)またそちらへ遊びに行かせて下さい♪



それでは皆様、またのご来訪をお待ちしております(^^)
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2014
05.31

「Rose Garden」

季節ものエジリディSS第2弾です☆ちょっと今月は書くの無理かな~と思いましたけど、何とか出来上がりました!では、どうぞ(^^)





「Rose Garden」





エブラーナの季節は今、春から初夏へと変わりつつある。大陸にはない梅雨という季節を前に気温は高くなり、湿度も上がりつつあった。


「ふー、暑いわねぇ…。」


エブラーナ王妃リディアは、生まれ育った大陸とは全く違う気候の変化に戸惑いながら暮らしていた。夏に気温が高くなるのはミストでも同じだったが、湿気はそこまで高くなかったため蒸し暑さを感じることはほとんどなかったのだ。



夫のエッジは今朝早くから仕事で城を留守にしており、リディアは昼食後も執務室で1人事務仕事に勤しんでいた。


「エッジ…今日は何時に帰ってくるのかな。」


ここ最近はエッジが城を留守にする公務と深夜までの内政業務に追われ、2人で過ごせる時間があまりなかった。しかし国王という立場に置かれている彼に、もっと一緒にいたいなどと言えばわがまま以外の何でもない。リディアは自分の気持ちを抑えながらエブラーナ城の留守を守っていた。



(ちょっと休憩しようかな…。)



仕事がひと段落したところで、お茶でも淹れようと椅子から立ち上がると、部屋のドアがノックされた。


「はぁい。」
「奥方様、失礼いたします!」



入ってきたのはエブラーナ四人衆のゲッコウ、ザンゲツ、イザヨイ、ツキノワだった。


「あら、皆揃ってどうかしたの?」
「奥方様、お仕事中恐縮なのですが、少しばかりお時間いただけませぬか?」
「??えぇ、いいけど…。」


ゲッコウの問いかけにキョトンとするリディア。

「実は少々御足労いただきたいので、ご準備いただけますか?」
「あ、うん。」

「では城の出口でお待ちしておりますゆえ、準備が整いましたらお越し下さいませ。」


何やらニコニコとしている4人を見てリディアは不思議に思うが、別に変な場所へと連れて行かれるわけではなさそうである。

「分かったわ。じゃあちょっと待っててくれるかしら?」
「ははっ!では後ほど…。」


四人衆は一瞬にしてリディアの前から消えた。


「…?何かしら…。」








そして…






「奥方様、お待ちしておりました。」

城の出口で四人衆が跪き、主君の妻を迎えた。


「ごめんね、お待たせ。…ところでどこに行くの?」
「それは着いてからのお楽しみにございます。どうか我らについてきて下さいませ。」

ザンゲツが笑顔で答える。

「ふーん…?」
「では参りましょう。」



笑顔の四人衆と共に、リディアは城を出て歩き始めた。




歩いて数分ほどすると、まだ夏ではないというのに、この気候に慣れていないリディアの身体からは湿気のせいで不快な汗が出てくる。持ってきた小さなタオルで汗を拭きながら四人についていく。


(どこに行くのかしら…?)





歩いていると、エブラーナ国立公園が見えてきた。初夏を間近に控え、生い茂る新緑がリディア達を迎えた。


道中はただ不快だった湿気も、こうやって緑に囲まれるとひんやりと快適に感じられる。山と林に囲まれた故郷のミストを彷彿とさせるその澄んだ空気に、リディアの気分は晴れていった。



公園の中に進んで行くと、そこには何種類ものバラが咲いていた。


「わぁ…綺麗!!」
「お気に召しましたか?」
「えぇ!」

ツキノワの問いに、笑顔で答えるリディア。

「奥方様、バラ園の入り口はあちらでございます。」
「あ、そうなのね。」

イザヨイに促され、リディアが入り口へと歩いて行くと…






「王妃様、お待ちしておりました。ここから先は某がご一緒いたしまする。」



跪き、エブラーナ言葉でリディアを迎えたのは…




「…エッジ!!」

リディアの顔を見上げ、二カッと笑う夫。立ち上がると、リディアの手をそっと握った。


「エッジ…仕事は?」
「ん?もう終わったぞ。」
「そ、そうなの?」
「おぅ。お前ら、ご苦労だった。城に戻ってくれていいぞ。」
「ははっ!」


任務を終えた四人衆は、素早く姿を消した。

「あ…。」


エッジが四人衆と計画したサプライズデートだということに気付き、リディアはエッジを見つめる。

「…そういうことだったのね。」
「そういうこと!最近お前と過ごす時間がなかったからな。」


嬉しそうに自分の顔を覗き込む夫を見て、リディアの表情は糸が切れたかのように緩み、思わず彼に抱きつく。


「おおぉ、何だよ~?」
「エッジ…!ずっと一緒に過ごせなくて淋しかったの…。」


彼の立場を思って淋しいとは口にできず、ずっと抑えてきたリディアの気持ちが溢れてくる。エッジの胸に顔を埋めると、彼の鍛え上げられた腕が優しくリディアを抱きしめた。

「俺も…淋しかったぜ?」
「本当?」
「あぁ。間違いなくお前よりも俺の方が淋しかったけどな?」

「もう…バカ。」

頬を紅潮させ、潤んだ瞳でエッジの顔を見上げる。

「…そんな可愛い顔で見つめんなよ。」
「うふふ。」



照れ臭そうなエッジをじっと見つめ、笑みをこぼすリディア。エッジも自分と同じ気持ちだったのを知り、こうして一緒に過ごせる嬉しさがふつふつとこみ上げてくる。


「じゃあリディア、中に入るぞ?」
「うん!」


2人が手を繋いでバラ園へと入ると、そこへバラ園の管理人がやってきた。愛想の良さそうな、ロバートという小太りな中年の男性である。


「これはこれはお館様に奥方様!ようこそいらっしゃいました。」
「今年も綺麗に咲いてるじゃねぇか。ロバートの手入れの成果だな。」
「いえいえ、お館様には何かと目にかけていただいて…。」
「リディア、俺達の結婚式場に飾ってあったバラはここで生育されたやつなんだぜ。」
「そうなのね!あのバラ、すごく綺麗だったわ。ありがとうね。」



2人の結婚式場にふんだんに飾られていた美しい紅白のバラ。幸せいっぱいの記念日のことが思い起こされ、リディアはうっとりとする。


「お2人の幸せのお手伝いができて何よりでしたよ。あの時期はちょうど秋バラの季節でしたからなぁ。」


ほぼ年中手に入る大陸産のバラと違い、四季がはっきりしているエブラーナでは、バラの開花時期が限られているのだ。


「ちょっと時期がズレてたら、あんなに華やかにはできなかったからなぁ。俺はちゃ~んと考えて結婚式の日取り決めたんだぜ?」

ドヤ顔でリディアを見つめるエッジ。

「何よぉ、恩着せがましいわねぇ。」

そう言いつつも満面の笑みのリディアは、エッジの腕にぴったりとくっつく。

「さぁさぁ、どうぞ春のバラをお楽しみくださいませ!ちょうど見頃ですし、今日はいい天気ですからな。」
「おぅ、ありがとな。…そうだリディア、これはお前にだ。」


エッジは懐からサーモンピンク色の1輪のバラを出し、リディアの手に握らせた。

「わぁ、きれい…ありがとうエッジ!」


それを見ていたロバートがにっこりと笑う。

「奥方様、バラにはそれぞれ花言葉があるんですが、本数によっても花言葉が違うのですよ。」
「そうなの?知らなかったわ。…1本は何か花言葉があるの?」
「はい、ございますよ。」

エッジは何やら恥ずかしそうに頷いている。

「どんな花言葉?」

「それはですね…」

ロバートがエッジに目配せすると…




「…『一目惚れ』だよ。」




恥ずかしそうなエッジの言葉にリディアの鼓動は速まり、頬はみるみる薔薇色に染まる。





「もうっ…やだぁエッジ…!」


もらったバラをキュッと握りしめて何をどう言えばいいのか分からないリディア。自分を見つめるエッジと目を合わせられず、顔を背けた。


「はっはっは!お館様の一本勝ちですな!」
「ん、そうみてぇだな。」

エッジは笑顔でそう言って、リディアの手をそっと繋ぐ。自分より少し高めの体温をたたえる優しい手の感触に、ますますリディアの鼓動は速くなった。




「さて!リディア、行こうか。」



照れ臭さを振り切ろうとするかのようなエッジの一言で、2人は歩き出した。





ロバートに見送られ、バラの蔓でできたアーチをくぐった2人。華やかで気品のある香りに包まれるそこには湿気でしっとりとした空気の中、紅白のものからピンク、黄色、オレンジ、紫など、色とりどりのバラが瑞々しく咲いていた。同じ色でも淡色や濃色、グラデーションになっているものや花びらの淵だけが濃い色だったり、一株から異なった色のバラが咲いているものもあり、リディアはその多彩な美しさにため息を漏らす。


「すごいね、色んな種類があるんだね…。」
「だろ?ロバートが色々と交配して、新しい色や柄のバラを生育してんだ。昔は紅白しかなかったんだけど、月の大戦でこのバラ園も被害受けちまって、それを機に大陸産のもんと差をつけたいからって言って、色んなバラを作り始めたんだ。ほら、そこにある紫っぽいバラなんか大陸ではあんまり見かけねぇだろ?」


月の大戦後、復興で国の財政が逼迫する中、エッジはロバートの情熱を汲み、僅かであったが彼に資金を融通していたのだ。


「そうなんだ…。だからあの管理人さん、エッジに頭が上がらないのね。」
「ははは、あいつのバラが世界中で売れてるおかげで今はばっちり税金払ってもらってるからな。寧ろ俺の方が頭上がらねぇよ。」


情に厚いエッジのおかげで、こうして助かっている人がいる。それを間近で見てリディアの心は高鳴り、ただ感銘を受けるばかりだった。


「エッジってば本当に…」
「あ?」
「…ううん、何でもない!」
「何だよ、言えよ~。」
「うふふ、言わない!」




(すごいね、なんて言ったら調子乗るだろうしね…ふふ。)







「あれっ、このバラ…。」

しばらくバラを見ていたリディアの目に止まった幾重もの真紅の花びらをたたえる大ぶりのバラのネームプレートには…



『クイーン・ローザ』



「これって…あのローザ?」
「おぅ。セシルとローザがバロンの王と王妃になった後、ボロボロだったうちの国に来て復興支援してくれてよ。それがきっかけでこのバラ園が軌道に乗ったんだ。んで大戦後に初めてできた新種のバラがこれで、支援の感謝の気持ちを込めてクイーン・ローザって名前をつけたんだ。いつだったか、あいつらの結婚記念日の祝いに送ってやったんだぜ。」

「へぇ~、そうなんだぁ。すごく豪華だし、ローザにぴったりねぇ。」
「だろ?あいつほど紅いバラが似合う女もそういねぇしなぁ。何せバロン屈指の美女だもんな。あんないい女をつかまえたセシルは本当幸せもんだぜ。」

「ん…そうだね。」


珍しく笑顔で自分以外の女性を褒めるエッジ。相手は気心知れたローザだというのに、リディアの心は何となくささくれ立ち、表情が曇る。


「ん、リディアどうした?」
「…何でもない。」



リディアの様子を見て、何やらエッジはニヤニヤしている。

「何よぉ。」

「そうだなぁ…お前に似合いそうなのは…」

怪訝な顔をするリディアを尻目に、エッジはキョロキョロと周りを見渡した。


「お、あれだ!」

リディアがどのバラかと思いながら少しドキドキしていると、エッジは近くのバラの蔓に手を伸ばし…



「ほら、お前にピッタリの色だぜ?」


エッジの手には、バラの蔓にへばりついていた青虫。



「なっ…!!!どういう意味よっ!!」
「いやぁ、これなら緑だし、お前の髪と目の色と合うじゃねぇか。」
「ひどーい!!エッジのバカッ!!」


ゲラゲラ笑うエッジに、ポカッとリディアの華奢な拳が振り落とされた。




戦友のローザは大きな真紅のバラが似合うと言われてるのに自分は青虫だなんて、悔しいのか何なのか分からない感情が湧いてくるリディア。さっきまでの嬉しい気持ちが徐々に消失し、苛立ってくる。



(せっかくのデートなんだし、こんなにイライラしちゃいけないよね…。)


自分はエッジの妻。彼がどんなに他の女性を褒めようとからかわれようと堂々としていなければ、と思い直すリディア。しかし…



「…!これは…。」





『イザヨイバラ』



ローザに続いて、イザヨイの名が付いたバラを見つけたリディア。その色は妖艶な女性をイメージさせる青みがかった濃厚なピンク。まさにイザヨイにぴったりなバラである。


「エッジ、このバラ…」
「ん?おぉ、イザヨイバラじゃねぇか。」
「…何でイザヨイの名前が付いてるの?」
「そりゃこのバラがあいつにぴったりだからだよ。イザヨイの奴、すげぇ美人で色気があるし。ロバートもイザヨイの大ファンだからな~。」


今度は部下を女性として褒めちぎるエッジ。身近な女性が2人もバラの名前になっていることを知り、しかもエッジが名付けたようなニュアンスに、モヤモヤとした感情が湧いてくるリディア。


「…そうね、イザヨイにぴったりなきれいなバラね。」



エッジに同意するリディア。しかし声のトーンが低く、エッジが異変に気付く。


「何だよ、どうした?」
「…別に。」



その後色んなバラを観賞したが、リディアの表情はあまり晴れなかった。



ローザは美しい真紅のバラ
イザヨイは妖艶な濃いピンクのバラ


自分は青虫



これらの事がリディアの頭をグルグルと回り続け、イライラするばかりだった。




「なぁリディア、もう少し行ったところにロバートの作業場があって、そこで休憩できる喫茶スペースがあるんだ。そこで茶でも飲もうぜ?」
「うん…。」


エッジが笑顔で話しかけるが、リディアはバラを見たまま彼とは目を合わせなかった。



「なぁ、何怒ってんだよ。」
「…。」


リディアはエッジにもらったバラをぎゅっと握る。一目惚れって言われて嬉しかった気持ちも、もう何処かに行ってしまった。


「…とにかくあっち行こうぜ。」


何も答えないリディアの手を引き、喫茶スペースへと向かうエッジ。







「おーいロバート、茶でも飲ませてくれねぇか?」
「はい、すぐにご用意いたします!」


喫茶スペースにあるテーブルにつくと、ロバートがポットと2人分のティーカップとケーキを持って来た。


「奥方様、こちらは私の特製ローズティーでございます。いい香りがしますよ。」

リディアのティーカップに注がれた赤いハーブティーからは、バラの香りが漂ってきた。


「わぁ、いい香り!」
「ちょうど3時を回った頃ですので、ケーキもどうぞ。」
「ありがとう、美味しそうね。」


リディアはロバートに笑顔で礼を言った後、向かい合うエッジの顔を見ずにケーキを食べ始めた。


「リディア、見てみろよ。ここからバラ園全部見渡せるんだぜ。」
「…そうね。」


素っ気ない返事をし、ハーブティーを啜るリディア。


「いつもは緑茶だけどよ、たまには大陸風なもん飲みてぇだろ?」
「…うん。」


笑顔で話しかけてもツンケンとする妻に、エッジはムッとする。


「お前さっきから何でそんなに機嫌悪いんだよ?」
「…別に悪くないわよ。」


再びケーキを食べるリディア。そこにロバートが現れ…


「お館様、奥方様、バラはいかがでございましたか?」
「おぅ、すげぇ見応えあったぜ。クイーン・ローザはきれいだし、あのイザヨイバラ、名前の通り濃いピンクがなかなかの色気を醸し出してるじゃねぇか。」
「さすがお館様!分かっていただけましたか。イザヨイ殿のお色気をイメージできる色でしょう?」
「あぁ。あいつのこう…ムチムチとした感じが浮かんでくるというか…ぐふふふふ。」



エッジの手を見ると、何かを握りたそうないやらしい指の動き。リディアはそれに嫌悪感を覚えて目を向けていられず、ケーキを口に含んだまま俯いた。すると…



「お館様、前に言っていた新しいバラができたのでお持ちいたします!なかなかの出来ですぞ。」
「お、そうか。なら見せてくれや!」



そう言ってロバートが持ってきたのは、5種類の鉢植えのバラだった。

「さぁさぁ奥方様もご覧下さいませ!どれもお2人がよくご存知の名前ばかりですよ。」
「え…?」


リディアが顔を上げると、エッジが淡いピンク色のバラの鉢を手に取る。

「これは『レディ・ポロム』。あの子の可愛いピンクの髪に似てるだろ?大きくなって、すっかり美人になったもんな~。」
「…そうね。可愛いわね。」

「んで次が『レオノーラ・イエロー』。赤ほどは目立たねぇけど、可憐な感じがレオノーラらしいだろ?」

明るい黄色のそのバラは、まさしく可憐なレオノーラをイメージさせる。

「こっちが『チアフル・ルカ』だ。王女だけど、シドの弟子として直向きに頑張ってるあいつには、元気なオレンジがぴったりだよな。」
「…うん、今もシドと一緒に頑張ってるもんね。」

「ほいでこれが『インテリジェント・ハル』。出しゃばらずに知性でギルの奴を支えるハルっぽく、控えめな感じがいいだろ?」

薄紫色をしたそのバラは、一歩下がって主君のギルバートを引き立たせるハルの淑やかな振る舞いを彷彿とさせる。

「最後が『プリンセス・アーシュラ』。まだまだ若いけど、大成しそうなあの子には真っ赤なバラがぴったりだよな。可愛い上に武術のセンスもあるしよ。」

小ぶりで明るい赤のそのバラは、真月の戦いにおいて父であるヤンを師とし、強さと優しさを身に付けていったアーシュラによく似合いそうだった。

「…ヤンもこのバラ、気に入るでしょうね。」



次々と出てくる戦友の女性の名をとった美しいバラを前に、リディアの中ではモヤモヤとした気持ちがどんどん膨らんでいく。今まであまり感じたことのないこの感情をどうすれば良いのか分からないリディアはただ俯いていた。


「いやぁ、お館様の戦友の女性達はどの方もお美しくて、バラの名前にするにはぴったりですな!」
「だろ?若いのから子持ちまで色々だけど、全員女としての魅力たっぷりだからな~。」


卑猥な男同士のお喋りに、夫の口から次々に出てくる他の女性の話題。さっきから苛立っていたリディアはもう耐えられなかった。


「…エッジ、私帰る。」
「え?」
「もう帰る!」

「な、何だよ…。」

その場を去ろうとするリディアを宥めようと、エッジは彼女の腕を掴む。


「離してよっ!」
「お前何をそんなに怒ってんだよ?」


自分が怒っている理由を全く自覚していない夫に、ますます怒りがこみ上げてくる。俯いて唇をぐっと結び、華奢な拳に力がこもる。そして次第にその翡翠色の瞳からは涙がこぼれてきた。


(せっかくのデートなのに、どうしてこんな思いしなきゃなんないの…。)





「…何だよ、何が気に入らねぇんだよ?」


何も分かっていない夫に、リディアの怒りは爆発した。



「さっきから何なのよ!!ローザやイザヨイや他の皆はバラみたいにきれいだって言ってるのに私は青虫だなんてっ!!」
「そんな事で怒ってんのかよ?しょうもねぇ奴だなぁ。」


軽く笑うエッジに、リディアは惨めな気分になって拳がガクガク震え出し…





「それに、皆の名前が付いたバラがあるのに、どうして私の名前のバラはないのよ!?」






エッジとロバートがポカンとした顔でこちらを見ているのに気付き、リディアはハッとして口を覆う。




エッジにぞんざいに扱われたショックとモヤモヤする感情に駆られ、大人げないわがまま発言をしてしまった。これでは友達が持っているおもちゃを自分も買って欲しいと駄々をこねる幼い子供と同じである。



その場でわなわなと震えていると、エッジが呆れた表情でため息をつく。


「…悪かったな、気が利かなくて。けど俺はそんなこと考えられるほど暇じゃねぇからな。」


低い声で発されたエッジの言葉で、リディアは寒気がし、一気に血の気が引くような思いをした。夫は国王で大変な立場にいる中、こうして自分との時間を作ってくれているというのに。




「…帰るんだろ?出口はあっちだぜ。」


詫びようとしたリディアだったが、寛大な彼でも許容できないわがままを言ってしまったようである。


「道が分かんねぇなら、ロバートに連れてってもらったらいいじゃねぇか。」



もうこの場にはいられない。いたたまれなくなったリディアは出口に向かって歩き出した。










「うっ、うっ…。」


せっかくのデートが台無しになり、リディアはぐずりながら出口への道を歩いていた。


エッジがあんなに無神経だったなんて。しかもイザヨイの身体に触りたそうな彼の言動に自分以外の女性の名をとったバラ。今まで自分を1番に考えてくれていると思っていたのに。


「うっ…うわぁぁぁん…!」


その場に座り込み、嗚咽を漏らす。とめどなく流れてくる涙は、持っている小さなタオルをあっという間に濡らした。







こうして泣いていたら、いつもあなたは優しく抱きしめに来てくれたのに―――



私のそばにいてくれたのに




どうしてなの?




私が甘え過ぎたから、愛想尽かしちゃったの?




エッジ…!!
















「はぁ…。」


一頻り涙を流し、落ち着きを取り戻してきたリディアは出口に向かおうと立ち上がる。


(エブラーナ城への道、分かんないや…どうしよう。)


行きは四人衆が連れてきてくれたため、どこをどう来たのか思い出せないリディア。ロバートに頼むしかないと思っていると、何やらいい香りがしてきた。




「あれ、このバラは…。」



自分の周りをよく見ると、見覚えのあるサーモンピンクのバラが1面に咲いていた。


「エッジがくれたバラだわ…。」


さっきのいざこざで、もらったバラは喫茶スペースに忘れてきてしまったが、可愛い色だったのでリディアの記憶に残っている。新種のバラなのだろうか?気軽に見れるようになっていた他のバラと違い、大事そうに柵で囲われており、かなりの数が咲き誇っている。


「奥方様!!」



リディアの元にロバートがやってきた。

「ロバート!…さっきはごめんなさい。見苦しかったでしょう?」
「いやいや!私の方こそお耳に障ることを申し上げてしまいまして申し訳ございません!」

「ううん!私がついカッとなっちゃって…。」

そう言った後、ロバートは何やらニッコリとする。


「奥方様、こちらのバラはお気に召しましたか?」
「あ、えぇ…。すごく可愛い色ね。」
「それはそれは!お気に召したようで何よりです!」


満面の笑みのロバートを見ていると、リディアにも笑顔が戻ってきた。


「このバラは最近やっと出来上がった新種でしてね、ようやくお見せできるようになったんですよ。」
「そうなのね…。何ていうバラなの?」


ロバートはまたしても満面の笑みを浮かべる。

「奥方様、それは名付け親のお館様に聞いてみて下さいませ。」
「えっ…?」


さっきあんなに険悪な雰囲気だったのに、そんなことを聞けるものかとリディアが俯いていると…



「リディア。」


リディアが振り向くと、そこには笑みを浮かべるエッジがいた。

「あ、エッジ…。」


リディアは気まずくて、エッジの顔を直視できない。


「ほれ、忘れもんだ。ったく、せっかく俺がプレゼントしたんだから大事に持っとけよ?」


テーブルに忘れてきたバラをリディアの手に持たせ、俯くリディアをそっと抱き寄せたエッジに、ロバートはニッコリと笑う。


「お館様、奥方様にこのバラの名前を…。」
「おぅ。…リディア、このバラ気に入ったか?」


俯いたまま小さく頷くリディア。

「そうか、よかった。このバラの名前はな…」
















「『スウィート・リディア』っていうんだ。」













驚いて顔を上げたリディアが見たのは、とっても優しい笑顔のエッジ。






リディアの唇に、そっと重なるエッジの唇。




「エ、エッジ…!やだぁ…。」



もう嬉しいのか恥ずかしいのか分からないリディアは胸の前で両手をキュッと握り、ひたすらもじもじとする。


「へへ~、びっくりしたか?」
「…うん。」
「ロバート、ありがとな。」
「いえいえ、こちらこそ予定よりもかなり時間がかかってしまいまして…。」


2人の会話を聞いて不思議そうな顔をするリディアに、ロバートが説明し始めた。


「以前からお館様は奥方様のためにバラを作って欲しいと仰ってましてね。本当はご婚礼の日までに用意することになっていたんですが、予想以上にこの色を出すのに難航してしまい今になった…というわけです。他のバラと違って、こちらのスウィート・リディアはピンクとオレンジの絶妙なバランスが必要ですからなぁ。」

「そういうこと!簡単に作れるような色じゃ、そこらのバラと差がつかねぇもんな。」


話を聞いたリディアは、胸が熱くなってくるのを感じていた。

「じゃあ、さっきあんな事を言ったのは…」
「もちろん、お前をびっくりさせるためだぜ?普通に見せたんじゃ面白くねぇだろ?」

ニヤニヤと笑うエッジを見て、リディアの翡翠色の瞳が潤みだした。


「本当にお館様はお人が悪いですなぁ~。奥方様を驚かせたいからとわざと怒らせるなんて。今朝の打ち合わせの時に普通にデートなさったらどうですかって言ったんですがねぇ。」

「えっ?」
「だっ…ロバート!余計な事言うんじゃねぇ!」


相変わらず情報管理の甘いエブラーナ国王である。



「エッジ…今日仕事じゃなかったの!?」
「…。」

エッジの頬は真っ赤だった。


「お館様は今朝からここに来て、私と四人衆と一緒に、奥方様とのサプライズデートの準備をなさってたんですよ!」
「ロバート!余計な事言うなっつっただろーが!」

「はっはっは、これは失礼!では私はこれにて…。」


笑顔で作業場へと戻っていくロバートを見届けた2人は顔を見合わせる。


「エッジ…。」
「ん?」
「私をわざと怒らせて、って言ってたけど、その…ローザがすごく美人だとか、イザヨイの身体が色っぽいとか言ってたのは…あの…。」


「ぜーんぶ、演技だぞ?」


キッパリと言い切られたエッジの言葉で、リディアはもやもやした気持ちがスッと晴れていくのを感じた。

「けど…バラの名前はエッジが付けたのよね?」
「いや、あれはロバートが付けたんだ。俺が名付けたのはスウィート・リディアだけだぞ。」
「…そうなの?」
「おぅ。大体何で俺がいちいち新種のバラに名前付けなきゃなんねーんだよ。お前を怒らせるためにバラの名前覚えて、ローザ達へのおべんちゃら考えるの大変だったぜ。」



腕を組みながら誤解に苦笑するエッジに、リディアの表情は緩む。それを見たエッジはニヤニヤと笑いだし…




「いやぁ、お前があんなにヤキモチ妬いてくれるとはなぁ~。すげぇ嬉しいぞ。見事に俺の演技に嵌ってたから、思わずポカンとしちまったぜ。」
「へ…?」


エッジが他の女性の話題を口にしたことに苛立ってしまったということは…


「お前は、それだけ俺のことが大好きってことだよな?」


ルンルン気分でリディアの手を握り、彼女を見つめるエッジ。するとさっきまで険悪だった夫の笑顔にホッとしたリディアの翡翠色の瞳からは、ポロポロと涙がこぼれ出す。


「エッジ…!!」


自分の名が付いたバラを握りしめたまま、リディアはエッジに抱きついた。

「おぉよしよし、可愛いやつだなぁ~。…俺が他の女の話なんてしたから不安になっちゃったか?」


エッジはぐずりながら頷くリディアの髪を優しく撫でる。

「あんな気持ちになるの…もういやぁっ!」
「ん…そうか、ごめんなリディア。」
「エッジのバカぁっ…!」
「すまねぇ、リディア。…俺はお前のことしか見てねぇからな?」


この10数年の間1度も抱かなかった、嫉妬という感情。それを感じるのがこんなに苦しいなんて。エッジへの想いがどんどんこみ上げ、ひたすら彼にしがみつく。




ちゅっ。


「今のはごめんねのチューだぞ?」
「…。」


頬にキスされ、何やら言いたげな表情のリディア。

「ん、ごめんねのチューじゃ足りねぇのか?ならちょっと待ってろ。」


そう言ってエッジが持ってきたのは、スウィート・リディアの花束だった。


「ほれ、これで機嫌直せよ。」
「…うん。」


ふとロバートの言葉を思い出したリディアが本数を数えると、そこには10本のスウィート・リディア。


「10本って…何か花言葉あるの?」
「んー、10本は知らねえけどよ、11本なら花言葉があるぜ?」





11本。





リディアはエッジにもらっていた1本のスウィート・リディアを花束と合わせた。

「…これで11本あるわ。どんな花言葉なの?」
「あー…それはだなぁ…。」



何やら言いにくそうにしているエッジの口から出た花言葉は…









「『最愛』だよ。」












リディアの頬が薔薇色に染まる。

エッジの頬も薔薇色に染まる。







初夏の湿気を含んだ風が、ふっと吹く。





じっと見つめ合う2人。







エッジの手が、ゆっくりとリディアの背中に伸びた。





その手がリディアを抱き寄せると同時に、リディアは自分から身体をエッジに預ける。







強く強く、抱き合う2人。






蒸し蒸しする気候の中、2人の手も身体も汗ばんでいたけれど、そんなことはもうどうでもいい。








何の言葉もなく、ただ愛する人を自らの腕でしっかりと抱きしめる。






息遣い

体温

鼓動

匂い








全部全部、大好き










抱き合ってどれほど過ぎた頃か、ようやく2人は顔を合わせる。


「ふふふ、エッジ汗びっしょりじゃない。」
「へへへ、リディア…お前こそ汗だくだぞ。」




再び抱き合うエッジとリディア。口づけする2人の汗と体温が溶け合っていく。











「なぁ、リディア…。」
「ん?」


「ここに咲いてるスウィート・リディアはよ、999本あるんだ。」
「うん。」

「999本のバラにも、花言葉があるんだ。」
「そうなんだ。どんな言葉?」



「知りたいか?」
「うん。」




エッジはリディアに、花言葉を耳打ちする。






「…!!もうっ、エッジ…!」
「何だよ~、せっかく言ってやったのに。」



2人の頬は、また薔薇色に染まっていた。



「…でも、嬉しいな。」
「そうか。なら良かった。」



自然に重なり合う2人の唇は、角度を変えながら何度も深く深く、相手に侵入していった―――










リディアが持ち帰ったスウィート・リディアはあっという間に国中の女性達の間で人気となり、その後世界中に出荷されると、その可愛らしさで大ヒット商品になったという。












999本のバラの花言葉、それは―――













『何度生まれ変わっても、貴方を愛する』





―完―


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2014
05.23

「饅頭怖い!?」 あとがき

Category: あとがき
ごちそうさまなラブラブエジリディに仕上がりました(笑)自分で書いといて何ですが、読み返すとお腹いっぱいです



おやつのことで喧嘩するのは、エッジとリディアのカップルならではかなぁと。もしセシルとローザだったら、こうはならないでしょうしねちなみにタイトルは、落語の定番の「饅頭怖い」をそのまんま使いました。友人が饅頭怖いの英語バージョンを演じていたんですが、面白くて印象に残っていたもので(^.^)



うーん、それにしてもエジリディは妄想が止まらない…。稚拙な作品ばっかりですが、これからも新しいSSをUPしますので、またのご来訪お待ちしてます
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2014
05.23

「饅頭怖い!?」

「夜の八重桜」の中に出てきた、エッジとリディアがおやつのお饅頭のことで喧嘩になった時の話を書いてみました( ̄▽ ̄)







「饅頭怖い!?」







ある日の昼下がりのエブラーナ城。





(あ、もう1個しかないや…。エッジと半分こね。)

3時のおやつにエッジと饅頭を食べようと箱を開けたら1個しかないことに気付いたリディア。箱から饅頭を取り出してお皿に乗せ、お盆に乗せて執務室まで持って行った。


執務室に入ると、エッジはいなかった。

(あれエッジ、トイレかな?)


「そうそう、お茶淹れて来なくちゃ。」

リディアは饅頭を乗せた皿を机に置き、調理場へと向かった。




一方その頃、リディアと入れ違いにエッジが執務室に戻ってきた。


(ふー、今日はなかなか疲れるぜ。)


そう思っていると、机の上に置かれた饅頭がエッジの目に入る。


「お!リディアの奴、3時のおやつを用意してくれたんだな。」










調理場にいるリディアは、エッジの好きな玉露の缶を取り、2人分のお湯を沸かす。

「エッジ、このお茶好きなのよね~。」

忙しいエッジの仕事の合間のティータイムは、彼と一緒に過ごせるリディアの大好きな時間。自分達の湯呑みを出し、夫の喜ぶ顔を浮かべながらお茶を淹れる。


淹れた玉露の香りは独特で、その味は渋いながらも絶妙な甘みと旨さ。ミストやバロン地方で飲まれている紅茶とは全く違う美味しさである。エブラーナに住んでからは文化の違いを感じることが多く、リディアにとっては何もかもが新鮮だった。



お盆に湯呑みを乗せ、鼻歌混じりで執務室へと戻るリディア。


(エッジ、戻ってるかなぁ…?)


ドアを開けると、エッジがいた。

「あ、エッジ。お茶淹れてきたわよ。」
「おぅ、ありがとな。」

エッジは立ったまま書類を手に持ち、何やら口をもぐもぐさせているので、まさかと思ったリディアがお饅頭を乗せていたお皿を見ると…


「あっ、お饅頭がない…!」
「ん?」
「それ最後の1個だからエッジと半分こしようと思ってたのに…!」


リディアがそう言った途端、エッジの喉がゴクリと動いた。















非常に気まず~い空気が2人を包み込む…。







「わ…悪りぃ、リディア…。」
「そんなぁ…!私も食べようと思ってたのに…。」


仕事の疲れが出てくる時間帯の糖分補給と夫との会話は、リディアのとても大事な時間。せっかくの楽しみをぶち壊され、今にも泣き出しそうなリディアの顔を見たエッジは、どう弁解しようか必死に頭を巡らせる。



「あ、いや…その…お前はもう自分の分は食ったもんだと…。」
「何よそれ!いつも一緒に食べてるじゃない!1つしかないのに、おかしいと思わなかったの!?」
「あ、あぁそうだな…。」


(や、やべぇ…殺される…。)


この世界で1番の黒魔法の使い手とも言えるリディアから、何やら殺傷力のありそうな魔力が放出され始めているのを感じるのは気のせいか。慌てたエッジはリディアを宥めようと、彼女の肩を優しく撫でる。


「リ、リディアすまねぇ…!今すぐ調理場の子に饅頭買いに行ってもらうように言ってやるよ!」
「担当の子には買っておくの明日のおやつの時間まででいいからって言ってあるもん。そんな事したら忙しいのに気の毒じゃない!」
「う…そ、そうか。なら、他に茶菓子がねぇか見てきてやるよ!」
「…もう何もないわよ。さっき見てきたもん。」


何を言っても空回りしてしまう残念なエブラーナ国王。怒って低い声で話すリディアからはデスの魔法が放たれそうな空気が漂っている。必死にどうやってこの場を乗り切るか考えを巡らせるエッジだが、戦闘の時以上の緊迫感の中、変な汗が身体中から吹き出てくるだけだった。



「あ、えーと…その…。」
「もういいわよ!」



必死に何かを言おうとする夫をピシャリと遮り、持っていたお盆を机に置いて自分の湯呑みを取って椅子に座り、立ちつくすエッジを尻目に仕事を再開するリディア。彼女からは背後にいるエッジに向かって、近寄るんじゃねぇ話しかけたらぶっ殺すぞてめぇオーラが発されていた。




エッジはそれに対抗し、申し訳ございませんもう2度といたしませんお許し下さい王妃様オーラをリディアに向かって放ってみる。しかしあっという間に彼女の殺気立ったオーラにかき消されてしまい、デスの魔法で現れる死神がエッジを睨みつけているのが見えた。


(ひ~…!!!まだ死にたくねぇよ…!)


何とか一命をとりとめた(?)エッジは、リディアの淹れてくれたお茶を飲もうと、お盆の上の湯呑みを手に取り、自分の椅子に座った。



ここは仲直りするきっかけをつかもうとお茶を啜り、チラリとリディアを見ながら…




「あー、美味い!大好きな嫁さんに淹れてもらった茶は最高だな~!」
「…。」














余計に気まずいだけだった。







エッジの身体からは変な汗が再び吹き出てくる。戦いの時は冷静な判断を下せるようになったエブラーナ国王だが、相手がリディアとなるとまるっきりそれが不可能だった。詫びのキスをしようにも、リディアの身体に触れようものなら即死しそうな雰囲気である。


(まさに、食べ物の怨みは恐ろしいってやつだな…。)







リディアから絶え間無く放たれる殺気立ったオーラは、ビシビシとエッジの身体を突き刺す。




(あ~、誰か決裁のサインでももらいに来てくれねぇか…このままじゃ俺死んじまう…。)





すると、執務室のドアがノックされた。

「!!おぅ、入っていいぞ!」
「失礼致します!」


入ってきた数人の家臣達は、気まずい雰囲気の中にいるエッジの目には光り輝く救世主に見えた。



「ご苦労さん。どうした?」
「はっ!新施設建設現場の測量の結果なんですが、先程現場の者から報告書が届きまして…」
「おっ!早いじゃねぇか。んでどうだったんだ?」
「建設にあたっては特に問題はないかと思われますが。」
「んー、そうか。そういやあの辺は地震とかは大丈夫なのか?昔、大地震があったって聞いた気がするぜ?」
「そうですか…記録を見てみないと分かりかねますので、お持ち致します!」

「!!あ、なら俺が記録を見に行く!お前らの部屋にあるのか?」
「いえいえ、こちらにお持ち致します!」


せっかくのこの気まずい雰囲気から逃れるチャンスだというのに、家臣達の丁寧さはエッジにしたらありがた迷惑だった。


「いや、俺が行く!お前らも忙しいだろ?」
「はぁ…ではお越しいただけますか?」
「お、おぅ!」


(ふ~、助かったぜ!次回のこいつらのボーナス増額しておくかな…。)


エブラーナ国王よ、それは職権濫用に該当しないか。エッジは執務室を後にし、家臣達にひょこひょことついていった。







そしておよそ1時間後…



「さて…。」



記録を確認し終わったエッジはキョロキョロと周りを見渡しながら中央塔の出口に着くと、音を立てずに屋上へと飛び上がる。そして気付かれないように外壁を飛び越えてこっそり城を出ようとすると…


「お館様!」

家老が気付き、エッジを呼び止める。

(じい…何でいつもこのタイミングで…)

苦い顔をするしかないエッジ。

「どちらに行かれるのですかな?」
「あ、いや…ちょっと野暮用ってやつだ。」
「はい?」
「心配すんなって!すぐ戻って来るからよ!」
「そう言っていつも長時間帰って来られないではないですか!もうミストに行く用事もないというのに、一体どちらへ行かれるのですか!」
「いや、本当にすぐ帰って来るって!30分かそこらだからよ!」

「…そうでございますか。ではお気をつけて…。」
「お、おぅ!すまねぇな、心配かけて。」



家老が城内に戻って行くのを見届けると、エッジは忍者としての脚力を活かして目にも止まらぬ速さで走り出した。




(早く行かねぇと…!)












「はぁ…。」


執務室にいるリディアがため息をつく。糖分補給ができなかったせいで頭にエネルギーが回らず、仕事が捗らない。


「もうすぐ夕食だし、それまでの我慢よね…。」




リディアは再び書類と向き合い、仕事を続けた。






そして…









リディアがエネルギーを使い果たした身体を引きずり、王族用のダイニングルームに行くと…


「おぅ、リディア。」
「…。」


エッジの呼びかけには応えず、下を向いて自分の席に座り、空腹も手伝ってか、リディアは再び殺気立ったオーラを放つ。



いつもは豪快に組んでいる脚をきちんと閉じ、手は膝の上、椅子に深く腰掛け、縮こまるエッジ。





(頑張れ、俺…もう少しの辛抱だ。)





食事が配膳されると、無言の夕食が始まった。エッジはチラチラとリディアの様子を見ながら食事を口へ運ぶが、リディアはエッジの方を全く見ようとしない。




(お、東利の柴漬け!これ美味いんだよな~。)


エッジがお気に入りの漬物が出されているのに気付き、食べようと箸を伸ばした。すると、何ということかリディアの箸と重なった。重なった箸からも寒気がするような殺気が伝わってきて、思わず身震いするエッジ。



「…あぁ、悪りぃ。先に取れよ。」



リディアは無言で漬物を先に取る。




饅頭1つの事で、ここまで怖い思いをするはめになったエブラーナ国王は、黙って食事を続ける。



「ごちそうさまでした。」


リディアは食事を終え、エッジなど気に留める様子もなく席を立とうとすると…



「奥方様、本日は食後のデザートがございますよ。」

「え!?」



侍女のデザートという言葉を聞き、3時のおやつにあり付けなかったリディアの目がキラキラと輝き出した。


「こちらでございます。」


侍女がニコニコしながら持ってきたのは、お皿に乗せられた3本のエブラーナ菓子・みたらし団子だった。老舗のエブラーナ菓子屋で売られており、濃厚なタレとコシのあるもちもちとした団子が特長で、他国からも注文が来るほどの人気なのだ。


「わぁ…!!このお団子、また食べたいと思ってたの!」



リディアは婚約期間中、エッジに店に連れて行ってもらったことがあり、そこで1度このみたらし団子を堪能したことがあった。しかし国内外で大人気なために品切れが続き、リディアがエッジにまた食べたいとおねだりしていたのだが、その後は入手が不可能だったのだ。



「いただきまーす!」



リディアは満面の笑みでみたらし団子をぱくっと口に入れた。程よく醤油味のついた甘いタレと、団子のもちもちとした食感がリディアの口の中で絶妙なハーモニーを織り成す。


「ん~、おいしーい!!」


幸せそうなリディアを見て、エッジは微笑む。


「美味いか?」
「うん!」


さっきまでの殺気立ったオーラは消え去り、すっかりご機嫌のリディア。1本だけでは足りず、もう1本手に取ると、それもあっという間に平らげる。


(ん~幸せ~!)




最後の1本のみたらし団子を前に、リディアはちらりとエッジを見た。


「いいぞ、好きなだけ食えよ。」


にっこり笑う夫を見たリディアは、さっと最後の1本を手に取る。もぐもぐと幸せそうに団子を食べるリディアを、終始笑顔で見つめるエッジ。


「はぁ~、おいしかったぁ。お菓子買っておくの、明日のおやつの時間まででいいって言ったのに。それにこのお団子、よく手に入ったわね?」



それを聞いた侍女はにっこりと笑う。



「奥方様、みたらし団子はお館様がご用意されましてございます。」

「えっ!?」



リディアがエッジを見ると、彼は照れ臭そうに少し視線を逸らしながら微笑んでいた。




(エッジ…!)







2人はダイニングルームを出た。

「リディア。」
「ん?」
「…執務室で待っててくれねぇか?」
「…うん。」




(エッジ…あんな遠くまであのお団子買いに行ったの?)




リディアが執務室で待っていると、エッジがお茶の入ったリディアの湯呑みを持ってきた。


「ほら、飲めよ。甘いもん食ったし、喉渇いてるだろ?」
「うん…。」


夫が淹れてくれたお茶を啜ると、リディアの身体いっぱいに温もりが広がっていき、幸せな気分になってくる。


「おいしい…。」
「へへへ、そりゃ良かった。」



自分の椅子をリディアのすぐ横に寄せてそこに座り、彼女をじっと見つめるエッジ。



丸く見開かれたリディアの大きく透き通った翡翠色の瞳がぱちぱちと瞬きし、長い睫毛が揺れ、その美しさにエッジの胸は高鳴る。



鍛え上げられた腕がリディアの背中に回り、ギュッと彼女を抱き締めた。


「エッジ…?」


妻と視線を合わせたエッジはゆっくりと彼女と唇を重ねる。



ちゅっ、ちゅぷ、ちゅぶっ…



口周りからねぶり上げるような夫の口づけを、リディアはポーッとしながら受け入れる。


エッジの舌はリディアの上唇と下唇をぐるりと舐め上げ、両方の口角も舌先でぺろりと舐める。


顔を離すと、リディアの頬はほんのり赤らんでいた。昼間の出来事のせいで、何となくエッジと視線を合わせづらくなり、少し俯くリディア。


「へへ…お前の口周りがみたらし団子のタレだらけだったからな。」
「…嘘ばっかり。」



どう反応すれば良いか分からず、もじもじするリディア。するとエッジが彼女の手をそっと握る。



「リディア…今日はすまなかった。饅頭食っちまってごめんな。」
「…。」


「俺が悪かったよ、ごめんな?」


エッジの顔を見ると、真面目だけれどとても優しげな表情で、リディアは胸がドキドキしてしまう。




ゆっくりと重なってくる夫の唇。ふんわりと柔らかくて優しくて、そっと自分の唇を食むようなその動きに、リディアは全身が蕩けてしまいそうな気がした。


握られていた手の指が絡み合い、エッジの唇がだんだん深く侵入してきた。


「ん…エッジ、やめてぇ…。」



きつく当たったのに優しくされて、気まずいリディアは思わず顔を背けるが、そうされてもエッジは色白の頬にちゅっちゅっとキスをし続ける。


「お前のほっぺた、あのみたらし団子みてぇにもちもちしてるな。食ったら美味そうだな~。」
「んもう…何言ってるのよ。」


嬉しそうに自分にキスする夫の顔を見て、リディアは恥ずかしくなってますます顔が赤くなり、彼に背中を向けた。


「リディア…こっち向いてくれよ。」
「嫌っ…。」



リディアの機嫌が治っているのを分かっているエッジは、後ろから彼女を抱きすくめる。妻の柔らかな緑の髪から香る、甘く優しい匂いをゆっくり鼻で呼吸して堪能し、耳朶をかぷっと噛む。リディアがピクッと身を竦めるのを見て、今度は首筋にそっとキスをする。

「やぁっ、エッジ…!」

リディアが首を竦めるが、エッジは強引に唇を彼女の首筋に割り込ませ、柔らかなキスを繰り返す。


「んっ…もうっ…!」


そう言うと、エッジは首筋へのキスをやめ、さっきよりもギュッとリディアを抱き締めた。じっとしているリディアの背中からは、心臓がドキドキしているのが伝わってくる。


「リディア、すまねぇ…。愛してるぜ。」


耳元で夫に愛の言葉を囁かれ、リディアの鼓動はますます早まった。


(やだぁ…恥ずかしいっ…!)



「なぁ、こっち向いてくれよ。お前の顔が見たいんだ。」



もうこれ以上夫からは逃げられないと思ったリディアは、ついに身体を彼の方に向けた。するとエッジの顔がみるみるほころぶ。


「ん~、可愛いお顔だなぁ。」
「何なのよ、バカ。」
「あ?可愛いから可愛いって言ってるんだぞ?」




エッジが裏表のないストレートな性格なのを知っているリディアは、お世辞じゃないことを分かっていたのだが、喧嘩した手前、簡単に喜びを表現できなかった。


「リディア…許してくれよ。」


エッジは許しを乞いながら、再びリディアの手を握る。


「…エッジ。」
「ん?」

「あのお団子、いつ買いに行ったの?」
「お前と喧嘩して、昔の記録確認しに行った後だぜ?」
「え?飛空挺の音、何も聞こえなかったのに…。」


以前店に行った時は遠いからと飛空挺を使ったのだが、空いていた執務室の窓からはそれらしい音が全く聞こえた覚えがない。もし歩いて行ったのならば往復で半日はかかる距離なのに…とリディアが不思議に思っていると、エッジはニタリと笑った。


「俺を誰だと思ってんだ?忍者の俺が全力で走れば、30分で帰って来れるってーの。」
「!?」




「前はお前と一緒だったから飛空挺使ったけどよ、今日は俺1人だったからな。」
「…うん。お団子、売れ残ってたの?いつも売り切れで、エッジから注文してもらっても手に入らなかったのに。」
「おう、今日はラッキーだったぞ。もし売り切れてたらもう他の店に違う茶菓子買いに行っても閉店してるぐらいの時間帯だったから、ヒヤヒヤしたけどな。」


リディアと仲直りするために、エッジは一か八かの賭けに出ていたのだ。リディアの翡翠色の瞳が少し潤む。


(エッジったら無茶ばっかりして…。)


たかが饅頭1個のことであんなに怒ってしまったリディアは自分が恥ずかしくなった。


「リディア…俺が悪かったよ、ごめんな。」


深い目の色で見つめられたリディアはもう目を逸らせなかった。最早口にできる言葉は、ただ一つだけ。









「エッジ……私こそ…あんなに怒っちゃってごめんね?」






エッジの表情は一気に緩み、リディアは強く強く抱きしめられた。


「やだぁエッジ、苦しい~!」
「ん~リディア~、許してくれてありがとな。」
「だって仕方ないじゃない…。私のためにそんなに頑張ってくれたんだもん。」


やや不貞腐れたような言い方をするリディアに上目遣いで見つめられたエッジは、鼻血が出そうな程の衝撃を受けた。




(あぁ…可愛い過ぎるぜ。そんな事したら、俺は何でも許しちまうぞ。)




「じゃ、じゃあリディア…ここに仲直りのチューを…。」



エッジがニヤニヤしながら自分の頬を指差した。

「もう~、手のかかる子ねぇ。」
「お前の旦那だぞ?責任持って面倒見ろよ?」
「はいはい。」





ちゅっ。



「!!!」


エッジが驚いて唇を手で覆うと、リディアはにっこり笑っていた。


「うふふ、特別サービスよ?」


興奮して熱い血がエッジの身体中を巡り出し、顔が真っ赤になる。



「くそっ、リディアてめぇ…!」
「きゃあぁぁっ!」



リディアが身動きできないぐらいにギューっと抱きしめるエッジ。


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…



顔の角度を変えながら、猛烈な連続キスをリディアに浴びせていく。その気持ち良さにリディアの身体からは力が抜けていった。



「んっ、んっ、ん…。」


リディアがキスの僅かな合間に鼻で呼吸していると…



ちゅぅぅぅぅっ…!!



最後は強力に唇を吸い上げる口づけが待っていた。


「はぁっ、はぁ…。」



口づけの後、呼吸を整えながら自然に見つめ合い、笑いがこぼれる2人はまた唇を重ねながら会話を始める。


「んふぅ、エッジ…お団子美味しかったよ。」
「ん…美味かっただろ?俺の愛がこもってるんだからな。」
「うん…ふぅ、エッジ、ありがとう…。」





すっかり仲直りしたエブラーナ国王夫妻。この後も執務室の中で、饅頭よりも、みたらし団子よりもずーっと甘い甘い口づけが続きましたとさ…。




ー完ー

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2014
05.19

「忍びの妻」 あとがき

Category: あとがき
うーん、またしても長くなってしまいました読んでいただいた方、お疲れ様でした


忍びの一族の長としてのエッジと、リディアにメロメロな夫であるエッジを書いてみたいと思って出来たのが今回の作品なんですが、うまく表現できているのかどうか


きっとFF4本編後のエッジだったら、何でもリディアの言いなりになってそうだなぁと思うのですが、TAでは年を重ねてエブラーナ国王としての威厳が見て取れる大人の男性になってたし、リディアを守るためなら必要に応じて叱ったりするんじゃないかというのが私のイメージです。結局リディア大好きなのは変わりませんけどね



実は風呂場のシーンも書いてあったのですが、エロ度が高めになってしまい、前回もエロだったので割愛しました(笑)



それでは皆様、また次回






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2014
05.18

「忍びの妻」

TA後エジリディSS第10弾です☆結婚して以来、エッジに大事に大事にされているリディア。けれどリディアの本音は…。







「忍びの妻」






冬の気配がだんだん近くなり、朝夕はめっきり冷え込むエブラーナ王国。しかしその寒さの中でも、国王エッジは朝の稽古を欠かさず、日々鍛錬に励んでいた。




そして今日も、エッジは早朝の訓練の後はエブラーナ城から少し離れた所にある、寒さと静寂に包まれた寺院の中の本堂で祭壇に向かい合い、冷え切った床の上に座禅を組み、精神を高めていた。




「…お前ら、別に俺に付き合う必要ねぇんだぞ?」



目を瞑ったまま、エッジは自分の後ろに座る四人に話しかける。


「付き合うとは、おかしなことをおっしゃる。」
「我らは自らの意志で、ここにおりまする。」
「忍びたる者、精神力は欠かせませぬゆえ。」
「いついかなる時でも、強い精神がなければ、自分も他人も守れませぬ。」


エッジ直属の部下であるエブラーナ四人衆・ゲッコウ、ザンゲツ、イザヨイ、ツキノワもまた朝の稽古後、この寺院でエッジと共に精神を高めるために座禅を組んでいた。


「へっ、相変わらず暇な奴らだな。好きにしやがれ…。」

「ありがたき幸せにございます。」


主君への忠誠を誓う四人衆の声が重なる。


うっすら目を開けたエッジの視線は、祭壇の蝋燭に灯る火に向かっていた。




火―――






エッジの身体に染み付いた火の思い出。



10数年前の月の対戦でゴルベーザ四天王のリーダー・ルビカンテに城を襲撃されたエブラーナ。若かった自分は怒りに狂って我を失い、エブラーナの洞窟で単身ルビカンテに戦いを挑み、彼の強力な炎に身を焼かれ、呆気なく敗北した。




死ぬ事など怖くなかった。

復讐を果たせるのならそれで良かった。





あの涙を見るまでは―――







『もうこれ以上死んじゃうのは嫌よぉっ!!』



美しい翡翠色の瞳から零れ落ちる涙。


見ず知らずの自分のために泣く、ふわふわとした緑の髪に、色白で華奢な美しい少女。


全身に大火傷を負い、話すことすら辛い状況の中、みるみる彼女に惹かれていった。


一国の王子という立場柄、それまで女に不自由することなどなかったのに、気付いたら彼女の事しか考えられなくなっていた。




一緒にいたい。
守りたい。
何でもしてやりたい。



だから俺は生きるんだ―――




目を瞑ると、瞼の裏にその愛しい女性の姿が浮かんでくる。






「…!」

「何者だ!?」

部屋の外の微かな気配に気付いた四人衆。


「…怪しいもんじゃねぇよ、戸を開けてやれ。」

「お館様…!?」
「いいから入れてやれ。」


ゲッコウとザンゲツが恐る恐る戸を開けると―――


ついさっきエッジの瞼の裏に浮かんでいた色白で華奢な美しい女性が、柔らかな緑の髪を靡かせながら部屋に入り、最前列に座る夫の元へと歩み寄る。


四人衆は慌てて跪き、彼女に敬礼する。


「エッジ…!」





「…リディア、何しに来た?ここはお前の来るとこじゃねぇぞ。」


目を閉じたまま、微動だにせず妻に問いかける。


「…どうして?」
「ここは忍びが精神統一をする場所だ。お前が来る必要はない。」

「…私はこの国の王妃なのに?」
「…あぁ。」

「私はエッジの奥さんなのに?」
「…。」


エッジが微かに眉をしかめた。この口調は妻が何を言っても聞かないモードになっている証拠だからだ。


リディアはエッジの隣に座った。朝夕はすっかり冷え込む季節になり、暖房設備のない寺院の中では吐く息が白い。今いる部屋の床は夜の間、冷たい空気にさらされていたため輪をかけるように冷たい。床に触れたお尻から、刺すような冷気がリディアの身体に巡る。


「冷たっ…。」
「ったく、このぐらいで弱音吐くようじゃこの先の寒さに耐えられねぇぞ。早く城に帰って身体あっためて来い。」


「…大丈夫だもん。」

唇をへの字に結び、床からの冷気に耐えるリディア。

「普段訓練してねぇ奴がこんなとこにいたら風邪引くぞ。さっさと帰れ。」
「嫌よ。エッジが精神統一終わるまでここにいる。」


どうしても自分の隣にいると言って聞かない妻。エッジはふーとため息をつく。


「あの、奥方様…これをお使い下さいませ。」

ツキノワが部屋の隅に置いてあったふかふかとした座布団をリディアに持ってきた。

「ありがとう、ツキノワ。でも私、エッジと同じようにしたいの。せっかくなのにごめんね。」


それを聞いたエッジの顔が険しくなった。


「何が『エッジと同じようにしたいの』だよ。お前は忍びじゃねぇだろ。」


夫の真顔にビクッとするリディア。

「…何でそんなに怒るの?私は忍びじゃないけど、この国の王妃だもん。エッジについていくのはいけない事なの?」

怯えながらも反発したが、エッジの表情はさらに険しくなった。


「俺の言うことが聞けねぇのか!さっさと城に戻って身体あっためろって言ってんだろ!訓練の邪魔するんじゃねぇ!」


リディアはエッジのあまりの剣幕に思わず涙が出そうになった。


「お、お館様…何もそこまで言わずとも…。」


イザヨイがエッジを宥めようとするが、彼の表情は険しいままだった。


「悪りぃな、お前らの訓練の邪魔しちまって。」
「あ、いえ…。」
「俺はこいつを城に連れて帰る。うちの嫁は言い出したら聞かねぇからな。」
「はっ…。ではお館様、今夜の野外訓練の件は後ほど…。」
「あぁ。」



「え、野外訓練…?」



リディアが不思議そうな顔をしていると、エッジが彼女の腕を掴んだ。


「さぁ、帰るぞリディア。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!野外訓練って何?そんなの聞いてない…」
「いちいち口ごたえすんじゃねぇ!!」


またしても夫に怒鳴られるリディア。いよいよ涙が零れてきた。

「うっ、う…ふぇぇん…。」


エッジは何も言わずにリディアを横抱きし、寺院を後にした。





城に戻る道中、リディアはエッジの胸の中でぐずっていた。冷たい外気に身を震わせていると、エッジは自分のマントでリディアの身体を包み込んだ。

(エッジ…優しいなぁ。)


自分が昨夜、何かエッジの気に障るような事でもしたのかと思っていたが、どうやら違うようだ。いつもは優しい夫なのに、なぜ自分が彼についていこうとするとあんなに怒られるのかが理解できない。



(エッジは私の事には何でも合わせて全部受け入れてくれるのに、どうして…?)




リディアを抱えてエブラーナ城に戻ったエッジ。その姿を見て驚いた家老が駆け寄って来た。

「お、お館様!奥方様がどうかなされたのですか!?」
「大丈夫だよ。こいつが言うこと聞かねぇからこうしてるだけだ。」
「???」


訳が分からないという顔をする家老を尻目に、エッジはリディアを抱えたまま寝室へ向かった。




ベッドの端にリディアを座らせたエッジは上着を脱ぎ、汗のついた稽古着を着替え、リディアの隣に座る。



自分が理解できないことで怒鳴られ、俯いたままエッジの顔を見れないリディア。


ちゅっ。


「!」

頬にキスされ、はっとエッジを見るリディア。するとさっきまであんなに険しい顔をしていた夫は穏やかな表情で自分を見つめていた。


(エッジ…?)


「リディア、ここ座れよ。」

ベッドの上で胡座をかいたエッジはにっこり笑って自分の膝をポンポンと叩いた。


リディアが黙ってそこに座ると、エッジは彼女の腰とお尻を優しくさする。

「ほら、こんなに冷えてるじゃねぇか。」

夫の膝と手から伝わるリディアより少し高めの体温が、寺院の床で冷えてしまったリディアの下半身を温めていく。

「エッジ、気持ちいい…。」

思わずエッジに抱きつき、彼の首の後ろに腕を回す。

「ったく、この甘えん坊が…。」

夫の顔は、実にほっこりとしている。さっきまでの険しい忍びの一族の長ではなく、リディアが大好きなエッジの顔である。

「エッジ~。」

甘えた声を出し、エッジの頬にちゅっとするリディア。

「へへへ…お前はどこまで可愛いんだよ。そんな事したら俺はお前のこと離さねぇぞ?」
「うん…離さないで。ずっとエッジのそばにいさせて?」


「…この野郎~!」


満面の笑みでリディアをギュッと抱きしめて何度も口づけするエッジ。

ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…




嵐のような口づけの後、リディアはエッジをじっと見つめる。

「…ねぇ、エッジ?」
「うん?」

「さっき、どうしてあんなに怒ったの?」
「…。」

「私、そんなにいけない事したの…?」


リディアの問いに、エッジの表情が曇り出す。

「今夜野外訓練するって言ってたけど、そんな話聞いてないよ…。」


エッジは何か考えてる様子である。


「…お前には関係ねぇことだからだよ。」

夫の一言に、リディアはムッとした。

「どうして?」
「…関係ねぇもんはねぇんだよ。」
「関係あるわよ!私、エッジの奥さんだもん!」



エッジはリディアの言いたいことは、寺にいた時から分かっていた。しかし忍びとしての訓練は過酷を極めるし、訓練の準備等も肉体労働が多い。エッジは身体の弱い召喚士であるリディアを守りたいから、どんな形であってもそれに巻き込みたくない。


「そうか、お前は夜間訓練って聞いて、今夜は俺に抱いてもらえないって思ったんだな?大丈夫だって、訓練の前にちゃんと抱いてやるよ。何なら今でも構わねぇぜ~?」


エッジは卑猥な笑みを浮かべてウインクし、リディアの柔らかな緑の髪を撫でた。しかしリディアは澄んだ翡翠色の瞳を潤ませ、可愛い唇をぐっと結び、エッジを見つめていた。




「…すまねぇ、俺が悪かった。」


リディアの真剣な表情を見て、ごまかそうとした自分に嫌気がさし、詫びるしかないエッジ。リディアは忍びの一族の長の妻として、必死に自分に寄り添おうとしているのに。


「別に訓練に参加させてくれって言ってるんじゃないわよ…。」
「…あぁ。」

「…どういう予定なのかぐらい教えてくれたっていいじゃない。それに、準備とか色々あるんでしょう?」


自分の事は何から何まで理解して尊重してくれるエッジ。なのに何故逆に彼を理解し、助けるのはいけないのか。


「…確かに、予定を伝えてなかったのは悪かった。すまねぇ。けどな、訓練の準備は重い武器や道具を訓練場所の山岳地帯まで運んだりするんだ。そんな力仕事、お前には無理だろ?モンスターだっているんだぜ?しかもあの辺は夜すげぇ冷え込むし、風邪引いちまうぞ。だからお前は来んじゃねぇ。」


エッジにそう言われ、リディアは黙って俯いてしまった。


(これで納得するだろ…。)


愛する妻に苦労をかけたくない、辛いことは自分が背負えばいい。それがエッジのリディアに対する愛情だった。


「…私には何もできないの?」


何とかして大好きなエッジの力になりたい。その思いが込められた質問にエッジは精悍な眉を顰め、どうやって説き伏せようかと思案する。





「んー、なら俺が訓練に行く時、見送りを頼む。『お館様、行ってらっしゃいませ』って言ってくれよ。ずっとお前に言って欲しかったんだよ~。」

またしてもヘラヘラとリディアの顔を覗き込むエッジ。








「…分かったわよ。」



俯いたまま、低く小さな声でリディアが返事した。

(やべぇ…逆効果だったか?)


エッジはリディアが怒っているのを感じていたが、ここはもう話を終わらせようと、笑顔でリディアを抱きしめる。

「よしリディア、頼んだぞ?いやぁ、大好きな嫁さんに見送ってもらえて俺は幸せだぜ。」


リディアの背中を優しく撫で、頬にちゅっとするエッジ。リディアはずっと俯いていたため、表情は見えなかったが、ただならぬ気配を醸し出していた。

「さぁ、朝飯食いに行こうぜ?腹減った~。」
「…。」





(これでいいんだ。何かあってからじゃ遅せぇからな…。)




朝食後、エッジとリディアは執務室で仕事を始めた。



「リディア、これを財務担当の奴らの所に持って行ってくれ。」
「…。」



黙って書類を受け取り、執務室から出て行くリディア。彼女の背中からはピリピリとした雰囲気が伝わってきた。


(怖えぇ…勘弁してくれよ…。)



家臣達がちょうど出払っているため、自分とリディアの間の緩衝材になるものが何もなく、怯えながら仕事をするエブラーナ国王だった。




財務担当の家臣に書類を渡したリディアは、城内の通路でイザヨイと数人のくノ一達が手裏剣や忍びの道具を運んでいるのを見かけた。

「ねぇ、イザヨイ!」

リディアは思い切って声をかけた。

「これは奥方様。いかがなされましたか?」

「あなた達、今夜の野外訓練の準備しているのよね?私にも手伝わせてくれない?」

イザヨイは首を横に振る。

「奥方様、それはなりませぬ。これは私共の仕事でございますゆえ。」

「…エッジから私には一切手を出させるなって言われてるのね?」
「…。」


イザヨイ達はただ黙っていた。



(エッジったら…!)










そして、エッジが夜間訓練の場所に向かう時間になった。


「おーい、リディアー?」

(あいつ、どこ行ったんだよ?見送りを頼むって言ったのに…。)

「…お館様。」
「おぅ、じいか。リディア知らねぇか?」
「奥方様は気分がすぐれないと言って、お部屋へ戻られましたが…。」
「あ…そうか。なら仕方ねぇな。」

「お館様、奥方様に訓練の準備ぐらいならお手伝いいただいてもよかったのでは…?」
「あ?…何でじいがそんな事…。」

「奥方様が悲しそうにしておられましたぞ。お館様は自分に何もさせてくれぬと…。」

(リディア…じいに喋ったのかよ…。)

顔を顰めるエッジに、家老は話し続ける。

「お館様の母上様とて、夜間訓練の時は準備を率先して行なっておられたではないですか。それに訓練に参加せずとも、先王様に同行し、怪我人の救護や細かな雑用などを引き受けていらっしゃった…。」
「お袋はお袋、リディアはリディアだ。あいつを危ない目に遭わせるわけにいかねぇ。あの辺は昔と違って、今は夜になると凶暴なモンスターが出るんだからな。」

「…左様でございますか。今はお館様の治世、先代と同じようにはいきませぬか…。」
「そういうこった。さて、俺もそろそろ行ってくらぁ。」
「はっ、お気をつけて…。」


エッジはエブラーナ城を後にした。




そして城の北にある、山岳地帯にある陣地に着くと―――



「お館様、お待ちしておりました。」

先にそこに着いていたエブラーナ四人衆がエッジに跪き、敬礼した。

「ご苦労さん。準備は整ってるのか?」
「はっ。いつでも始められる状態にございます。」

「今日は実戦経験の浅い若手の奴らがメインだ。怪我人も出るだろう。救護も頼むぞ。」

「はい、お館様。」

(ん…?)

聞き覚えのある女性の声。


エッジが振り向くと、そこには―――





緑の長い髪を一つに纏め、女性用の装束を身に付けたリディアが立っていた。



「リディア、お前…!!」


「申し訳ございません!!!」

四人衆の声が同時に響く。

「奥方様がどうしてもとおっしゃるもので…。」

ゲッコウが代表して主君に詫びた。

エッジは大きなため息をつきながら首を垂れる。

「こいつが聞かなかったんだろ?お前らのせいじゃねぇよ。」

それを聞いたリディアは不機嫌そうに腰に手を当てた。

「そうよ、ゲッコウ達は悪くないのよ。だから怒らないであげてよね!」

リディアの一言にエッジの眉がピクリと動いた。

「偉そうな口聞くんじゃねぇ!来るなって言っただろうが!!さっさと城に帰れ!!」

夫の上から目線な言葉に、リディアはカチンときた。

「私だって救護ぐらいできるもん!!ポーションや毒消しの用意ぐらいできるわよ!!力仕事しかないなんて嘘ばっかり!!」

痛いところを突かれたエッジだったが、すぐさま切り返す。

「今日は経験の浅い若手の奴らが多くて手裏剣や飛び道具のコントロールも俺やこいつら四人衆みたいに正確じゃねぇんだぞ!お前は自分のとこに手裏剣飛んで来ても避けれるのかよ!?」
「魔法使って止められるわよ!!何度も一緒に戦ってきたのに何で今更そんなに心配されなきゃなんないの!?」

「この辺はバロンやミストよりもずっと凶暴なモンスターが出るぞ?俺達は訓練の間、もしお前が襲われても助けてやれねぇぞ?城に帰るんなら今のうちだぜ?」
「黒魔法も召喚魔法も使えるし、何とでもなるわよ!!」

「じゃあこんな寒いとこにいて、風邪引いても知らねぇぞ?俺は忙しいからお前の看病なんてしてらんねぇからな!!」
「大丈夫だもん、しっかり着込んで来てるからあったかいもん!!」

何を言っても言い返してくるリディアに、エッジは大きなため息をついた。

「ったく、この頑固女が…。勝手にしろ!!」
「言われなくてもそうするわよ。」


リディアの一言にまたカチンときたエッジだったが、部下達の手前、ぐっと抑え込んだ。


「あの、お館様…訓練を開始してもよろしいでしょうか…?」

ゲッコウの一言に、エッジはハッとした。

「ん?あぁ、悪りぃ。よし、始めるか。」
「はっ、では…。皆の者、集まれ!」


ゲッコウの合図で、訓練に参加する忍び達がエッジ達の前に集まった。

「皆の者、今宵の訓練はそなた達の強い要望に応え、お館様にも御参加頂く!貴重な機会であるゆえ、心して臨むのだぞ!!」

「ははーっ!!」


全員がエッジに向けて敬礼するのを見て、思わずリディアの背筋はピンと伸びた。


(エッジ…本当に皆から慕われているのね…。)


エッジの隣に立つリディアは、ただうっとりと彼を見つめた。出会った頃は王子らしからぬ口の悪さやいい加減な行動が目について仕方なかったのに、今やすっかり威厳のある国王なのだから。自分の前では今でもスケベなお調子者だが、結婚して以来、こういうギャップを見るたびにリディアはドキドキしてしまう。


「では全員配置につけ!!」


エッジの合図で集まった忍び達が目にも留まらぬ速さで散り散りになった。


「ツキノワ、頼む。」
「はい!」


ツキノワが笛を吹き、モンスターを呼び寄せる音色を響かせた。
その音に反応し、周りの木々からざわざわという音とともにモンスター達の気配が漂ってきた。


緊迫した空気がエッジ達を包み込む。



エッジは目を閉じ、耳を澄ませてモンスター達の気配を感じ取る。


「来るぞ!」


エッジの声と共に、モンスター達が一気に忍び達に襲い掛かった。


「放てー!!」


後方に構える忍び達から手裏剣、弓矢、くないがモンスター達に向かって放たれた。同時に接近戦を得意とする者達が刀を手にモンスター達に切りかかる。明かりがないとほとんど見えない暗闇の中、若手と言えど五感を鍛えられた忍び達は襲い掛かるモンスター達に応戦する。


「ギャオオオオオッ!!」


耳を劈くようなモンスターの断末魔の叫びが響き渡る。

「よし、仕留めたぞ!」

数人の若い忍び達が歓喜の声を上げた。

「!」

エッジは彼らを背後から襲おうとしていた別のモンスターに、素早く愛用の刀を抜いて飛び掛かり、一瞬にして切り裂いた。

「お、お館様!」
「さ、さすがでございます…!」
「お前ら、油断すんじゃねぇ!!俺を煽ててる暇があるんなら神経を集中させろ!まだモンスターは全滅してねぇぞ!!」
「は、ははっ!!」
「来るぞ!構えろ!」


若手と共に、次々と襲ってくるモンスターに応戦するエッジ。


「エッジ…すごいなぁ。」


夫の姿を陣地から眺め、惚れ惚れとしてしまうリディア。


「これは奥方様、お館様に惚れ直していらっしゃるのでは?」

リディアの言葉を聞いていたザンゲツが微笑みながら話しかける。

「えっ…あ、うん。ねぇ、この夜間訓練って、最近始まったのかしら?今まで聞いたことなかったんだけど…。」
「いえいえ、これは昔からずっとやっておりますぞ。」
「そうなのね…。エッジはあんまり自分の仕事とか、大変なことは私に全然話してくれなくって。」
「最近は我ら4人が中心になって行っておりましたゆえ、お館様が参加されるのはかなり久しぶりなのです。何かと理由をつけて参加なさらなかったのですが、奥方様との時間を大事にしたかったのでしょうな。」

笑顔でザンゲツにそう言われ、リディアは思わず頬を赤らめた。

「もう、エッジったら…。そういえばさっきゲッコウが言ってたけど、若い子たちがエッジに訓練に参加して欲しいって言ってたのよね?」
「はい。真月の戦い以降、お館様の活躍に憧れて兵士を志願する者が増えましてな。当初はお館様にご指導いただくにはまだ早すぎると言って我らで対応していたのですが、そろそろ実力も伴ってきたということでお館様に頼み込んだのでございます。最初お館様は自分はそれほどの者ではないとご謙遜なさっていたのですが、ついに若手どもに押し切られたご様子で…。」


そんな事が自分の知らないところで起こっていたなんて。エッジの事を何も知らずにいた自分が恥ずかしくなるリディア。




「エッジはどうして私にそういう事を話してくれないのかしら…。」


部下たちの前で、思わず本音をこぼすリディア。


「…分かりかねる部分はありますが、お館様は奥方様に余計な心配をかけたくないのでしょう。今日のことにしても、夜間の危険な場所での訓練ですゆえ。」
「それはそうだけど…。準備も何もさせてくれなくて。」

表情を曇らせるリディアに、ツキノワが話しかける。

「僕たちにはあんなに厳しいお館様でも、奥方様のこととなると途端に弱くなりますからねぇ。こないだなんか…」
「…お前ら、何を話している。」

ツキノワが何かを言おうとしたその時、しかめっ面のエッジがリディア達のいる場所に戻ってきていた。

「わっ、お館様!」
「おぉ、これはお館様!奥方様がお館様に惚れ直したと仰せですぞ。」

ザンゲツの言葉で、エッジの頬が何となく赤らむ。

「く、くだらねぇこと言ってねぇで訓練中の奴らを監督してやれ!お前らが無駄話してっから俺が動かなきゃなんねーんだぞ!」
「こ、これは申し訳ございません!」

そう言ってザンゲツとツキノワは飛び上がり、訓練場所を見渡せる高い木の上へと姿を消した。

「ったく、どいつもこいつも…。」

(ふふ…エッジ。)



エッジは赤らんだ頬をリディアに見られまいと、彼女に背を向けた。その姿を見たリディアは、笑みをこぼしながら思わずエッジの近くに歩み寄る。


リディアが陣地の松明に照らされたエッジの顔をよく見ると、彼は額やこめかみに汗をかいていた。

(エッジ…大丈夫かしら?)

リディアは持っていた柔らかい布でエッジの汗を拭ってやった。

「あぁ、すまねぇ…。」

エッジは目を閉じ、耳を澄ませる。周りのわずかな音に全神経を集中させ、危険にさらされている者がいないか気を張り巡らせているのだ。訓練とはいえ、モンスター達が相手であるから死傷者が出る可能性は十分にある。忍びの一族の長として、ここにいる者達全ての命を預かる責任を果たさねばならぬのだ。

「!」

エッジは遠くから聞こえるかすかな悲鳴を聞き、すぐさま木の上へ飛び上がる。場所を確認すると、木々の間を素早く飛び渡ってそこへと向かった。


「エッジ…!」








「うわぁぁぁぁっ!!」

強力なモンスターを前に、若手の忍び達が次々と倒れていく。近くにいたゲッコウとイザヨイが加勢していたが苦戦していたため、ザンゲツとツキノワも加勢する。

「くそっ…なぜここにグリーンドラゴンが…!」

ゲッコウがここには生息していないはずの強力なモンスターの存在に疑問を投げかける。

「そんな事を言っている場合ではないぞ!早く仕留めねば!」

イザヨイが素早い動きでグリードラゴンの注意を引き、ザンゲツが大凧に乗り、空中からジャンプ攻撃をする。

「放てーー!」

ツキノワの合図で他の忍び達が一斉にグリーンドラゴンに手裏剣を投げる。


「グギャァァァ!!」


攻撃を食らったグリーンドラゴンが悲痛な叫びを上げた。

「やったか…?」

目を閉じ、動きが大人しくなったグリーンドラゴンを見たゲッコウが呟いた。


訪れた静寂の中、皆が胸を撫で下ろしていると―――



「まだだ!構えろ!」


駆け付けたエッジの声が響くと同時にグリーンドラゴンが目を開け、強力な稲妻を落としてきた。

「ぐぁぁぁぁっ!!!」

稲妻を食らった忍び達が力なく倒れてゆく。

「くそっ、このままじゃ全員やられちまう…!イザヨイ!怪我人の救護を頼む!」
「はっ!」

エッジが加勢し、グリーンドラゴンに斬りかかった。かつてバブイルの塔で苦戦を強いられたモンスターであるため、一瞬の油断も許されない。


回復の術を使えるイザヨイが負傷者の救護にあたっていると、強力なモンスターの気配を感じたリディアがそこにやって来た。


「奥方様!!」
「イザヨイ!私も救護を手伝うわ!」

リディアは持ってきたハイポーションを使って怪我人の救護を始めた。


「ねぇ、イザヨイ…。」
「はい?」
「夜間訓練って、いつもこんなに激しいの…?」
「いえ…普段はもっと穏やかです。今夜は何故かあのグリーンドラゴンが現れたもので…。」


かつてバブイルの塔でエッジと共にグリーンドラゴンと戦ったことのあるリディアは、その恐ろしさを知っていた。


エッジの投げた手裏剣はグリーンドラゴンの背中に命中した。痛みで素早さが半減したところを目掛けて、エッジは単身至近距離から何度もグリーンドラゴンの急所目掛けて斬りかかり、その近くに刀を突き刺すことに成功した。しかし痛みに我を失ったモンスターの鋭利な爪で反撃を喰らい、エッジは胸から腹にかけて深い傷を追い、巨大な尻尾で叩き飛ばされた。

「ぬがぁぁぁっ!!」
「エッジ!!」


リディアはグリーンドラゴンに向けてフレアの詠唱を始めた。

「リディア、手を出すんじゃねぇ!!」

傷を負いつつも再びモンスターに飛びかかり、刀を振りかざすエッジの声で、リディアは詠唱を止めた。

「ど、どうして…!?」
「これは訓練だぞ!お前が仕留めちまったら、こいつらのためにならねぇだろうが!!」
「で、でも…!!」

「奥方様、お館様のおっしゃる通りです。どうかここは堪えて救護に専念して下さいませ。」

イザヨイが頭を下げた。


「…分かったわ。」

リディアは気が気でないまま、再び救護活動を始めた。

(エッジ…死んじゃいや…!!!)



救護を受け、回復した忍び達は、次第に反撃を始めていった。彼らの刀が強靭なグリーンドラゴンの皮膚を切り裂いていき、そこに投げた手裏剣やくないが確実に深手となり、モンスターの苦しみの声が響き渡る。


「皆の者、もう少しだ!堪えよ!」

ゲッコウの声が響き、忍び達の士気を高める。エッジは自分の傷を庇いながらもう一本の刀でグリーンドラゴンに立ち向かった。





「喰らえーっ!!」

若手の忍びが空中からグリーンドラゴンの首に向かってくないを投げた。


しかしそれは命中せず、グリーンドラゴンの脇をすり抜け、救護活動中のリディアの方向へと向かっていく。


「奥方様!!」


イザヨイがリディアに呼びかけるが、リディアが気付いた時にはもう逃げられないところまでくないが飛んで来ていた。


(あぁっ、もうダメ…!!!)




目を強く瞑り、激痛を覚悟した。








ドスッ…








(…?あれ、痛くない…?)



くないが刺さる音がしたのに、と不思議に思いながらリディアが思わず瞑った目を開けると…




「くっ…!」






リディアの目に映ったのは、自分を庇い、肩にくないが刺さったエッジだった。



「いやぁぁぁぁっ、エッジ!!!」
「リディア…大…丈夫か…?」



精悍な顔を歪めながらリディアを見つめるエッジ。


エッジが肩に刺さったくないを抜くと、そこからは血がどくどくと流れ出した。先程の傷のダメージもあり、エッジはその場に倒れこんだ。


「お館様!」


イザヨイが駆け寄り、回復の術の詠唱を始めた。

「イザヨイ、俺は大丈夫だ…早くあのグリーンドラゴンを仕留めろ!でないと皆やられちまうぞ…。」
「し、しかし…!」
「こいつが持ってるハイポーションがあるから心配すんな…。」


リディアはハッと我に返り、持ってきた袋の中を探る。

「あぁ、もうハイポーションがない…。エッジ、待ってて!確かすぐそこに予備のハイポーションが置いてあったはずだから取ってくるわ!」


リディアは立ち上がり、自分の数メートル斜め後ろにある木を目指して走り出した。するとイザヨイがハッとする。


「奥方様、お待ち下さい!!その辺りには訓練用の落とし穴が…!!!」



「えっ…!?」



リディアが返事した時はすでに彼女の足元は崩れていた。身体が宙に浮き、あっという間に暗闇に包まれていく。


「きゃああああーーーーっ!!」
「奥方様ーーーー!!!」























瞼越しに、柔らかな光を感じた。





(あれ、何でこんなに明るいの…?)



ゆっくりと目を開けると、もう朝だった。エッジがリディアの顔を覗き込んでいる。


「リディア…!」
「奥方様、気が付かれましたか!」

リディアが見渡すと、そこは寝室で、家老と四人衆、数人の若手の忍びの姿も見えた。



「あれ…私…?」

「申し訳ございません!!私が奥方様に落とし穴の場所をお伝えしていなかったばかりに…!!」
「私こそ、自分の未熟さが原因でお館様にお怪我を負わせ、奥方様をこのような目に合わせてしまい、お詫びの言葉もございません!!」


イザヨイとくないを投げた若手の忍びがリディアに頭を下げて詫びる。




「…リディア、覚えてるか?俺にハイポーションを取ってこようとしてお前は落とし穴に落ちて気を失ってたんだ。」


エッジに言われて思い出し、起き上がって彼の腕を掴むリディア。

「エッジ、怪我は大丈夫なの!?」
「…俺は大丈夫だ。イザヨイが治療してくれたからな。」


「おかげさまでグリーンドラゴンを仕留めることができましたよ。奥方様の救護、心より御礼申し上げます。」

若手の忍び達がリディアに礼を言うと、エッジが顔を顰めた。


「礼には及ばねぇ。こいつは俺の言うことを聞かずに勝手について来て、勝手に落とし穴に落ちてお前らに迷惑かけたんだからな。」


エッジの言葉に、リディアはビクッとして身体から血の気が引くような感覚に襲われた。


「お、お館様!そのような言い方、ひどすぎでは…!」
「そうですよ!奥方様がいらっしゃらなかったら救護の手が回らなかったのですよ!」

ゲッコウとツキノワが宥めようとするが、エッジの顔はますます険しくなった。



次の瞬間、パンッという音と共に、リディアの頬に痛みが走った。



「痛っ…!」
「お、お館様!!」


「…こいつはこれぐらいしねぇと分からねぇんだ!」


王妃に対する国王の叱責に、その場にいた全員が凍り付いた。



「イザヨイ。」
「…はっ!」
「戦いながらの救護、ご苦労だった。次回も大変だろうが、よろしく頼むぞ。」
「…身に余る光栄にございます。」

「グレン。」
「ははっ!」
「俺に詫びる暇があったら訓練しろ。正確に敵を仕留められるようになることが俺の怪我への償いだと思え。」
「も、もったいなきお言葉…!!」


「ゲッコウ、ザンゲツ、ツキノワ、お前達もご苦労だった。お前らもそこにいる奴らも昨夜は寝てねぇんだから、今日は休息しろ。」

「しかしお館様とて昨夜は一睡もしておられませぬ。我らだけ休息するなど…。」
「俺は大丈夫だ。これからこいつを説教しねぇといけねぇからな。」


ゲッコウの言葉に対して、エッジはそう言いながら険しい表情でリディアをの腕を掴んだまま、彼女をチラリと見た。

「お、お館様…何卒奥方様にはご温情を…。」

リディアの本音を聞いていたザンゲツが精一杯エッジに訴えかけた。


「…ご苦労だった、下がってくれ。」


エッジがそう言うと、家老が目配せをし、全員寝室を出た。





「さて…。」



エッジはリディアを睨みながら口布を下ろした。彼の震える拳を見たリディアは、どんな叱責を受けるのかと身を竦めながらビクビクとしている。



「…お前は勝手な事して皆に迷惑かけやがって…!!!」



いつもより低いエッジの声がリディアの耳に響き、堪えていた涙が翡翠色の瞳からこぼれ出した。すると次の瞬間―――



「エッジ…?」



リディアの身体はふわりとエッジの体温に包まれていた。

「お前は何で人のことばっかり気にして、自分の心配できねぇんだよ…!?」

リディアを抱きしめながら耳元でそう言うエッジの声は震えていた。


自然とリディアの腕が、エッジの背中に回る。





「エッジ……ごめんなさい。でも私、どうしてもエッジの力になりたくって…。」
「そんな気遣いいらねぇんだよ!お前は何も心配しなくていいんだ!そんなことよりお前に何かあったら、俺は…」


「私だって…!私だってエッジに何かあったら嫌よ!もう1人で危険なこと背負っちゃ嫌って言ったじゃない!なのに昨日、エッジはまた1人で無茶なことして怪我したじゃない…。」

そう言ってリディアはエッジの胸とお腹に手をそっと当てる。



「…俺がああしなきゃ、あの場にいた全員生きて帰って来れなかったかもしんねぇぞ?」
「…。」

「それに、お前が来てなかったら俺は肩に怪我を負うことはなかったんだぞ?何かあっても自分でどうにかするって言っておいて、できなかったじゃねぇか。」
「なっ…!」


何て意地の悪い一言だろう、間違いなくリディアは心を痛めるだろうに。エッジはそう思いつつもリディアを説き伏せるため、敢えて口にした。




紛れもない事実に、俯くリディア。






「…どうして?」
「え?」
「エッジは私のこと理解して何でも合わせてくれるのに、どうして逆はいけないの?」
「…。」

「エッジのこと、もっとちゃんと知りたいよ…。」
「…お前はもう俺の事、十分知ってるじゃねぇか。」
「知らないもん!昨日私の知らないエッジがいっぱいだったもん!少しぐらいエッジが背負ってるもの、私に分けてよ!」



リディアの言い方は感情的で、棘があった。だがエッジは心の中の一国を背負う者として避けられない重苦しさが消えていくような気がした。今やもう自分は独り身ではなく、自分を心配し、苦楽を共にしようとしてくれる愛しい妻がいるのだから。



「…私、そんなにエッジの奥さんとして頼りないの?」
「よく言うぜ。俺の事ばっちり尻に敷いてるくせによ…。」
「じゃあどうしてなのよ!!」



やり切れない思いと共に、リディアの翡翠色の瞳から一旦止まっていた涙が再び溢れ出す。




"もうこれ以上死んじゃうのは嫌よぉっ!!"



リディアの涙が、初めて出会ったあの時のことをエッジに思い出させる。



こいつのためなら、何でもしてやりたい。


望むようにさせてやりたい。









(そうか…簡単なことじゃねぇか。)











「…っとに、お前は何を言っても聞かねぇんだな。」
「何よ…。」


エッジは大きく息をつく。

「…ツキノワの言ってた通り、お前がいなかったら救護の手は回らなかった。それにお前が俺の汗を拭いてくれた時、すげぇ嬉しかった。もう俺にはこうしてそばにいてくれる嫁さんがいるんだからな。」

「…うん。」

「ありがとな、リディア。」

急にエッジに感謝され、リディアが照れ臭くなって視線を逸らすと、エッジは彼女の両肩をそっと掴む。


「…次回の訓練の時は、準備するの手伝ってくれるか?」



その言葉と一緒に、肩から伝わってくるエッジの体温がリディアの胸のやきもきした気持ちを晴らしてゆく。



「エッジ…。うん!!」


満面の笑みを浮かべるリディアを見て、エッジは穏やかな表情を浮かべて頷いた。




「ただし、だ。」

リディアは急に真顔になったエッジにビクッとする。




「訓練の場所には来るんじゃねぇ。城の出口で俺を見送ってくれ。」






しばしの静寂。





リディアの表情は、明らかに何か考えている様子。エッジはリディアがどう反応するかとドキドキしながら彼女を見つめていると…






「…はい。」



リディアの身体が、再びエッジの体温にふんわりと包まれる。

「ありがとな、リディア。」

リディアの頬にちゅっとするエッジ。

「…エッジのバカ。」
「ちゃんとお前の意思を汲んでやったんだぞ~?感謝しろよ?」
「何よ、こっちだってエッジに怪我させちゃったし妥協したんだからね!」
「…っとに口の減らねぇ奴だな。」



リディアの顔を見ると、不満げながらも明らかに先程よりかは落ち着いた表情。




「リディア…俺はお前が俺のことを気にかけてくれるだけで幸せなんだぜ?これ以上のもんをもらったら、俺バチが当たっちまうよ…。」
「…何言ってるのよ。私が訓練の場所にいないからって、無謀な事するんじゃないわよ?」


厳しい一言に、苦笑するエッジ。

(俺、完全に尻に敷かれてんなぁ…。)



こうやって素直に相手への気持ちを伝えれば、ぶつかることもなかっただろうに。リディアを大事に想っていたとはいえ、高圧的になってしまった自分は幼かったかと思うエッジだった。



「エッジ。」
「ん?」
「私、すごく嬉しいの…。」
「…そうか。」


「これで少しはエッジの奥さんらしくなれるかな?」



自分のために何かしたいと必死になってくれたリディアの言葉に、エッジは照れ臭くなる。


「お前は最初から俺の嫁さんだってーの。」


エッジが目を少し逸らしてそう言うと、リディアの唇がエッジのものと重なった。

「!!」
「ありがとう、エッジ…。」
「ん…ありがとな、リディア。」


エッジは自分の胸に顔を埋めてきたリディアをぎゅっと抱きしめた。




何かあったら、一緒に乗り越えて行くのが夫婦。辛いことは全部自分が背負えばいいと思っていたエッジだったが、その言葉の意味が、何となく分かったような気がした。




エッジの思惑を感じ取ったのか、リディアが顔を上げてにっこりと微笑んだ。


(くそ~、こいつはマジで小悪魔だぜ…。)


普段は冷静さと闘志を併せ持つ忍びの長も、ベタ惚れの妻には敵わない。


そしてふと、エッジは自分の身体が汗で汚れ切っていることを思い出した。

「リディア、俺は風呂に入ってくらぁ。昨日入ってねぇからな。」

「あ…私もお風呂入ってないや。」
「ん…あぁそうか。ならお前は先に入って来いよ。俺は後から入るからよ。」


それを聞いたリディアは、何やらもじもじしだした。


「…あの、エッジ。」
「あ?」

「よかったら…」


















「む、あれは…!」

ザンゲツの声で、ゲッコウ、イザヨイ、ツキノワが振り向く。

「どうした?」
「あれを…!」

エブラーナ四人衆の視線の先には…





「お館様と奥方様が…!」

「何だかんだ言って、2人は仲良しですねぇ~。」




四人衆に見られているとはつゆ知らず、2人仲良く地下にある王族用の風呂に向かうエッジとリディアだった。







「リディア…入るか?」
「うん…。」


服を脱いだ2人は、寄り添いながら湯気の中へと歩いて行った。





喧嘩して、危険な野外訓練を終えてまた喧嘩して絆を深めた2人の疲れを癒したのは、甘い甘~い朝のバスタイム…。




―完―

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2014
05.12

「愛しくて…」 あとがき

Category: あとがき
今回もリディア好き好きなエッジに仕上がりました


そしてエロ続きになってしまいまして、健全なエジリディ好きの方、ほんっとすいません


この生理からの…ってパターン、書いてみたかったんですそして実は割と前から出来上がってたという、管理人の品位が疑われる事実ですね



今回もお読みいただき、ありがとうございました
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2014
05.12

「愛しくて…」 ★

TA後エジリディSS第9弾、前回の「Before Her Period」の続きです。またしてもエロ有りです。ご注意下さいf^_^;






「愛しくて…」








「あぁ…やっぱり。調子悪いなぁと思ってたのよ…。」



声の主はトイレで俯くリディア。昨夜あたりからお腹が痛くなり始め、身体もしんどかった。今日はエッジが仕事で早朝から城を留守にしているため、頼まれている仕事がいくつかあったのだが、捗らず、痛みがひどくなりだしたので、トイレに行ったところ月のものが来ていたのだ。


(はぁ…仕事終わらせられるかなぁ。)




「しょうがないよね…。こんな事で弱音吐いてちゃ、エッジを困らせちゃうわ。」


そう言って、執務室に戻るリディア。


自分の椅子に座り、書類と向かいあう。しかし徐々に集中力はなくなり、文字を書こうとすると頭痛がしてくる。

(うーん…しんどい…。)

腹痛もひどくなり、顔色も悪くなっていく。

「奥方様、どこか具合でも悪いのですか?」

異変に気付いた家臣の1人がリディアに声をかける。

「い、いえ…大丈夫よ。」
「そ、そうですか…。先程から顔色が悪いなぁと思っていたもので。ご無理はなさらないで下さいね。」
「うん、ありがとう。」


(あぁ、エッジがいてくれたらなぁ…。)


気分転換にお茶を飲んだり、城内の回廊を歩いたりしてみるが、あまり効果がない。何とか午前中の仕事は終えたが、まだ午後も仕事がある。


昼食もあまり食べられず、午前の疲れからか、身体が重たくなってきた。


(はぁ…横になりたいなぁ。けどもう仕事始めなきゃ…。)


ひどくなる生理の症状と戦いながら、執務室へと歩く。


「うっ…。」


急に身体がずんと重たくなり、吐き気がしてきた。リディアはその場にうずくまってしまう。呼吸が浅くなって脈が速くなり、息が苦しい。はぁはぁと言いながら立ち上がろうとするが、身体が言うことを聞かない。


「はぁっ…エッジ…助けてぇっ…!」


そう言ってリディアは倒れこんでしまった。


そこを家老が通りかかった。


「奥方様!奥方様、大丈夫ですか!?…誰か!誰かおらぬか!」


イザヨイと数人の侍女達が現れ、リディアを寝室まで運ぶ。





数時間後―――





すっかり日が暮れたころ、寝室のベッドで休んでいたリディアはようやく回復し、身体を起こした。そこへイザヨイが現れる。


「奥方様、大事ありませぬか!?」
「うん、だいぶ良くなったわ。ありがとうね。」
「それは何よりでございます。…あの、奥方様…御家老がおめでたではないかと騒いでいらっしゃるのですが…。」

「!!違うの!あの…生理で…。」
「あ…そ、そうですか…。あれは辛いですものね…。」
「…ね。女にしか分からない辛さよね。今日はエッジがいなくて、家臣達にも言えなくって…。」
「お察し致します。…では、御家老への報告はいかが致しましょう?私がお伝えすることもできますが…。」

「うーん…大丈夫、私から直接言うわ。」
「承知致しました。では何かあれば私めをお呼び下さいませ。」
「ありがとう、イザヨイ。」

イザヨイが部屋を出た後、リディアはふーっと息を着く。



「おめでた、かぁ…。」




プロポーズされた時、エッジからは自分達の子供ができずとも、世継ぎはどうにでもなるから心配するなと言われていた。結婚した今でも、エッジがリディアにその事でプレッシャーをかけてくることはない。それどころか、とても大事にしてくれる。リディアはそんなエッジが愛しくてたまらない。


「エッジ…もうすぐ帰ってくるかなぁ。」



リディアがベッドから出ようとした時、寝室のドアが開く音がした。

「リディア~!!!」

仕事から帰ってきたエッジだった。家臣からリディアの事を聞き、すっ飛んで来たのだ。



「エッジ!おかえり!」
「おかえりじゃねーよ!お前が倒れたって聞いてこちとら心臓が止まるかと思ったんだぞ!!」
「あ…ごめんねエッジ。」

「謝らなくていいっての。で、一体どうしたんだ?」
「あ、その…生理で…。」
「そうか、今日来ちまったのか。」

「うん…。だからエッジに頼まれてた仕事、全部できてなくて…。」
「んなもん気にすんな。後は俺がやるからよ?」

「エッジ…ありがとう。」

リディアはたまらずエッジに抱きつく。愛する夫の腕の中は、とても落ち着くリディアの大好きな場所。ずっとこうしていたい―――と思っていたその時。


「お館様!!」
「!?」
「おおぅ、何だよじい!ノックぐらいしろよ!」


家老が寝室に入って来た。


「あぁっ、失礼致しました!…で、奥方様のお加減はいかがで?」
「うん、休んだおかげで良くなったわ。心配かけてごめんね。」

家老は胸を撫で下ろす。

「それを聞いて安堵いたしました。ところで、その…今後の安産の祈祷や腹帯などは…いかが致しましょう…?」

「!!!」
「はぁ?安産?何の話だ?」
「いや、何、その…奥方様が悪阻ではないかと…。」

「悪阻って…。じい、何を勘違いしてんだよ?」
「ち、違うのですか…?」
「…あぁ。月のもんで具合が悪かったんだよ。」


家老はそれを聞いてうなだれた。


「あぁ…ついにお世継ぎができたかと思うたのに。これは大変失礼致しました…。」


家老が寝室を後にする。エッジはため息しか出ない。


「ったく…じいは世継ぎ世継ぎってうるせえんだよ…。」
「…エッジ、私…」


リディアが何か言おうとしたが、エッジが遮る。

「リディア、気にしなくていいんだからな。」
「え…?」

「世継ぎのことだよ。じいみたいにあんな事をいう奴もいるけど、何も気にする事はねぇぞ?プレッシャーかけてくるような事を言う奴がいたら、俺に言え。何とかしてやるから。」


エッジの優しい言葉にリディアは胸が熱くなる。


「うん…ありがとうエッジ。…大好きよ。」


それを聞いたエッジは顔が赤くなり、普段は精悍な顔立ちの口元が緩んで何ともマヌケな顔になる。


「あぁ…リディア、愛してるぜ。」
「うふふ。」

2人は再び抱き合い、口づけを交わす。







その夜、執務を手早く終わらせ、風呂から上がったエッジは、寝室へと急ぐ。


「リディア。」
「ん…エッジ。お風呂早かったわね。」


リディアは先にシャワーだけ浴びて、寝室のベッドに腰掛け、休息していた。


「調子はどうだ?腹痛てぇか?」
「うん…。腰の辺りも痛いな。」
「そうか。」

そう言ってエッジはリディアの隣に座って腰を抱いてやり、リディアの下腹部を優しく撫で始めた。

「エッジ…。」
「冷えると良くねぇんだろ?ちゃんとあっためねぇと。」
「うん…。あったかくて、気持ちいい。」

エッジのおかげで、心も身体もぽかぽかしてくる。ほっこりとしたリディアは、エッジの肩に寄りかかって甘える。


「…っとに、お前は可愛いやつだよなぁ。んなことしたら、とって食っちまうぞ?」
「うふふ。」

エッジはリディアの頬にキスした。


(エッジ…優しいなぁ。結婚してからも、結局いつもしてもらってばっかり…。)


リディアはエッジと結婚し、彼のために何かしたい、10年以上も自分が甘えた分、これからは甘えてもらいたいと思っていた。だが現実はエッジに頼ってばかり。エッジはリディアに甘えてもらうのはこの上なく嬉しかったが、リディアは何とかしてお返しがしたい。


(今日は生理でできないし…。代わりの方法でも、エッジは喜ぶかな?)


リディアは恥ずかしいと思いながらも話を切り出す。


「エッジ…。」
「あ?」
「ごめんね、今日…なっちゃったし、その…エッジがいっぱい優しくしてくれてるのに、何もできなくて…。」

エッジはくっと笑いを堪える。

「謝るとこじゃねぇだろ。それより、今日は早く寝た方がいいんじゃねぇか?」

「…エッジ、疲れてる?」
「いや、俺は平気だけどよ…。お前はゆっくり寝た方がいいかなと思って。」


(うーん…。聞いてみるのは別に構わないよね?)


「あのね…私、エッジにしてあげたいことがあるの!その…あの…。」

「ん?何してくれるんだ?お礼のチューか?」
「そ、それもなんだけど…えっと…。」
「ん?何だよ?」



「…いつもとは違う方法なんだけど、エッジを気持ち良くしてあげたいの。」


「うん…んっ??」


エッジはリディアの言ったことがすぐに理解できなかった…いや、都合のいいように解釈していいものか判断がつかなかった。



(それって…もしかして…あれか!?リディアがしてくれるのか?いやいや、待てよ。俺が勘違いしてる?)



大いなる期待と疑惑を抱いたエッジは、リディアを見てどう返せばいいのかしばし悩んでみた。



「えーっと…リディア、それってもしかして…。」

リディアは頬を赤らめて、エッジを見つめる。

「…ダメ?」
「いや、あの…お前が言ってるのって…その…こ、ここで…?」

エッジはリディアの唇に軽く指を当てた。

「うん…。今までしたことないから、上手くできるか分からないんだけど、ほとんどの男の人は嫌がらないって言うし…。」



(間違いねぇ…!!!)




切れ長の目を大きく見開いたエッジの下半身が疼き出した。幾度となく身を重ねてきたが、エッジはリディアが嫌がると思い、それをしてくれと頼んだことがなかったのだ。


「リディア…ほ、本当にしてくれるのか…?」
「うん。エッジは嫌じゃないの?」
「全っ然嫌じゃねーぞ!」


「よかった…。じゃあ、あの…。」

そう言ってリディアはエッジのズボンの端をきゅっと掴む。


「お、おぅ!ちょっと待ってくれ。」


そう言うとエッジは立ち上がり、腰の紐を外し、寝間着のズボンを脱ぐ。そして下着も脱ごうとすると…


「あ、待って。…脱がせてあげる。」


(マ、マジかよ…!?)


リディアの一言はエッジにしたら大興奮ものだったが、あくまで平静を装う。


「そ、そうか?なら頼む…。」


リディアはエッジの下着に手をかけ、脱がせ始める。すると先程からそそり立っているエッジのモノが引っかかる。

「やだ…エッジったら。」

そう言ってふっと微笑むリディアの顔は、艶かしい女のものだった。引っかかった部分を外して下着をするすると下ろす。


(そんなエロい顔…勘弁してくれよ…。)


そそり立つエッジのモノは、今にも破裂しそうなほど膨らんでいる。エッジがベッドの真ん中に座り、膝を立てて脚を開くと、リディアがそこに入り込んで来た。

「じゃあ、エッジ…痛かったりしたら言ってね?」
「あぁ…。」

リディアの顔が自分のモノに近付いて来て、エッジは心臓が飛び出そうになる。するとリディアの唇がそっと先端部分に触れる。


ちゅっ、ちゅっ…


(おおおおおお…!!!)


小鳥のようなキスに、エッジはゾクゾクとした。


ちゅっちゅっ、ぺろっ、ぺろぺろっ……


「あぁ…。」

リディアは先端部分にキスをして、括れた部分を舐めた。エッジは思わず声を出す。


(リディアがこんな事してくれるなんて…。)


愛しい妻が、自分の股ぐらに顔を埋めて脚の間にあるモノを舐めている。エッジはそんなリディアが愛おしくて、髪を優しく撫でてやった。するとリディアが舐めながらちらりと上目遣いでエッジを見る。その姿がいやらしくて、エッジはますます興奮した。


(こ、こいつ…エロい!!)


リディアは先端を大きなキャンディを舐めるように口に含んだり、裏側の筋に沿って根元から括れに舌を這わせたり、横から咥えたりと、多彩な方法でエッジを慈しむ。ぎこちないが、それが逆にエッジを興奮させた。


「あぁ、リディア…すげー気持ちいいぜ…。」
「本当?嬉しいな。」
「口だけじゃなくて、手も使ってくれたら、もっと気持ち良くなれるんだけどよ…。」
「え~?どうやるの?」
「こうやって、手で握って上下にしごきながら先っぽ舐めたり、吸い上げてくれよ。」
「んー…やってみる。」


リディアはエッジに教えられた通り、手でエッジのモノを握ってしごき、先端を口に含み、そこを舌でつついたり吸い上げたりする。


「くはぁ…リディア、すんげーいいぜ…。」


(エッジが喜んでくれてる。嬉しい…。)


普段は自分が喘ぎ声を発するばかりで、エッジがこんなに気持ちいいと声を出すことはあまりないため、リディアはエッジを気持ち良くしてあげているのが嬉しかった。リディアは一心不乱にエッジのモノを慈しみ続ける。



ちゅぱっ、ちゅぱちゅぱ…



リディアはしごくスピードを上げて先端部分を口に含んでは出したりして、さらに強く吸い上げる。

「うっ…。」

エッジは快感のあまり、気を抜くと思いっきり発射してしまいそうになった。

「エッジ、痛いの?ごめんね。」
「いや、違うんだ。あまりに気持ち良くって。もっとしてくれよ…。」
「うん…。」

リディアは再びエッジの足の間に顔を埋め、ちゅぱちゅぱと音を立てる。

(くぅっ…たまんねぇ…。)


ついにエッジの身体の奥から熱いものが湧き上がってきた。エッジはそのまま絶頂へと昇りつめて行く。

「あっ…リディア…出るぞっ!」
「んっ!?」

エッジは思わず、先端を口に含んでいるリディアの頭を手で両脇から押さえた。

「そのまま先っぽ口に入れててくれっ…!くぁっ…!!!」


エッジは軽く痙攣しながら、何度も生暖かいものをリディアの口腔内に放出した。


(ん~、変わった味…。)


「はぁ…すげぇ気持ち良かったぁ…。ほれリディア、これに口の中のもん出せよ。」


放出し終わったエッジはそう言って、ティッシュを数枚リディアに取ってやった。するとリディアの喉がゴクリと動く。


「!リディア、お前…!」
「…飲んじゃった。」
「あ…そ、そうか…はは…。」

エッジが苦笑しながら自分の下着を取ろうとすると…

「あ、エッジ待って。」

そう言うとリディアはまたエッジの股ぐらに顔を埋めて、萎みつつあるエッジのモノをしごきながら先端を吸い上げ、じゅるっとその内部に残る精を抜いた。

「ぬおっ…!あぁ…!」


リディアの行為で、エッジは腰の力が抜けた。


「はぁっ…エッジ、気持ち良かった?」
「あぁ、めちゃくちゃ気持ち良かったぜ。お前がまさかこんな事してくれるなんてなぁ…。」
「良かったぁ~!」

笑顔になるリディア。下着とズボンを履いたエッジがリディアを抱き寄せる。

「ったく、どこでこんな技を身に付けて来たんだか…。お前も好きなんだなぁ。」
「別に好きなわけじゃないわよ。ただエッジに喜んでほしかっただけだもん。」
「いやぁ、こんなにお前がエロいとはなぁ。これからは淫乱王妃と呼ばせてもらおうか。」
「淫乱じゃないもん!そんな事言ったらもうしてあげないから!」
「何だよ~、そんな事言わずにこれからもしてくれよ。」
「このエロ忍者!」

リディアがエッジを腕で叩こうすると、エッジはひょいっとリディアの腕を掴み、リディアに口づけした。


(ん~!!悔しいけど気持ちいい…。)


エッジが唇を離すと、リディアは唇をへの字に結び、不機嫌そうにエッジを見つめていた。するとその顔をじっと見ていたエッジがプッと吹き出した。


「何よぉ。」
「いや、可愛いなぁと思って。」


(もう…何やってもこうやって片付けられちゃう。)


笑顔で見つめられたリディアはだんだん恥ずかしくなり、頬をぽっと赤らめて少し下を向いた。

「こっち見ろよ。…お前の可愛い顔、見せてくれ。」

エッジに少し低めの声で囁かれ、リディアはドキドキした。目線を上げると、そこには自分をじっと見つめるエッジ。彼の深い目の色は、リディアの華奢な身体も心も、全て吸い込んでしまいそうだった。


「リディア、俺を見てくれ。…俺だけを見てくれ。」


さりげないエッジの言葉に、リディアの胸は高鳴るばかり。リディアがじっとエッジを見つめていると…



ちゅっ。

(あぁ…。)


柔らかくって、温かいエッジの唇。甘くて優しい口づけに、リディアは身体が蕩けそうだった。



このまま離さないで―――




リディアは自然にエッジの背中に腕を回してしがみつく。エッジはリディアのお腹や腰を温めてやろうと、自分のお腹をリディアのそれにぴったりと密着させ、腰を優しく撫でた。彼の心地よい体温と鼓動を感じ、リディアは生理の痛みなどもう感じなかった。





この人となら、何があっても大丈夫―――





そんな安心感がリディアの中に過った。


しばし抱き合った後、エッジはリディアの髪を撫でてやり、優しく微笑んだ。リディアもにっこり微笑むと、2人の唇は再び自然に重なった。すると仕事の疲れと事後の疲労感が重なり、急に睡魔がエッジを襲ってきた。


「あぁ、やべぇ…眠い…もう寝るか?」
「うん!」


布団に入った後も、エッジはリディアの腰周りを撫でていた。


「エッジ、ありがとう。もう痛くないよ…。」
「そうか、そりゃ良かった。」


(リディア、次もしてくれっかな…。)
(エッジ、来月も優しくしてくれたらいいな…。)



リディアの髪を撫でながら、彼女のおでこにちゅっとするエッジ。お互いに次回への期待を膨らませながら布団の中で温め合い、エブラーナ国王夫妻は夢の世界へと落ちていった。






―完―

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2014
05.07

「Before Her Period」 あとがき

Category: あとがき
どうあってもリディアが大好きなお館様を書いてみたわけなんですが、いかがだったでしょうか?もっとコンパクトな内容にするつもりだったのですが、意外に長くなってしまいました…。


女性がどうしようもない理由で機嫌が悪くなっちゃって喧嘩になる、という夫婦・カップルの話をヒントに今回のストーリーが出来上がったんですけど、きっとエッジなら理解して受け入れてくれそうだなぁという私のイメージが大きく反映された感じですね。



よく見たら、寝室でのエッジの登場の仕方が完全に志村けんの変なおじさんコントとかぶってるやん…と書いた後で気付いた管理人です(笑)関西人は無意識にお笑い要素を入れたくなる習性があるってことなんですよ♪(←はい、言い訳です)


ここまで読んでいただき、ありがとうございました(^^)またのご来訪、お待ちしております。
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2014
05.07

「Before Her Period」 ★

TA後エジリディSS第8弾です☆前回の「Full Moon in Late Autumn」ではリディアが好きすぎて情けない姿を見せてしまったエッジでしたが、今回はリディアへの深い愛をもって汚名挽回(?)です。エロありですのでお気を付け下さい!





「Before Her Period」













「エッジのバカッ!!大っ嫌い!!」

エブラーナ城の一角で、王妃リディアの声が響いた。

「す、すまねぇリディア…俺が悪かった。許してくれよ~。」


その声を聞いていた家臣や侍女達は、リディアの大声には驚いたものの、どうせまたお館様が何かしでかしたのだろうという感じで流していた。

「うっ、うっ…私急いでたのに…。」

リディアが泣き出したので、エッジは優しく抱きしめてやる。

「ごめんな、リディア…。すまねぇ。」

エッジは詫びながら、リディアの柔らかな緑の髪を撫でてやった。


(あー…そういや確か今月もそろそろだな…。)

自分の胸の中でぐずる妻を宥めながら、エッジはあることに気付いた。


朗らかな性格のリディアだが、月に1度のことが近くなると、ちょっとした事でイライラしたり落ち込んだりしてしまう。家臣や侍女相手には当たり散らしたりしないのだが、相手がエッジとなると気が緩んで先程のように容赦無く怒鳴ったり泣いたりするのだ。


結婚前も時々そういう事があり、最初は何が何だか分からないエッジだったが、長い付き合いの中でリディアが女性として避けられない現象なのだということを理解していった。


詫びながらリディアを抱きしめ、背中をポンポンと優しく叩いてやるエッジ。こうすれば彼女のイライラが治まるのだ。


泣き止んだリディアがエッジの胸から顔を離した。そこを見計らって、エッジはリディアのおでこと頬にちゅっとする。

「リディア、ごめんな。俺が悪かった。」
「…うん。」

(ふぅ…やっと治まったか。)


原因は何かと言うと、エッジがさっき城内の通路でリディアとすれ違う時に、うっかり彼女の着ている丈の長いローブの裾を踏んでしまい、ふらつかせてしまったのだ。急いでいるところを邪魔され、しかも相手がエッジだったために爆発してしまった…というわけである。


「エッジ、私急いでるから…。」
「ん?あぁ、そうか。」

夫に宥められ、イライラが治まったリディアは走り去って行った。

(はぁ~、男にゃ分からねぇなぁ…。)

男性には理解し難い女性特有の現象。しかしそれも愛する妻の一部。

(リディア、俺はお前の旦那だからな。)

リディアの後ろ姿を見ながら心の中でそう呟き、妻の生理現象を受け入れている自分を誇らしく思うエッジだった。




昼食後。



リディアは執務室でエッジの仕事を手伝っていた。

「エッジ、その書類取って。」
「ん?これか?ほれ。」




「ねぇエッジ、この文章の意味分かんない。」
「あ?どれだよ?」
「ここ。どういう意味?」
「あぁ、これは…。」

「…ふーん、そういう意味かぁ。」





「ちょっと、こんなとこに湯呑み置かないでよ!ここに読み終わったやつ並べていこうと思ってたのに…。」

たまたま今日は執務室に誰も家臣がおらず、気を遣う必要がないため、リディアは生理前のイライラを次々と露わにする。

「あぁ、すまねぇ。あっちに置くよ。ごめんな。」

(うーん、俺の方が立場上なんだけどなぁ…。)

逆に自分がリディアの仕事を手伝っている状態である。完全に尻に敷かれるエッジは内心苦笑するが、妻の機嫌が悪くならないように気を遣う。



(こりゃ一発仕返ししねぇとな…。)



ご機嫌斜めの妻に八つ当たりされた時のストレス対処法について、既婚男性の大先輩であるセシルからとある助言をもらっていたことを思い出すエッジ。






そして夜。




エッジは仕事もそこそこに済ませ、風呂に入るといそいそと寝室に向かった。

「リディア~。」

妻がいるかと思い、呼んでみたがいなかった。









約1時間後。


風呂から上がったリディアが寝室へとやって来た。明かりを点け、ベッドに腰掛ける。

(ふぅ…なんかすごく疲れちゃった。生理近いしなぁ…。)

昼間夫に当り散らしたことは自覚していないリディア。

脚がむくみがちなのでストレッチして、うつ伏せになって脚を上げたり下げたりする。何となく気分が落ち着かず、枕を抱いてコロコロとベッドの上を転がる。自分が寝ているベッドから、くっつけてあるエッジのベッドへと転がり、そしてまた自分のベッドに戻る。


(エッジ何時に来るか分かんないし、もう寝ちゃおう。)



そう思い、何となくエッジのベッドの方を見ると…


「きゃああああっ!!!」




エッジがニヤニヤしながらリディアの目の前に寝転んでいた。

「エ、エッジ…!?いつの間に…。」

リディアは軽くパニックである。


「お前がここに来る前からいたぞ?本当に鈍い奴だな~。」
「ど、どこにいたの!?」
「天井に張り付いてたんだけど?」
「!!!」

リディアは驚くが、そういや忍者はそうやって身を隠したりする一族だということを思い出した。


エッジはすかさずリディアに抱きつく。

「リディア~!」
「!!何なのよ変態!」
「変態だと?てかお前、俺が来る前に寝ようとしてたんじゃねぇのか?」

リディアはギクリとするが、いつもよりも気が立っているため、夫に言い返す。

「いいじゃない!だってエッジ何時に来るか分かんないんだもん!」
「何だと?俺の夜の楽しみを奪うつもりか?」
「もうっ、スケベ!」

抱きつかれたリディアは必死に抵抗し、エッジから逃れようとするが、鍛え上げられた夫の力には敵わない。

「エッジ、離してよぉ~!」
「やなこった。ほら、大人しくしろ。」

エッジはリディアに覆いかぶさり、両脚で彼女の脚をしっかりと挟み、手首を掴んでベッドに押し付けた。

「もうっ、離してぇ…!」

不機嫌なリディアは身体に力を入れてエッジに反抗する。

「リディア、じっとしてろ。」


真面目な顔をしたエッジの唇がゆっくりとリディアのそれに重なった。

「んっ…。」

柔らかなエッジの唇の感触が、リディアの小ぶりの唇から全身に伝わるような気がして、力が抜けていった。


唇を離したエッジは、優しい笑顔でリディアを見つめた。

(やだ…エッジ。)

さっきまで反抗していたリディアは照れ臭くて夫の顔を直視できず、顔を背けた。するとエッジがリディアの首筋に顔を埋め、そこに何度も優しくキスを降らせた。その度に華奢な身体はピクピクと小さく震える。

「…大人しくしてねぇと、跡ついちまうぞ?」

耳朶を唇で食まれ、リディアはぴくりとしながら身体がじんわりと熱を帯びてきているのを感じた。

「あっ…。」

自然に艶かしい吐息が発せられる。それに反応するかのようにエッジの唇がまた重なってきた。

「んっ…!」

角度を変えながら、リディアに深く侵入してくるエッジ。力強い、けど決して強引でなくて、どこか慈しむような口づけ。


唇を離されたリディアは、軽く息継ぎをしながらエッジを見つめる。ふと目線をずらすと、そこには彼の前合わせになった寝間着の襟元から覗く、鍛え上げられた逞しい胸元。エッジは微笑みながらリディアの頬を撫でる。

「俺の身体、見てぇのか?」
「…別に。」

素っ気ない返事をするリディアだが、エッジにしたらそれも可愛い妻の仕草。

「じゃあお前の身体、見ていいか?」

ニヤニヤしながらそう言うエッジに、リディアはまた少し不機嫌になり、そっぽを向いた。

「ダメか?」
「…。」
「リディア?」




「…ダメって言っても脱がせるくせに。」


エッジはニタリと笑い、その通りと言わんばかりにリディアの寝間着の浴衣の胸元を押し開いた。ぷるんと姿を現した彼女の形のいい柔らかな乳房を、エッジはすぐさま揉みしだいた。

「やぁっ、あぁん、エッジ…!」



快感に耐えられず、乳房に佇む桜色の蕾はツンと立ち上がる。エッジはそこを舌全体でねっとりと舐め尽くし、ちゅくちゅくと音を立てて吸う。

「あ…ぁぁぁんっ…!」


リディアが肩を竦めながら艶かしい声で夫の愛撫に応えていると、彼の親指が舐め上げられたばかりのそこをくりくりと撫で回す。

「もうっ…エッジのバカぁ…!」
「あぁ悪りぃ。反対側もちゃんとしてやるよ。」

くくっと笑いながらもう片方の蕾も同様に慈しむエッジ。脚をがっちりと挟まれて動けないリディアは、喘ぎながら身体の芯が疼くのを感じた。

「いやぁんっ!」

ぷっくりとした蕾を親指と人差し指で摘ままれ、悩ましげな表情で高い声を上げるリディアは、昼間エッジを尻に敷いていた強い妻ではなく、自分の腕の中で快楽に溺れつつあるか弱い女だった。

(セシルの言う通りだな…。)

機嫌の悪い妻に当たり散らされた時のストレス対処法、それは自分が優位に立てる夜のベッドの上でしっかりと発散することだった。


快感に悶えて軽く息を切らせ、切なげな表情で口を少し開けたまま自分を見つめるリディア。その姿がエッジの男としてのプライドを漲らせた。


エッジはリディアの髪を撫でてやり、優しく口づけする。彼女の寝間着の浴衣の腰紐を解き、身に付けているもの全てを剥ぎ取ると、リディアは両手で下肢の間にある茂みを隠した。

「隠すな。」
「やだぁ…。」
「ったく、お前は聞き分けがねぇなぁ…。」

「何よ、エッジが悪いんじゃない…。」


妻の反抗的な言葉がエッジの支配欲に火をつけた。

エッジはリディアの脚を広げて素早く間に割り込み、茂みを隠す両手を片手で押さえ、空いた方の手の人差し指と薬指で花弁をくっと広げ、露わになった小さな蕾を中指でなぞりだした。

「やっ、あっ、あっ…!」
「言うこと聞かねぇ悪い子はお仕置きだ。」

抵抗しようと、押さえられたリディアの手に力が入るが、非力な召喚士の力では鍛え上げられた忍者の力には到底敵わなかった。エッジがそこをなぞるたびにリディアは嬌声を出し、とろとろと蜜を溢れさせてゆく。


エッジは早くリディアを激しく自身で犯したいという欲求に駆られ、かなり余裕をなくしていたが、ここはもっと妻を乱れさせたいという思いが勝る。


なぞっていた中指を花弁の中へと差し込んでいくと、潤った柔らかいそこはするする奥まで受け入れた。侵入した指は、リディアの敏感な部分へと辿り着き、そこを擦り上げる。エッジの指が動くたびにリディアの身体はピクンと跳ねた。

「あっ、あっ、やめてぇ…!」
「そんな色っぽい声出されたらやめられねぇよ…。」


人差し指も入れ、さらに執拗にそこを掻き乱すと、悲鳴のような声が上がった。くちゅくちゅという淫靡な音色と共に色白の華奢な身体は仰け反り、快楽を求めてエッジの指を深く飲み込もうと腰が浮いてくる。

「はぅっ…!はぁっ、ぁっ…。」
「イッちまえよ、そんな我慢すんなって。」

指で犯しながら、眉を寄せて必死に耐えようとするリディアの理性を取り払ってやると中がぐっと狭くなった。

「ほら、もう少しだ…。」

エッジが激しく指を動かすと、リディアは悶えながら、されるがままに昇っていった。

「あっ、ぁ…あぁぁ…ッ!!」

絶頂に達したリディアは艶かしい声を上げ、身体を弓なりに反らせた後、くったりと脱力し、エッジに押さえられていた両手は茂みに軽く添えられているだけになっていた。


はぁはぁと息を切らせ、トロンとした翡翠色の瞳がエッジを見つめる。

「ん、何だ?もっとして欲しいのか?」
「違うもん…!」

からかわれて不機嫌な気持ちを夫にぶつけたいが、絶頂の余韻で思考がうまく回らず、頬を赤くしてそう言うのが精一杯だった。


その姿を見てくくっと笑うエッジはリディアを天から見下ろす形で彼女の柔らかい髪を撫でる。

「して欲しいんなら、素直に言えって。」
「エッジのバカ…嫌いッ!」


完全に優位に立ったエッジは、ご機嫌斜めのリディアの罵倒の言葉を聞いてニヤリと笑う。

「俺のこと嫌いか?」
「嫌い…。」

そっぽを向くリディアの手を握り、指を絡めながら頬に優しくキスをする。

「リディア、俺のこと嫌いか?」
「…嫌い。…んっ。」

そっと口づけすると、リディアはエッジの唇を食むように唇をもごもごと動かした。

「俺のこと…嫌いか?」
「…。」

リディアの翡翠色の瞳を見つめ、優しい表情で語りかける。

「俺はリディアのこと大好きなんだけどな。」
「…。」

恥ずかしくて目を逸らしたいが、リディアの華奢な身体など全て包み込んでしまいそうなエッジの深い目の色に見つめられてできない。

「…そんなに…見ないで。」

精一杯紡ぎ出した言葉にエッジは優しく微笑むと、今にも互いの唇が触れそうなほどに近付き、囁くように再び問いかける。

「リディア、俺のこと嫌いか…?」



問いに対する答えはただ一つ。今まで何度も口にしてきた言葉なのに、今日は素直になれなくてドキドキしてしまう。








「……大好き。」

もじもじする可愛い唇から発された小さなその声を、聴覚の発達した忍者であるエッジが聞き逃すはずがなかった。絡めていた指にぐっと力がこもり、リディアの唇を貪るように食む。

ちゅっ、ちゅうっ、ちゅくっ…

「んっ、んふぅ…。」

呼吸すら許されないような、絶え間なくリディアを責めたてる扇情的な口づけ。昼間優しかった夫の変貌ぶりに、リディアは戸惑うばかり。


エッジの唇がリディアの胸元へと移動し、乳房の上部の柔らかい部分にキスのシャワーを浴びせていく。くすぐったいような気持ちいいような感触に小さな吐息が漏れる。


絡まっていた指が離れてゆき、エッジはリディアの下半身へと、身体を後退りするようにして移動していく。エッジの顔がお腹の上あたりに来たかと思うと、臍にキスが落とされた。思わずピクリとするリディアを見て気を良くしたのか、エッジは彼女のキュッと括れたウエストをそっと撫でながら臍の周りに舌を這わせる。

「はぁぁん…やだ、くすぐったい…。」

堪らず身体をくねらせ、エッジの頭に手を添える。

徐々にエッジの舌が臍周りから下腹部を這い始める。秘所に近い、臍の下から下肢の茂みのすぐ上までを彼の舌がゆっくりと動く。その絶妙な感触に花弁はキュッと締まり、奥の蜜源が疼く。

「んっ…あっ…ダメぇ…。」

リディアが両脚を捩っていると、茂みのすぐ上の柔らかな部分に何度もキスが落とされる。甘い刺激に花弁だけでなく、子宮までキュッとなるようだった。


さっきまでのイライラなど、もうすっかり消えてしまった。心地良くなったリディアはエッジの行為に見入りながら、添えていた手で彼の髪を優しく撫でる。するとエッジがちらりとこちらを見たので、リディアは艶かしい笑顔で応えた。

「はぁー、やっと笑ってくれたな。」

嬉しそうなエッジの言葉に、リディアはハッとした。今日は自分でもあまり気分が良くないのは分かっていたが、そんなに険悪な顔をしていたのだろうかと思わず頬に手を当てる。

「ったく、お前今日はほんっと機嫌悪かったよなぁ。」
「…私、機嫌悪かった?」
「おぉ。」
「だって…。」

「月のもんが近いんだろ?」
「!」
「はっはっは、俺がお前の身体のこと分かってないとでも思ってたのか?」


リディアの柔らかな緑の髪を撫でてやると、彼女の表情はみるみる緩み、頬はほんのり赤くなった。

(エッジ…分かってたんだ。だから優しかったんだ。)

どうしようもない理由で気分がすぐれない自分を受け止めてくれた夫の優しさに、胸がキュンとなるリディア。その様子を見ていたエッジはリディアに優しく口づけしながら彼女の内太腿に指を滑り込ませ、秘所の状態を探った。


そこは熱く、しっかりと潤んでいた。ずいぶん前から張り詰め、準備万端のエッジはもう一刻も早くリディアと繋がりたい。


秘所に触れられ、ピクリと反応するリディアを見て、エッジは寝間着の上衣を脱ぎ、腰紐を解き、下衣と一緒に下着を脱ぎ去る。両脚の間から太腿の裏に滑り込ませた手でリディアの片膝を曲げさせ、自分の腰の位置を合わせると、熱く膨張した肉塊を潤い溢れる柔らかな花弁に押し当てた。リディアがその重量感ある存在に気づいて息を飲んだ時、花弁はぐっと押し広げられ、2人の身体が繋がった。


「あっ…エッジ!」



よく潤ったそこはあっという間にエッジを受け入れ、リディアが声を出した時にはすでに奥まで到達していた。


昼間の仕返しという名目があるため、エッジはリディアに有無を言わせまいと早速腰を激しく揺らす。


「えっ、やっ、あぁっ…!エッジ、速い…!」

あまりに自然に入ってこられた驚きを表す間も無く、感じる部分を的確に突くエッジの熱さと重量感から繰り出される快感に、リディアは堪らず首を仰け反らせて眉を寄せる。エッジが彼女の手を握って指を絡めてやると、縋るようにギュッと握ってくる。

「いやっ、あぁぁん、エッジぃ…!」


激しい律動で揺れ動くリディアにどんどん迫ってくる快楽の波。何一つ考えることができず、ただ眉を寄せてその流れに身を任せるだけの妖艶な裸体から発されるのは、エッジをますます猛らせる喘ぎ声。


乱れさせたいというエッジの思惑通り、見事なまでの妻の溺れっぷり。

「くくくっ…気持ちいいか…?」

もう返事する余裕がないリディアに口づけする。

「んんっ、んっ、んふぅっ…。」

エッジの口の中でリディアの声がくぐもるのと並行して、破裂しそうなほど膨らんだ熱い肉塊を包み込んでいた柔らかなリディアの内部がひくひくと波打ちながら狭くなっていく。

「締まってきたぞ…リディア、我慢すんな。」


自分の限界を感じながらも、どんどん締まってくる内部に逆らうように律動を続けるエッジ。その動きにもう耐えられなくなったリディアの身体の奥がぐっと狭まった。

「はぁっ…あ…あぁぁっ…!!」

リディアが悩ましげな声と共に、痙攣しながら2度目の絶頂に達した。

「うっ…く…!!」

強烈な締め付けがエッジを襲う。勢い良く果ててしまってもおかしくない状況の中、理性を保って歯を食いしばり、寸前の所で抑え込む。




耐え忍んだ数秒の後、エッジの目に映ったのは、うっすらと汗ばみ、軽く息を切らせて力なく自分の手に指を絡ませるリディア。


エッジは汗で首筋や頬に張り付いた髪を外してやり、優しく口づけする。唇を離すと、リディアは2度の絶頂の余韻でポーッとした表情でエッジを見つめていた。


何か言いたげな、少し開いた可愛い唇。それを優しい眼差しで見つめたエッジの腰は、再び律動を開始した。

「あっ…!ぁっ、ぁ…。」

間髪入れず連続して攻められ、もうリディアの声には芯がない。


「ひゃぁんっ!あっ…!」

律動しながらエッジは腰を回す動きを加えてリディアの内部を軽く抉るようにぐりぐりと刺激すると、眉を寄せて仰け反る華奢な身体からはか細くも悲鳴のような声が上がった。




エッジは上半身を倒し、身体を密着させ、唇を重ねる。すでに狭くなってきている中を激しく行き来し、粘膜が擦れ合い、ぐちゅぐちゅと音を立てる。


もっと快楽に溺れる妻を見ていたいが、きつくなる締め上げにもう限界だとエッジが思ったその時。




「……ぁッ!!」


リディアの3度目の絶頂の叫びは、微かなものだった。じわりと上がったリディアの体温を感じながら、自分をぐっと押し包んでピクピクと波打つ内部に身を任せ、エッジは勢い良く果てた。










夫に腕枕をしてもらっているリディアは、トロトロと現実と夢の世界を行ったり来たりしていた。その様子が堪らなく愛おしくて、エッジは妻の髪を優しく撫でる。


昼間は強気だったリディアは3度も自分の腕の中で果て、力無く横たわり、縋るようにこちらに身を寄せてきた。男としての威厳を見せつけ、優越感に浸るエッジは優しく微笑みながら彼女を抱きしめる。


「リディア…寝ていいぞ。」
「ん…。」


気怠さと眠気に襲われつつ、リディアはエッジをじっと見つめて何やらもごもごと言いたそうにしている。

「…何だよ?」
「…何でもない。」

リディアはふっと微笑みながら、心地よさに身を任せ、気持ち良さそうに眠りに落ちていった。

(寝ちまったか…。ったく、どうあっても可愛い奴だぜ。)


尻に敷かれても愛おしい妻リディア。自分が優位に立っても心底惚れた女性には結局敵わないのだと軽く苦笑しながら自らも眠りに落ちていくエッジだった。



―完―

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2014
04.29

「Full Moon in Late Autumn」 あとがき

Category: あとがき
リディアが好きで好きで仕方なくて、情けない姿を見せてしまったお館様でしたが、いかがだったでしょうか?


エッジは10数年もの間リディア一筋だったわけですが、その間きっと気持ちが折れてしまうことや、彼女を好きでいることが辛いことがあったと思うんです。ミストの復興の事があって、リディアが最後の召喚士だっていう事実のせいで、無理に自分の気持ちを押し付けられなかったでしょうしね…。

長い間そんな生活を送ってきたらそう簡単には忘れることはできないかもしれないし、何よりエッジはリディアが好きすぎて自分の気持ちよりも彼女を優先しちゃうし失いたくないだろうし、その気持ちを表すストーリーにしたいなぁと思って出来上がったのが今回の作品です。ま、結局エロになってしまいましたけど(苦笑)


私はアラサ―独女ですが、もし結婚したら一緒に生活していくわけだし、相手の弱みも受け入れないといけないんだろうなっていう自分の考えも反映された気がします。もちろん、そのためには相手のことが好きで、信頼していることが必要になってくるんだと思います。エッジとリディアなら長い付き合いだし、信頼関係はできあがってるだろうからこういうことがあっても大丈夫だろうという管理人の勝手な見解ではありますが…。


ではまた次回(^^)
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2014
04.27

「Full Moon in Late Autumn」★

リディアが好きで好きでたまらない病のエッジ。「The Expiration」の続きです。エロシーンありです、ご注意下さい。






「Full Moon in Late Autumn 」





「ねぇ、エッジ。」
「ん?」
「忙しいところごめんね。あの…。」
執務室で仕事をしているエッジにリディアが遠慮がちに話しかけてきた。
「何だよ、聞いてやるから言えよ。」
笑顔でリディアを見つめるエッジ。するとリディアが話し出す。



「私…ミストに帰りたいの。」




「え…?」


驚くエッジに、リディアは話を続ける。
「久しぶりにミストに行って思ったの。やっぱり私はミストに住みたいんだって。」
エッジの身体が震えだした。

「リ、リディア…そ、それは…。」
言葉に詰まるエッジを見て、リディアはふっと笑った。

「エッジ、短い間だったけどありがとう。すごく幸せだったよ。」
リディアは左薬指の結婚指輪を抜き始めた。

「ま、待ってくれ!!…俺、何かお前の気に入らねぇことしたか!?」
リディアは首を横に振る。

「じゃあエブラーナでの暮らしが気に入らなかったのか?もしそうなら言ってくれよ!俺が何とかするからよ!」

次第にリディアが無表情になっていく。

「誰だって自分の故郷が1番に決まってるじゃない。エッジだって、エブラーナが1番でしょう?」

そう言われ、エッジはビクッとする。
「そ、そりゃそうだけど……なぁリディア、考え直してくれよ…お前がここにいてくれるなら俺は何でもする。だから頼むよ…!」

結婚指輪を抜き終えたリディアは、それをエッジに渡した。エッジはどうしていいか分からず、ただリディアの足元に縋り付き、涙を流す。

「リディア…ミストに帰らねえでくれ…エブラーナに…俺のそばにいてくれ…!」

好きで好きでたまらなくて、やっと結婚できたのに。必死に訴えるエッジを振り払い、リディアはすたすたとその場を去っていく。



「リ、リディア…待ってくれ…リディアーーー!!!」











「…?」

リディアの姿が見えなくなった後、ぼんやりと見覚えのある天井が見えた。

(あれ…?)

瞼が重い。そして身体も何となく重い。


ゆっくりと呼吸したエッジは、自分がベッドの上にいることに気付く。



ふと隣を見ると、リディアが寝息を立てていた。


(なんだ、あれは夢か…。)


夢など大抵目を覚ますと忘れてしまうというのに、内容が内容だけに、エッジの脳裏に染み付いている。魘されて汗をかいてしまったようで、寝間着の襟元と背中がうっすら湿っていた。


今何時かと思い時計を見ると、そろそろ朝の稽古の時間だった。

(はぁ…起きるか。)


目覚めが悪く、身体が重い。エッジはいつもよりもゆっくりとしたペースで着替え、寝室を出た。


稽古場へ向かう途中、エッジはあんな夢を見てしまうなんて何と自分は情けないのだろうと思った。昨日のミストからの帰り道、リディアが名残惜しそうな表情をしているのを見て、もしかしたら本当はミストに帰りたいのではと不安な気持ちにはなっていたから、それが夢になって現れたと考えれば不思議ではないのだが。



もう結婚したというのに、今でもエッジは時々リディアが自分の手の届かない遠くへ行ってしまうのではないかと不安になることがあった。自信家で前向きな性格のエブラーナ国王だが、リディアのこととなると事情が違う。


好きで好きでたまらなくて、どうしても失いたくない。だからふとしたことで不安になってしまう。


(あんな夢見るなんて…俺、完全に病気じゃねぇか…。)


ため息を付きながら、朝の稽古を始めるエッジだった。






そしてその日からエッジは仕事が立て込み、深夜まで執務室にこもる日が3日ばかり続いた。






「さて、今日はこのへんにしておくか…。」


夕食後2時間ばかり仕事を進めた後、キリのいいところでエッジは風呂へと向かった。


リディアはもう風呂には入ったのだろうか?今何をしているのか?と、仕事からひと段落し、気が緩んだ途端に彼女の事を考えるエッジ。無意識にそうしている自分にハッと気付き、ため息をつく。完全にリディアが好きで好きでたまらない病である。



「ちょっと頭冷やすか…。」



風呂から上がったエッジは少し気分を落ち着けようと、城の屋上に上がり、晩秋のひんやりとした夜の空気に当たっていた。


空を見上げると、そこには美しい満月。


(きれいだな…。)


満月を見ていると、何か不思議なパワーをもらっているような気になる。科学的根拠はないらしいが、人間は月の満ち欠けに精神的な影響を受けると言われるのはあながち間違いでもないのだろう。



月の光を浴びている内に湯上りの身体から程よく熱がひき、エッジは寝室へと向かった。








部屋に入ると、明かりは消えており、ベッドのすぐそばにある窓から差し込む満月の光だけが部屋を照らしていた。


(あれ、リディア…もう寝てんのか?)


部屋の奥へと歩いて行くと、リディアがベッドの上に座って窓の方を向いてるのが見えた。

「あ…エッジ、今日は早かったのね。」
「よう、リディア。」

リディアも満月を見ていたようである。

「エッジ、今夜はきれいな満月よ。」
「ん、あぁそうだな。」


エッジもリディアの隣に座り、一緒に満月を見る。


「きれいだな。」
「うん…。」




特に会話を交わさずとも、リディアと一緒にいるだけで幸せな気分になってくるエッジ。ふと、リディアの方を見ると、彼女は美しい翡翠色の瞳でじっと満月を眺めている。


(こいつは今…何を考えてるんだ?)


自分は今この瞬間は幸せなのだが、リディアはどうなのかと思ってしまう。


(これじゃ俺、リディアの事を疑ってるだけじゃねぇか…。)


愛する妻を信じていない自分の器の小ささに、内心呆れるエッジ。


「エッジ?」
「ん?」
「…どうかしたの?」

「あ?…何でもねぇよ。」


あんな夢を見たなんて知られたら、リディアのことを何でも受け入れてやると言っておいて、何と器の小さい奴かと思われるに違いない。何となくリディアの顔が直視できず、再び顔を上げて月を眺めるふりをするエッジ。





「エッジ…。」
「うん?」


リディアがエッジの手にそっと触れた。


温かい―――。


リディアの手の温もりを感じていると、彼女はエッジに身を寄せ、彼の右腕にキュッとしがみつき、自分の胸元に引き寄せた。


(おぉ…?)


リディアの胸のふくらみの柔らかい感触に、思わずエッジの下半身の一部が反応する。伏し目がちにしていたかと思うと、すっと上目遣いでエッジを見つめた。


あまりの可愛さにドキドキのエッジは、身体をリディアの方に向け、思わず左手で彼女の頬を包み込む。触れた色白の頬はきめ細かい肌で、エッジの手に吸い付くような感触。


じっと見つめ合っていると、リディアが静かに目を閉じた。




それを見たエッジはリディアを抱きしめ、優しく口づけした。するとリディアは物足りないと言わんばかりにエッジの首の後ろに腕を回し、角度を変えながら唇をより深く重ねてきた。

ちゅうっ、ちゅくっ、ちゅううぅっ…

(すげぇ吸い付きじゃねぇか…たまんねぇ…。)

満月の影響なのか、いつもは自分からしているような扇情的な口づけを今日はリディアがしてきてくれる。エッジはリディアの背中に回した手を腰の辺りへと下げていき、腰からお尻にかけてをゆっくり撫で始めた。


「あっ…エッジ…。」

リディアがピクンと反応した。

「ん、気持ちいいのか?」
「うん…。」

エッジはリディアの下半身を撫でながら、再び口づけをする。舌をリディアの口腔内に侵入させ、彼女の舌と自分のものを絡めようとすると、リディアもそれに応じた。

ちゅぷっ、ちゅぷ、ちゅぷ…

いやらしい音が響き、エッジもリディアも気持ちが高ぶっていく。さっきまでリディアの腰周りを優しく撫でていた手は、弄るように動き出す。舌を絡め合っている間、リディアの手がエッジの寝間着の襟元に伸びてきた。

(お…?)

リディアはエッジの寝間着の胸元を押し開いた。エッジの鍛え上げられた上半身が露わになると、リディアは彼の肩から腕や胸、お腹を撫でるように自分の白い華奢な手を滑らせた。

「あぁ…。」

思わずため息のような声を出すエッジ。リディアの細い指がエッジの乳首回りをゆっくりとなぞる。

「うぉ…。」
「…気持ちいい?」
「ん…。」

(あぁ…リディア、俺は幸せだぜ…。)


リディアのことが好きで好きで、何度も夢に見た彼女からのアプローチ。


エッジはいつも夢から覚めるたびに、ふわふわとした緑の髪をなびかせる色白で美しい翡翠色の瞳に長い睫毛の愛しい女性の事を想い、虚しさだけが増した。



いつかエブラーナに妻として迎え、一緒に暮らせる日が来ることをただ願い続けた10数年の思い出が頭を過った。




(夢じゃ…ねぇんだよな…?)




エッジはリディアをぎゅっと抱きしめる。そして彼女が今、自分の妻としてここにいることを確かめる。



リディアから香ってくる、甘く優しい匂い。



トクントクンと伝わってくるリディアの鼓動。




夢じゃない。




リディアは確かに俺の腕の中にいる―――





エッジの目頭に何か熱いものが込み上げてくる。



思わず目を瞑った。





「…エッジ?」

リディアの細い指が、エッジの頬をなぞる。


ゆっくりと目を開けたら、リディアの顔が霞んで見えた。



「エッジ…泣かないで。」


リディアの一言で自分が涙を流していることに気付き、慌てて拭った。

(俺、何で泣いてんだよ…だせぇな…。)

「…悪りぃ。何でもねぇよ。」
「…。」



ふと、3日前の悪夢を思い出す。



(リディア…俺のそばにいてくれ…!)



そんなことを考えていると、リディアはエッジの手を握り、自分の胸の前にもってきた。彼女の左薬指にある自分と揃いの結婚指輪が、月の薄明かりに照らされて光っている。


(くそっ、何であの夢を思い出すようなことばっかり…。)



リディアの結婚指輪を見つめるエッジに、彼女はふっと微笑んだ。

「エッジ、泣かないで。私はここにいるよ。」

「え…?」


自分の心を読まれたのか?いや、まさか…


「私はエッジのそばにいるから大丈夫よ。」


そう言ってリディアは握っていたエッジの手を、自分の胸に当てる。

「ほら、ね?」



柔らかい
温かい



エッジは手から伝わってくるリディアの胸の温もりを感じ、全身が痺れてしまいそうだった。


リディア

リディア…

リディア…!!




愛しい女性の名を、何度も心の中で叫ぶ。




リディアは、俺のそばにいる―――





「あっ、エッジ…。」
「はぁっ、リディア…!」


リディアがここにいることをもっと感じたい一心で、エッジは彼女の素肌に触れようと寝間着の浴衣を肩からずり下げ、そこから姿を現した形のいい豊かな胸のふくらみを必死に揉みしだいた。



「はぁっ、エッジ…!」



リディアは悶えながらも両手でエッジの頬を包み込み、彼に口づけする。

「んっ…ふぅっ…!」


口づけしながら鼻から抜けるリディアの吐息は艶かしく、エッジを猛らせていく。





リディアの柔らかなふくらみをしばらく揉みしだき、エッジは次第に平静さを取り戻した。
するとリディアが再びエッジの首の後ろに腕を回し、身体を密着させ、彼の唇に自分のそれを深く侵入させてきた。


(リディア…?)






リディアがやっとのことで唇を離した。エッジはなぜ彼女が今夜こんなに積極的なのか疑問をもった。



「…お前、今日どうしたんだよ?すげぇエロいじゃねぇか。」




リディアは何か考えた様子で話し出す。



「…だって、エッジはしばらく仕事大変だったし、私も寂しかったし、今夜はエッジといっぱいしたくって…。」



「…それだけか?」



勘のいいエッジは、リディアの言葉の裏を的確につく。リディアは何となく、エッジから視線を反らした。


「…何だよ、言えよ。」




「……ミストに行った日の夜中に、エッジが魘されてたから…。」
「…え?」



エッジはギクリとする。


「エッジが泣きながら、『リディア、ミストに帰らねえでくれ。俺のそばにいてくれ』って…。」

リディアは魘されるエッジの頬を伝う涙を拭ってやり、静かな寝息を立てるようになるまでずっと彼の手を握り、見守っていたのだ。






「マジかよ…。」


自分が譫言を発していたなんて。話を聞いたエッジは自分からリディアをミストに連れて行っておいて、決まり悪い以外の何でもなかった。


(俺…小さ過ぎるな…。)


エッジは思わず下を向いて顔を両手で覆う。こんな器の小さい自分を見せていたなんて。どう弁解しようか悩んでいると、リディアがそっとエッジの身体に身を寄せた。


「だから、私はエッジに安心してほしくて…。」

大きな翡翠色の瞳を潤ませながらエッジを見つめるリディア。


「そうかそうか、器の小せえ旦那が泣いててあまりに可哀想だからサービスしてあげなくちゃって思ったんだな?」

妻に気を遣われ、自嘲するしかないエッジ。

「エッジ…ごめんね。私がエッジに都合良く甘えてるから…。」
「…いや、お前は謝らなくていい。俺の問題だ。」

リディアを直視できないエッジ。さっきまで高ぶっていた気持ちも、どこかへ行ってしまった。


(くそっ…かっこ悪りぃ。どうすりゃいいんだよ…。)


ちゅっ。



リディアの唇が、エッジの頬に触れていた。エッジがはっとリディアの顔を見ると、リディアの翡翠色の瞳は潤み、形のいい可愛らしい唇は、何か言いたげに微かに動いている。

「あぁ、リディア…俺のことは気にすんな。またミストに行こうぜ。」


自分の元に来てくれたリディアを信じてやらねば―――。


エッジはにっこりと笑い、リディアのふわふわとした緑の髪を撫でた。だがリディアはエッジを真っ直ぐに見つめたままだ。


「リディア?」


「…もう、それ以上言わないで…!」

リディアはベッドの上で膝で立ち、細く白い腕を広げ、はだけた自分の胸にエッジを抱いた。


ふわふわと温かく柔らかな感触がエッジを包み込んだ。


リディアの手が、優しくエッジの髪を撫でる。


「…もう何も言わないで。笑顔なんて作らないで…!」

エッジはいつもリディアの事となると、自分の気持ちを押し殺してしまう。このまま話し合っても、彼は意地を張るだけだと思ったのだ。


リディアはエッジと頬をすり合わせ、何度も口づけした。

「リディア…?」




私はずっと、あなたと一緒にいるよ―――




その想いをエッジに感じて欲しくて、リディアは再びエッジと唇を重ねた。
それはとても優しく、何度も繰り返された。


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…


エッジはただリディアの行為を受け入れ、すがるように彼女の背中に腕を回した。


言葉で伝えようとすると素直になれなかったり、ぶつかったり。だから、今はこうして自分の想いをエッジに伝えたい。



いつもは、あなたが包み込んでくれるけど、今日は私にそうさせて―――











エッジはリディアの胸に抱かれたまま目を閉じていた。やわらかな月の光の下で、彼は穏やかな表情でゆったりと呼吸している。リディアはエッジが眠ったのかと思い、そっと顔を覗き込むと、エッジは忍者として鍛え上げられた感覚でその気配を感じ、目を開けた。

「はっ…エッジ。」

「…忍びの長をなめんじゃねーぞ。お前の動きは全部感じてんだぜ?」

驚いたリディアを見てエッジはふっと笑う。

エッジはリディアに預けていた身体を起こし、じっと彼女を見つめた。

「俺がお前に抱きしめられるなんてなぁ…。」

少し笑いながらも、どことなく決まり悪そうな表情。

「…ダメだった?」
リディアはしゅんとした顔でエッジを見つめた。

「んー…たまにはいいかもしんねぇな。」

頭を掻きながらそう言うエッジを見て、リディアはベッドに腰を落とす。どう会話を続ければいいかリディアが思案していると、エッジの手がいつの間にかリディアの腰周りを撫でていた。

「きゃっ、エッジ…!」
「お前は本当隙だらけだよなぁ。そこが可愛いんだけどよ。」

そう言ってニヤリと笑うエッジ。自分の気配に気付かれないように動くことは、忍びとしての基本であるため、エッジにしたら何てことはなかった。

「やだぁっ、エッジのスケベ…。」
「自分から誘っといて何言ってんだよ、分かんねぇ奴だな。」


ちゅっ、ちゅぅぅっ、ちゅくっ、ちゅぅぅぅ…


エッジは頬を赤らめるリディアをぎゅっと自分の方に抱き寄せ、さっきリディアがしたよりもずっと深く、熱い口づけをした。

(やだ…蕩けちゃいそう…。)



エッジの唇がリディアの耳朶から首筋を食んでいく。くすぐったさに、リディアはピクピクと反応した。

「…もっと感じたいか?」

エッジが耳元で囁いてきた。リディアがコクンと頷くと、エッジはリディアの寝間着の浴衣の腰紐を外して脱がせ、ショーツもするりと脱がせてそのままベッドに組み敷いた。



今夜は自分がリードして奉仕して、エッジを安心させたいと思っていたのに、もう主導権を握られてしまった。


エッジはリディアの両手首を掴んでベッドに押し付け、彼女の胸のふくらみに佇む蕾を口に含み、何度も舌先で弾くように舐めた。

「やぁぁぁっ…!」

リディアはたまらず腰をくねらせ、秘所の奥が疼き両脚を捩る。刺激に耐えられず、リディアの蕾はぷっくりと硬さを増した。エッジは反対側も同じように舌先で弄ぶと、硬くなった蕾を指できゅっと挟んでやった。

「よく感じてるじゃねぇか…しっかり立ってるぜ。」

満足そうにニヤニヤとするエッジ。その手がリディアの両脚の間にそっと伸び、小さな茂みに触れた。それにピクンと反応するリディアに気を良くしたエッジは、指をするすると彼女の秘所に滑り込ませていった。するとエッジの指先には温かく、とろりとした蜜が絡みつく。

「…すげぇ。こんだけ濡れてりゃ気持ち良さそうだな、くくくっ…。」


己の性欲のままに言葉を発するエッジは、満月の夜に雄叫びをあげる狼そのもの。さっきまでの決まり悪そうな表情など、見る影もなかった。


次の瞬間、エッジは寝間着のズボンと下着を一気に脱ぎ去り、何も言わずにリディアの両脚を広げて押し入ってきた。

「あぁぁぁっ…!」

あっという間に奥まで貫かれたリディアは、エッジの熱さと硬さに身震いした。それを見たエッジはリディアの肩を掴み、満足そうな表情で腰を揺らし始めた。


たっぷりと自分に絡むリディアの蜜が滑りを良くし、ぬぷぬぷと中を行き来するエッジの身体に快感が次々と流れ込んでゆく。


「あぁっ…すげぇ気持ちいい…!」


リディアも結合部からどんどんせり上がってくる快感に浸り、もうこのままエッジと一緒に果てていこうと思い、目を閉じた。





「うっ…。」


エッジの小さく、低い呻くような声がリディアの耳に止まった。リディアが翡翠色の瞳をそっと開くと、エッジは律動を停止し、首を垂れていた。エッジの表情がどこか苦しそうに見えたので、リディアは何が起こったのかと心配になった。


「…エッジ?どうしたの?」
「…いや、何でもねぇ。」


そう言って再び律動するが、またすぐに動きを止め、俯き、深く息を吐きながらリディアの肩に顔を埋めてきた。

「エッジ…どこか痛いの?」


リディアが軽く息を切らせるエッジの頭を撫でながら尋ねても、彼は何も答えない。

「黙ってないで教えてよ…。どうしたの?」

エッジがゆっくりと身体を起こし、今までになく余裕のない表情でリディアを見つめた。そしてか細い声で話し始める。


「…すまねぇ、リディア、俺…。」
「うん?」


リディアはエッジを優しく見つめた。するとエッジが口にしたのは…



「悪りぃ…俺…もうイッちまう…。」



苦しさの中に、情けなさを含んだようなエッジの表情はもはや雄々しい狼のものではなかった。数日間ご無沙汰だったのと、愛する妻に決まり悪い姿を見られて精神的に参ってしまったからなのか。リディアはエッジの顔を見て、思わずふっと笑みをこぼした。

「もう、エッジったら…。」

そう言ってリディアはエッジの首の後ろに腕を回して自分に引き寄せ、彼にそっと口づけした。



「…我慢しないで。」

エッジを縛る理性の箍を外してやろうと、耳元で囁く。

「いいのか…?」

リディアは小さく頷いて優しく微笑んだ。

「…たまにはいいじゃない。」

そう言って、エッジの首の後ろに回した腕にきゅっと力を込める。

それを感じたエッジは、ゆっくりと腰を揺らし始め、徐々にスピードを上げていく。結合部はリディアの蜜とエッジのモノが擦れ合い、もうぐちょぐちょである。

「んっ、あっ、はぁっ、エッジ…!」
「リディア…リディア…!」

リディアを突き上げるエッジの先端は彼女が感じる部分を捉えていたが、どことなく切ないような気持ちをはらんでいて、それは快感と共に、リディアの身体にじわりじわりと伝わってきた。


エッジは精悍な顔を歪めて歯を食いしばり、ますます苦しそうだった。我慢しなくていいと言葉で分かっていても、まだ男としてのプライドや理性が働いているようだ。


「くはっ…!はぁっ…はぁっ…!」


いつもより早い、大きい快楽の波に呑まれそうになりながら必死に耐えているのが分かるような息遣いのエッジ。

リディアはそんな姿を見て、早くエッジを楽にしてやりたいと思い、彼の背中をさすってやる。

(エッジ…!)

速度の落ちたエッジの腰の動きが、また早くなってきた。


リディアの耳元で響く、エッジの必死な息遣い。彼が自分にもたらす快感に悶えながら、どうすればエッジを解放してやれるか考える。


「あっ、あぁっ、エッジ…わ、私…。」


リディアの声を聞き、エッジが彼女の顔を見つめた。


「私…んんっ…エッジのこと…大好きだから…全部受け止めたいの…っ!!…あぁんっ!…だから…。」


だから、もう苦しまないで―――




それが声になったかなってないか、快楽の真っ只中にいたリディアにははっきり分からなかったが、その直後、エッジの表情はすぅっと落ち着き、汗ばんだ彼の手がしっかりとリディアの肩を掴んだかと思うと、彼女を突き上げる速度が吹っ切れたように上がった。結合部の温度が上がり、繋がっている2人の身体が揺れ動き、その振動でベッドからはギシギシと音が出る。リディアはしっかりとエッジの背中にしがみつき、彼の腰に両脚を絡めた。


「はぁぁぁぁっ、エッジ…!!」

「リディア…もうダメだ…うっ…くぁっ…!!!」

エッジの絶頂の叫びを聞いた瞬間、リディアは彼を強く強く抱きしめた―――








「はぁ…ふぅ…。」

深く呼吸するエッジは、リディアに背中をポンポンと優しく叩かれながら、繋がったまま彼女の肩に顔を埋めていた。



しばらくしてエッジが両手をリディアの両脇に付くと、顔を上げて彼女と視線を合わせた。


まっすぐエッジを見つめる翡翠色の瞳が瞬きするのに合わせ、長い睫毛が揺れ動く。それに魅入っていると、リディアの両手がそっと、うっすら汗ばんだエッジの頬を包み込む。



「はぁ…リディア…。」

エッジは何か言おうとしているが、果てたばかりでうまく思考が回らないのだろう。

「エッジ…何も言わないで。もう、何も…。」

言葉が出てこないエッジの頬を撫で、ぎゅっと自分に抱き寄せた。

リディアに抱きしめられたエッジは脱力し、彼女の胸に顔を埋め、その温もりにしばらく酔いしれた。






布団をかぶり、事後の倦怠感でエッジは片腕で自身の顔を覆っていた。リディアがそっと彼の手を握ると、それに反応してエッジは彼女の方を見た。

「リディア…すまねぇ、俺…」
「どうして謝るの?…エッジ、何も悪いことしてないじゃない。」

真面目な表情で話しかけてきたエッジを、リディアは遮った。

「違うんだ、聞いてくれ。」
「え…?」

そう言って自分の手をぎゅっと握り返すエッジ。リディアの方に身体を向け、少し身を乗り出して、彼女に語りかける。


「…俺は、お前を信じてなかったんだ。こうして結婚してるってのに、またどっか遠いとこに行っちまうんじゃないかって時々不安になってた。こないだミストに行った時もそうだった。本当は俺と暮らすよりも、ミストに帰りたいんじゃねぇかって疑っちまってたんだ。」

リディアは静かにエッジの話を聞く。

「すまねぇ、リディア。お前が俺の事をどう思おうと構わねぇ。だけど、俺はお前を失うのだけは耐えられねぇんだ。だから…だから……」

そう言って、エッジは言葉に詰まってしまった。


リディアはどうエッジに言葉をかければよいか分からなかった。こんなにも愛する男性を不安にさせていたなんて。結婚するまで自分を長い間想い続けて、自分に合わせてくれて、傷ついたこともたくさんあっただろうに、今でもまだ自分のことで苦しんでいる。


リディアとて、エッジを失いたくない。彼は今やリディアにとって、あまりにも大きく、かけがえのない存在となっているのだから。



「けどリディア…ありがとうな。お前があんな情けねぇこと言った俺を受け止めてくれるって聞いた時、すげぇホッとしたんだ…。」

「エッジ…。」


器の小さい奴だと思われたくなくて、見せなかった心の影。リディアのことが好きで好きでたまらないが故の意地。




「すまねぇ、リディア…俺が悪かった…。」

「エッジ、もう謝らないで…。」

そう言ってリディアはエッジを抱きしめた。エッジなら何かあってもどうにかしてくれる、自分に合わせてくれると都合よく甘えていたがために彼にそう思わせてしまっていたのだから。


リディアに抱きしめられたエッジは、思わず彼女にしがみつく。その行動が可愛くて、リディアは笑みをこぼしてエッジの頭を撫でてやった。


「よしよし、いい子だね。私はエッジとずっと一緒にいるから、大丈夫だよ?だからもう泣いちゃダメよ~?」


エッジは軽く苦笑した。いつも自分の腕の中にいるリディアが、今は自分を包み込んでいる。けどそれも悪くない、そう思っていると―――


「私もエッジのこと、失いたくないよ。エッジのそばにいるから、だから…もう苦しまないで…。」


リディアの言葉が、潜んでいたエッジの心の影をすっと消し去った。

「リディア、ありがとな…ありがとう…。」

どんなにカッコ悪いことをしても、自分を受け止めてくれるリディア。エッジはそう呟きながら彼女の温もりに包まれて目を閉じた。



「…またミストに行こうな?」

エッジにそう言われてどう反応すれば良いか、リディアが考えていると、彼は曇りのない笑顔でこっちを見つめた。それを見たリディアも自然に笑顔になる。

「エッジ…。」
「もう…大丈夫だ。お前は一生俺の女だもんな?」

「はい、お館様。わたくしはあなた様と一生添い遂げとうございまする。」

エブラーナ言葉でリディアが誓うと、エッジはプッと吹き出した。

「何笑ってるのよぉ。せっかく勉強して言えるようになったのに。」
「いや…まさかこの場でそんな風に言われるとは思ってなかったからよ。」

「んもう…。」

リディアが不機嫌そうに唇をへの字に結んだ。するとエッジが嬉しそうに笑った。

「本当にお前は可愛いなぁ~。満月の夜にそんな事したら、オオカミさんが食べに来るぞ~?」

「もう、バカ…。」



笑いながらしっかりと手を握り合う2人の左薬指の揃いの結婚指輪は、満月の光に照らされ、微かな光をたたえていた―――


―完―

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2014
04.21

「夜の八重桜」 あとがき

Category: あとがき
季節もののエジリディ、いかがだったでしょうか?完全にベタなラブラブエジリディに仕上がりましたが(笑)


季節ものだけに、もっと情緒的な文章を書けたらなぁ…としみじみ思いました。八重桜ってソメイヨシノと同格の、春の代名詞だというのに、本当稚拙な文章になっちゃって、まだまだだなぁと反省ばかりですどうやら季節がどうのって言うよりも、ラブラブな2人を書きたかっただけかもですが


もう桜の季節も終わりですね。今後も季節に応じたエジリディSSにもチャレンジしていこうと思います。エブラーナって、きっと日本と同じような感じの国ですもんね次はツツジか紫陽花かな?



ではでは皆様、また次回(^^)






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2014
04.20

「夜の八重桜」

近所にある八重桜を見ていたら書きたくなっちゃったんです…。ラブラブほのぼの系ですよ♪

前作までとは時系列がはずれていますが、また別の、季節ものTA後エジリディってことでご容赦下さいませ☆(^^ゞ



「夜の八重桜」







すっかり春めいた日々が続く中、夜を迎えたエブラーナ城では王妃リディアが今日のの仕事を終えた。すると部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「はぁい。」

ドアを開けるとエッジがいた。

「よ、リディア。仕事終わったか?」
「うん、今終わったとこ。エッジも終わったの?」
「おぅ。…あのさ、お前が良かったら、今から夜桜見に行かねぇか?」

「え、桜?」

確かもう時期的に桜は散ってしまってるはずだ。リディアが不思議に思っていると、エッジが微笑んだ。

「八重桜だよ。普通の桜より遅目に咲くから、今ちょうど見頃なんだ。」

リディアは結婚前、何度かエブラーナで桜見物をエッジと楽しんでいたが、普通の桜しか見たことがなかったのだ。

「そうなの?見に行きたい!」
「よしよし、そうこなくっちゃな。」


2人は手を繋いで城を出て、月の光がうっすら夜道を照らす中、八重桜が咲く場所へと向かう。


「桜って色んな種類あるんだね。八重なんて初めて聞いたなぁ。」

興味津々のリディアを見て、エッジは思わず笑みをこぼす。

「バロンやミストの方ではそもそも桜がねぇんだよな?あんないいもん見れねぇなんて、気の毒だな~。」

「ふふふ。」

(エッジの手、あったかいなぁ…。)

自国文化を誇らしげに語るエッジ。リディアはうんうんと頷いて夫の話を聞く。こうしてエブラーナの事を話す夫はとても嬉しそうで、それを見ているリディアも幸せな気分になるのだ。







「着いたぞ、ここだ。」


そこには可憐なピンクの花びらを何重にもたたえる、幾多もの美しい八重桜が咲いていた。

「わぁ、きれい…!」


夜でも花見を楽しめるよう、八重桜の並木道には小さな松明がいくつもセットされている。夜の春風にさわさわと吹かれ、光に浮かび上がるピンクの花びらは何とも幻想的で、リディアをたちまち魅了した。


「…やっぱりきれいだな。」


エッジがそう言うと、リディアは満面の笑みで頷く。

「うん、すごくきれい!エッジ、連れて来てくれてありがとう!」

「へへ…。本当はソメイヨシノの季節にお前と花見したかったけど、何かとバタバタしちまって、タイミング逃しちまったからなぁ。」

「そうだね…エッジ忙しかったもんね。」
「ま、俺は夜のベッドで桜みたいなお前の可愛い乳首見てたから、それで十分だったんだけどな。」

「なっ…!変態!」

顔を真っ赤にして怒ったリディアがニヤニヤするエッジをポカリと叩く。




2人が八重桜の並木道を歩いて行くと、花見を楽しむ国民達と出くわした。

「おぉこれはお館様!奥方様もご一緒で!」
「よぅ!楽しそうだな。」

気さくに国民に声をかけるエッジ。エブラーナは規模の小さい国だから、王族と一般国民の距離は近い。



「リディア様ー!」


大人達と花見をしていた子供達が寄ってきた。

「あら、こんばんわ。桜、とってもきれいね。」

「うん!僕達お父さんとお母さんと毎年ここに来てるんだよ!」
「うちもよ!皆と美味しいもの食べれるから、楽しみなんだ~。」

子供達の話を微笑みながら聞くリディア。親達もリディアに挨拶しにやって来た。

「リディア様、こんばんわ。よかったらこちらへどうぞ。エブラーナの地酒がありますよ。」

「うーん、少しだけいただこうかしら。…エッジみたいには飲めないしね。」
「ははは、お館様はお酒が好きでいらっしゃいますからね。」

リディアは案内された花見のスペースに腰掛け、エブラーナの地酒を飲んだ。

「んー…このお酒、なかなかキツイわね。」
「ビールよりもずっと強いですよ。うちの主人たらよく飲み過ぎてしまうもので…。」
「ふふ、そうなのね。」

リディアが大人達と会話していると、後ろの方から騒がしい声がしてきた。


「さぁお館様、始めますぞ~!」
「おぅ!かかってこい!」


エブラーナの男性達がエッジの周りに集まり、酒の飲み比べを始めたのだ。

次々に地酒を飲み干していくエッジ。
いい飲みっぷりに、国民達から歓声が上がる。


「わぁ~、お館様すごーい!」
「僕も大人になったらああやって飲みたいなぁ。」


子供達も楽しそうにその光景を眺める。

「もう、エッジったら…。」

リディアはエッジが久しぶりに酒を飲む姿を見て、少し心配そうに眺めていた。


飲み比べに勝利したエッジは、得意げな顔。

「はっはっはっ、やっぱり俺が1番だな!」

「はぁ…お館様、参りました。」
「もう無理だ…ううっ…。」
「いやぁ、私らオッサン組はもうかないませんなぁ。お館様、次は若い衆と勝負ですぞ!」
「お、いいねぇ!そいつら呼んでこい!」


お酒が入って上機嫌なエッジは、若い男性達とも飲み比べを始めた。

心配そうな表情のリディアに、子供達が話しかけてきた。

「ねぇねぇ、リディア様はお館様とすごく仲良しだよね!」
「ふふ、そうね。」

「喧嘩とかするの?うちのパパとママ、よく喧嘩するんだ~。」
「これ!そんな事を聞いてはいけませんよ!」

子供らしい質問に、リディアは思わず笑い出す。

「ふふふ…いいのよ、気にしないで。」
「はぁ…。」

子供の母親は恐縮した様子でリディアに軽く頭を下げる。

「そうねぇ、エッジと喧嘩するわよ。」
「そうなの?何で?」
「うーん、エッジが私のおやつのお饅頭食べちゃったり、お仕事で使おうと思ってたペンを持っていかれちゃったり、色々ね。」

「へぇ、そうなんだぁ。」
「リディア様はお館様に怒るの?」
「うん、怒るわよ。」


「じゃあどうやって仲直りするの?」

新たな質問に、少し頬を赤らめるリディア。

「喧嘩したらね、いつもエッジの方から『リディアすまねぇ、俺が悪かった』って言って謝ってくるのよ。」

「お館様が謝るの?」
「なんかいつも家老さんに怒られても適当に返事してるのにね。」

「そんな失礼な事を言うんじゃありません!…すいません、リディア様。」
「うふふ、小さい子はよく見てるわね。」

リディアは笑わずにはいられなかった。するとそこへエッジがやって来た。

「リディア~。」
「あら、エッジ。」

エッジがリディアの隣に座ると、子供達が彼に飛び付く。

「お館様ー!」
「ねぇねぇ、お酒の試合勝ったの?」
「おぉ、勝ったぞ!いっぱい酒飲んだぜ。」
「すごいねー!僕が大人になったら、お館様と勝負したいなぁ。」
「お、そうか。そりゃ楽しみだなぁ。」
「うん!僕頑張るよ!」

笑顔で子供達の頭を撫でてやり、会話するエッジ。リディアはこういう夫の姿を見ると、自然と笑顔になれる。堅苦しい事を嫌い、国王だからと傲慢な態度をとらない彼の姿勢は、妻として誇れるものだった。




「お館様、さっきね、リディア様がお館様と喧嘩するって言ってたのよ!」
「…へっ?」

無邪気な子供の発言に、リディアはドキリとする。

「…リディアは何を言ってたんだ?」

軽く引きつった表情でエッジが子供達に尋ねると、彼らはニヤニヤし出した。

「んとね、喧嘩してもお館様が謝ってくるから仲直りしてるって言ってたよ!」
「そうそう!」


口々に話す子供達を見て、エッジは深く頷いた。


「そうだぞ、俺はいつもリディアが怒ると頭を下げてるんだ。そうしねぇとこいつは許してくれねぇからな。」


それを聞いたリディアはムッとした。


「許すも何も、いつもエッジが悪いんじゃない。謝って当然よ!」

上から目線のリディアの一言に、エッジも負けじと言い返す。

「何だよ、お前が絶対謝らねぇから俺が謝るしかねぇんじゃねぇか。」
「私そんな鬼嫁じゃないもん!」
「鬼嫁だなんて言ってねぇよ。俺みたいに素直に謝る旦那は貴重なんだぞ?大事にしろよ?」
「何よその自分があたかも立派な人間みたいな言い方!」


エッジとリディアは民達の前でぎゃあぎゃあと喧嘩を始めるが、2人の全く敵意を感じない言い合いに、周りの大人達は微笑ましそうにクスクスと笑っていた。


しばらく喧嘩した後、エッジはふーと息をついた。


「あぁ、リディア…。分かった、俺が悪かったよ。すまねぇ。」
「もう…。」

喧嘩を終えた2人。周りの者達がクスクスと笑っているのに気付き、恥ずかしくなる国王夫妻。

「やっぱりお館様とリディア様は仲良しだね!」
「うん、リディア様の言った通り、お館様が謝るんだね!」


子供達にきゃっきゃと冷やかされ、エッジとリディアは見つめ合い、頬を赤らめた。


「ねぇ、お館様は家老さんに怒られてもあんまり謝らないのに、どうしてリディア様には謝るのー?」


子供というのは正直な上によく見ていると思わされる質問に、エッジは苦笑した。

「こらっ!何て失礼なことを…お館様、どうぞお許しを…。」

必死に詫びる両親だが、エッジはそんな事で怒ったりするような、器の小さい王ではない。

「ははは、こりゃ難しい質問だな。」

頭を掻きながら答えに困るエッジ。しばし何か考えた後、リディアをちらりと見る。


「それはな…。」


リディアはエッジがどう答えるのかと思っていると、ひゅうっと夜風が吹き、咲き誇る八重桜のピンクの花びらを揺らす。





「…俺は、リディアのことを愛してるからだぞ。」







リディアの頬が、たちまち真っ赤に染まった。




「きゃー!あいしてるだって!」
「かっこいー!」
「お館様、リディア様のことあいしてるんだー!」

「あ、リディア様の顔が真っ赤だよ!」
「えっ?そ、そうかしら?」

子供達に冷やかされ、うろたえてしまうリディア。



エッジの方を見ると、ひらひらと数枚の八重桜の花びらが散る中、彼はリディアを見つめて微笑んでいた。


「本当にもう…お館様、リディア様、度重なる御無礼をお許しくださいませ。」

子供達の親達が頭を下げる。

「あぁいいんだよ、気にすんな。なぁ、リディア?」
「あ、うん。エッジの言う通りよ、気にしないで。」







2人はその後もエブラーナの民達と共に花見と会話を楽しみ、春の夜を満喫した。







その帰り道。



「はぁ~、やっぱり花見はいいなぁ。酒は美味いし、皆と喋れて楽しいぜ。」
「もう…だいぶお酒飲んでたけど大丈夫なの?」
「大丈夫だって。あの程度ならまだモンスター達とも戦えるぜ?」



出会った頃と変わらない自信家ぶり。あれから10数年の時が経っても、エッジはエッジなのだと思うリディア。


「リディアは楽しめたか?」
「あ、うん。楽しかったよ、八重桜すごくきれいだったし、皆親切だしね。」
「そうか、そりゃ良かった。」

リディアの答えを聞いて、微笑むエッジ。

(あ…さっきと同じ笑顔。)


リディアは何となく恥ずかしくなり、エッジの腕にぴったりとくっつき、彼から視線をそらした。

「お、何だよ?…そんなに俺とくっついてたいのか?」

ニヤニヤしながらリディアを見るエッジ。リディアは答えに詰まる。

「…だって、エッジがあんなこと言うから…。」
「あんなことって?」



「…その、私のことを愛してるって…。」

エッジはニタリと笑った。

「何だ、もっと言って欲しいのか?」
「ち、違うもん!…あんな事皆の前で言うなんて恥ずかしいじゃない!」


リディアを見て、エッジは少しばかり黙ってしまった。



「恥ずかしいか?」
「恥ずかしいよ…。」


「…いいじゃねぇか、本当のことなんだし。」


リディアは頬を真っ赤に染めて、その場に立ち止まった。

「リディア?」


リディアは真っ赤になった頬に自分の手を当てて、下を向いていた。


エッジは彼女のあまりに初々しい反応に、くっと笑った。

「ったく、お前は可愛いなぁ。そんな事したらここで襲っちゃうぞ?」
「もう、バカ。」

ぷいっと顔を背けるリディア。本人は怒っているつもりだが、その姿はエッジのお気に入りで、むしろ逆効果であることを全く分かっていないのだ。



「…エッジ?」

エッジの温かい手が、リディアの肩を抱き寄せた。

「リディア、愛してるぞ。」

月の光の下で、優しい表情でリディアを見つめ、愛の言葉を贈るエッジ。


自分の心臓がドキドキと動き出したのを感じるリディア。


「…うん。私もよ…。」


そう言って、思わずエッジの胸に顔を埋めるリディア。

「へへ、可愛いなぁ…。」
「恥ずかしいんだもん…。」


エッジはリディアの柔らかな緑の髪を優しく撫でた。

「リディア…来年も桜見に行こうな?」
「…うん。」


リディアがエッジの胸から顔を離し、彼の顔を見上げると、彼の手が、そっと彼女の頬を包み込む。エッジはすっと口布を下ろし、リディアに顔を近付けていく。


「リディア…。」


「エッジ…。」





春の夜風が草木を揺らし、さわさわと音をたてた。


エブラーナ城へと続く道で、柔らかな月の光に照らされた愛し合う2人の影は、夜風にゆるりと吹かれながら、ゆっくりと重なった…。


―完―
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2014
04.12

The Expiration

こないだの反省を踏まえて書いたエジリディTA後SS第5弾です。これで少しはクオレをエブラーナへ連れて行かなかった償いになるでしょうか…?






「The Expiration」


「あ、エッジ。もう仕事終わったの?」
「おぅ、今から風呂行ってくるわ。」

エッジより先に仕事を終え、寝間着姿でベッドにいたリディアは、本を読んでいた。

「エッジ…今日もお疲れ様。」
リディアがエッジの頬にキスをした。
「…お前もな。」
エッジはリディアに口づけした。
「んっ、もう…。」
「へへへ…。」

ニタリと笑ったエッジは風呂へと向かった。



「はぁ、エッジ…。」

ベッドに座ったリディアは、自分の体の奥が疼き、体温がじわりと上がるのを感じていた。もうすぐエッジと抱き合うのだから。


本の続きを読もうとしても集中できない。エッジが来るのを待つことにした。




「リディア。」
「エッジ…。」

風呂から上がってきたエッジをリディアの艶かしい笑顔が彼を出迎えた。ベッドに上がり、リディアに笑いかけながら彼女の髪を撫でると、その表情に精悍な忍びの一族の長の表情が緩む。

「っとに可愛いなぁ。もう大人の女だってのにな。」
「そうよ、もう子供じゃないんだからね。」

リディアは軽く唇を尖らせた。月の大戦の時、エッジは最終決戦の前にリディアを子供扱いし、安全のため地上に残らせようとした。あれは彼なりの自分に対する愛情だったのだが、当時はあまり理解できずに苛立ったものだった。あれから10数年が経ち、リディアも成熟した女性となった。故郷のミストもエッジの支えで復興し、そのおかげで今はこうして彼の妻としてエブラーナにいる。

「さみしくねぇか…?」
「えっ?」

そう言ってエッジはリディアを抱き寄せる。

「…クオレに会いたいか?」

エッジの一言にドキッとする。

真月の戦いの際、崩れゆく真月には置いていけないと衝動的に連れて帰ったマイナスの幼少体のクオレ。リディアが引き取ってミストで暮らしていたため、エッジはプロポーズの際、クオレもリディアの家族としてエブラーナへ、と申し出た。しかしリディアがいなくなるミストの守りを盤石なものにするために、幻獣王夫妻の保護下の元、ミストに残ったのだ。

「ん…そうだね、元気にしてるのかな。」
「手紙のやりとりはしてんだよな?」
「うん。」

リディアが俯きながら小さく頷いたのを見たエッジは、優しく微笑んだ。

「…ミストに行くか?」
「えっ?」
「行こうぜ。お前の里帰りだ。」

リディアはエッジの申し出に驚いた。

「でも…エッジ忙しいし…。」
「んなもん何とかなるって。今まで俺がどうやってミストに行ってたと思ってんだ。」

自分を見つめるエッジの真面目な表情に、リディアは息が止まりそうになる。

「…じゃあ、行こうかな。」
「よし、また日を決めようぜ?明日仕事がどうなってるか確認すっからよ、お前もそうしてくれるか?」
「うん…。ありがとうエッジ。」

エッジはにっこりと笑った。
「俺はお前のことなら何でも受け止めたいんだよ。」
「…もう、バカ。」

そう言ってリディアはエッジに抱きついた。

「リディア。」
「ん?」

ちゅっ。

エッジがリディアに口づけした。するとリディアの頬がみるみる赤く染まった。
「もう、エッジ…。」
「へへ。」

本当ならばこの寝室にクオレも居て、3人で仲良く寝ているのだろうが、現実は自分とリディアの2人。エッジはそれはそれで幸せだったが、リディアがどう感じているのかが気がかりだった。無理矢理にでもクオレも連れてくればよかったのかもしれないが、ミストのためにとアスラに言われた手前、それはできなかった。ならばせめて時々クオレに会わせてやろうとエッジは考えたのだった。

「…俺にはこれぐらいしかお前とクオレにしてやれることはねぇからな。」
「…。」

リディアはエッジの気遣いを嬉しいと思いつつも、こうしてエブラーナに来てからも自分の故郷のことで気を遣わせていることを申し訳なく思った。

「エッジ…ありがとう。嬉しいよ。」

にっこり笑うリディアを見て、エッジはそっと彼女を抱き寄せ、柔らかな緑の髪を撫でてやった。2人は口づけを交わすとそのままベッドに倒れ込み、いつものように愛の営みを始めた。






―――数日後


「リディア、そろそろ行くぞ。準備はいいか?」
「うん。」

バロン国王セシルの厚意により、エブラーナに進呈された飛空艇が城の前に準備されていた。2人は飛空艇に乗り込み、エッジが舵を取った。

「よし、離陸するぞ。しっかりつかまっとけ。」

すっかり涼しくなった晩秋の空に飛空艇は舞い上がり、ミストへと航路を取った。




数時間後、エッジとリディアはミストに到着した。


春にここを離れて以来だったリディアは、すっかり秋の色に染まった故郷の景色を見て、感慨深い表情を浮かべた。

(リディア…ここはいつまでもお前の大事な故郷なんだな。)
エッジはリディアの表情をじっと見つめていた。


「…リディア?」
その声に振り向くと、真月の戦いの際、村を守った召喚の力を持つ少女だった。
リディアは駆け寄り、少女を抱き締める。

「久しぶりね!元気だった?」
「うん!今ね、クオレと遊んでたのよ。」

そう言って少女はリディアの手を引いた。するとリディアの姿を見たクオレは走ってリディアに抱きついた。
「クオレ、久しぶりね。元気?」
「元気だぞ。エッジは来ているのか?」

相変わらずの口調だが、エッジへの好意は前と変わらないようだ。
「ふふ、もちろんよ。」
「ようクオレ、しばらくだな。」
「遊んでくれ。」
「よし、分かった。けどその子も一緒にだぞ?」
「分かった。」

召喚の力を持った少女も加わり、3人は仲良く遊び始めた。その姿を見たリディアは、微笑みながら眺めた。

「リディア。」
リディアが振り返ると、そこには幻獣王夫妻がいた。
「幻獣王様、王妃様!お元気でしたか?」

リディアが2人に駆け寄った。
「おおリディア…しばらく見ない間にますます綺麗になったのう。」
「エッジ殿と仲良くやっていますか?皆あなたの幸せを願っていますよ。」

育ての両親と再会し、リディアは嬉しさでいっぱいだった。
「はい、エッジと仲良くやっています。王妃としてはまだまだですが…。」
「なに、焦ることはなかろう。エッジ殿はいいお方じゃ、きっとおぬしのことをしっかり支えてくれるじゃろう。」
「ほんと、いっぱい支えてもらってて…。クオレもみんなも元気そうで何よりです。」
「リディア、ミストの事は何も心配することはありません。あなたは今までこの村のために働いた分、これからは自分の幸せをつかむのですよ。」


幻獣王夫妻と話した後、リディアは久しぶりに会うミストの村人達と会話をし、里帰りを楽しんだ。結婚以来、大きな事件などはなく、いたって平和であることを知ったリディアはただただ安心した。この10数年の間に2度も月による被害を受けたため、平和な生活を送れることがどれだけ幸せであるかを噛みしめた。




時間はあっという間に過ぎ、日が暮れ始めた。もうすぐ晩秋の季節を迎えようとする空の色は、リディアがミストを離れた春と違い、ずっと暗い色だった。

クオレは久しぶりにエッジと目いっぱい遊び、ご満悦の様子だった。
「リディア、今日もエッジといっぱい遊んだぞ。」
「そう、よかったわね。」

娘のようなクオレの頭を撫でてやり、嬉しそうに話すリディア。その姿を見たエッジは胸をなで下ろす。これで少しはリディアとクオレを引き離してしまったことへの償いになっただろうか?ミストの幼い召喚士たちが成長した暁には、クオレをエブラーナへ呼び寄せることもできるかもしれない、エッジはそんな事を考えていた。


「なぁリディア、俺そろそろ帰らねえといけねえんだけど、お前はどうする?」
「えっ…あ、そうね。もういい時間よね。」

それを聞いたクオレはエッジの顔を見上げる。
「エッジ、もう帰るのか?」
「あぁ、一国一城の主は忙しくてな。…リディア、もしよかったら、お前は今晩ミストに泊まったらどうだよ?」

エッジの思いがけない申し出に、リディアは驚く。
「え?そんな…私も帰るわよ!」
「せっかくだしクオレともっと話したらどうだよ?次いつ来れるか分かんねぇんだし。何なら明日また迎えに来てやるぜ?」

リディアは心が揺れた。そうしたいところだが、自分はエブラーナの王妃。いくら国王である夫が許してくれるとはいえ、自分の故郷で油を売るなど許されないだろう。



「ううん、帰る!だって仕事あるもん。」
「…いいのかよ?」
「うん…。クオレ、ごめんね。私、もう帰らないといけないの。」

相変わらず表情は変わらないが、クオレは何か考えている様子だった。
「…リディア、またエッジと一緒に来てくれ。」
「うん。また来るわ。」


そこへ一人の女性がやって来た。外部から召喚魔法を習いに来ているというアリッサだった。
「アリッサ!」
「リディア、引きとめちゃってごめんね。クオレ、もう暗いんだから家に帰りなさい。」
「分かった。」

リディアは自分がミストを去った後も、クオレがどうしているか気がかりだったが、こうして自分の代わりに誰かがクオレの面倒を見てくれているのを見るとそんな気持ちも和らいだ。

「リディア、元気そうで何よりだわ。また来てね。」
「えぇ。そういえばもう幻獣王様と召喚の契約を交わしたのよね?すごいじゃない!」
「いえいえ、おまけしてもらえたのよ。」
そう言って笑うアリッサ。彼女もまた、ミストにとっての大きな希望であった。

新しい召喚士が確実に育っている。故郷の復興のために働いてきたリディアにしたら、自分の手から離れていってしまうのが少しばかりさみしい気もした。

「リディア…帰るか?」
エッジが声を掛けるとリディアは頷いた。エッジとリディアが帰ろうとすると、幻獣王夫妻やミストの村人達も見送りにやって来た。

「リディア、気を付けてね!」
「またいつでも来てね。」

変わらない温かな故郷の人々の言葉に、リディアは胸が熱くなる。

「みんな、今日はありがとう!また来るわ。クオレ…元気でね。」
「うむ。エッジも来てくれ。」
「ありがとな、クオレ。」
エッジは笑顔で答えた。



エッジとリディアは飛空艇に乗り、ミストを後にした。

名残惜しそうな表情で甲板に佇むリディアを見たエッジはどう言葉をかけてよいか考えた。するとリディアがエッジの隣にやって来た。
「エッジ、今日はありがとう。すごく楽しかったわ。」
「…そうか、ならよかった。」

自分のことを気遣い、里帰りを申し出てくれたエッジ。月の大戦後はミストの復興という自分の望みのために支援をしてくれ、真月の戦いの時は封印されてしまった幻獣達を憂うリディアを励まし、そして結婚した今でも自分の意思を汲み、尊重してくれる。クオレとは離ればなれになってしまったものの、リディアはもう数えきれないぐらいの幸せをエッジからもらっている。少し冷たいぐらいの夕暮れ時の秋の風に吹かれながら、今自分がこうしていられるのは、まぎれもなくエッジのおかげだとリディアが思っていると―――


「リディア。」
「ん?」
「また…ミストに行こうな。」

笑顔でそう言うエッジを見たリディアは、満面の笑みで頷いたのだった。


―完―

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2014
04.10

ちょっと反省…。

先月から、エッジとリディアのTA後の妄想を吐き出すためにこのブログを立ち上げ、いくつか作品を載せてみたのですが…。ちょっと反省と言うか、とある方のエジリディTA後のSS(エッジとリディアが結婚し、クオレもエブラーナへ行く)を読んで、自分の発想がいかに浅くて稚拙かということを痛感しまして…。

私はエッジとリディアが結婚する際、クオレもエブラーナへ行き、3人で仲良く暮らす、というパターンのストーリーも考えたのですが、それなら他の人も思い付くだろうし、違う方向に持っていきたいという考えから、かつてのミストの村の悲劇や、エンディングでの幻獣王夫妻のクオレに対する反応、まだ新しい召喚士達も幼いという観点から、エッジにはリディアと結婚するからにはクオレも引き取るという覚悟がありながらも、リディアがエブラーナへ行くならクオレがミストに残って守りを固める…という流れにしました。


ですが、リディアとクオレは家族なんですよね…。その方のストーリーは、エッジもリディアもクオレという家族ができたがために、自分達の関係を今後どうするべきなのか悩み、そしてお互いにその事をなかなか言い出せず、時間をかけて少しずつ道を見出して、セシルとローザ、ヤンとシーラの様に夫婦になってから子供をもつ、という所謂普通の家族ではなく、最終的には新しい形の家族として3人で暮らす道を選ぶという内容でした。それが非常に深くて、エッジとリディアの細やかな心の描写がとても素敵だったんです。それを読んでいると、自分の発想があまりに単純過ぎて情けなく思ってしまったわけです…。しかもエロ多めだし(苦笑)

私がエンディングを見る限りでは、クオレはよりエッジとリディアの距離を縮めたのは間違いないにしろ、リディアはクオレを我が子同然に育てている、というよりも真月には置いていけないという衝動的な気持ちで連れて帰って、ミストの村にいる子供達と同様に愛でている様な感じに見えたので、一緒に暮らすようになり、そこまで深い、無償の愛を注いでいたのかはちょっと判断しかねたんですが、その方の感受性というか、深い視点に感銘を受け、こうして反省しております。

いっそのことTAの続編が出て、公式でエッジとリディアのその後がはっきりすれば、こんなに考え込むこともないのに~!!もちろん結婚しているといるということでお願いしたいですが(^^)

続編、もう出ないかなぁ…。


色んな方の、色んなストーリーがあるエジリディは奥が深いですね。くだらない日記になっちゃいましたが、読んで下さった方、本当にありがとうございます。そして私のエジリディSSに拍手を下さった方、ありがとうございます。とっても嬉しかったです!

これからも稚拙で浅はかな私のエジリディSSで良ければ読んでやって下さいね~( ´ ▽ ` )ノ





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2014
04.08

「誓い」 あとがき

Category: あとがき
「誓い」、いかがでしたでしょうか?

ベタな感じの話ですが、たまにはまともな話も書いてみたいなと思いまして(笑)

iPhoneでTAをプレーした時、エッジの両親の墓はエブラーナの洞窟の中にあって、墓参りも一苦労だなぁ…と思ったのを思い出し、今回のストーリーの核が浮かび上がったんです。それでもって、エッジは何でも1人で抱えちゃうし、自分の事でリディアには気を遣わせたくないところが見受けられるし、そのへんを取り入れました。

自分の死後なんて、縁起が悪いという方もいらっしゃるでしょうが、私は昨年、家族を失う危機を体験し、もし最悪の事態になった場合、残された者として今後どうしていくべきかを真剣に考えました。幸い今は元気にしていますが、生きていても死んだとしても、家族として心は一緒にいることって、自分も相手もすごく幸せなことなんだって実感しました。書き終わってから振り返ると、そのへんが今回のストーリーに反映されたのかなぁと思いました。


っと、つらつらと暗い話ですいません…。また新しい話が出来上がってきてるので、その内アップします!

ではでは(^-^)
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2014
04.05

「誓い」

TA後のエジリディss第4弾です。今回はほのぼの系ですよ(^^)







「誓い」



久しぶりに行ってくるか―――



「じい。」
「はっ、お館様。」
「ちっと墓参り行ってくるわ。決裁が必要なもんは、机の上に置いといてくれ。」
「かしこまりました。…奥方様も御一緒に行かれるのですか?」
「いや、俺1人でいい。場所が場所だからな。」
「そうですか…。ではお気を付けて。」


月の大戦の折、エブラ―ナを襲撃したルビカンテの部下・ルゲイエによって魔物に改造されたエッジの両親。エッジは彼らを苦しみから救うため、自らの手で両親の命を絶った。


あれから10数年が経ち、エブラ―ナは復興し、真月の戦いの際はイフリ―トの襲撃を受けたものの、エッジとリディアの活躍によって大事には至らなかった。現国王であるエッジの元、エブラ―ナは先王の時代よりも着実に発展している。エッジはどんなに自国が栄えても、自分を育ててくれた両親への感謝の気持ちと失った悲しみを忘れたことはなく、王となった今でも、墓参りを欠かさなかった。


エッジは墓のあるエブラ―ナの洞窟に行くため、部屋に戻って黒装束を身に付け、愛用の刀2本を腰に付けた。平和になったとはいえ、洞窟内はモンスタ―がいる。

「さてと、行ってくるか。」

エッジは城の出口へと向かった。すると城門には…

「エッジ~、お散歩行くんなら私も連れてってほしいな~。」

妻リディアが待っていた。
「わっ、リディア!」
エッジは思わず飛び上がってしまった。

何やらリディアは不満げな顔をしている。
「…何だよ?」
「何だよじゃないわよ。どうして1人で行くの?」
「…危ねぇからだよ。」
「危ないんならなおさら1人で行っちゃダメじゃない…。」

エッジは頭を掻いた。
「言っとくけど、ただの散歩じゃね―ぞ?エブラ―ナの洞窟に行くんだぞ?」
「…ご両親のお墓参りでしょ?」
(じいや…俺1人で行くって言ったじゃねぇか…。)

「エッジ?」
「ん?あぁ、そうだぜ。」
「…私も行く。」
「いや、だからエブラ―ナの洞窟に行くから危ないって―の!」

そう言われたリディアの瞳は潤み出した。
「何でそんなに私のこと足手まといのように扱うの?私だってモンスタ―と戦えるのに…。」
「…だから、その…。」

エッジは自分の両親のことだからと、リディアに気を遣わせたくないのだ。しかも墓はモンスタ―の巣食う場所にあるため、大事なリディアに怪我などさせたくない。

「エッジのご両親は、今は私の両親でもあるのよ。エッジは私のお母さんのお墓参り、何度もしてるのに、私はエッジのお父さんとお母さんのお墓参り行っちゃダメなの?」

エッジはもう言い返せなかった。リディアはこうと決めたら聞かない性格なのを知っているからだ。

「ん―、分かったよ。じゃあ一緒に行こう。」
リディアはぱっと笑顔になった。
「やったぁ、嬉しいな!」
「…その代わり、俺から絶対離れるなよ?モンスタ―がいるんだからな。」
「うん、離れないよ…。」

(おぉ…。)

リディアはそう言って、エッジの腕にぴったりとくっついた。こういう行動がエッジをドキドキさせる事を自覚していないあたりが小悪魔である。

「行くぞ?」
「うん。」



2人はエブラ―ナの洞窟に着いた。薄暗い道を警戒しながら奥へと進んで行く。すると…

「…!!」
「…出たな。」

不死系のモンスタ―がウヨウヨと現れた。リディアがファイラの詠唱に入ろうとした時、
「リディア、下がってろ。」
「え?」

「……火炎陣!!!」

エッジが放った大きな炎がモンスタ―達を包み込み、あっという間に焼き尽くした。

「ど―だ、すげえだろ?」
エッジが得意気にリディアを見た。
「…うん。」
「お?認めるのか?」
「だって詠唱の時間が黒魔法よりもずっと短いのに、この威力なんだもん…。エッジ、すごいね。」

リディアに素直に褒められて、エッジは複雑だった。以前なら調子に乗るなこのバカと一蹴されていたというのに。

「ん―…何かお前にそう言われると調子狂うなぁ。」
「何で?褒めちゃいけなかった?」
「いや、そうじゃねぇけどよ。いつもならバカって言われてたなぁと思って。」

そう言われたリディアは、ほんのり頬を赤らめた。真月の戦いの時からエッジの忍者としての実力、そして一国の王としての器の大きさを目の当たりにして、リディアはエッジをますます慕うようになったのだから。

「だって、本当にすごいんだもん。エッジ何でもできるし、それに…。」
「それに?」
「…恥ずかしいから言わない。」
「な、なんだよ。」
「いいじゃない。ほら、行こうよ。」


その後もモンスタ―達が襲ってきたが、エッジの素早い応戦で、リディアの出る幕はなかった。
(エッジ…すごいな…。)


そしてしばらく進むと―――


「ほら、着いたぞ。ここだ。」

蝋燭にうっすら照らされた大きめの空洞に、墓標があった。2人は墓標の前に行って跪き、手を合わせた。

(親父、おふくろ…俺は元気にやってるからな。どうかこれからも見守っていてくれ。)

エッジは心の中で両親に話しかけた。リディアはずっとその姿を見ていた。
(エッジ…。あんな形でご両親亡くしたんだし、本当に辛かったよね。)

リディアは同じ親を亡くした者として、両親を自らの手で討ったエッジの姿を鮮明に覚えていた。どんなに時間が経ち、親を失った悲しみは小さくなることはあっても消えることはない。リディアはそれが痛いほど分かるだけに、エッジに寄り添いたい気持ちになる。

「親父、おふくろ…。」
エッジが声に出して両親に話しかけ始めた。
「こいつは俺の妻のリディアだ。月の大戦の時からずっと好きで好きで堪らなくて、最近やっと結婚したんだ。こいつのおかげで俺は今、すげぇ幸せに暮らしてる。親父とおふくろが仲良くしてたように、俺はリディアと死ぬまで仲良くしたいと思ってる。だからどうか、俺たちの事を見守っていてくれよ…。」

そう言って、再びエッジは墓標に手を合わせた。
「エッジ…。」
リディアはエッジの言葉に胸がきゅっとなり、頬はみるみる真っ赤になった。それを見たエッジはふっと笑う。
「まだお前を正式に親父とおふくろに紹介してなかったからな。」
「そうだったね…。もう、エッジったらあんな大げさに言って…。」
そう言って、恥ずかしそうな顔をするリディア。

「大げさじゃねぇぞ?あれは俺の本心だからな。」
「…バカ。」
「いいじゃねぇか…。」
「ふふ…。ねぇ、エッジ?」
「あ?」
「どうしてここにお墓作ったの?もっと陽のあたる、あったかい場所があるのに…。」

「…親父とおふくろは、生前から影に生きる忍びの一族として、自分達が死んだら影となる場所に墓を作って欲しいって言ってたんだよ。俺はお前の言うように、陽のあたる場所に作ってやりたいと思ったけど、2人の遺志は無下にできねぇと思ってさ。だからここに作ったってわけよ。」

リディアは神妙な面持ちで頷いた。死後も忍びとしての道を選んだエッジの両親。それにはただただ敬服するしかなかった。

「エッジは…もし死んだら、お父さんやお母さんと同じように、この洞窟の中にお墓作って欲しい?」
「う―ん、まだ全然考えてねぇけど…俺はお天道様が好きだし、陽のあたる場所がいいかな。あんまり忍びらしくねぇけど。」
エッジは苦笑した。

「そっかぁ…。」
「…何だよ?もう俺が死んだ後のこと考えてんのか?」
エッジが軽く笑いながら言った。

「ううん、どうなのかなって思って。」
「ふ―ん。お前は?」
「え?」
「お前はもし自分が死んだら、どこに墓作って欲しいんだ?」
エッジにそう聞かれると、リディアは胸がドキドキしてきた。
「あ、えっと…私はね…。」
「やっぱり、ミストか?」
「ううん…あの…。」
「?」




「エッジと一緒なら…どこでもいいよ…?」



もじもじとしながら紡ぎ出されたリディアの答えに、エッジは胸を撃ち抜かれたような気持ちになり、精悍な顔がみるみる緩んでいった。

「そ、それは…あの世に行っても俺と夫婦でいてくれるってことか…?」
エッジにそう言われて、リディアはコクリと頷いた。エッジはリディアの手を握る。

「ありがとな、リディア…。」
「うふふ。…エッジこそ、天国に行っても、私の旦那さんでいてね?」
「…当たり前だ。」

2人は再び墓標に手を合わせた。

(エッジのお父さん、お母さん、私はエッジと結婚できてすごく幸せです。お2人のように、これからもずっと仲良くしていきます。どうか見守っていて下さい。)

リディアは義両親に、心の中でそう話しかけた。これから自分はエッジの妻として、彼に寄り添って生きていくんだという思いが湧き上がってきた。

「リディア、そろそろ帰るか?仕事しなきゃな。」
「うん。」

リディアはエッジにぴったりとくっついた。
「ったく、お前は甘えん坊だな。」
リディアの頬をエッジが指でつつく。

「…エッジが離れるなって言ったんじゃない。」

「…そうだな。じゃ行くぞ?」
「うん!」

2人は洞窟の出口に向かって歩き出した。



亡き両親の前で、永遠に夫婦でいると誓ったエッジとリディア。この先何があるか分からない。それでもこの人となら一緒にいたい、その想いが2人の中にある限り、エブラ―ナ王国の平安は守られるだろう。


―完―

















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2014
03.30

「君は僕だけのもの」 あとがき

Category: あとがき
TA後エジリディss第3弾、いかがだったでしょうか?

TAを初めてプレーした時から、リディアのあのきわどい衣装はどういう事になってるんだと思ってたんですよね…。エッジはリディアの事が真剣に好きなわけだし、あんな露出狂のような恰好は見ていて気が気でなかったでしょう。しかもあれは明らかにノーブラだし、リディアは何の悪気もないだろうし(^^;)エッジは結婚したからにはもう他の男に取られたくない!という独占欲が湧くに違いないと思い、それを描きたいと思った結果、浮かんだのがこのストーリーでした。

ただエッジも基本エロキャラだし、そこはうまく取り入れつつ…と思ったらエロ要素が入ってしまいました。
すいませんすいません!!

それにしても、私の頭に浮かんでくるシチュエーションって、エロ系が多くて困ってます…。18禁のカテゴリーでも作るべきなのでしょうか(苦笑)


ではでは皆様、また次の機会に(^^)

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2014
03.27

「君は僕だけのもの」 ★

TA後結婚したエジリディSS第3弾です!エッジを喜ばせようとしたリディアの行動にエッジは…?


ややコメディ×エロ有りです。ご注意下さいm(_ _)m





「君は僕だけのもの」




エブラーナ城では、今日もエッジとリディアが仕事に励んでいた。結婚してから、少しずつリディアも仕事を覚え、王であるエッジの負担は以前よりも軽くなっていった。

しかしここ数日、余裕ができたせいなのか、気になるようになったものがある。



それは、リディアのとある習慣…。





(あぁっ、まただ…。くそっ、リディア、勘弁してくれよ。)

エッジの視線の先には、数人の男性家臣と仕事の話をするリディア。美しく朗らかな王妃は、家臣からも国民からも好かれる存在。エッジはそんなリディアが愛しくてたまらないし、誇りに思う。

(いや、だから俺の前でだけにしてくれよ…。頼むから!)

今度は城内で道具屋を営む男性店主と話をしている。おそらく労いの言葉をかけているのだろう。


最初それは気のせいだと思ったのだが、見れば見るほど、それは明らかだった。


エッジが気になるもの、それは…。




「おい、リディア。」
耐えかねたエッジがリディアを呼ぶ。

「はぁい、何?」
夫に呼ばれ、笑顔で駆け寄ってくるリディア。



(あぁ~、間違いねぇ。)

「ちょっとこっち来い。」
「え、な、何よぉ。」



エッジはリディアの腕を掴み、人のいない城の一角に連れて行く。リディアを壁に押し付け、エッジは両手を壁につき、リディアを逃げられないようにする。

「リディア。」
「何よぉ、こんなとこに連れて来て。」

「お前さぁ、今日ブラジャーしてる?」
「へ!?な、何聞いてるのよ!スケベ!」
「いいから答えろ。ブラしてんのか?」

「…し、してるよ?」
「本当か~?」

エッジが気になるもの、それはリディアの胸だった。



リディアはエッジと結婚するまでは魔力を高める素材で作られた、露出度の高い服を好んで身につけていた。それらはデザイン上、ブラジャーを着けずに着用するものだった。またリディア自身がブラジャーは窮屈であまり好きではなく、魔法を詠唱する時の心理的な妨げになるからと、着けないのが習慣だったのだ。


エッジと結婚することになり、一国の王妃となるからには、露出度の高い服は御法度となり、リディアはこっちに来てからはエブラーナ様式の長袖ロングスカートの衣装類を纏うようになった。同時に王妃の身だしなみとして、毎日ブラジャーを着けるようにエッジから口酸っぱく注意された。そしてエッジはリディアが窮屈だと感じないようにと、彼女の体型に合わせたブラジャーを何枚も作らせたのだ。


それ以来リディアは言われた通り、ブラジャーを着けていた。エッジは安心していたのだが、ここ数日、不自然に仕事中でもリディアの胸がぷるんぷるんと揺れていたし、服の上からでも乳首の形が見える時もあったのだ。リディアが大好きで、他の男の目に彼女の魅力を晒したくないエッジは気が気でなかった。

「本当にブラしてるんだな?」
「う、うん。してるよ。」

エッジはリディアの目を見て、嘘をついているのがすぐに分かった。正直なリディアは、嘘をつくのが下手だった。そこがまたエッジにとっては魅力的ではあるが。


「そうか。何色?」
エッジの尋問は続く。

「えと…白地にピンクの花の刺繍が入ったやつよ。」
「お、俺のお気に入りのブラじゃねぇか。…見せてくれよ。」
ニタリと笑うエッジ。

「い、嫌よ。こんなところで。」
「見せてくれねぇの?」
「…嫌っ。」
「何だと~?じゃあこうしてやる。」


そう言ってエッジは両手でリディアの形のいい乳房を服の上から弄り始める。
「あんっ…やだぁ、エッジ。」

エッジが乳房を揉みしだくと、リディアはさらに悩ましげな声を出す。

「あぁんっ…はぁっ…エッジ、こんなとこで…だめぇ…。」
「あぁ、柔らかくって気持ちいいぜ…。お前の胸、最高だよ。」


エッジが乳房を揉みしだきながら親指で乳首を探り当て、くりくりと撫で回すと、リディアはますます感じたようで、乳首が固くなり始めた。今日着ているシンプルなデザインのドレスは薄手なので、脱がなくても乳首の形がくっきりと見える。


(ブラ着けてんなら、こんなに乳首が露わになるわけねぇだろ…。もう少しお仕置きしてやるか。)


エッジはリディアの乳房を手で下からたぷたぷと揺らし始めた。

「おおぉ、大きいから揺れるねぇ。たまらねぇなぁ~、くくくっ。」


卑猥な笑い声を出し、エッジはリディアの胸に顔をうずめた。

「いやぁん、エッジのばかぁ…。」

次第にリディアの表情が、艶かしい女のものへと変わっていった。

(まだ白状しねぇか…。強情なやつだな。)

エッジはさらにお仕置きする。

「ブラ着けてんのにすげぇ生々しくって燃えるぜ。ここでヤッちゃうか?」
「!いやっ…そんな…やめてぇっ。」
「いいじゃん、お前もその気になってんだろ?」
「んもう、夜まで我慢してよぉっ。…今夜はエッジが満足するまで頑張るから、ね?」

上目遣いでそう言われ、エッジは卒倒しそうになったが、何とか堪える。

「うーん、どうしようかな…じゃあ服の上からでいいから、吸わせてくれ。」
「えっ!?だ、ダメよ、エッジの口の跡が服についちゃうじゃない。」
「じゃあ直接吸わせてくれ。なら大丈夫だろ?」

そう言ってエッジはリディアの両乳首を服の上からきゅっと摘む。

「はぁあんっ!お願い、やめてぇ…。」

自分の身体を熟知しているエッジに感じやすいポイントを攻められ続けたリディアは頬を赤らめ、翡翠色の美しい瞳を潤ませて夫に懇願する。だがエッジは自分の言い付けを守らなかった妻が素直に白状しようとしないので、お仕置きをやめる気はない。


エッジは口布を下ろし、リディアの胸に顔を近づけ、舌をペロペロとして見せた。まさしく獲物を喰らおうとする獣である。夫の姿を見てリディアは恐怖感を覚える。

「へへへ…。」
「エ、エッジ…?い…や…。」

エッジがリディアの着ているエブラーナ様式のドレスの、着物のように前で合わせた襟元に手をかけた。

「きゃ…んむっ。」

悲鳴をあげようとしたリディアだったが、エッジが彼女の唇に深く自分のものを重ね、口を塞ぐ。

次の瞬間、エッジは襟元をぐいっと左右に広げ、リディアのドレスの上半身部分を両肩からずり下ろした。

「!!」

リディアは驚くが、口が塞がれて声が出せない。そしてドレスの中から現れたのは、何にも覆われていない、白くて弾力のある、ぷるんとした柔らかな妖艶な二つのふくらみと、程よいピンク色の乳首であった。


エッジはリディアから唇を離すと、獣のような顔から一転し、真顔になった。
「…リディア、お前ブラ着けてるって言ったよな?」
「え…えっと…。」

夫の真顔にリディアは怯える。

「何で着けてねぇんだ。着けろって言っただろ?お前は王妃様なんだぞ。こんなふしだらなことをしてもらっちゃ困るんだよ!」
「…。」

リディアはエッジに怒鳴られ、しゅんとして俯く。

エッジはさらにリディアを問い詰める。
「…あの作ったブラ気に入らねぇのか?」
「ううん…。デザインも可愛いし、着け心地もいいよ。」
「あ?じゃあ何でだよ?」

「…だって。」
「ん?」

「だってエッジが…。」
「俺が何だよ?」

「こないだの夜、私のおっぱい大好きだし、いつでも眺めてたいって言ったじゃない…。」


「…へっ?」


夜、というのはもちろん、エッジとリディアの夫婦の時間のことである。

数日前の夜、2人はいつものように寝室のベッドの上で一糸纏わぬ姿となり、愛の営みを繰り広げていた。

「あっ…はぁっ、はぁっ、エッジ、気持ちいいっ…!あんっ!」

豊かな乳房をエッジに揉みしだかれ、乳首を舌でつつかれ、吸われたリディアは快感に悶えていた。

「いい声出すなぁ…。もっとして欲しいか?」
「…うん。お願い…。」

快感に襲われ、とろんとした目と半開きの口でエッジを見つめるリディア。
「よしよし、素直でいい子だ。」

エッジはリディアの柔らかい緑の髪を撫でてやる。そして親指でリディアの美しいふくらみの頂点にある乳首をくりくりと弄ぶ。

「きゃあん!やぁっ…感じちゃうっ!」
「くくっ、ここ感じやすいよな。あぁ、お前の胸、すげーいい…。大きくて柔らかくって、綺麗な形してて。しかもこの乳首、桜の蕾みたいで可愛い。たまんねー…。」

出会った頃と比べて成熟した、妖艶なリディアの身体。エッジはそんなリディアのふくらみを弄り続ける。

「はぅっ…エッジ…私のおっぱい、そんなに好き?」
「あぁ、大好きだよ。ずっと眺めていたいぜ…。お、ずいぶん濡れてきたな。もう入れちゃうか?」
「うん…来て…。」



……うーん、そういやそんな事言ったっけなぁ…。



エッジはリディアに言われ、ぼんやりと数日前の夜の事を思い返した。しかし愛し合ってる最中はもはや別世界へとふっ飛んで行ったようなもので、何をどう言ったか一字一句覚えているわけではない。ベッドの上でないと口にできない卑猥な言葉や愛の囁きもあるし、無意識に口走っていることも多い。エッジは公私をきっちり切り替えるタイプなので、あくまであれはプライベートに限ってのことだと捉えてもらいたかったのだが、どうやらリディアはエッジの言葉をそのまま受け取ってしまったようである。


「…うん、そうだな。確かに俺はそう言った。」
「思い出した?」
「おぅ。」

「だから私、ブラしなかったらエッジが喜んでくれると思ったの。私はブラ着けないの慣れてるし、着けろって言ったのは建前で、エッジの本音じゃなかったんだって思って…。」


エッジは返す言葉を失い、呆然とした。
「エッジ、聞いてる?」
「ん!?あぁ、聞いてるよ。」

ふとリディアを見ると、両腕で露わになった乳房を隠し、どうしてそんなに怒るの…?と悲しげな表情でエッジを見つめていた。その姿は、まるでいつもは優しい飼い主に突然叱られて、キューンと鳴く子犬のようだった。そしてリディアの瞳からは今にも大粒の涙が零れ落ちそうになっていた。こうなるとエッジはもうお手上げである。

「あぁ、リディア…。すまねぇ、手荒なことして悪かった。」

エッジはリディアのドレスを元通りに着せてやり、自分の胸元へ抱き寄せた。するとリディアは糸が切れたかのようにぐずり始めた。

「うっうっ…ふぇぇぇん…。」

あぁ、泣かせてしまった…。こいつは悪気なんてなかったのに。エッジは罪悪感に苛まれる。

エッジはリディアの髪を撫でながら、背中をポンポンと優しく叩いてやる。
「ごめんな、リディア。泣かせちまって。」

リディアの耳元で詫びの言葉を囁くエッジ。ぐずるリディアから香る甘く優しい匂いがエッジの鼻から全身を駆け巡り、眩暈がしそうになる。

(こいつは何をやっても俺を虜にできる小悪魔だ…。)

このままずっと抱いているのも悪くないなと思い始めた時、リディアがエッジの胸から顔を離し、エッジの顔を見上げた。

「ん、落ち着いたか?」

リディアの目に入ったのは、さっきまでの怖い顔とはうって変わって、優しい表情のエッジ。リディアは安心感を覚える。

「うん…。」
「ほんとに、しょうがねぇ奴だなぁ。」

そう言ってエッジはリディアの頬に残る涙を拭ってやる。
「エッジ…。」
「ん?」
「…あれは、嘘だったの?」
「いいや?本心だぜ?」
「じゃあどうして…?」

エッジはふーっと息をつく。

「あのな、俺がブラジャー着けろって言ったのは、王妃の身だしなみとしてだけじゃねえんだよ。俺は大好きなお前の女としての魅力を他の男の目に晒したくない。男ってのはしょうもない生き物で、女の胸見ただけで簡単に欲情するんだよ。そうなったらお前はその男に襲われるかもしれねぇし、俺はお前が他の男から気を持たれるのは嫌なんだ。お前は俺の大事な嫁さんなんだからな。」

エッジの思いを聞いたリディアは神妙な面持ちで頷いた。
「…エッジ。そんな風に思っていたのね。」
「そういう事だ。…つまり、お前の女の部分を見せるのは俺の前だけにしてくれってこった。」
「…うん。ねぇ、エッジ?」
「ん?」


ちゅっ。


リディアはエッジに口づけした。

「!!!!!」

リディアからキスされるなんて予想していなかったエッジは真っ赤になる。

「おぉぉぉ、びっくりした!」
「うふふ。エッジが私のことをそんなに好きでいてくれるなんて嬉しいな。」

「ん…。分かってくれたならそれでいい。」

エッジは頷きながらも、照れ臭くてリディアの顔を直視できない。

「うん。」
そう言ってリディアはにっこりと微笑む。

(こいつには敵わねえなぁ…。)

そう思いながら苦笑するエッジ。するとリディアがどこかへ行こうとする。

「あ?どこ行くんだ?」
「部屋に行くの。ブラ着けてくる。」
「おお、そうか。」

そう言ってエッジはリディアの後についていく。
「エッジ、何でついてくるの?」
「お前がちゃんとブラ着ける姿を見届けに行くんだ。」
「そんなことされなくてもちゃんと着けるわよっ!」
「いや、俺も一緒に部屋に行く。」
「も~、エッジのばか。」
「バカで結構だ。」


部屋に着いたリディアは、クローゼットの中にある引き出しからブラジャーを1つ取り出す。そして上半身裸になり、ブラを着けた。その姿をエッジは仁王立ちして眺めていた。

リディアがドレスを元通りに着ると、エッジは満足げに頷いて、

「よし、これで大丈夫だな。さぁ、仕事に戻るか!」
「うん。」

執務室に向かう2人。するとエッジが口を開く。

「さぁ~、頑張るぞ。今夜はリディアがばっちり相手してあげるって言ってくれたからな!」
「へ?な、何の話よっ!」
「あん?お前さっき言ってたじゃねーか。『今夜はエッジが満足するまで頑張るから。』って。」

はっとしてリディアは頬に手を当てて、顔を真っ赤に染める。

「ち、違うもん!エッジがあの時やらしい事するの止めてくれるならって意味だもんっ!…エッジ、あの後また触ったしドレス脱がせたし…。」
「いやぁ、俺はそんな話聞いてねぇな。だからお前のあの言葉は有効だ。」

エッジがニタリと笑う。

「エ、エッジのバカ!!こ、今夜は私1人で寝る…んっ。」

リディアの唇にエッジのそれが重なっていた。

「…今夜は楽しみにしてるぜ。」
そう言ってエッジはリディアのお尻をするりと撫でた。

「…もうっ、バカ!」


こうして2人は執務室へと戻った。




そしてその夜、国王夫妻の寝室からは、普段よりも一段と艶めかしい声が響いてきたという…。


―完―




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2014
03.25

「The First Time」 あとがき

Category: あとがき
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