2014
05.31

「Rose Garden」 あとがき

Category: あとがき
季節ものエジリディ第2弾、いかがだったでしょうか?ただのラブラブエジリディじゃなくて、ちょっとひねった内容にしようと思ってこういうストーリーになったんですが、結局ベタですねf^_^;


春バラを題材にしようと思ったのは、大阪の中之島公園のバラ園に友人と行ってきたのがきっかけなんです。それでもってクイーンエリザベスとか、プリンセスアイコとか、時の女王様や内親王様の名前がついてるバラもたくさんあって、これはぜひリディアの名前のバラを登場させよう!と思っていたらなんとイザヨイバラというバラも咲いていてそれとの絡みを入れたいと思ったわけです。(イザヨイバラは実在します!)


スウィート・リディアがなぜサーモンピンクかというと、見たバラの中で管理人が1番気に入ったフランス産のバラがその色だったからです( ̄▽ ̄)





ちなみに本数による花言葉ですが、

3本=「愛しています」
7本=「密かな愛」
99本=「永遠の愛」または「ずっと一緒にいよう」
108本=「結婚して下さい」


だそうです!何万種類もあるというバラにはそれぞれ花言葉があるんですが、本数によって花言葉が変わるなんて、花の王様ならではの貫禄ですね~。



以下、コメントへのお礼です☆


♡甘夏様♡

さっそくのお返事ありがとうございます!しかも初心者の私のサイトをブックマークしていただいてたなんて嬉しい限りです(*^^*)そして私のSSが甘夏様のBlogを立ち上げるきっかけの一部分になっていたこともすごーく嬉しいです!!本当、エジリディって素敵なカップリングですよね。色んな妄想が絶えません(笑)ちなみに私のSS、R-18ものが半分程を占めているのは、最初に読んだエジリディSSがそういう内容で、すんごくドキドキしちゃったからなんですよ☆健全エジリディ好きの方には目の毒以外の何でもないんですが、きっと需要があるはず!と信じていた私の勘は正しかったです( ̄▽ ̄)またそちらへ遊びに行かせて下さい♪



それでは皆様、またのご来訪をお待ちしております(^^)
Comment:0  Trackback:0
2014
05.31

「Rose Garden」

季節ものエジリディSS第2弾です☆ちょっと今月は書くの無理かな~と思いましたけど、何とか出来上がりました!では、どうぞ(^^)





「Rose Garden」





エブラーナの季節は今、春から初夏へと変わりつつある。大陸にはない梅雨という季節を前に気温は高くなり、湿度も上がりつつあった。


「ふー、暑いわねぇ…。」


エブラーナ王妃リディアは、生まれ育った大陸とは全く違う気候の変化に戸惑いながら暮らしていた。夏に気温が高くなるのはミストでも同じだったが、湿気はそこまで高くなかったため蒸し暑さを感じることはほとんどなかったのだ。



夫のエッジは今朝早くから仕事で城を留守にしており、リディアは昼食後も執務室で1人事務仕事に勤しんでいた。


「エッジ…今日は何時に帰ってくるのかな。」


ここ最近はエッジが城を留守にする公務と深夜までの内政業務に追われ、2人で過ごせる時間があまりなかった。しかし国王という立場に置かれている彼に、もっと一緒にいたいなどと言えばわがまま以外の何でもない。リディアは自分の気持ちを抑えながらエブラーナ城の留守を守っていた。



(ちょっと休憩しようかな…。)



仕事がひと段落したところで、お茶でも淹れようと椅子から立ち上がると、部屋のドアがノックされた。


「はぁい。」
「奥方様、失礼いたします!」



入ってきたのはエブラーナ四人衆のゲッコウ、ザンゲツ、イザヨイ、ツキノワだった。


「あら、皆揃ってどうかしたの?」
「奥方様、お仕事中恐縮なのですが、少しばかりお時間いただけませぬか?」
「??えぇ、いいけど…。」


ゲッコウの問いかけにキョトンとするリディア。

「実は少々御足労いただきたいので、ご準備いただけますか?」
「あ、うん。」

「では城の出口でお待ちしておりますゆえ、準備が整いましたらお越し下さいませ。」


何やらニコニコとしている4人を見てリディアは不思議に思うが、別に変な場所へと連れて行かれるわけではなさそうである。

「分かったわ。じゃあちょっと待っててくれるかしら?」
「ははっ!では後ほど…。」


四人衆は一瞬にしてリディアの前から消えた。


「…?何かしら…。」








そして…






「奥方様、お待ちしておりました。」

城の出口で四人衆が跪き、主君の妻を迎えた。


「ごめんね、お待たせ。…ところでどこに行くの?」
「それは着いてからのお楽しみにございます。どうか我らについてきて下さいませ。」

ザンゲツが笑顔で答える。

「ふーん…?」
「では参りましょう。」



笑顔の四人衆と共に、リディアは城を出て歩き始めた。




歩いて数分ほどすると、まだ夏ではないというのに、この気候に慣れていないリディアの身体からは湿気のせいで不快な汗が出てくる。持ってきた小さなタオルで汗を拭きながら四人についていく。


(どこに行くのかしら…?)





歩いていると、エブラーナ国立公園が見えてきた。初夏を間近に控え、生い茂る新緑がリディア達を迎えた。


道中はただ不快だった湿気も、こうやって緑に囲まれるとひんやりと快適に感じられる。山と林に囲まれた故郷のミストを彷彿とさせるその澄んだ空気に、リディアの気分は晴れていった。



公園の中に進んで行くと、そこには何種類ものバラが咲いていた。


「わぁ…綺麗!!」
「お気に召しましたか?」
「えぇ!」

ツキノワの問いに、笑顔で答えるリディア。

「奥方様、バラ園の入り口はあちらでございます。」
「あ、そうなのね。」

イザヨイに促され、リディアが入り口へと歩いて行くと…






「王妃様、お待ちしておりました。ここから先は某がご一緒いたしまする。」



跪き、エブラーナ言葉でリディアを迎えたのは…




「…エッジ!!」

リディアの顔を見上げ、二カッと笑う夫。立ち上がると、リディアの手をそっと握った。


「エッジ…仕事は?」
「ん?もう終わったぞ。」
「そ、そうなの?」
「おぅ。お前ら、ご苦労だった。城に戻ってくれていいぞ。」
「ははっ!」


任務を終えた四人衆は、素早く姿を消した。

「あ…。」


エッジが四人衆と計画したサプライズデートだということに気付き、リディアはエッジを見つめる。

「…そういうことだったのね。」
「そういうこと!最近お前と過ごす時間がなかったからな。」


嬉しそうに自分の顔を覗き込む夫を見て、リディアの表情は糸が切れたかのように緩み、思わず彼に抱きつく。


「おおぉ、何だよ~?」
「エッジ…!ずっと一緒に過ごせなくて淋しかったの…。」


彼の立場を思って淋しいとは口にできず、ずっと抑えてきたリディアの気持ちが溢れてくる。エッジの胸に顔を埋めると、彼の鍛え上げられた腕が優しくリディアを抱きしめた。

「俺も…淋しかったぜ?」
「本当?」
「あぁ。間違いなくお前よりも俺の方が淋しかったけどな?」

「もう…バカ。」

頬を紅潮させ、潤んだ瞳でエッジの顔を見上げる。

「…そんな可愛い顔で見つめんなよ。」
「うふふ。」



照れ臭そうなエッジをじっと見つめ、笑みをこぼすリディア。エッジも自分と同じ気持ちだったのを知り、こうして一緒に過ごせる嬉しさがふつふつとこみ上げてくる。


「じゃあリディア、中に入るぞ?」
「うん!」


2人が手を繋いでバラ園へと入ると、そこへバラ園の管理人がやってきた。愛想の良さそうな、ロバートという小太りな中年の男性である。


「これはこれはお館様に奥方様!ようこそいらっしゃいました。」
「今年も綺麗に咲いてるじゃねぇか。ロバートの手入れの成果だな。」
「いえいえ、お館様には何かと目にかけていただいて…。」
「リディア、俺達の結婚式場に飾ってあったバラはここで生育されたやつなんだぜ。」
「そうなのね!あのバラ、すごく綺麗だったわ。ありがとうね。」



2人の結婚式場にふんだんに飾られていた美しい紅白のバラ。幸せいっぱいの記念日のことが思い起こされ、リディアはうっとりとする。


「お2人の幸せのお手伝いができて何よりでしたよ。あの時期はちょうど秋バラの季節でしたからなぁ。」


ほぼ年中手に入る大陸産のバラと違い、四季がはっきりしているエブラーナでは、バラの開花時期が限られているのだ。


「ちょっと時期がズレてたら、あんなに華やかにはできなかったからなぁ。俺はちゃ~んと考えて結婚式の日取り決めたんだぜ?」

ドヤ顔でリディアを見つめるエッジ。

「何よぉ、恩着せがましいわねぇ。」

そう言いつつも満面の笑みのリディアは、エッジの腕にぴったりとくっつく。

「さぁさぁ、どうぞ春のバラをお楽しみくださいませ!ちょうど見頃ですし、今日はいい天気ですからな。」
「おぅ、ありがとな。…そうだリディア、これはお前にだ。」


エッジは懐からサーモンピンク色の1輪のバラを出し、リディアの手に握らせた。

「わぁ、きれい…ありがとうエッジ!」


それを見ていたロバートがにっこりと笑う。

「奥方様、バラにはそれぞれ花言葉があるんですが、本数によっても花言葉が違うのですよ。」
「そうなの?知らなかったわ。…1本は何か花言葉があるの?」
「はい、ございますよ。」

エッジは何やら恥ずかしそうに頷いている。

「どんな花言葉?」

「それはですね…」

ロバートがエッジに目配せすると…




「…『一目惚れ』だよ。」




恥ずかしそうなエッジの言葉にリディアの鼓動は速まり、頬はみるみる薔薇色に染まる。





「もうっ…やだぁエッジ…!」


もらったバラをキュッと握りしめて何をどう言えばいいのか分からないリディア。自分を見つめるエッジと目を合わせられず、顔を背けた。


「はっはっは!お館様の一本勝ちですな!」
「ん、そうみてぇだな。」

エッジは笑顔でそう言って、リディアの手をそっと繋ぐ。自分より少し高めの体温をたたえる優しい手の感触に、ますますリディアの鼓動は速くなった。




「さて!リディア、行こうか。」



照れ臭さを振り切ろうとするかのようなエッジの一言で、2人は歩き出した。





ロバートに見送られ、バラの蔓でできたアーチをくぐった2人。華やかで気品のある香りに包まれるそこには湿気でしっとりとした空気の中、紅白のものからピンク、黄色、オレンジ、紫など、色とりどりのバラが瑞々しく咲いていた。同じ色でも淡色や濃色、グラデーションになっているものや花びらの淵だけが濃い色だったり、一株から異なった色のバラが咲いているものもあり、リディアはその多彩な美しさにため息を漏らす。


「すごいね、色んな種類があるんだね…。」
「だろ?ロバートが色々と交配して、新しい色や柄のバラを生育してんだ。昔は紅白しかなかったんだけど、月の大戦でこのバラ園も被害受けちまって、それを機に大陸産のもんと差をつけたいからって言って、色んなバラを作り始めたんだ。ほら、そこにある紫っぽいバラなんか大陸ではあんまり見かけねぇだろ?」


月の大戦後、復興で国の財政が逼迫する中、エッジはロバートの情熱を汲み、僅かであったが彼に資金を融通していたのだ。


「そうなんだ…。だからあの管理人さん、エッジに頭が上がらないのね。」
「ははは、あいつのバラが世界中で売れてるおかげで今はばっちり税金払ってもらってるからな。寧ろ俺の方が頭上がらねぇよ。」


情に厚いエッジのおかげで、こうして助かっている人がいる。それを間近で見てリディアの心は高鳴り、ただ感銘を受けるばかりだった。


「エッジってば本当に…」
「あ?」
「…ううん、何でもない!」
「何だよ、言えよ~。」
「うふふ、言わない!」




(すごいね、なんて言ったら調子乗るだろうしね…ふふ。)







「あれっ、このバラ…。」

しばらくバラを見ていたリディアの目に止まった幾重もの真紅の花びらをたたえる大ぶりのバラのネームプレートには…



『クイーン・ローザ』



「これって…あのローザ?」
「おぅ。セシルとローザがバロンの王と王妃になった後、ボロボロだったうちの国に来て復興支援してくれてよ。それがきっかけでこのバラ園が軌道に乗ったんだ。んで大戦後に初めてできた新種のバラがこれで、支援の感謝の気持ちを込めてクイーン・ローザって名前をつけたんだ。いつだったか、あいつらの結婚記念日の祝いに送ってやったんだぜ。」

「へぇ~、そうなんだぁ。すごく豪華だし、ローザにぴったりねぇ。」
「だろ?あいつほど紅いバラが似合う女もそういねぇしなぁ。何せバロン屈指の美女だもんな。あんないい女をつかまえたセシルは本当幸せもんだぜ。」

「ん…そうだね。」


珍しく笑顔で自分以外の女性を褒めるエッジ。相手は気心知れたローザだというのに、リディアの心は何となくささくれ立ち、表情が曇る。


「ん、リディアどうした?」
「…何でもない。」



リディアの様子を見て、何やらエッジはニヤニヤしている。

「何よぉ。」

「そうだなぁ…お前に似合いそうなのは…」

怪訝な顔をするリディアを尻目に、エッジはキョロキョロと周りを見渡した。


「お、あれだ!」

リディアがどのバラかと思いながら少しドキドキしていると、エッジは近くのバラの蔓に手を伸ばし…



「ほら、お前にピッタリの色だぜ?」


エッジの手には、バラの蔓にへばりついていた青虫。



「なっ…!!!どういう意味よっ!!」
「いやぁ、これなら緑だし、お前の髪と目の色と合うじゃねぇか。」
「ひどーい!!エッジのバカッ!!」


ゲラゲラ笑うエッジに、ポカッとリディアの華奢な拳が振り落とされた。




戦友のローザは大きな真紅のバラが似合うと言われてるのに自分は青虫だなんて、悔しいのか何なのか分からない感情が湧いてくるリディア。さっきまでの嬉しい気持ちが徐々に消失し、苛立ってくる。



(せっかくのデートなんだし、こんなにイライラしちゃいけないよね…。)


自分はエッジの妻。彼がどんなに他の女性を褒めようとからかわれようと堂々としていなければ、と思い直すリディア。しかし…



「…!これは…。」





『イザヨイバラ』



ローザに続いて、イザヨイの名が付いたバラを見つけたリディア。その色は妖艶な女性をイメージさせる青みがかった濃厚なピンク。まさにイザヨイにぴったりなバラである。


「エッジ、このバラ…」
「ん?おぉ、イザヨイバラじゃねぇか。」
「…何でイザヨイの名前が付いてるの?」
「そりゃこのバラがあいつにぴったりだからだよ。イザヨイの奴、すげぇ美人で色気があるし。ロバートもイザヨイの大ファンだからな~。」


今度は部下を女性として褒めちぎるエッジ。身近な女性が2人もバラの名前になっていることを知り、しかもエッジが名付けたようなニュアンスに、モヤモヤとした感情が湧いてくるリディア。


「…そうね、イザヨイにぴったりなきれいなバラね。」



エッジに同意するリディア。しかし声のトーンが低く、エッジが異変に気付く。


「何だよ、どうした?」
「…別に。」



その後色んなバラを観賞したが、リディアの表情はあまり晴れなかった。



ローザは美しい真紅のバラ
イザヨイは妖艶な濃いピンクのバラ


自分は青虫



これらの事がリディアの頭をグルグルと回り続け、イライラするばかりだった。




「なぁリディア、もう少し行ったところにロバートの作業場があって、そこで休憩できる喫茶スペースがあるんだ。そこで茶でも飲もうぜ?」
「うん…。」


エッジが笑顔で話しかけるが、リディアはバラを見たまま彼とは目を合わせなかった。



「なぁ、何怒ってんだよ。」
「…。」


リディアはエッジにもらったバラをぎゅっと握る。一目惚れって言われて嬉しかった気持ちも、もう何処かに行ってしまった。


「…とにかくあっち行こうぜ。」


何も答えないリディアの手を引き、喫茶スペースへと向かうエッジ。







「おーいロバート、茶でも飲ませてくれねぇか?」
「はい、すぐにご用意いたします!」


喫茶スペースにあるテーブルにつくと、ロバートがポットと2人分のティーカップとケーキを持って来た。


「奥方様、こちらは私の特製ローズティーでございます。いい香りがしますよ。」

リディアのティーカップに注がれた赤いハーブティーからは、バラの香りが漂ってきた。


「わぁ、いい香り!」
「ちょうど3時を回った頃ですので、ケーキもどうぞ。」
「ありがとう、美味しそうね。」


リディアはロバートに笑顔で礼を言った後、向かい合うエッジの顔を見ずにケーキを食べ始めた。


「リディア、見てみろよ。ここからバラ園全部見渡せるんだぜ。」
「…そうね。」


素っ気ない返事をし、ハーブティーを啜るリディア。


「いつもは緑茶だけどよ、たまには大陸風なもん飲みてぇだろ?」
「…うん。」


笑顔で話しかけてもツンケンとする妻に、エッジはムッとする。


「お前さっきから何でそんなに機嫌悪いんだよ?」
「…別に悪くないわよ。」


再びケーキを食べるリディア。そこにロバートが現れ…


「お館様、奥方様、バラはいかがでございましたか?」
「おぅ、すげぇ見応えあったぜ。クイーン・ローザはきれいだし、あのイザヨイバラ、名前の通り濃いピンクがなかなかの色気を醸し出してるじゃねぇか。」
「さすがお館様!分かっていただけましたか。イザヨイ殿のお色気をイメージできる色でしょう?」
「あぁ。あいつのこう…ムチムチとした感じが浮かんでくるというか…ぐふふふふ。」



エッジの手を見ると、何かを握りたそうないやらしい指の動き。リディアはそれに嫌悪感を覚えて目を向けていられず、ケーキを口に含んだまま俯いた。すると…



「お館様、前に言っていた新しいバラができたのでお持ちいたします!なかなかの出来ですぞ。」
「お、そうか。なら見せてくれや!」



そう言ってロバートが持ってきたのは、5種類の鉢植えのバラだった。

「さぁさぁ奥方様もご覧下さいませ!どれもお2人がよくご存知の名前ばかりですよ。」
「え…?」


リディアが顔を上げると、エッジが淡いピンク色のバラの鉢を手に取る。

「これは『レディ・ポロム』。あの子の可愛いピンクの髪に似てるだろ?大きくなって、すっかり美人になったもんな~。」
「…そうね。可愛いわね。」

「んで次が『レオノーラ・イエロー』。赤ほどは目立たねぇけど、可憐な感じがレオノーラらしいだろ?」

明るい黄色のそのバラは、まさしく可憐なレオノーラをイメージさせる。

「こっちが『チアフル・ルカ』だ。王女だけど、シドの弟子として直向きに頑張ってるあいつには、元気なオレンジがぴったりだよな。」
「…うん、今もシドと一緒に頑張ってるもんね。」

「ほいでこれが『インテリジェント・ハル』。出しゃばらずに知性でギルの奴を支えるハルっぽく、控えめな感じがいいだろ?」

薄紫色をしたそのバラは、一歩下がって主君のギルバートを引き立たせるハルの淑やかな振る舞いを彷彿とさせる。

「最後が『プリンセス・アーシュラ』。まだまだ若いけど、大成しそうなあの子には真っ赤なバラがぴったりだよな。可愛い上に武術のセンスもあるしよ。」

小ぶりで明るい赤のそのバラは、真月の戦いにおいて父であるヤンを師とし、強さと優しさを身に付けていったアーシュラによく似合いそうだった。

「…ヤンもこのバラ、気に入るでしょうね。」



次々と出てくる戦友の女性の名をとった美しいバラを前に、リディアの中ではモヤモヤとした気持ちがどんどん膨らんでいく。今まであまり感じたことのないこの感情をどうすれば良いのか分からないリディアはただ俯いていた。


「いやぁ、お館様の戦友の女性達はどの方もお美しくて、バラの名前にするにはぴったりですな!」
「だろ?若いのから子持ちまで色々だけど、全員女としての魅力たっぷりだからな~。」


卑猥な男同士のお喋りに、夫の口から次々に出てくる他の女性の話題。さっきから苛立っていたリディアはもう耐えられなかった。


「…エッジ、私帰る。」
「え?」
「もう帰る!」

「な、何だよ…。」

その場を去ろうとするリディアを宥めようと、エッジは彼女の腕を掴む。


「離してよっ!」
「お前何をそんなに怒ってんだよ?」


自分が怒っている理由を全く自覚していない夫に、ますます怒りがこみ上げてくる。俯いて唇をぐっと結び、華奢な拳に力がこもる。そして次第にその翡翠色の瞳からは涙がこぼれてきた。


(せっかくのデートなのに、どうしてこんな思いしなきゃなんないの…。)





「…何だよ、何が気に入らねぇんだよ?」


何も分かっていない夫に、リディアの怒りは爆発した。



「さっきから何なのよ!!ローザやイザヨイや他の皆はバラみたいにきれいだって言ってるのに私は青虫だなんてっ!!」
「そんな事で怒ってんのかよ?しょうもねぇ奴だなぁ。」


軽く笑うエッジに、リディアは惨めな気分になって拳がガクガク震え出し…





「それに、皆の名前が付いたバラがあるのに、どうして私の名前のバラはないのよ!?」






エッジとロバートがポカンとした顔でこちらを見ているのに気付き、リディアはハッとして口を覆う。




エッジにぞんざいに扱われたショックとモヤモヤする感情に駆られ、大人げないわがまま発言をしてしまった。これでは友達が持っているおもちゃを自分も買って欲しいと駄々をこねる幼い子供と同じである。



その場でわなわなと震えていると、エッジが呆れた表情でため息をつく。


「…悪かったな、気が利かなくて。けど俺はそんなこと考えられるほど暇じゃねぇからな。」


低い声で発されたエッジの言葉で、リディアは寒気がし、一気に血の気が引くような思いをした。夫は国王で大変な立場にいる中、こうして自分との時間を作ってくれているというのに。




「…帰るんだろ?出口はあっちだぜ。」


詫びようとしたリディアだったが、寛大な彼でも許容できないわがままを言ってしまったようである。


「道が分かんねぇなら、ロバートに連れてってもらったらいいじゃねぇか。」



もうこの場にはいられない。いたたまれなくなったリディアは出口に向かって歩き出した。










「うっ、うっ…。」


せっかくのデートが台無しになり、リディアはぐずりながら出口への道を歩いていた。


エッジがあんなに無神経だったなんて。しかもイザヨイの身体に触りたそうな彼の言動に自分以外の女性の名をとったバラ。今まで自分を1番に考えてくれていると思っていたのに。


「うっ…うわぁぁぁん…!」


その場に座り込み、嗚咽を漏らす。とめどなく流れてくる涙は、持っている小さなタオルをあっという間に濡らした。







こうして泣いていたら、いつもあなたは優しく抱きしめに来てくれたのに―――



私のそばにいてくれたのに




どうしてなの?




私が甘え過ぎたから、愛想尽かしちゃったの?




エッジ…!!
















「はぁ…。」


一頻り涙を流し、落ち着きを取り戻してきたリディアは出口に向かおうと立ち上がる。


(エブラーナ城への道、分かんないや…どうしよう。)


行きは四人衆が連れてきてくれたため、どこをどう来たのか思い出せないリディア。ロバートに頼むしかないと思っていると、何やらいい香りがしてきた。




「あれ、このバラは…。」



自分の周りをよく見ると、見覚えのあるサーモンピンクのバラが1面に咲いていた。


「エッジがくれたバラだわ…。」


さっきのいざこざで、もらったバラは喫茶スペースに忘れてきてしまったが、可愛い色だったのでリディアの記憶に残っている。新種のバラなのだろうか?気軽に見れるようになっていた他のバラと違い、大事そうに柵で囲われており、かなりの数が咲き誇っている。


「奥方様!!」



リディアの元にロバートがやってきた。

「ロバート!…さっきはごめんなさい。見苦しかったでしょう?」
「いやいや!私の方こそお耳に障ることを申し上げてしまいまして申し訳ございません!」

「ううん!私がついカッとなっちゃって…。」

そう言った後、ロバートは何やらニッコリとする。


「奥方様、こちらのバラはお気に召しましたか?」
「あ、えぇ…。すごく可愛い色ね。」
「それはそれは!お気に召したようで何よりです!」


満面の笑みのロバートを見ていると、リディアにも笑顔が戻ってきた。


「このバラは最近やっと出来上がった新種でしてね、ようやくお見せできるようになったんですよ。」
「そうなのね…。何ていうバラなの?」


ロバートはまたしても満面の笑みを浮かべる。

「奥方様、それは名付け親のお館様に聞いてみて下さいませ。」
「えっ…?」


さっきあんなに険悪な雰囲気だったのに、そんなことを聞けるものかとリディアが俯いていると…



「リディア。」


リディアが振り向くと、そこには笑みを浮かべるエッジがいた。

「あ、エッジ…。」


リディアは気まずくて、エッジの顔を直視できない。


「ほれ、忘れもんだ。ったく、せっかく俺がプレゼントしたんだから大事に持っとけよ?」


テーブルに忘れてきたバラをリディアの手に持たせ、俯くリディアをそっと抱き寄せたエッジに、ロバートはニッコリと笑う。


「お館様、奥方様にこのバラの名前を…。」
「おぅ。…リディア、このバラ気に入ったか?」


俯いたまま小さく頷くリディア。

「そうか、よかった。このバラの名前はな…」
















「『スウィート・リディア』っていうんだ。」













驚いて顔を上げたリディアが見たのは、とっても優しい笑顔のエッジ。






リディアの唇に、そっと重なるエッジの唇。




「エ、エッジ…!やだぁ…。」



もう嬉しいのか恥ずかしいのか分からないリディアは胸の前で両手をキュッと握り、ひたすらもじもじとする。


「へへ~、びっくりしたか?」
「…うん。」
「ロバート、ありがとな。」
「いえいえ、こちらこそ予定よりもかなり時間がかかってしまいまして…。」


2人の会話を聞いて不思議そうな顔をするリディアに、ロバートが説明し始めた。


「以前からお館様は奥方様のためにバラを作って欲しいと仰ってましてね。本当はご婚礼の日までに用意することになっていたんですが、予想以上にこの色を出すのに難航してしまい今になった…というわけです。他のバラと違って、こちらのスウィート・リディアはピンクとオレンジの絶妙なバランスが必要ですからなぁ。」

「そういうこと!簡単に作れるような色じゃ、そこらのバラと差がつかねぇもんな。」


話を聞いたリディアは、胸が熱くなってくるのを感じていた。

「じゃあ、さっきあんな事を言ったのは…」
「もちろん、お前をびっくりさせるためだぜ?普通に見せたんじゃ面白くねぇだろ?」

ニヤニヤと笑うエッジを見て、リディアの翡翠色の瞳が潤みだした。


「本当にお館様はお人が悪いですなぁ~。奥方様を驚かせたいからとわざと怒らせるなんて。今朝の打ち合わせの時に普通にデートなさったらどうですかって言ったんですがねぇ。」

「えっ?」
「だっ…ロバート!余計な事言うんじゃねぇ!」


相変わらず情報管理の甘いエブラーナ国王である。



「エッジ…今日仕事じゃなかったの!?」
「…。」

エッジの頬は真っ赤だった。


「お館様は今朝からここに来て、私と四人衆と一緒に、奥方様とのサプライズデートの準備をなさってたんですよ!」
「ロバート!余計な事言うなっつっただろーが!」

「はっはっは、これは失礼!では私はこれにて…。」


笑顔で作業場へと戻っていくロバートを見届けた2人は顔を見合わせる。


「エッジ…。」
「ん?」
「私をわざと怒らせて、って言ってたけど、その…ローザがすごく美人だとか、イザヨイの身体が色っぽいとか言ってたのは…あの…。」


「ぜーんぶ、演技だぞ?」


キッパリと言い切られたエッジの言葉で、リディアはもやもやした気持ちがスッと晴れていくのを感じた。

「けど…バラの名前はエッジが付けたのよね?」
「いや、あれはロバートが付けたんだ。俺が名付けたのはスウィート・リディアだけだぞ。」
「…そうなの?」
「おぅ。大体何で俺がいちいち新種のバラに名前付けなきゃなんねーんだよ。お前を怒らせるためにバラの名前覚えて、ローザ達へのおべんちゃら考えるの大変だったぜ。」



腕を組みながら誤解に苦笑するエッジに、リディアの表情は緩む。それを見たエッジはニヤニヤと笑いだし…




「いやぁ、お前があんなにヤキモチ妬いてくれるとはなぁ~。すげぇ嬉しいぞ。見事に俺の演技に嵌ってたから、思わずポカンとしちまったぜ。」
「へ…?」


エッジが他の女性の話題を口にしたことに苛立ってしまったということは…


「お前は、それだけ俺のことが大好きってことだよな?」


ルンルン気分でリディアの手を握り、彼女を見つめるエッジ。するとさっきまで険悪だった夫の笑顔にホッとしたリディアの翡翠色の瞳からは、ポロポロと涙がこぼれ出す。


「エッジ…!!」


自分の名が付いたバラを握りしめたまま、リディアはエッジに抱きついた。

「おぉよしよし、可愛いやつだなぁ~。…俺が他の女の話なんてしたから不安になっちゃったか?」


エッジはぐずりながら頷くリディアの髪を優しく撫でる。

「あんな気持ちになるの…もういやぁっ!」
「ん…そうか、ごめんなリディア。」
「エッジのバカぁっ…!」
「すまねぇ、リディア。…俺はお前のことしか見てねぇからな?」


この10数年の間1度も抱かなかった、嫉妬という感情。それを感じるのがこんなに苦しいなんて。エッジへの想いがどんどんこみ上げ、ひたすら彼にしがみつく。




ちゅっ。


「今のはごめんねのチューだぞ?」
「…。」


頬にキスされ、何やら言いたげな表情のリディア。

「ん、ごめんねのチューじゃ足りねぇのか?ならちょっと待ってろ。」


そう言ってエッジが持ってきたのは、スウィート・リディアの花束だった。


「ほれ、これで機嫌直せよ。」
「…うん。」


ふとロバートの言葉を思い出したリディアが本数を数えると、そこには10本のスウィート・リディア。


「10本って…何か花言葉あるの?」
「んー、10本は知らねえけどよ、11本なら花言葉があるぜ?」





11本。





リディアはエッジにもらっていた1本のスウィート・リディアを花束と合わせた。

「…これで11本あるわ。どんな花言葉なの?」
「あー…それはだなぁ…。」



何やら言いにくそうにしているエッジの口から出た花言葉は…









「『最愛』だよ。」












リディアの頬が薔薇色に染まる。

エッジの頬も薔薇色に染まる。







初夏の湿気を含んだ風が、ふっと吹く。





じっと見つめ合う2人。







エッジの手が、ゆっくりとリディアの背中に伸びた。





その手がリディアを抱き寄せると同時に、リディアは自分から身体をエッジに預ける。







強く強く、抱き合う2人。






蒸し蒸しする気候の中、2人の手も身体も汗ばんでいたけれど、そんなことはもうどうでもいい。








何の言葉もなく、ただ愛する人を自らの腕でしっかりと抱きしめる。






息遣い

体温

鼓動

匂い








全部全部、大好き










抱き合ってどれほど過ぎた頃か、ようやく2人は顔を合わせる。


「ふふふ、エッジ汗びっしょりじゃない。」
「へへへ、リディア…お前こそ汗だくだぞ。」




再び抱き合うエッジとリディア。口づけする2人の汗と体温が溶け合っていく。











「なぁ、リディア…。」
「ん?」


「ここに咲いてるスウィート・リディアはよ、999本あるんだ。」
「うん。」

「999本のバラにも、花言葉があるんだ。」
「そうなんだ。どんな言葉?」



「知りたいか?」
「うん。」




エッジはリディアに、花言葉を耳打ちする。






「…!!もうっ、エッジ…!」
「何だよ~、せっかく言ってやったのに。」



2人の頬は、また薔薇色に染まっていた。



「…でも、嬉しいな。」
「そうか。なら良かった。」



自然に重なり合う2人の唇は、角度を変えながら何度も深く深く、相手に侵入していった―――










リディアが持ち帰ったスウィート・リディアはあっという間に国中の女性達の間で人気となり、その後世界中に出荷されると、その可愛らしさで大ヒット商品になったという。












999本のバラの花言葉、それは―――













『何度生まれ変わっても、貴方を愛する』





―完―


Comment:0  Trackback:0
2014
05.23

「饅頭怖い!?」 あとがき

Category: あとがき
ごちそうさまなラブラブエジリディに仕上がりました(笑)自分で書いといて何ですが、読み返すとお腹いっぱいです



おやつのことで喧嘩するのは、エッジとリディアのカップルならではかなぁと。もしセシルとローザだったら、こうはならないでしょうしねちなみにタイトルは、落語の定番の「饅頭怖い」をそのまんま使いました。友人が饅頭怖いの英語バージョンを演じていたんですが、面白くて印象に残っていたもので(^.^)



うーん、それにしてもエジリディは妄想が止まらない…。稚拙な作品ばっかりですが、これからも新しいSSをUPしますので、またのご来訪お待ちしてます
Comment:0  Trackback:0
2014
05.23

「饅頭怖い!?」

「夜の八重桜」の中に出てきた、エッジとリディアがおやつのお饅頭のことで喧嘩になった時の話を書いてみました( ̄▽ ̄)







「饅頭怖い!?」







ある日の昼下がりのエブラーナ城。





(あ、もう1個しかないや…。エッジと半分こね。)

3時のおやつにエッジと饅頭を食べようと箱を開けたら1個しかないことに気付いたリディア。箱から饅頭を取り出してお皿に乗せ、お盆に乗せて執務室まで持って行った。


執務室に入ると、エッジはいなかった。

(あれエッジ、トイレかな?)


「そうそう、お茶淹れて来なくちゃ。」

リディアは饅頭を乗せた皿を机に置き、調理場へと向かった。




一方その頃、リディアと入れ違いにエッジが執務室に戻ってきた。


(ふー、今日はなかなか疲れるぜ。)


そう思っていると、机の上に置かれた饅頭がエッジの目に入る。


「お!リディアの奴、3時のおやつを用意してくれたんだな。」










調理場にいるリディアは、エッジの好きな玉露の缶を取り、2人分のお湯を沸かす。

「エッジ、このお茶好きなのよね~。」

忙しいエッジの仕事の合間のティータイムは、彼と一緒に過ごせるリディアの大好きな時間。自分達の湯呑みを出し、夫の喜ぶ顔を浮かべながらお茶を淹れる。


淹れた玉露の香りは独特で、その味は渋いながらも絶妙な甘みと旨さ。ミストやバロン地方で飲まれている紅茶とは全く違う美味しさである。エブラーナに住んでからは文化の違いを感じることが多く、リディアにとっては何もかもが新鮮だった。



お盆に湯呑みを乗せ、鼻歌混じりで執務室へと戻るリディア。


(エッジ、戻ってるかなぁ…?)


ドアを開けると、エッジがいた。

「あ、エッジ。お茶淹れてきたわよ。」
「おぅ、ありがとな。」

エッジは立ったまま書類を手に持ち、何やら口をもぐもぐさせているので、まさかと思ったリディアがお饅頭を乗せていたお皿を見ると…


「あっ、お饅頭がない…!」
「ん?」
「それ最後の1個だからエッジと半分こしようと思ってたのに…!」


リディアがそう言った途端、エッジの喉がゴクリと動いた。















非常に気まず~い空気が2人を包み込む…。







「わ…悪りぃ、リディア…。」
「そんなぁ…!私も食べようと思ってたのに…。」


仕事の疲れが出てくる時間帯の糖分補給と夫との会話は、リディアのとても大事な時間。せっかくの楽しみをぶち壊され、今にも泣き出しそうなリディアの顔を見たエッジは、どう弁解しようか必死に頭を巡らせる。



「あ、いや…その…お前はもう自分の分は食ったもんだと…。」
「何よそれ!いつも一緒に食べてるじゃない!1つしかないのに、おかしいと思わなかったの!?」
「あ、あぁそうだな…。」


(や、やべぇ…殺される…。)


この世界で1番の黒魔法の使い手とも言えるリディアから、何やら殺傷力のありそうな魔力が放出され始めているのを感じるのは気のせいか。慌てたエッジはリディアを宥めようと、彼女の肩を優しく撫でる。


「リ、リディアすまねぇ…!今すぐ調理場の子に饅頭買いに行ってもらうように言ってやるよ!」
「担当の子には買っておくの明日のおやつの時間まででいいからって言ってあるもん。そんな事したら忙しいのに気の毒じゃない!」
「う…そ、そうか。なら、他に茶菓子がねぇか見てきてやるよ!」
「…もう何もないわよ。さっき見てきたもん。」


何を言っても空回りしてしまう残念なエブラーナ国王。怒って低い声で話すリディアからはデスの魔法が放たれそうな空気が漂っている。必死にどうやってこの場を乗り切るか考えを巡らせるエッジだが、戦闘の時以上の緊迫感の中、変な汗が身体中から吹き出てくるだけだった。



「あ、えーと…その…。」
「もういいわよ!」



必死に何かを言おうとする夫をピシャリと遮り、持っていたお盆を机に置いて自分の湯呑みを取って椅子に座り、立ちつくすエッジを尻目に仕事を再開するリディア。彼女からは背後にいるエッジに向かって、近寄るんじゃねぇ話しかけたらぶっ殺すぞてめぇオーラが発されていた。




エッジはそれに対抗し、申し訳ございませんもう2度といたしませんお許し下さい王妃様オーラをリディアに向かって放ってみる。しかしあっという間に彼女の殺気立ったオーラにかき消されてしまい、デスの魔法で現れる死神がエッジを睨みつけているのが見えた。


(ひ~…!!!まだ死にたくねぇよ…!)


何とか一命をとりとめた(?)エッジは、リディアの淹れてくれたお茶を飲もうと、お盆の上の湯呑みを手に取り、自分の椅子に座った。



ここは仲直りするきっかけをつかもうとお茶を啜り、チラリとリディアを見ながら…




「あー、美味い!大好きな嫁さんに淹れてもらった茶は最高だな~!」
「…。」














余計に気まずいだけだった。







エッジの身体からは変な汗が再び吹き出てくる。戦いの時は冷静な判断を下せるようになったエブラーナ国王だが、相手がリディアとなるとまるっきりそれが不可能だった。詫びのキスをしようにも、リディアの身体に触れようものなら即死しそうな雰囲気である。


(まさに、食べ物の怨みは恐ろしいってやつだな…。)







リディアから絶え間無く放たれる殺気立ったオーラは、ビシビシとエッジの身体を突き刺す。




(あ~、誰か決裁のサインでももらいに来てくれねぇか…このままじゃ俺死んじまう…。)





すると、執務室のドアがノックされた。

「!!おぅ、入っていいぞ!」
「失礼致します!」


入ってきた数人の家臣達は、気まずい雰囲気の中にいるエッジの目には光り輝く救世主に見えた。



「ご苦労さん。どうした?」
「はっ!新施設建設現場の測量の結果なんですが、先程現場の者から報告書が届きまして…」
「おっ!早いじゃねぇか。んでどうだったんだ?」
「建設にあたっては特に問題はないかと思われますが。」
「んー、そうか。そういやあの辺は地震とかは大丈夫なのか?昔、大地震があったって聞いた気がするぜ?」
「そうですか…記録を見てみないと分かりかねますので、お持ち致します!」

「!!あ、なら俺が記録を見に行く!お前らの部屋にあるのか?」
「いえいえ、こちらにお持ち致します!」


せっかくのこの気まずい雰囲気から逃れるチャンスだというのに、家臣達の丁寧さはエッジにしたらありがた迷惑だった。


「いや、俺が行く!お前らも忙しいだろ?」
「はぁ…ではお越しいただけますか?」
「お、おぅ!」


(ふ~、助かったぜ!次回のこいつらのボーナス増額しておくかな…。)


エブラーナ国王よ、それは職権濫用に該当しないか。エッジは執務室を後にし、家臣達にひょこひょことついていった。







そしておよそ1時間後…



「さて…。」



記録を確認し終わったエッジはキョロキョロと周りを見渡しながら中央塔の出口に着くと、音を立てずに屋上へと飛び上がる。そして気付かれないように外壁を飛び越えてこっそり城を出ようとすると…


「お館様!」

家老が気付き、エッジを呼び止める。

(じい…何でいつもこのタイミングで…)

苦い顔をするしかないエッジ。

「どちらに行かれるのですかな?」
「あ、いや…ちょっと野暮用ってやつだ。」
「はい?」
「心配すんなって!すぐ戻って来るからよ!」
「そう言っていつも長時間帰って来られないではないですか!もうミストに行く用事もないというのに、一体どちらへ行かれるのですか!」
「いや、本当にすぐ帰って来るって!30分かそこらだからよ!」

「…そうでございますか。ではお気をつけて…。」
「お、おぅ!すまねぇな、心配かけて。」



家老が城内に戻って行くのを見届けると、エッジは忍者としての脚力を活かして目にも止まらぬ速さで走り出した。




(早く行かねぇと…!)












「はぁ…。」


執務室にいるリディアがため息をつく。糖分補給ができなかったせいで頭にエネルギーが回らず、仕事が捗らない。


「もうすぐ夕食だし、それまでの我慢よね…。」




リディアは再び書類と向き合い、仕事を続けた。






そして…









リディアがエネルギーを使い果たした身体を引きずり、王族用のダイニングルームに行くと…


「おぅ、リディア。」
「…。」


エッジの呼びかけには応えず、下を向いて自分の席に座り、空腹も手伝ってか、リディアは再び殺気立ったオーラを放つ。



いつもは豪快に組んでいる脚をきちんと閉じ、手は膝の上、椅子に深く腰掛け、縮こまるエッジ。





(頑張れ、俺…もう少しの辛抱だ。)





食事が配膳されると、無言の夕食が始まった。エッジはチラチラとリディアの様子を見ながら食事を口へ運ぶが、リディアはエッジの方を全く見ようとしない。




(お、東利の柴漬け!これ美味いんだよな~。)


エッジがお気に入りの漬物が出されているのに気付き、食べようと箸を伸ばした。すると、何ということかリディアの箸と重なった。重なった箸からも寒気がするような殺気が伝わってきて、思わず身震いするエッジ。



「…あぁ、悪りぃ。先に取れよ。」



リディアは無言で漬物を先に取る。




饅頭1つの事で、ここまで怖い思いをするはめになったエブラーナ国王は、黙って食事を続ける。



「ごちそうさまでした。」


リディアは食事を終え、エッジなど気に留める様子もなく席を立とうとすると…



「奥方様、本日は食後のデザートがございますよ。」

「え!?」



侍女のデザートという言葉を聞き、3時のおやつにあり付けなかったリディアの目がキラキラと輝き出した。


「こちらでございます。」


侍女がニコニコしながら持ってきたのは、お皿に乗せられた3本のエブラーナ菓子・みたらし団子だった。老舗のエブラーナ菓子屋で売られており、濃厚なタレとコシのあるもちもちとした団子が特長で、他国からも注文が来るほどの人気なのだ。


「わぁ…!!このお団子、また食べたいと思ってたの!」



リディアは婚約期間中、エッジに店に連れて行ってもらったことがあり、そこで1度このみたらし団子を堪能したことがあった。しかし国内外で大人気なために品切れが続き、リディアがエッジにまた食べたいとおねだりしていたのだが、その後は入手が不可能だったのだ。



「いただきまーす!」



リディアは満面の笑みでみたらし団子をぱくっと口に入れた。程よく醤油味のついた甘いタレと、団子のもちもちとした食感がリディアの口の中で絶妙なハーモニーを織り成す。


「ん~、おいしーい!!」


幸せそうなリディアを見て、エッジは微笑む。


「美味いか?」
「うん!」


さっきまでの殺気立ったオーラは消え去り、すっかりご機嫌のリディア。1本だけでは足りず、もう1本手に取ると、それもあっという間に平らげる。


(ん~幸せ~!)




最後の1本のみたらし団子を前に、リディアはちらりとエッジを見た。


「いいぞ、好きなだけ食えよ。」


にっこり笑う夫を見たリディアは、さっと最後の1本を手に取る。もぐもぐと幸せそうに団子を食べるリディアを、終始笑顔で見つめるエッジ。


「はぁ~、おいしかったぁ。お菓子買っておくの、明日のおやつの時間まででいいって言ったのに。それにこのお団子、よく手に入ったわね?」



それを聞いた侍女はにっこりと笑う。



「奥方様、みたらし団子はお館様がご用意されましてございます。」

「えっ!?」



リディアがエッジを見ると、彼は照れ臭そうに少し視線を逸らしながら微笑んでいた。




(エッジ…!)







2人はダイニングルームを出た。

「リディア。」
「ん?」
「…執務室で待っててくれねぇか?」
「…うん。」




(エッジ…あんな遠くまであのお団子買いに行ったの?)




リディアが執務室で待っていると、エッジがお茶の入ったリディアの湯呑みを持ってきた。


「ほら、飲めよ。甘いもん食ったし、喉渇いてるだろ?」
「うん…。」


夫が淹れてくれたお茶を啜ると、リディアの身体いっぱいに温もりが広がっていき、幸せな気分になってくる。


「おいしい…。」
「へへへ、そりゃ良かった。」



自分の椅子をリディアのすぐ横に寄せてそこに座り、彼女をじっと見つめるエッジ。



丸く見開かれたリディアの大きく透き通った翡翠色の瞳がぱちぱちと瞬きし、長い睫毛が揺れ、その美しさにエッジの胸は高鳴る。



鍛え上げられた腕がリディアの背中に回り、ギュッと彼女を抱き締めた。


「エッジ…?」


妻と視線を合わせたエッジはゆっくりと彼女と唇を重ねる。



ちゅっ、ちゅぷ、ちゅぶっ…



口周りからねぶり上げるような夫の口づけを、リディアはポーッとしながら受け入れる。


エッジの舌はリディアの上唇と下唇をぐるりと舐め上げ、両方の口角も舌先でぺろりと舐める。


顔を離すと、リディアの頬はほんのり赤らんでいた。昼間の出来事のせいで、何となくエッジと視線を合わせづらくなり、少し俯くリディア。


「へへ…お前の口周りがみたらし団子のタレだらけだったからな。」
「…嘘ばっかり。」



どう反応すれば良いか分からず、もじもじするリディア。するとエッジが彼女の手をそっと握る。



「リディア…今日はすまなかった。饅頭食っちまってごめんな。」
「…。」


「俺が悪かったよ、ごめんな?」


エッジの顔を見ると、真面目だけれどとても優しげな表情で、リディアは胸がドキドキしてしまう。




ゆっくりと重なってくる夫の唇。ふんわりと柔らかくて優しくて、そっと自分の唇を食むようなその動きに、リディアは全身が蕩けてしまいそうな気がした。


握られていた手の指が絡み合い、エッジの唇がだんだん深く侵入してきた。


「ん…エッジ、やめてぇ…。」



きつく当たったのに優しくされて、気まずいリディアは思わず顔を背けるが、そうされてもエッジは色白の頬にちゅっちゅっとキスをし続ける。


「お前のほっぺた、あのみたらし団子みてぇにもちもちしてるな。食ったら美味そうだな~。」
「んもう…何言ってるのよ。」


嬉しそうに自分にキスする夫の顔を見て、リディアは恥ずかしくなってますます顔が赤くなり、彼に背中を向けた。


「リディア…こっち向いてくれよ。」
「嫌っ…。」



リディアの機嫌が治っているのを分かっているエッジは、後ろから彼女を抱きすくめる。妻の柔らかな緑の髪から香る、甘く優しい匂いをゆっくり鼻で呼吸して堪能し、耳朶をかぷっと噛む。リディアがピクッと身を竦めるのを見て、今度は首筋にそっとキスをする。

「やぁっ、エッジ…!」

リディアが首を竦めるが、エッジは強引に唇を彼女の首筋に割り込ませ、柔らかなキスを繰り返す。


「んっ…もうっ…!」


そう言うと、エッジは首筋へのキスをやめ、さっきよりもギュッとリディアを抱き締めた。じっとしているリディアの背中からは、心臓がドキドキしているのが伝わってくる。


「リディア、すまねぇ…。愛してるぜ。」


耳元で夫に愛の言葉を囁かれ、リディアの鼓動はますます早まった。


(やだぁ…恥ずかしいっ…!)



「なぁ、こっち向いてくれよ。お前の顔が見たいんだ。」



もうこれ以上夫からは逃げられないと思ったリディアは、ついに身体を彼の方に向けた。するとエッジの顔がみるみるほころぶ。


「ん~、可愛いお顔だなぁ。」
「何なのよ、バカ。」
「あ?可愛いから可愛いって言ってるんだぞ?」




エッジが裏表のないストレートな性格なのを知っているリディアは、お世辞じゃないことを分かっていたのだが、喧嘩した手前、簡単に喜びを表現できなかった。


「リディア…許してくれよ。」


エッジは許しを乞いながら、再びリディアの手を握る。


「…エッジ。」
「ん?」

「あのお団子、いつ買いに行ったの?」
「お前と喧嘩して、昔の記録確認しに行った後だぜ?」
「え?飛空挺の音、何も聞こえなかったのに…。」


以前店に行った時は遠いからと飛空挺を使ったのだが、空いていた執務室の窓からはそれらしい音が全く聞こえた覚えがない。もし歩いて行ったのならば往復で半日はかかる距離なのに…とリディアが不思議に思っていると、エッジはニタリと笑った。


「俺を誰だと思ってんだ?忍者の俺が全力で走れば、30分で帰って来れるってーの。」
「!?」




「前はお前と一緒だったから飛空挺使ったけどよ、今日は俺1人だったからな。」
「…うん。お団子、売れ残ってたの?いつも売り切れで、エッジから注文してもらっても手に入らなかったのに。」
「おう、今日はラッキーだったぞ。もし売り切れてたらもう他の店に違う茶菓子買いに行っても閉店してるぐらいの時間帯だったから、ヒヤヒヤしたけどな。」


リディアと仲直りするために、エッジは一か八かの賭けに出ていたのだ。リディアの翡翠色の瞳が少し潤む。


(エッジったら無茶ばっかりして…。)


たかが饅頭1個のことであんなに怒ってしまったリディアは自分が恥ずかしくなった。


「リディア…俺が悪かったよ、ごめんな。」


深い目の色で見つめられたリディアはもう目を逸らせなかった。最早口にできる言葉は、ただ一つだけ。









「エッジ……私こそ…あんなに怒っちゃってごめんね?」






エッジの表情は一気に緩み、リディアは強く強く抱きしめられた。


「やだぁエッジ、苦しい~!」
「ん~リディア~、許してくれてありがとな。」
「だって仕方ないじゃない…。私のためにそんなに頑張ってくれたんだもん。」


やや不貞腐れたような言い方をするリディアに上目遣いで見つめられたエッジは、鼻血が出そうな程の衝撃を受けた。




(あぁ…可愛い過ぎるぜ。そんな事したら、俺は何でも許しちまうぞ。)




「じゃ、じゃあリディア…ここに仲直りのチューを…。」



エッジがニヤニヤしながら自分の頬を指差した。

「もう~、手のかかる子ねぇ。」
「お前の旦那だぞ?責任持って面倒見ろよ?」
「はいはい。」





ちゅっ。



「!!!」


エッジが驚いて唇を手で覆うと、リディアはにっこり笑っていた。


「うふふ、特別サービスよ?」


興奮して熱い血がエッジの身体中を巡り出し、顔が真っ赤になる。



「くそっ、リディアてめぇ…!」
「きゃあぁぁっ!」



リディアが身動きできないぐらいにギューっと抱きしめるエッジ。


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…



顔の角度を変えながら、猛烈な連続キスをリディアに浴びせていく。その気持ち良さにリディアの身体からは力が抜けていった。



「んっ、んっ、ん…。」


リディアがキスの僅かな合間に鼻で呼吸していると…



ちゅぅぅぅぅっ…!!



最後は強力に唇を吸い上げる口づけが待っていた。


「はぁっ、はぁ…。」



口づけの後、呼吸を整えながら自然に見つめ合い、笑いがこぼれる2人はまた唇を重ねながら会話を始める。


「んふぅ、エッジ…お団子美味しかったよ。」
「ん…美味かっただろ?俺の愛がこもってるんだからな。」
「うん…ふぅ、エッジ、ありがとう…。」





すっかり仲直りしたエブラーナ国王夫妻。この後も執務室の中で、饅頭よりも、みたらし団子よりもずーっと甘い甘い口づけが続きましたとさ…。




ー完ー

Comment:0  Trackback:0
2014
05.19

「忍びの妻」 あとがき

Category: あとがき
うーん、またしても長くなってしまいました読んでいただいた方、お疲れ様でした


忍びの一族の長としてのエッジと、リディアにメロメロな夫であるエッジを書いてみたいと思って出来たのが今回の作品なんですが、うまく表現できているのかどうか


きっとFF4本編後のエッジだったら、何でもリディアの言いなりになってそうだなぁと思うのですが、TAでは年を重ねてエブラーナ国王としての威厳が見て取れる大人の男性になってたし、リディアを守るためなら必要に応じて叱ったりするんじゃないかというのが私のイメージです。結局リディア大好きなのは変わりませんけどね



実は風呂場のシーンも書いてあったのですが、エロ度が高めになってしまい、前回もエロだったので割愛しました(笑)



それでは皆様、また次回






Comment:0  Trackback:0
2014
05.18

「忍びの妻」

TA後エジリディSS第10弾です☆結婚して以来、エッジに大事に大事にされているリディア。けれどリディアの本音は…。







「忍びの妻」






冬の気配がだんだん近くなり、朝夕はめっきり冷え込むエブラーナ王国。しかしその寒さの中でも、国王エッジは朝の稽古を欠かさず、日々鍛錬に励んでいた。




そして今日も、エッジは早朝の訓練の後はエブラーナ城から少し離れた所にある、寒さと静寂に包まれた寺院の中の本堂で祭壇に向かい合い、冷え切った床の上に座禅を組み、精神を高めていた。




「…お前ら、別に俺に付き合う必要ねぇんだぞ?」



目を瞑ったまま、エッジは自分の後ろに座る四人に話しかける。


「付き合うとは、おかしなことをおっしゃる。」
「我らは自らの意志で、ここにおりまする。」
「忍びたる者、精神力は欠かせませぬゆえ。」
「いついかなる時でも、強い精神がなければ、自分も他人も守れませぬ。」


エッジ直属の部下であるエブラーナ四人衆・ゲッコウ、ザンゲツ、イザヨイ、ツキノワもまた朝の稽古後、この寺院でエッジと共に精神を高めるために座禅を組んでいた。


「へっ、相変わらず暇な奴らだな。好きにしやがれ…。」

「ありがたき幸せにございます。」


主君への忠誠を誓う四人衆の声が重なる。


うっすら目を開けたエッジの視線は、祭壇の蝋燭に灯る火に向かっていた。




火―――






エッジの身体に染み付いた火の思い出。



10数年前の月の対戦でゴルベーザ四天王のリーダー・ルビカンテに城を襲撃されたエブラーナ。若かった自分は怒りに狂って我を失い、エブラーナの洞窟で単身ルビカンテに戦いを挑み、彼の強力な炎に身を焼かれ、呆気なく敗北した。




死ぬ事など怖くなかった。

復讐を果たせるのならそれで良かった。





あの涙を見るまでは―――







『もうこれ以上死んじゃうのは嫌よぉっ!!』



美しい翡翠色の瞳から零れ落ちる涙。


見ず知らずの自分のために泣く、ふわふわとした緑の髪に、色白で華奢な美しい少女。


全身に大火傷を負い、話すことすら辛い状況の中、みるみる彼女に惹かれていった。


一国の王子という立場柄、それまで女に不自由することなどなかったのに、気付いたら彼女の事しか考えられなくなっていた。




一緒にいたい。
守りたい。
何でもしてやりたい。



だから俺は生きるんだ―――




目を瞑ると、瞼の裏にその愛しい女性の姿が浮かんでくる。






「…!」

「何者だ!?」

部屋の外の微かな気配に気付いた四人衆。


「…怪しいもんじゃねぇよ、戸を開けてやれ。」

「お館様…!?」
「いいから入れてやれ。」


ゲッコウとザンゲツが恐る恐る戸を開けると―――


ついさっきエッジの瞼の裏に浮かんでいた色白で華奢な美しい女性が、柔らかな緑の髪を靡かせながら部屋に入り、最前列に座る夫の元へと歩み寄る。


四人衆は慌てて跪き、彼女に敬礼する。


「エッジ…!」





「…リディア、何しに来た?ここはお前の来るとこじゃねぇぞ。」


目を閉じたまま、微動だにせず妻に問いかける。


「…どうして?」
「ここは忍びが精神統一をする場所だ。お前が来る必要はない。」

「…私はこの国の王妃なのに?」
「…あぁ。」

「私はエッジの奥さんなのに?」
「…。」


エッジが微かに眉をしかめた。この口調は妻が何を言っても聞かないモードになっている証拠だからだ。


リディアはエッジの隣に座った。朝夕はすっかり冷え込む季節になり、暖房設備のない寺院の中では吐く息が白い。今いる部屋の床は夜の間、冷たい空気にさらされていたため輪をかけるように冷たい。床に触れたお尻から、刺すような冷気がリディアの身体に巡る。


「冷たっ…。」
「ったく、このぐらいで弱音吐くようじゃこの先の寒さに耐えられねぇぞ。早く城に帰って身体あっためて来い。」


「…大丈夫だもん。」

唇をへの字に結び、床からの冷気に耐えるリディア。

「普段訓練してねぇ奴がこんなとこにいたら風邪引くぞ。さっさと帰れ。」
「嫌よ。エッジが精神統一終わるまでここにいる。」


どうしても自分の隣にいると言って聞かない妻。エッジはふーとため息をつく。


「あの、奥方様…これをお使い下さいませ。」

ツキノワが部屋の隅に置いてあったふかふかとした座布団をリディアに持ってきた。

「ありがとう、ツキノワ。でも私、エッジと同じようにしたいの。せっかくなのにごめんね。」


それを聞いたエッジの顔が険しくなった。


「何が『エッジと同じようにしたいの』だよ。お前は忍びじゃねぇだろ。」


夫の真顔にビクッとするリディア。

「…何でそんなに怒るの?私は忍びじゃないけど、この国の王妃だもん。エッジについていくのはいけない事なの?」

怯えながらも反発したが、エッジの表情はさらに険しくなった。


「俺の言うことが聞けねぇのか!さっさと城に戻って身体あっためろって言ってんだろ!訓練の邪魔するんじゃねぇ!」


リディアはエッジのあまりの剣幕に思わず涙が出そうになった。


「お、お館様…何もそこまで言わずとも…。」


イザヨイがエッジを宥めようとするが、彼の表情は険しいままだった。


「悪りぃな、お前らの訓練の邪魔しちまって。」
「あ、いえ…。」
「俺はこいつを城に連れて帰る。うちの嫁は言い出したら聞かねぇからな。」
「はっ…。ではお館様、今夜の野外訓練の件は後ほど…。」
「あぁ。」



「え、野外訓練…?」



リディアが不思議そうな顔をしていると、エッジが彼女の腕を掴んだ。


「さぁ、帰るぞリディア。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!野外訓練って何?そんなの聞いてない…」
「いちいち口ごたえすんじゃねぇ!!」


またしても夫に怒鳴られるリディア。いよいよ涙が零れてきた。

「うっ、う…ふぇぇん…。」


エッジは何も言わずにリディアを横抱きし、寺院を後にした。





城に戻る道中、リディアはエッジの胸の中でぐずっていた。冷たい外気に身を震わせていると、エッジは自分のマントでリディアの身体を包み込んだ。

(エッジ…優しいなぁ。)


自分が昨夜、何かエッジの気に障るような事でもしたのかと思っていたが、どうやら違うようだ。いつもは優しい夫なのに、なぜ自分が彼についていこうとするとあんなに怒られるのかが理解できない。



(エッジは私の事には何でも合わせて全部受け入れてくれるのに、どうして…?)




リディアを抱えてエブラーナ城に戻ったエッジ。その姿を見て驚いた家老が駆け寄って来た。

「お、お館様!奥方様がどうかなされたのですか!?」
「大丈夫だよ。こいつが言うこと聞かねぇからこうしてるだけだ。」
「???」


訳が分からないという顔をする家老を尻目に、エッジはリディアを抱えたまま寝室へ向かった。




ベッドの端にリディアを座らせたエッジは上着を脱ぎ、汗のついた稽古着を着替え、リディアの隣に座る。



自分が理解できないことで怒鳴られ、俯いたままエッジの顔を見れないリディア。


ちゅっ。


「!」

頬にキスされ、はっとエッジを見るリディア。するとさっきまであんなに険しい顔をしていた夫は穏やかな表情で自分を見つめていた。


(エッジ…?)


「リディア、ここ座れよ。」

ベッドの上で胡座をかいたエッジはにっこり笑って自分の膝をポンポンと叩いた。


リディアが黙ってそこに座ると、エッジは彼女の腰とお尻を優しくさする。

「ほら、こんなに冷えてるじゃねぇか。」

夫の膝と手から伝わるリディアより少し高めの体温が、寺院の床で冷えてしまったリディアの下半身を温めていく。

「エッジ、気持ちいい…。」

思わずエッジに抱きつき、彼の首の後ろに腕を回す。

「ったく、この甘えん坊が…。」

夫の顔は、実にほっこりとしている。さっきまでの険しい忍びの一族の長ではなく、リディアが大好きなエッジの顔である。

「エッジ~。」

甘えた声を出し、エッジの頬にちゅっとするリディア。

「へへへ…お前はどこまで可愛いんだよ。そんな事したら俺はお前のこと離さねぇぞ?」
「うん…離さないで。ずっとエッジのそばにいさせて?」


「…この野郎~!」


満面の笑みでリディアをギュッと抱きしめて何度も口づけするエッジ。

ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…




嵐のような口づけの後、リディアはエッジをじっと見つめる。

「…ねぇ、エッジ?」
「うん?」

「さっき、どうしてあんなに怒ったの?」
「…。」

「私、そんなにいけない事したの…?」


リディアの問いに、エッジの表情が曇り出す。

「今夜野外訓練するって言ってたけど、そんな話聞いてないよ…。」


エッジは何か考えてる様子である。


「…お前には関係ねぇことだからだよ。」

夫の一言に、リディアはムッとした。

「どうして?」
「…関係ねぇもんはねぇんだよ。」
「関係あるわよ!私、エッジの奥さんだもん!」



エッジはリディアの言いたいことは、寺にいた時から分かっていた。しかし忍びとしての訓練は過酷を極めるし、訓練の準備等も肉体労働が多い。エッジは身体の弱い召喚士であるリディアを守りたいから、どんな形であってもそれに巻き込みたくない。


「そうか、お前は夜間訓練って聞いて、今夜は俺に抱いてもらえないって思ったんだな?大丈夫だって、訓練の前にちゃんと抱いてやるよ。何なら今でも構わねぇぜ~?」


エッジは卑猥な笑みを浮かべてウインクし、リディアの柔らかな緑の髪を撫でた。しかしリディアは澄んだ翡翠色の瞳を潤ませ、可愛い唇をぐっと結び、エッジを見つめていた。




「…すまねぇ、俺が悪かった。」


リディアの真剣な表情を見て、ごまかそうとした自分に嫌気がさし、詫びるしかないエッジ。リディアは忍びの一族の長の妻として、必死に自分に寄り添おうとしているのに。


「別に訓練に参加させてくれって言ってるんじゃないわよ…。」
「…あぁ。」

「…どういう予定なのかぐらい教えてくれたっていいじゃない。それに、準備とか色々あるんでしょう?」


自分の事は何から何まで理解して尊重してくれるエッジ。なのに何故逆に彼を理解し、助けるのはいけないのか。


「…確かに、予定を伝えてなかったのは悪かった。すまねぇ。けどな、訓練の準備は重い武器や道具を訓練場所の山岳地帯まで運んだりするんだ。そんな力仕事、お前には無理だろ?モンスターだっているんだぜ?しかもあの辺は夜すげぇ冷え込むし、風邪引いちまうぞ。だからお前は来んじゃねぇ。」


エッジにそう言われ、リディアは黙って俯いてしまった。


(これで納得するだろ…。)


愛する妻に苦労をかけたくない、辛いことは自分が背負えばいい。それがエッジのリディアに対する愛情だった。


「…私には何もできないの?」


何とかして大好きなエッジの力になりたい。その思いが込められた質問にエッジは精悍な眉を顰め、どうやって説き伏せようかと思案する。





「んー、なら俺が訓練に行く時、見送りを頼む。『お館様、行ってらっしゃいませ』って言ってくれよ。ずっとお前に言って欲しかったんだよ~。」

またしてもヘラヘラとリディアの顔を覗き込むエッジ。








「…分かったわよ。」



俯いたまま、低く小さな声でリディアが返事した。

(やべぇ…逆効果だったか?)


エッジはリディアが怒っているのを感じていたが、ここはもう話を終わらせようと、笑顔でリディアを抱きしめる。

「よしリディア、頼んだぞ?いやぁ、大好きな嫁さんに見送ってもらえて俺は幸せだぜ。」


リディアの背中を優しく撫で、頬にちゅっとするエッジ。リディアはずっと俯いていたため、表情は見えなかったが、ただならぬ気配を醸し出していた。

「さぁ、朝飯食いに行こうぜ?腹減った~。」
「…。」





(これでいいんだ。何かあってからじゃ遅せぇからな…。)




朝食後、エッジとリディアは執務室で仕事を始めた。



「リディア、これを財務担当の奴らの所に持って行ってくれ。」
「…。」



黙って書類を受け取り、執務室から出て行くリディア。彼女の背中からはピリピリとした雰囲気が伝わってきた。


(怖えぇ…勘弁してくれよ…。)



家臣達がちょうど出払っているため、自分とリディアの間の緩衝材になるものが何もなく、怯えながら仕事をするエブラーナ国王だった。




財務担当の家臣に書類を渡したリディアは、城内の通路でイザヨイと数人のくノ一達が手裏剣や忍びの道具を運んでいるのを見かけた。

「ねぇ、イザヨイ!」

リディアは思い切って声をかけた。

「これは奥方様。いかがなされましたか?」

「あなた達、今夜の野外訓練の準備しているのよね?私にも手伝わせてくれない?」

イザヨイは首を横に振る。

「奥方様、それはなりませぬ。これは私共の仕事でございますゆえ。」

「…エッジから私には一切手を出させるなって言われてるのね?」
「…。」


イザヨイ達はただ黙っていた。



(エッジったら…!)










そして、エッジが夜間訓練の場所に向かう時間になった。


「おーい、リディアー?」

(あいつ、どこ行ったんだよ?見送りを頼むって言ったのに…。)

「…お館様。」
「おぅ、じいか。リディア知らねぇか?」
「奥方様は気分がすぐれないと言って、お部屋へ戻られましたが…。」
「あ…そうか。なら仕方ねぇな。」

「お館様、奥方様に訓練の準備ぐらいならお手伝いいただいてもよかったのでは…?」
「あ?…何でじいがそんな事…。」

「奥方様が悲しそうにしておられましたぞ。お館様は自分に何もさせてくれぬと…。」

(リディア…じいに喋ったのかよ…。)

顔を顰めるエッジに、家老は話し続ける。

「お館様の母上様とて、夜間訓練の時は準備を率先して行なっておられたではないですか。それに訓練に参加せずとも、先王様に同行し、怪我人の救護や細かな雑用などを引き受けていらっしゃった…。」
「お袋はお袋、リディアはリディアだ。あいつを危ない目に遭わせるわけにいかねぇ。あの辺は昔と違って、今は夜になると凶暴なモンスターが出るんだからな。」

「…左様でございますか。今はお館様の治世、先代と同じようにはいきませぬか…。」
「そういうこった。さて、俺もそろそろ行ってくらぁ。」
「はっ、お気をつけて…。」


エッジはエブラーナ城を後にした。




そして城の北にある、山岳地帯にある陣地に着くと―――



「お館様、お待ちしておりました。」

先にそこに着いていたエブラーナ四人衆がエッジに跪き、敬礼した。

「ご苦労さん。準備は整ってるのか?」
「はっ。いつでも始められる状態にございます。」

「今日は実戦経験の浅い若手の奴らがメインだ。怪我人も出るだろう。救護も頼むぞ。」

「はい、お館様。」

(ん…?)

聞き覚えのある女性の声。


エッジが振り向くと、そこには―――





緑の長い髪を一つに纏め、女性用の装束を身に付けたリディアが立っていた。



「リディア、お前…!!」


「申し訳ございません!!!」

四人衆の声が同時に響く。

「奥方様がどうしてもとおっしゃるもので…。」

ゲッコウが代表して主君に詫びた。

エッジは大きなため息をつきながら首を垂れる。

「こいつが聞かなかったんだろ?お前らのせいじゃねぇよ。」

それを聞いたリディアは不機嫌そうに腰に手を当てた。

「そうよ、ゲッコウ達は悪くないのよ。だから怒らないであげてよね!」

リディアの一言にエッジの眉がピクリと動いた。

「偉そうな口聞くんじゃねぇ!来るなって言っただろうが!!さっさと城に帰れ!!」

夫の上から目線な言葉に、リディアはカチンときた。

「私だって救護ぐらいできるもん!!ポーションや毒消しの用意ぐらいできるわよ!!力仕事しかないなんて嘘ばっかり!!」

痛いところを突かれたエッジだったが、すぐさま切り返す。

「今日は経験の浅い若手の奴らが多くて手裏剣や飛び道具のコントロールも俺やこいつら四人衆みたいに正確じゃねぇんだぞ!お前は自分のとこに手裏剣飛んで来ても避けれるのかよ!?」
「魔法使って止められるわよ!!何度も一緒に戦ってきたのに何で今更そんなに心配されなきゃなんないの!?」

「この辺はバロンやミストよりもずっと凶暴なモンスターが出るぞ?俺達は訓練の間、もしお前が襲われても助けてやれねぇぞ?城に帰るんなら今のうちだぜ?」
「黒魔法も召喚魔法も使えるし、何とでもなるわよ!!」

「じゃあこんな寒いとこにいて、風邪引いても知らねぇぞ?俺は忙しいからお前の看病なんてしてらんねぇからな!!」
「大丈夫だもん、しっかり着込んで来てるからあったかいもん!!」

何を言っても言い返してくるリディアに、エッジは大きなため息をついた。

「ったく、この頑固女が…。勝手にしろ!!」
「言われなくてもそうするわよ。」


リディアの一言にまたカチンときたエッジだったが、部下達の手前、ぐっと抑え込んだ。


「あの、お館様…訓練を開始してもよろしいでしょうか…?」

ゲッコウの一言に、エッジはハッとした。

「ん?あぁ、悪りぃ。よし、始めるか。」
「はっ、では…。皆の者、集まれ!」


ゲッコウの合図で、訓練に参加する忍び達がエッジ達の前に集まった。

「皆の者、今宵の訓練はそなた達の強い要望に応え、お館様にも御参加頂く!貴重な機会であるゆえ、心して臨むのだぞ!!」

「ははーっ!!」


全員がエッジに向けて敬礼するのを見て、思わずリディアの背筋はピンと伸びた。


(エッジ…本当に皆から慕われているのね…。)


エッジの隣に立つリディアは、ただうっとりと彼を見つめた。出会った頃は王子らしからぬ口の悪さやいい加減な行動が目について仕方なかったのに、今やすっかり威厳のある国王なのだから。自分の前では今でもスケベなお調子者だが、結婚して以来、こういうギャップを見るたびにリディアはドキドキしてしまう。


「では全員配置につけ!!」


エッジの合図で集まった忍び達が目にも留まらぬ速さで散り散りになった。


「ツキノワ、頼む。」
「はい!」


ツキノワが笛を吹き、モンスターを呼び寄せる音色を響かせた。
その音に反応し、周りの木々からざわざわという音とともにモンスター達の気配が漂ってきた。


緊迫した空気がエッジ達を包み込む。



エッジは目を閉じ、耳を澄ませてモンスター達の気配を感じ取る。


「来るぞ!」


エッジの声と共に、モンスター達が一気に忍び達に襲い掛かった。


「放てー!!」


後方に構える忍び達から手裏剣、弓矢、くないがモンスター達に向かって放たれた。同時に接近戦を得意とする者達が刀を手にモンスター達に切りかかる。明かりがないとほとんど見えない暗闇の中、若手と言えど五感を鍛えられた忍び達は襲い掛かるモンスター達に応戦する。


「ギャオオオオオッ!!」


耳を劈くようなモンスターの断末魔の叫びが響き渡る。

「よし、仕留めたぞ!」

数人の若い忍び達が歓喜の声を上げた。

「!」

エッジは彼らを背後から襲おうとしていた別のモンスターに、素早く愛用の刀を抜いて飛び掛かり、一瞬にして切り裂いた。

「お、お館様!」
「さ、さすがでございます…!」
「お前ら、油断すんじゃねぇ!!俺を煽ててる暇があるんなら神経を集中させろ!まだモンスターは全滅してねぇぞ!!」
「は、ははっ!!」
「来るぞ!構えろ!」


若手と共に、次々と襲ってくるモンスターに応戦するエッジ。


「エッジ…すごいなぁ。」


夫の姿を陣地から眺め、惚れ惚れとしてしまうリディア。


「これは奥方様、お館様に惚れ直していらっしゃるのでは?」

リディアの言葉を聞いていたザンゲツが微笑みながら話しかける。

「えっ…あ、うん。ねぇ、この夜間訓練って、最近始まったのかしら?今まで聞いたことなかったんだけど…。」
「いえいえ、これは昔からずっとやっておりますぞ。」
「そうなのね…。エッジはあんまり自分の仕事とか、大変なことは私に全然話してくれなくって。」
「最近は我ら4人が中心になって行っておりましたゆえ、お館様が参加されるのはかなり久しぶりなのです。何かと理由をつけて参加なさらなかったのですが、奥方様との時間を大事にしたかったのでしょうな。」

笑顔でザンゲツにそう言われ、リディアは思わず頬を赤らめた。

「もう、エッジったら…。そういえばさっきゲッコウが言ってたけど、若い子たちがエッジに訓練に参加して欲しいって言ってたのよね?」
「はい。真月の戦い以降、お館様の活躍に憧れて兵士を志願する者が増えましてな。当初はお館様にご指導いただくにはまだ早すぎると言って我らで対応していたのですが、そろそろ実力も伴ってきたということでお館様に頼み込んだのでございます。最初お館様は自分はそれほどの者ではないとご謙遜なさっていたのですが、ついに若手どもに押し切られたご様子で…。」


そんな事が自分の知らないところで起こっていたなんて。エッジの事を何も知らずにいた自分が恥ずかしくなるリディア。




「エッジはどうして私にそういう事を話してくれないのかしら…。」


部下たちの前で、思わず本音をこぼすリディア。


「…分かりかねる部分はありますが、お館様は奥方様に余計な心配をかけたくないのでしょう。今日のことにしても、夜間の危険な場所での訓練ですゆえ。」
「それはそうだけど…。準備も何もさせてくれなくて。」

表情を曇らせるリディアに、ツキノワが話しかける。

「僕たちにはあんなに厳しいお館様でも、奥方様のこととなると途端に弱くなりますからねぇ。こないだなんか…」
「…お前ら、何を話している。」

ツキノワが何かを言おうとしたその時、しかめっ面のエッジがリディア達のいる場所に戻ってきていた。

「わっ、お館様!」
「おぉ、これはお館様!奥方様がお館様に惚れ直したと仰せですぞ。」

ザンゲツの言葉で、エッジの頬が何となく赤らむ。

「く、くだらねぇこと言ってねぇで訓練中の奴らを監督してやれ!お前らが無駄話してっから俺が動かなきゃなんねーんだぞ!」
「こ、これは申し訳ございません!」

そう言ってザンゲツとツキノワは飛び上がり、訓練場所を見渡せる高い木の上へと姿を消した。

「ったく、どいつもこいつも…。」

(ふふ…エッジ。)



エッジは赤らんだ頬をリディアに見られまいと、彼女に背を向けた。その姿を見たリディアは、笑みをこぼしながら思わずエッジの近くに歩み寄る。


リディアが陣地の松明に照らされたエッジの顔をよく見ると、彼は額やこめかみに汗をかいていた。

(エッジ…大丈夫かしら?)

リディアは持っていた柔らかい布でエッジの汗を拭ってやった。

「あぁ、すまねぇ…。」

エッジは目を閉じ、耳を澄ませる。周りのわずかな音に全神経を集中させ、危険にさらされている者がいないか気を張り巡らせているのだ。訓練とはいえ、モンスター達が相手であるから死傷者が出る可能性は十分にある。忍びの一族の長として、ここにいる者達全ての命を預かる責任を果たさねばならぬのだ。

「!」

エッジは遠くから聞こえるかすかな悲鳴を聞き、すぐさま木の上へ飛び上がる。場所を確認すると、木々の間を素早く飛び渡ってそこへと向かった。


「エッジ…!」








「うわぁぁぁぁっ!!」

強力なモンスターを前に、若手の忍び達が次々と倒れていく。近くにいたゲッコウとイザヨイが加勢していたが苦戦していたため、ザンゲツとツキノワも加勢する。

「くそっ…なぜここにグリーンドラゴンが…!」

ゲッコウがここには生息していないはずの強力なモンスターの存在に疑問を投げかける。

「そんな事を言っている場合ではないぞ!早く仕留めねば!」

イザヨイが素早い動きでグリードラゴンの注意を引き、ザンゲツが大凧に乗り、空中からジャンプ攻撃をする。

「放てーー!」

ツキノワの合図で他の忍び達が一斉にグリーンドラゴンに手裏剣を投げる。


「グギャァァァ!!」


攻撃を食らったグリーンドラゴンが悲痛な叫びを上げた。

「やったか…?」

目を閉じ、動きが大人しくなったグリーンドラゴンを見たゲッコウが呟いた。


訪れた静寂の中、皆が胸を撫で下ろしていると―――



「まだだ!構えろ!」


駆け付けたエッジの声が響くと同時にグリーンドラゴンが目を開け、強力な稲妻を落としてきた。

「ぐぁぁぁぁっ!!!」

稲妻を食らった忍び達が力なく倒れてゆく。

「くそっ、このままじゃ全員やられちまう…!イザヨイ!怪我人の救護を頼む!」
「はっ!」

エッジが加勢し、グリーンドラゴンに斬りかかった。かつてバブイルの塔で苦戦を強いられたモンスターであるため、一瞬の油断も許されない。


回復の術を使えるイザヨイが負傷者の救護にあたっていると、強力なモンスターの気配を感じたリディアがそこにやって来た。


「奥方様!!」
「イザヨイ!私も救護を手伝うわ!」

リディアは持ってきたハイポーションを使って怪我人の救護を始めた。


「ねぇ、イザヨイ…。」
「はい?」
「夜間訓練って、いつもこんなに激しいの…?」
「いえ…普段はもっと穏やかです。今夜は何故かあのグリーンドラゴンが現れたもので…。」


かつてバブイルの塔でエッジと共にグリーンドラゴンと戦ったことのあるリディアは、その恐ろしさを知っていた。


エッジの投げた手裏剣はグリーンドラゴンの背中に命中した。痛みで素早さが半減したところを目掛けて、エッジは単身至近距離から何度もグリーンドラゴンの急所目掛けて斬りかかり、その近くに刀を突き刺すことに成功した。しかし痛みに我を失ったモンスターの鋭利な爪で反撃を喰らい、エッジは胸から腹にかけて深い傷を追い、巨大な尻尾で叩き飛ばされた。

「ぬがぁぁぁっ!!」
「エッジ!!」


リディアはグリーンドラゴンに向けてフレアの詠唱を始めた。

「リディア、手を出すんじゃねぇ!!」

傷を負いつつも再びモンスターに飛びかかり、刀を振りかざすエッジの声で、リディアは詠唱を止めた。

「ど、どうして…!?」
「これは訓練だぞ!お前が仕留めちまったら、こいつらのためにならねぇだろうが!!」
「で、でも…!!」

「奥方様、お館様のおっしゃる通りです。どうかここは堪えて救護に専念して下さいませ。」

イザヨイが頭を下げた。


「…分かったわ。」

リディアは気が気でないまま、再び救護活動を始めた。

(エッジ…死んじゃいや…!!!)



救護を受け、回復した忍び達は、次第に反撃を始めていった。彼らの刀が強靭なグリーンドラゴンの皮膚を切り裂いていき、そこに投げた手裏剣やくないが確実に深手となり、モンスターの苦しみの声が響き渡る。


「皆の者、もう少しだ!堪えよ!」

ゲッコウの声が響き、忍び達の士気を高める。エッジは自分の傷を庇いながらもう一本の刀でグリーンドラゴンに立ち向かった。





「喰らえーっ!!」

若手の忍びが空中からグリーンドラゴンの首に向かってくないを投げた。


しかしそれは命中せず、グリーンドラゴンの脇をすり抜け、救護活動中のリディアの方向へと向かっていく。


「奥方様!!」


イザヨイがリディアに呼びかけるが、リディアが気付いた時にはもう逃げられないところまでくないが飛んで来ていた。


(あぁっ、もうダメ…!!!)




目を強く瞑り、激痛を覚悟した。








ドスッ…








(…?あれ、痛くない…?)



くないが刺さる音がしたのに、と不思議に思いながらリディアが思わず瞑った目を開けると…




「くっ…!」






リディアの目に映ったのは、自分を庇い、肩にくないが刺さったエッジだった。



「いやぁぁぁぁっ、エッジ!!!」
「リディア…大…丈夫か…?」



精悍な顔を歪めながらリディアを見つめるエッジ。


エッジが肩に刺さったくないを抜くと、そこからは血がどくどくと流れ出した。先程の傷のダメージもあり、エッジはその場に倒れこんだ。


「お館様!」


イザヨイが駆け寄り、回復の術の詠唱を始めた。

「イザヨイ、俺は大丈夫だ…早くあのグリーンドラゴンを仕留めろ!でないと皆やられちまうぞ…。」
「し、しかし…!」
「こいつが持ってるハイポーションがあるから心配すんな…。」


リディアはハッと我に返り、持ってきた袋の中を探る。

「あぁ、もうハイポーションがない…。エッジ、待ってて!確かすぐそこに予備のハイポーションが置いてあったはずだから取ってくるわ!」


リディアは立ち上がり、自分の数メートル斜め後ろにある木を目指して走り出した。するとイザヨイがハッとする。


「奥方様、お待ち下さい!!その辺りには訓練用の落とし穴が…!!!」



「えっ…!?」



リディアが返事した時はすでに彼女の足元は崩れていた。身体が宙に浮き、あっという間に暗闇に包まれていく。


「きゃああああーーーーっ!!」
「奥方様ーーーー!!!」























瞼越しに、柔らかな光を感じた。





(あれ、何でこんなに明るいの…?)



ゆっくりと目を開けると、もう朝だった。エッジがリディアの顔を覗き込んでいる。


「リディア…!」
「奥方様、気が付かれましたか!」

リディアが見渡すと、そこは寝室で、家老と四人衆、数人の若手の忍びの姿も見えた。



「あれ…私…?」

「申し訳ございません!!私が奥方様に落とし穴の場所をお伝えしていなかったばかりに…!!」
「私こそ、自分の未熟さが原因でお館様にお怪我を負わせ、奥方様をこのような目に合わせてしまい、お詫びの言葉もございません!!」


イザヨイとくないを投げた若手の忍びがリディアに頭を下げて詫びる。




「…リディア、覚えてるか?俺にハイポーションを取ってこようとしてお前は落とし穴に落ちて気を失ってたんだ。」


エッジに言われて思い出し、起き上がって彼の腕を掴むリディア。

「エッジ、怪我は大丈夫なの!?」
「…俺は大丈夫だ。イザヨイが治療してくれたからな。」


「おかげさまでグリーンドラゴンを仕留めることができましたよ。奥方様の救護、心より御礼申し上げます。」

若手の忍び達がリディアに礼を言うと、エッジが顔を顰めた。


「礼には及ばねぇ。こいつは俺の言うことを聞かずに勝手について来て、勝手に落とし穴に落ちてお前らに迷惑かけたんだからな。」


エッジの言葉に、リディアはビクッとして身体から血の気が引くような感覚に襲われた。


「お、お館様!そのような言い方、ひどすぎでは…!」
「そうですよ!奥方様がいらっしゃらなかったら救護の手が回らなかったのですよ!」

ゲッコウとツキノワが宥めようとするが、エッジの顔はますます険しくなった。



次の瞬間、パンッという音と共に、リディアの頬に痛みが走った。



「痛っ…!」
「お、お館様!!」


「…こいつはこれぐらいしねぇと分からねぇんだ!」


王妃に対する国王の叱責に、その場にいた全員が凍り付いた。



「イザヨイ。」
「…はっ!」
「戦いながらの救護、ご苦労だった。次回も大変だろうが、よろしく頼むぞ。」
「…身に余る光栄にございます。」

「グレン。」
「ははっ!」
「俺に詫びる暇があったら訓練しろ。正確に敵を仕留められるようになることが俺の怪我への償いだと思え。」
「も、もったいなきお言葉…!!」


「ゲッコウ、ザンゲツ、ツキノワ、お前達もご苦労だった。お前らもそこにいる奴らも昨夜は寝てねぇんだから、今日は休息しろ。」

「しかしお館様とて昨夜は一睡もしておられませぬ。我らだけ休息するなど…。」
「俺は大丈夫だ。これからこいつを説教しねぇといけねぇからな。」


ゲッコウの言葉に対して、エッジはそう言いながら険しい表情でリディアをの腕を掴んだまま、彼女をチラリと見た。

「お、お館様…何卒奥方様にはご温情を…。」

リディアの本音を聞いていたザンゲツが精一杯エッジに訴えかけた。


「…ご苦労だった、下がってくれ。」


エッジがそう言うと、家老が目配せをし、全員寝室を出た。





「さて…。」



エッジはリディアを睨みながら口布を下ろした。彼の震える拳を見たリディアは、どんな叱責を受けるのかと身を竦めながらビクビクとしている。



「…お前は勝手な事して皆に迷惑かけやがって…!!!」



いつもより低いエッジの声がリディアの耳に響き、堪えていた涙が翡翠色の瞳からこぼれ出した。すると次の瞬間―――



「エッジ…?」



リディアの身体はふわりとエッジの体温に包まれていた。

「お前は何で人のことばっかり気にして、自分の心配できねぇんだよ…!?」

リディアを抱きしめながら耳元でそう言うエッジの声は震えていた。


自然とリディアの腕が、エッジの背中に回る。





「エッジ……ごめんなさい。でも私、どうしてもエッジの力になりたくって…。」
「そんな気遣いいらねぇんだよ!お前は何も心配しなくていいんだ!そんなことよりお前に何かあったら、俺は…」


「私だって…!私だってエッジに何かあったら嫌よ!もう1人で危険なこと背負っちゃ嫌って言ったじゃない!なのに昨日、エッジはまた1人で無茶なことして怪我したじゃない…。」

そう言ってリディアはエッジの胸とお腹に手をそっと当てる。



「…俺がああしなきゃ、あの場にいた全員生きて帰って来れなかったかもしんねぇぞ?」
「…。」

「それに、お前が来てなかったら俺は肩に怪我を負うことはなかったんだぞ?何かあっても自分でどうにかするって言っておいて、できなかったじゃねぇか。」
「なっ…!」


何て意地の悪い一言だろう、間違いなくリディアは心を痛めるだろうに。エッジはそう思いつつもリディアを説き伏せるため、敢えて口にした。




紛れもない事実に、俯くリディア。






「…どうして?」
「え?」
「エッジは私のこと理解して何でも合わせてくれるのに、どうして逆はいけないの?」
「…。」

「エッジのこと、もっとちゃんと知りたいよ…。」
「…お前はもう俺の事、十分知ってるじゃねぇか。」
「知らないもん!昨日私の知らないエッジがいっぱいだったもん!少しぐらいエッジが背負ってるもの、私に分けてよ!」



リディアの言い方は感情的で、棘があった。だがエッジは心の中の一国を背負う者として避けられない重苦しさが消えていくような気がした。今やもう自分は独り身ではなく、自分を心配し、苦楽を共にしようとしてくれる愛しい妻がいるのだから。



「…私、そんなにエッジの奥さんとして頼りないの?」
「よく言うぜ。俺の事ばっちり尻に敷いてるくせによ…。」
「じゃあどうしてなのよ!!」



やり切れない思いと共に、リディアの翡翠色の瞳から一旦止まっていた涙が再び溢れ出す。




"もうこれ以上死んじゃうのは嫌よぉっ!!"



リディアの涙が、初めて出会ったあの時のことをエッジに思い出させる。



こいつのためなら、何でもしてやりたい。


望むようにさせてやりたい。









(そうか…簡単なことじゃねぇか。)











「…っとに、お前は何を言っても聞かねぇんだな。」
「何よ…。」


エッジは大きく息をつく。

「…ツキノワの言ってた通り、お前がいなかったら救護の手は回らなかった。それにお前が俺の汗を拭いてくれた時、すげぇ嬉しかった。もう俺にはこうしてそばにいてくれる嫁さんがいるんだからな。」

「…うん。」

「ありがとな、リディア。」

急にエッジに感謝され、リディアが照れ臭くなって視線を逸らすと、エッジは彼女の両肩をそっと掴む。


「…次回の訓練の時は、準備するの手伝ってくれるか?」



その言葉と一緒に、肩から伝わってくるエッジの体温がリディアの胸のやきもきした気持ちを晴らしてゆく。



「エッジ…。うん!!」


満面の笑みを浮かべるリディアを見て、エッジは穏やかな表情を浮かべて頷いた。




「ただし、だ。」

リディアは急に真顔になったエッジにビクッとする。




「訓練の場所には来るんじゃねぇ。城の出口で俺を見送ってくれ。」






しばしの静寂。





リディアの表情は、明らかに何か考えている様子。エッジはリディアがどう反応するかとドキドキしながら彼女を見つめていると…






「…はい。」



リディアの身体が、再びエッジの体温にふんわりと包まれる。

「ありがとな、リディア。」

リディアの頬にちゅっとするエッジ。

「…エッジのバカ。」
「ちゃんとお前の意思を汲んでやったんだぞ~?感謝しろよ?」
「何よ、こっちだってエッジに怪我させちゃったし妥協したんだからね!」
「…っとに口の減らねぇ奴だな。」



リディアの顔を見ると、不満げながらも明らかに先程よりかは落ち着いた表情。




「リディア…俺はお前が俺のことを気にかけてくれるだけで幸せなんだぜ?これ以上のもんをもらったら、俺バチが当たっちまうよ…。」
「…何言ってるのよ。私が訓練の場所にいないからって、無謀な事するんじゃないわよ?」


厳しい一言に、苦笑するエッジ。

(俺、完全に尻に敷かれてんなぁ…。)



こうやって素直に相手への気持ちを伝えれば、ぶつかることもなかっただろうに。リディアを大事に想っていたとはいえ、高圧的になってしまった自分は幼かったかと思うエッジだった。



「エッジ。」
「ん?」
「私、すごく嬉しいの…。」
「…そうか。」


「これで少しはエッジの奥さんらしくなれるかな?」



自分のために何かしたいと必死になってくれたリディアの言葉に、エッジは照れ臭くなる。


「お前は最初から俺の嫁さんだってーの。」


エッジが目を少し逸らしてそう言うと、リディアの唇がエッジのものと重なった。

「!!」
「ありがとう、エッジ…。」
「ん…ありがとな、リディア。」


エッジは自分の胸に顔を埋めてきたリディアをぎゅっと抱きしめた。




何かあったら、一緒に乗り越えて行くのが夫婦。辛いことは全部自分が背負えばいいと思っていたエッジだったが、その言葉の意味が、何となく分かったような気がした。




エッジの思惑を感じ取ったのか、リディアが顔を上げてにっこりと微笑んだ。


(くそ~、こいつはマジで小悪魔だぜ…。)


普段は冷静さと闘志を併せ持つ忍びの長も、ベタ惚れの妻には敵わない。


そしてふと、エッジは自分の身体が汗で汚れ切っていることを思い出した。

「リディア、俺は風呂に入ってくらぁ。昨日入ってねぇからな。」

「あ…私もお風呂入ってないや。」
「ん…あぁそうか。ならお前は先に入って来いよ。俺は後から入るからよ。」


それを聞いたリディアは、何やらもじもじしだした。


「…あの、エッジ。」
「あ?」

「よかったら…」


















「む、あれは…!」

ザンゲツの声で、ゲッコウ、イザヨイ、ツキノワが振り向く。

「どうした?」
「あれを…!」

エブラーナ四人衆の視線の先には…





「お館様と奥方様が…!」

「何だかんだ言って、2人は仲良しですねぇ~。」




四人衆に見られているとはつゆ知らず、2人仲良く地下にある王族用の風呂に向かうエッジとリディアだった。







「リディア…入るか?」
「うん…。」


服を脱いだ2人は、寄り添いながら湯気の中へと歩いて行った。





喧嘩して、危険な野外訓練を終えてまた喧嘩して絆を深めた2人の疲れを癒したのは、甘い甘~い朝のバスタイム…。




―完―

Comment:0  Trackback:0
2014
05.12

「愛しくて…」 あとがき

Category: あとがき
今回もリディア好き好きなエッジに仕上がりました


そしてエロ続きになってしまいまして、健全なエジリディ好きの方、ほんっとすいません


この生理からの…ってパターン、書いてみたかったんですそして実は割と前から出来上がってたという、管理人の品位が疑われる事実ですね



今回もお読みいただき、ありがとうございました
Comment:0  Trackback:0
2014
05.12

「愛しくて…」 ★

TA後エジリディSS第9弾、前回の「Before Her Period」の続きです。またしてもエロ有りです。ご注意下さいf^_^;






「愛しくて…」








「あぁ…やっぱり。調子悪いなぁと思ってたのよ…。」



声の主はトイレで俯くリディア。昨夜あたりからお腹が痛くなり始め、身体もしんどかった。今日はエッジが仕事で早朝から城を留守にしているため、頼まれている仕事がいくつかあったのだが、捗らず、痛みがひどくなりだしたので、トイレに行ったところ月のものが来ていたのだ。


(はぁ…仕事終わらせられるかなぁ。)




「しょうがないよね…。こんな事で弱音吐いてちゃ、エッジを困らせちゃうわ。」


そう言って、執務室に戻るリディア。


自分の椅子に座り、書類と向かいあう。しかし徐々に集中力はなくなり、文字を書こうとすると頭痛がしてくる。

(うーん…しんどい…。)

腹痛もひどくなり、顔色も悪くなっていく。

「奥方様、どこか具合でも悪いのですか?」

異変に気付いた家臣の1人がリディアに声をかける。

「い、いえ…大丈夫よ。」
「そ、そうですか…。先程から顔色が悪いなぁと思っていたもので。ご無理はなさらないで下さいね。」
「うん、ありがとう。」


(あぁ、エッジがいてくれたらなぁ…。)


気分転換にお茶を飲んだり、城内の回廊を歩いたりしてみるが、あまり効果がない。何とか午前中の仕事は終えたが、まだ午後も仕事がある。


昼食もあまり食べられず、午前の疲れからか、身体が重たくなってきた。


(はぁ…横になりたいなぁ。けどもう仕事始めなきゃ…。)


ひどくなる生理の症状と戦いながら、執務室へと歩く。


「うっ…。」


急に身体がずんと重たくなり、吐き気がしてきた。リディアはその場にうずくまってしまう。呼吸が浅くなって脈が速くなり、息が苦しい。はぁはぁと言いながら立ち上がろうとするが、身体が言うことを聞かない。


「はぁっ…エッジ…助けてぇっ…!」


そう言ってリディアは倒れこんでしまった。


そこを家老が通りかかった。


「奥方様!奥方様、大丈夫ですか!?…誰か!誰かおらぬか!」


イザヨイと数人の侍女達が現れ、リディアを寝室まで運ぶ。





数時間後―――





すっかり日が暮れたころ、寝室のベッドで休んでいたリディアはようやく回復し、身体を起こした。そこへイザヨイが現れる。


「奥方様、大事ありませぬか!?」
「うん、だいぶ良くなったわ。ありがとうね。」
「それは何よりでございます。…あの、奥方様…御家老がおめでたではないかと騒いでいらっしゃるのですが…。」

「!!違うの!あの…生理で…。」
「あ…そ、そうですか…。あれは辛いですものね…。」
「…ね。女にしか分からない辛さよね。今日はエッジがいなくて、家臣達にも言えなくって…。」
「お察し致します。…では、御家老への報告はいかが致しましょう?私がお伝えすることもできますが…。」

「うーん…大丈夫、私から直接言うわ。」
「承知致しました。では何かあれば私めをお呼び下さいませ。」
「ありがとう、イザヨイ。」

イザヨイが部屋を出た後、リディアはふーっと息を着く。



「おめでた、かぁ…。」




プロポーズされた時、エッジからは自分達の子供ができずとも、世継ぎはどうにでもなるから心配するなと言われていた。結婚した今でも、エッジがリディアにその事でプレッシャーをかけてくることはない。それどころか、とても大事にしてくれる。リディアはそんなエッジが愛しくてたまらない。


「エッジ…もうすぐ帰ってくるかなぁ。」



リディアがベッドから出ようとした時、寝室のドアが開く音がした。

「リディア~!!!」

仕事から帰ってきたエッジだった。家臣からリディアの事を聞き、すっ飛んで来たのだ。



「エッジ!おかえり!」
「おかえりじゃねーよ!お前が倒れたって聞いてこちとら心臓が止まるかと思ったんだぞ!!」
「あ…ごめんねエッジ。」

「謝らなくていいっての。で、一体どうしたんだ?」
「あ、その…生理で…。」
「そうか、今日来ちまったのか。」

「うん…。だからエッジに頼まれてた仕事、全部できてなくて…。」
「んなもん気にすんな。後は俺がやるからよ?」

「エッジ…ありがとう。」

リディアはたまらずエッジに抱きつく。愛する夫の腕の中は、とても落ち着くリディアの大好きな場所。ずっとこうしていたい―――と思っていたその時。


「お館様!!」
「!?」
「おおぅ、何だよじい!ノックぐらいしろよ!」


家老が寝室に入って来た。


「あぁっ、失礼致しました!…で、奥方様のお加減はいかがで?」
「うん、休んだおかげで良くなったわ。心配かけてごめんね。」

家老は胸を撫で下ろす。

「それを聞いて安堵いたしました。ところで、その…今後の安産の祈祷や腹帯などは…いかが致しましょう…?」

「!!!」
「はぁ?安産?何の話だ?」
「いや、何、その…奥方様が悪阻ではないかと…。」

「悪阻って…。じい、何を勘違いしてんだよ?」
「ち、違うのですか…?」
「…あぁ。月のもんで具合が悪かったんだよ。」


家老はそれを聞いてうなだれた。


「あぁ…ついにお世継ぎができたかと思うたのに。これは大変失礼致しました…。」


家老が寝室を後にする。エッジはため息しか出ない。


「ったく…じいは世継ぎ世継ぎってうるせえんだよ…。」
「…エッジ、私…」


リディアが何か言おうとしたが、エッジが遮る。

「リディア、気にしなくていいんだからな。」
「え…?」

「世継ぎのことだよ。じいみたいにあんな事をいう奴もいるけど、何も気にする事はねぇぞ?プレッシャーかけてくるような事を言う奴がいたら、俺に言え。何とかしてやるから。」


エッジの優しい言葉にリディアは胸が熱くなる。


「うん…ありがとうエッジ。…大好きよ。」


それを聞いたエッジは顔が赤くなり、普段は精悍な顔立ちの口元が緩んで何ともマヌケな顔になる。


「あぁ…リディア、愛してるぜ。」
「うふふ。」

2人は再び抱き合い、口づけを交わす。







その夜、執務を手早く終わらせ、風呂から上がったエッジは、寝室へと急ぐ。


「リディア。」
「ん…エッジ。お風呂早かったわね。」


リディアは先にシャワーだけ浴びて、寝室のベッドに腰掛け、休息していた。


「調子はどうだ?腹痛てぇか?」
「うん…。腰の辺りも痛いな。」
「そうか。」

そう言ってエッジはリディアの隣に座って腰を抱いてやり、リディアの下腹部を優しく撫で始めた。

「エッジ…。」
「冷えると良くねぇんだろ?ちゃんとあっためねぇと。」
「うん…。あったかくて、気持ちいい。」

エッジのおかげで、心も身体もぽかぽかしてくる。ほっこりとしたリディアは、エッジの肩に寄りかかって甘える。


「…っとに、お前は可愛いやつだよなぁ。んなことしたら、とって食っちまうぞ?」
「うふふ。」

エッジはリディアの頬にキスした。


(エッジ…優しいなぁ。結婚してからも、結局いつもしてもらってばっかり…。)


リディアはエッジと結婚し、彼のために何かしたい、10年以上も自分が甘えた分、これからは甘えてもらいたいと思っていた。だが現実はエッジに頼ってばかり。エッジはリディアに甘えてもらうのはこの上なく嬉しかったが、リディアは何とかしてお返しがしたい。


(今日は生理でできないし…。代わりの方法でも、エッジは喜ぶかな?)


リディアは恥ずかしいと思いながらも話を切り出す。


「エッジ…。」
「あ?」
「ごめんね、今日…なっちゃったし、その…エッジがいっぱい優しくしてくれてるのに、何もできなくて…。」

エッジはくっと笑いを堪える。

「謝るとこじゃねぇだろ。それより、今日は早く寝た方がいいんじゃねぇか?」

「…エッジ、疲れてる?」
「いや、俺は平気だけどよ…。お前はゆっくり寝た方がいいかなと思って。」


(うーん…。聞いてみるのは別に構わないよね?)


「あのね…私、エッジにしてあげたいことがあるの!その…あの…。」

「ん?何してくれるんだ?お礼のチューか?」
「そ、それもなんだけど…えっと…。」
「ん?何だよ?」



「…いつもとは違う方法なんだけど、エッジを気持ち良くしてあげたいの。」


「うん…んっ??」


エッジはリディアの言ったことがすぐに理解できなかった…いや、都合のいいように解釈していいものか判断がつかなかった。



(それって…もしかして…あれか!?リディアがしてくれるのか?いやいや、待てよ。俺が勘違いしてる?)



大いなる期待と疑惑を抱いたエッジは、リディアを見てどう返せばいいのかしばし悩んでみた。



「えーっと…リディア、それってもしかして…。」

リディアは頬を赤らめて、エッジを見つめる。

「…ダメ?」
「いや、あの…お前が言ってるのって…その…こ、ここで…?」

エッジはリディアの唇に軽く指を当てた。

「うん…。今までしたことないから、上手くできるか分からないんだけど、ほとんどの男の人は嫌がらないって言うし…。」



(間違いねぇ…!!!)




切れ長の目を大きく見開いたエッジの下半身が疼き出した。幾度となく身を重ねてきたが、エッジはリディアが嫌がると思い、それをしてくれと頼んだことがなかったのだ。


「リディア…ほ、本当にしてくれるのか…?」
「うん。エッジは嫌じゃないの?」
「全っ然嫌じゃねーぞ!」


「よかった…。じゃあ、あの…。」

そう言ってリディアはエッジのズボンの端をきゅっと掴む。


「お、おぅ!ちょっと待ってくれ。」


そう言うとエッジは立ち上がり、腰の紐を外し、寝間着のズボンを脱ぐ。そして下着も脱ごうとすると…


「あ、待って。…脱がせてあげる。」


(マ、マジかよ…!?)


リディアの一言はエッジにしたら大興奮ものだったが、あくまで平静を装う。


「そ、そうか?なら頼む…。」


リディアはエッジの下着に手をかけ、脱がせ始める。すると先程からそそり立っているエッジのモノが引っかかる。

「やだ…エッジったら。」

そう言ってふっと微笑むリディアの顔は、艶かしい女のものだった。引っかかった部分を外して下着をするすると下ろす。


(そんなエロい顔…勘弁してくれよ…。)


そそり立つエッジのモノは、今にも破裂しそうなほど膨らんでいる。エッジがベッドの真ん中に座り、膝を立てて脚を開くと、リディアがそこに入り込んで来た。

「じゃあ、エッジ…痛かったりしたら言ってね?」
「あぁ…。」

リディアの顔が自分のモノに近付いて来て、エッジは心臓が飛び出そうになる。するとリディアの唇がそっと先端部分に触れる。


ちゅっ、ちゅっ…


(おおおおおお…!!!)


小鳥のようなキスに、エッジはゾクゾクとした。


ちゅっちゅっ、ぺろっ、ぺろぺろっ……


「あぁ…。」

リディアは先端部分にキスをして、括れた部分を舐めた。エッジは思わず声を出す。


(リディアがこんな事してくれるなんて…。)


愛しい妻が、自分の股ぐらに顔を埋めて脚の間にあるモノを舐めている。エッジはそんなリディアが愛おしくて、髪を優しく撫でてやった。するとリディアが舐めながらちらりと上目遣いでエッジを見る。その姿がいやらしくて、エッジはますます興奮した。


(こ、こいつ…エロい!!)


リディアは先端を大きなキャンディを舐めるように口に含んだり、裏側の筋に沿って根元から括れに舌を這わせたり、横から咥えたりと、多彩な方法でエッジを慈しむ。ぎこちないが、それが逆にエッジを興奮させた。


「あぁ、リディア…すげー気持ちいいぜ…。」
「本当?嬉しいな。」
「口だけじゃなくて、手も使ってくれたら、もっと気持ち良くなれるんだけどよ…。」
「え~?どうやるの?」
「こうやって、手で握って上下にしごきながら先っぽ舐めたり、吸い上げてくれよ。」
「んー…やってみる。」


リディアはエッジに教えられた通り、手でエッジのモノを握ってしごき、先端を口に含み、そこを舌でつついたり吸い上げたりする。


「くはぁ…リディア、すんげーいいぜ…。」


(エッジが喜んでくれてる。嬉しい…。)


普段は自分が喘ぎ声を発するばかりで、エッジがこんなに気持ちいいと声を出すことはあまりないため、リディアはエッジを気持ち良くしてあげているのが嬉しかった。リディアは一心不乱にエッジのモノを慈しみ続ける。



ちゅぱっ、ちゅぱちゅぱ…



リディアはしごくスピードを上げて先端部分を口に含んでは出したりして、さらに強く吸い上げる。

「うっ…。」

エッジは快感のあまり、気を抜くと思いっきり発射してしまいそうになった。

「エッジ、痛いの?ごめんね。」
「いや、違うんだ。あまりに気持ち良くって。もっとしてくれよ…。」
「うん…。」

リディアは再びエッジの足の間に顔を埋め、ちゅぱちゅぱと音を立てる。

(くぅっ…たまんねぇ…。)


ついにエッジの身体の奥から熱いものが湧き上がってきた。エッジはそのまま絶頂へと昇りつめて行く。

「あっ…リディア…出るぞっ!」
「んっ!?」

エッジは思わず、先端を口に含んでいるリディアの頭を手で両脇から押さえた。

「そのまま先っぽ口に入れててくれっ…!くぁっ…!!!」


エッジは軽く痙攣しながら、何度も生暖かいものをリディアの口腔内に放出した。


(ん~、変わった味…。)


「はぁ…すげぇ気持ち良かったぁ…。ほれリディア、これに口の中のもん出せよ。」


放出し終わったエッジはそう言って、ティッシュを数枚リディアに取ってやった。するとリディアの喉がゴクリと動く。


「!リディア、お前…!」
「…飲んじゃった。」
「あ…そ、そうか…はは…。」

エッジが苦笑しながら自分の下着を取ろうとすると…

「あ、エッジ待って。」

そう言うとリディアはまたエッジの股ぐらに顔を埋めて、萎みつつあるエッジのモノをしごきながら先端を吸い上げ、じゅるっとその内部に残る精を抜いた。

「ぬおっ…!あぁ…!」


リディアの行為で、エッジは腰の力が抜けた。


「はぁっ…エッジ、気持ち良かった?」
「あぁ、めちゃくちゃ気持ち良かったぜ。お前がまさかこんな事してくれるなんてなぁ…。」
「良かったぁ~!」

笑顔になるリディア。下着とズボンを履いたエッジがリディアを抱き寄せる。

「ったく、どこでこんな技を身に付けて来たんだか…。お前も好きなんだなぁ。」
「別に好きなわけじゃないわよ。ただエッジに喜んでほしかっただけだもん。」
「いやぁ、こんなにお前がエロいとはなぁ。これからは淫乱王妃と呼ばせてもらおうか。」
「淫乱じゃないもん!そんな事言ったらもうしてあげないから!」
「何だよ~、そんな事言わずにこれからもしてくれよ。」
「このエロ忍者!」

リディアがエッジを腕で叩こうすると、エッジはひょいっとリディアの腕を掴み、リディアに口づけした。


(ん~!!悔しいけど気持ちいい…。)


エッジが唇を離すと、リディアは唇をへの字に結び、不機嫌そうにエッジを見つめていた。するとその顔をじっと見ていたエッジがプッと吹き出した。


「何よぉ。」
「いや、可愛いなぁと思って。」


(もう…何やってもこうやって片付けられちゃう。)


笑顔で見つめられたリディアはだんだん恥ずかしくなり、頬をぽっと赤らめて少し下を向いた。

「こっち見ろよ。…お前の可愛い顔、見せてくれ。」

エッジに少し低めの声で囁かれ、リディアはドキドキした。目線を上げると、そこには自分をじっと見つめるエッジ。彼の深い目の色は、リディアの華奢な身体も心も、全て吸い込んでしまいそうだった。


「リディア、俺を見てくれ。…俺だけを見てくれ。」


さりげないエッジの言葉に、リディアの胸は高鳴るばかり。リディアがじっとエッジを見つめていると…



ちゅっ。

(あぁ…。)


柔らかくって、温かいエッジの唇。甘くて優しい口づけに、リディアは身体が蕩けそうだった。



このまま離さないで―――




リディアは自然にエッジの背中に腕を回してしがみつく。エッジはリディアのお腹や腰を温めてやろうと、自分のお腹をリディアのそれにぴったりと密着させ、腰を優しく撫でた。彼の心地よい体温と鼓動を感じ、リディアは生理の痛みなどもう感じなかった。





この人となら、何があっても大丈夫―――





そんな安心感がリディアの中に過った。


しばし抱き合った後、エッジはリディアの髪を撫でてやり、優しく微笑んだ。リディアもにっこり微笑むと、2人の唇は再び自然に重なった。すると仕事の疲れと事後の疲労感が重なり、急に睡魔がエッジを襲ってきた。


「あぁ、やべぇ…眠い…もう寝るか?」
「うん!」


布団に入った後も、エッジはリディアの腰周りを撫でていた。


「エッジ、ありがとう。もう痛くないよ…。」
「そうか、そりゃ良かった。」


(リディア、次もしてくれっかな…。)
(エッジ、来月も優しくしてくれたらいいな…。)



リディアの髪を撫でながら、彼女のおでこにちゅっとするエッジ。お互いに次回への期待を膨らませながら布団の中で温め合い、エブラーナ国王夫妻は夢の世界へと落ちていった。






―完―

Comment:0  Trackback:0
2014
05.07

「Before Her Period」 あとがき

Category: あとがき
どうあってもリディアが大好きなお館様を書いてみたわけなんですが、いかがだったでしょうか?もっとコンパクトな内容にするつもりだったのですが、意外に長くなってしまいました…。


女性がどうしようもない理由で機嫌が悪くなっちゃって喧嘩になる、という夫婦・カップルの話をヒントに今回のストーリーが出来上がったんですけど、きっとエッジなら理解して受け入れてくれそうだなぁという私のイメージが大きく反映された感じですね。



よく見たら、寝室でのエッジの登場の仕方が完全に志村けんの変なおじさんコントとかぶってるやん…と書いた後で気付いた管理人です(笑)関西人は無意識にお笑い要素を入れたくなる習性があるってことなんですよ♪(←はい、言い訳です)


ここまで読んでいただき、ありがとうございました(^^)またのご来訪、お待ちしております。
Comment:2  Trackback:0
2014
05.07

「Before Her Period」 ★

TA後エジリディSS第8弾です☆前回の「Full Moon in Late Autumn」ではリディアが好きすぎて情けない姿を見せてしまったエッジでしたが、今回はリディアへの深い愛をもって汚名挽回(?)です。エロありですのでお気を付け下さい!





「Before Her Period」













「エッジのバカッ!!大っ嫌い!!」

エブラーナ城の一角で、王妃リディアの声が響いた。

「す、すまねぇリディア…俺が悪かった。許してくれよ~。」


その声を聞いていた家臣や侍女達は、リディアの大声には驚いたものの、どうせまたお館様が何かしでかしたのだろうという感じで流していた。

「うっ、うっ…私急いでたのに…。」

リディアが泣き出したので、エッジは優しく抱きしめてやる。

「ごめんな、リディア…。すまねぇ。」

エッジは詫びながら、リディアの柔らかな緑の髪を撫でてやった。


(あー…そういや確か今月もそろそろだな…。)

自分の胸の中でぐずる妻を宥めながら、エッジはあることに気付いた。


朗らかな性格のリディアだが、月に1度のことが近くなると、ちょっとした事でイライラしたり落ち込んだりしてしまう。家臣や侍女相手には当たり散らしたりしないのだが、相手がエッジとなると気が緩んで先程のように容赦無く怒鳴ったり泣いたりするのだ。


結婚前も時々そういう事があり、最初は何が何だか分からないエッジだったが、長い付き合いの中でリディアが女性として避けられない現象なのだということを理解していった。


詫びながらリディアを抱きしめ、背中をポンポンと優しく叩いてやるエッジ。こうすれば彼女のイライラが治まるのだ。


泣き止んだリディアがエッジの胸から顔を離した。そこを見計らって、エッジはリディアのおでこと頬にちゅっとする。

「リディア、ごめんな。俺が悪かった。」
「…うん。」

(ふぅ…やっと治まったか。)


原因は何かと言うと、エッジがさっき城内の通路でリディアとすれ違う時に、うっかり彼女の着ている丈の長いローブの裾を踏んでしまい、ふらつかせてしまったのだ。急いでいるところを邪魔され、しかも相手がエッジだったために爆発してしまった…というわけである。


「エッジ、私急いでるから…。」
「ん?あぁ、そうか。」

夫に宥められ、イライラが治まったリディアは走り去って行った。

(はぁ~、男にゃ分からねぇなぁ…。)

男性には理解し難い女性特有の現象。しかしそれも愛する妻の一部。

(リディア、俺はお前の旦那だからな。)

リディアの後ろ姿を見ながら心の中でそう呟き、妻の生理現象を受け入れている自分を誇らしく思うエッジだった。




昼食後。



リディアは執務室でエッジの仕事を手伝っていた。

「エッジ、その書類取って。」
「ん?これか?ほれ。」




「ねぇエッジ、この文章の意味分かんない。」
「あ?どれだよ?」
「ここ。どういう意味?」
「あぁ、これは…。」

「…ふーん、そういう意味かぁ。」





「ちょっと、こんなとこに湯呑み置かないでよ!ここに読み終わったやつ並べていこうと思ってたのに…。」

たまたま今日は執務室に誰も家臣がおらず、気を遣う必要がないため、リディアは生理前のイライラを次々と露わにする。

「あぁ、すまねぇ。あっちに置くよ。ごめんな。」

(うーん、俺の方が立場上なんだけどなぁ…。)

逆に自分がリディアの仕事を手伝っている状態である。完全に尻に敷かれるエッジは内心苦笑するが、妻の機嫌が悪くならないように気を遣う。



(こりゃ一発仕返ししねぇとな…。)



ご機嫌斜めの妻に八つ当たりされた時のストレス対処法について、既婚男性の大先輩であるセシルからとある助言をもらっていたことを思い出すエッジ。






そして夜。




エッジは仕事もそこそこに済ませ、風呂に入るといそいそと寝室に向かった。

「リディア~。」

妻がいるかと思い、呼んでみたがいなかった。









約1時間後。


風呂から上がったリディアが寝室へとやって来た。明かりを点け、ベッドに腰掛ける。

(ふぅ…なんかすごく疲れちゃった。生理近いしなぁ…。)

昼間夫に当り散らしたことは自覚していないリディア。

脚がむくみがちなのでストレッチして、うつ伏せになって脚を上げたり下げたりする。何となく気分が落ち着かず、枕を抱いてコロコロとベッドの上を転がる。自分が寝ているベッドから、くっつけてあるエッジのベッドへと転がり、そしてまた自分のベッドに戻る。


(エッジ何時に来るか分かんないし、もう寝ちゃおう。)



そう思い、何となくエッジのベッドの方を見ると…


「きゃああああっ!!!」




エッジがニヤニヤしながらリディアの目の前に寝転んでいた。

「エ、エッジ…!?いつの間に…。」

リディアは軽くパニックである。


「お前がここに来る前からいたぞ?本当に鈍い奴だな~。」
「ど、どこにいたの!?」
「天井に張り付いてたんだけど?」
「!!!」

リディアは驚くが、そういや忍者はそうやって身を隠したりする一族だということを思い出した。


エッジはすかさずリディアに抱きつく。

「リディア~!」
「!!何なのよ変態!」
「変態だと?てかお前、俺が来る前に寝ようとしてたんじゃねぇのか?」

リディアはギクリとするが、いつもよりも気が立っているため、夫に言い返す。

「いいじゃない!だってエッジ何時に来るか分かんないんだもん!」
「何だと?俺の夜の楽しみを奪うつもりか?」
「もうっ、スケベ!」

抱きつかれたリディアは必死に抵抗し、エッジから逃れようとするが、鍛え上げられた夫の力には敵わない。

「エッジ、離してよぉ~!」
「やなこった。ほら、大人しくしろ。」

エッジはリディアに覆いかぶさり、両脚で彼女の脚をしっかりと挟み、手首を掴んでベッドに押し付けた。

「もうっ、離してぇ…!」

不機嫌なリディアは身体に力を入れてエッジに反抗する。

「リディア、じっとしてろ。」


真面目な顔をしたエッジの唇がゆっくりとリディアのそれに重なった。

「んっ…。」

柔らかなエッジの唇の感触が、リディアの小ぶりの唇から全身に伝わるような気がして、力が抜けていった。


唇を離したエッジは、優しい笑顔でリディアを見つめた。

(やだ…エッジ。)

さっきまで反抗していたリディアは照れ臭くて夫の顔を直視できず、顔を背けた。するとエッジがリディアの首筋に顔を埋め、そこに何度も優しくキスを降らせた。その度に華奢な身体はピクピクと小さく震える。

「…大人しくしてねぇと、跡ついちまうぞ?」

耳朶を唇で食まれ、リディアはぴくりとしながら身体がじんわりと熱を帯びてきているのを感じた。

「あっ…。」

自然に艶かしい吐息が発せられる。それに反応するかのようにエッジの唇がまた重なってきた。

「んっ…!」

角度を変えながら、リディアに深く侵入してくるエッジ。力強い、けど決して強引でなくて、どこか慈しむような口づけ。


唇を離されたリディアは、軽く息継ぎをしながらエッジを見つめる。ふと目線をずらすと、そこには彼の前合わせになった寝間着の襟元から覗く、鍛え上げられた逞しい胸元。エッジは微笑みながらリディアの頬を撫でる。

「俺の身体、見てぇのか?」
「…別に。」

素っ気ない返事をするリディアだが、エッジにしたらそれも可愛い妻の仕草。

「じゃあお前の身体、見ていいか?」

ニヤニヤしながらそう言うエッジに、リディアはまた少し不機嫌になり、そっぽを向いた。

「ダメか?」
「…。」
「リディア?」




「…ダメって言っても脱がせるくせに。」


エッジはニタリと笑い、その通りと言わんばかりにリディアの寝間着の浴衣の胸元を押し開いた。ぷるんと姿を現した彼女の形のいい柔らかな乳房を、エッジはすぐさま揉みしだいた。

「やぁっ、あぁん、エッジ…!」



快感に耐えられず、乳房に佇む桜色の蕾はツンと立ち上がる。エッジはそこを舌全体でねっとりと舐め尽くし、ちゅくちゅくと音を立てて吸う。

「あ…ぁぁぁんっ…!」


リディアが肩を竦めながら艶かしい声で夫の愛撫に応えていると、彼の親指が舐め上げられたばかりのそこをくりくりと撫で回す。

「もうっ…エッジのバカぁ…!」
「あぁ悪りぃ。反対側もちゃんとしてやるよ。」

くくっと笑いながらもう片方の蕾も同様に慈しむエッジ。脚をがっちりと挟まれて動けないリディアは、喘ぎながら身体の芯が疼くのを感じた。

「いやぁんっ!」

ぷっくりとした蕾を親指と人差し指で摘ままれ、悩ましげな表情で高い声を上げるリディアは、昼間エッジを尻に敷いていた強い妻ではなく、自分の腕の中で快楽に溺れつつあるか弱い女だった。

(セシルの言う通りだな…。)

機嫌の悪い妻に当たり散らされた時のストレス対処法、それは自分が優位に立てる夜のベッドの上でしっかりと発散することだった。


快感に悶えて軽く息を切らせ、切なげな表情で口を少し開けたまま自分を見つめるリディア。その姿がエッジの男としてのプライドを漲らせた。


エッジはリディアの髪を撫でてやり、優しく口づけする。彼女の寝間着の浴衣の腰紐を解き、身に付けているもの全てを剥ぎ取ると、リディアは両手で下肢の間にある茂みを隠した。

「隠すな。」
「やだぁ…。」
「ったく、お前は聞き分けがねぇなぁ…。」

「何よ、エッジが悪いんじゃない…。」


妻の反抗的な言葉がエッジの支配欲に火をつけた。

エッジはリディアの脚を広げて素早く間に割り込み、茂みを隠す両手を片手で押さえ、空いた方の手の人差し指と薬指で花弁をくっと広げ、露わになった小さな蕾を中指でなぞりだした。

「やっ、あっ、あっ…!」
「言うこと聞かねぇ悪い子はお仕置きだ。」

抵抗しようと、押さえられたリディアの手に力が入るが、非力な召喚士の力では鍛え上げられた忍者の力には到底敵わなかった。エッジがそこをなぞるたびにリディアは嬌声を出し、とろとろと蜜を溢れさせてゆく。


エッジは早くリディアを激しく自身で犯したいという欲求に駆られ、かなり余裕をなくしていたが、ここはもっと妻を乱れさせたいという思いが勝る。


なぞっていた中指を花弁の中へと差し込んでいくと、潤った柔らかいそこはするする奥まで受け入れた。侵入した指は、リディアの敏感な部分へと辿り着き、そこを擦り上げる。エッジの指が動くたびにリディアの身体はピクンと跳ねた。

「あっ、あっ、やめてぇ…!」
「そんな色っぽい声出されたらやめられねぇよ…。」


人差し指も入れ、さらに執拗にそこを掻き乱すと、悲鳴のような声が上がった。くちゅくちゅという淫靡な音色と共に色白の華奢な身体は仰け反り、快楽を求めてエッジの指を深く飲み込もうと腰が浮いてくる。

「はぅっ…!はぁっ、ぁっ…。」
「イッちまえよ、そんな我慢すんなって。」

指で犯しながら、眉を寄せて必死に耐えようとするリディアの理性を取り払ってやると中がぐっと狭くなった。

「ほら、もう少しだ…。」

エッジが激しく指を動かすと、リディアは悶えながら、されるがままに昇っていった。

「あっ、ぁ…あぁぁ…ッ!!」

絶頂に達したリディアは艶かしい声を上げ、身体を弓なりに反らせた後、くったりと脱力し、エッジに押さえられていた両手は茂みに軽く添えられているだけになっていた。


はぁはぁと息を切らせ、トロンとした翡翠色の瞳がエッジを見つめる。

「ん、何だ?もっとして欲しいのか?」
「違うもん…!」

からかわれて不機嫌な気持ちを夫にぶつけたいが、絶頂の余韻で思考がうまく回らず、頬を赤くしてそう言うのが精一杯だった。


その姿を見てくくっと笑うエッジはリディアを天から見下ろす形で彼女の柔らかい髪を撫でる。

「して欲しいんなら、素直に言えって。」
「エッジのバカ…嫌いッ!」


完全に優位に立ったエッジは、ご機嫌斜めのリディアの罵倒の言葉を聞いてニヤリと笑う。

「俺のこと嫌いか?」
「嫌い…。」

そっぽを向くリディアの手を握り、指を絡めながら頬に優しくキスをする。

「リディア、俺のこと嫌いか?」
「…嫌い。…んっ。」

そっと口づけすると、リディアはエッジの唇を食むように唇をもごもごと動かした。

「俺のこと…嫌いか?」
「…。」

リディアの翡翠色の瞳を見つめ、優しい表情で語りかける。

「俺はリディアのこと大好きなんだけどな。」
「…。」

恥ずかしくて目を逸らしたいが、リディアの華奢な身体など全て包み込んでしまいそうなエッジの深い目の色に見つめられてできない。

「…そんなに…見ないで。」

精一杯紡ぎ出した言葉にエッジは優しく微笑むと、今にも互いの唇が触れそうなほどに近付き、囁くように再び問いかける。

「リディア、俺のこと嫌いか…?」



問いに対する答えはただ一つ。今まで何度も口にしてきた言葉なのに、今日は素直になれなくてドキドキしてしまう。








「……大好き。」

もじもじする可愛い唇から発された小さなその声を、聴覚の発達した忍者であるエッジが聞き逃すはずがなかった。絡めていた指にぐっと力がこもり、リディアの唇を貪るように食む。

ちゅっ、ちゅうっ、ちゅくっ…

「んっ、んふぅ…。」

呼吸すら許されないような、絶え間なくリディアを責めたてる扇情的な口づけ。昼間優しかった夫の変貌ぶりに、リディアは戸惑うばかり。


エッジの唇がリディアの胸元へと移動し、乳房の上部の柔らかい部分にキスのシャワーを浴びせていく。くすぐったいような気持ちいいような感触に小さな吐息が漏れる。


絡まっていた指が離れてゆき、エッジはリディアの下半身へと、身体を後退りするようにして移動していく。エッジの顔がお腹の上あたりに来たかと思うと、臍にキスが落とされた。思わずピクリとするリディアを見て気を良くしたのか、エッジは彼女のキュッと括れたウエストをそっと撫でながら臍の周りに舌を這わせる。

「はぁぁん…やだ、くすぐったい…。」

堪らず身体をくねらせ、エッジの頭に手を添える。

徐々にエッジの舌が臍周りから下腹部を這い始める。秘所に近い、臍の下から下肢の茂みのすぐ上までを彼の舌がゆっくりと動く。その絶妙な感触に花弁はキュッと締まり、奥の蜜源が疼く。

「んっ…あっ…ダメぇ…。」

リディアが両脚を捩っていると、茂みのすぐ上の柔らかな部分に何度もキスが落とされる。甘い刺激に花弁だけでなく、子宮までキュッとなるようだった。


さっきまでのイライラなど、もうすっかり消えてしまった。心地良くなったリディアはエッジの行為に見入りながら、添えていた手で彼の髪を優しく撫でる。するとエッジがちらりとこちらを見たので、リディアは艶かしい笑顔で応えた。

「はぁー、やっと笑ってくれたな。」

嬉しそうなエッジの言葉に、リディアはハッとした。今日は自分でもあまり気分が良くないのは分かっていたが、そんなに険悪な顔をしていたのだろうかと思わず頬に手を当てる。

「ったく、お前今日はほんっと機嫌悪かったよなぁ。」
「…私、機嫌悪かった?」
「おぉ。」
「だって…。」

「月のもんが近いんだろ?」
「!」
「はっはっは、俺がお前の身体のこと分かってないとでも思ってたのか?」


リディアの柔らかな緑の髪を撫でてやると、彼女の表情はみるみる緩み、頬はほんのり赤くなった。

(エッジ…分かってたんだ。だから優しかったんだ。)

どうしようもない理由で気分がすぐれない自分を受け止めてくれた夫の優しさに、胸がキュンとなるリディア。その様子を見ていたエッジはリディアに優しく口づけしながら彼女の内太腿に指を滑り込ませ、秘所の状態を探った。


そこは熱く、しっかりと潤んでいた。ずいぶん前から張り詰め、準備万端のエッジはもう一刻も早くリディアと繋がりたい。


秘所に触れられ、ピクリと反応するリディアを見て、エッジは寝間着の上衣を脱ぎ、腰紐を解き、下衣と一緒に下着を脱ぎ去る。両脚の間から太腿の裏に滑り込ませた手でリディアの片膝を曲げさせ、自分の腰の位置を合わせると、熱く膨張した肉塊を潤い溢れる柔らかな花弁に押し当てた。リディアがその重量感ある存在に気づいて息を飲んだ時、花弁はぐっと押し広げられ、2人の身体が繋がった。


「あっ…エッジ!」



よく潤ったそこはあっという間にエッジを受け入れ、リディアが声を出した時にはすでに奥まで到達していた。


昼間の仕返しという名目があるため、エッジはリディアに有無を言わせまいと早速腰を激しく揺らす。


「えっ、やっ、あぁっ…!エッジ、速い…!」

あまりに自然に入ってこられた驚きを表す間も無く、感じる部分を的確に突くエッジの熱さと重量感から繰り出される快感に、リディアは堪らず首を仰け反らせて眉を寄せる。エッジが彼女の手を握って指を絡めてやると、縋るようにギュッと握ってくる。

「いやっ、あぁぁん、エッジぃ…!」


激しい律動で揺れ動くリディアにどんどん迫ってくる快楽の波。何一つ考えることができず、ただ眉を寄せてその流れに身を任せるだけの妖艶な裸体から発されるのは、エッジをますます猛らせる喘ぎ声。


乱れさせたいというエッジの思惑通り、見事なまでの妻の溺れっぷり。

「くくくっ…気持ちいいか…?」

もう返事する余裕がないリディアに口づけする。

「んんっ、んっ、んふぅっ…。」

エッジの口の中でリディアの声がくぐもるのと並行して、破裂しそうなほど膨らんだ熱い肉塊を包み込んでいた柔らかなリディアの内部がひくひくと波打ちながら狭くなっていく。

「締まってきたぞ…リディア、我慢すんな。」


自分の限界を感じながらも、どんどん締まってくる内部に逆らうように律動を続けるエッジ。その動きにもう耐えられなくなったリディアの身体の奥がぐっと狭まった。

「はぁっ…あ…あぁぁっ…!!」

リディアが悩ましげな声と共に、痙攣しながら2度目の絶頂に達した。

「うっ…く…!!」

強烈な締め付けがエッジを襲う。勢い良く果ててしまってもおかしくない状況の中、理性を保って歯を食いしばり、寸前の所で抑え込む。




耐え忍んだ数秒の後、エッジの目に映ったのは、うっすらと汗ばみ、軽く息を切らせて力なく自分の手に指を絡ませるリディア。


エッジは汗で首筋や頬に張り付いた髪を外してやり、優しく口づけする。唇を離すと、リディアは2度の絶頂の余韻でポーッとした表情でエッジを見つめていた。


何か言いたげな、少し開いた可愛い唇。それを優しい眼差しで見つめたエッジの腰は、再び律動を開始した。

「あっ…!ぁっ、ぁ…。」

間髪入れず連続して攻められ、もうリディアの声には芯がない。


「ひゃぁんっ!あっ…!」

律動しながらエッジは腰を回す動きを加えてリディアの内部を軽く抉るようにぐりぐりと刺激すると、眉を寄せて仰け反る華奢な身体からはか細くも悲鳴のような声が上がった。




エッジは上半身を倒し、身体を密着させ、唇を重ねる。すでに狭くなってきている中を激しく行き来し、粘膜が擦れ合い、ぐちゅぐちゅと音を立てる。


もっと快楽に溺れる妻を見ていたいが、きつくなる締め上げにもう限界だとエッジが思ったその時。




「……ぁッ!!」


リディアの3度目の絶頂の叫びは、微かなものだった。じわりと上がったリディアの体温を感じながら、自分をぐっと押し包んでピクピクと波打つ内部に身を任せ、エッジは勢い良く果てた。










夫に腕枕をしてもらっているリディアは、トロトロと現実と夢の世界を行ったり来たりしていた。その様子が堪らなく愛おしくて、エッジは妻の髪を優しく撫でる。


昼間は強気だったリディアは3度も自分の腕の中で果て、力無く横たわり、縋るようにこちらに身を寄せてきた。男としての威厳を見せつけ、優越感に浸るエッジは優しく微笑みながら彼女を抱きしめる。


「リディア…寝ていいぞ。」
「ん…。」


気怠さと眠気に襲われつつ、リディアはエッジをじっと見つめて何やらもごもごと言いたそうにしている。

「…何だよ?」
「…何でもない。」

リディアはふっと微笑みながら、心地よさに身を任せ、気持ち良さそうに眠りに落ちていった。

(寝ちまったか…。ったく、どうあっても可愛い奴だぜ。)


尻に敷かれても愛おしい妻リディア。自分が優位に立っても心底惚れた女性には結局敵わないのだと軽く苦笑しながら自らも眠りに落ちていくエッジだった。



―完―

Comment:0  Trackback:0
back-to-top
web拍手 by FC2