2014
04.12

The Expiration

こないだの反省を踏まえて書いたエジリディTA後SS第5弾です。これで少しはクオレをエブラーナへ連れて行かなかった償いになるでしょうか…?






「The Expiration」


「あ、エッジ。もう仕事終わったの?」
「おぅ、今から風呂行ってくるわ。」

エッジより先に仕事を終え、寝間着姿でベッドにいたリディアは、本を読んでいた。

「エッジ…今日もお疲れ様。」
リディアがエッジの頬にキスをした。
「…お前もな。」
エッジはリディアに口づけした。
「んっ、もう…。」
「へへへ…。」

ニタリと笑ったエッジは風呂へと向かった。



「はぁ、エッジ…。」

ベッドに座ったリディアは、自分の体の奥が疼き、体温がじわりと上がるのを感じていた。もうすぐエッジと抱き合うのだから。


本の続きを読もうとしても集中できない。エッジが来るのを待つことにした。




「リディア。」
「エッジ…。」

風呂から上がってきたエッジをリディアの艶かしい笑顔が彼を出迎えた。ベッドに上がり、リディアに笑いかけながら彼女の髪を撫でると、その表情に精悍な忍びの一族の長の表情が緩む。

「っとに可愛いなぁ。もう大人の女だってのにな。」
「そうよ、もう子供じゃないんだからね。」

リディアは軽く唇を尖らせた。月の大戦の時、エッジは最終決戦の前にリディアを子供扱いし、安全のため地上に残らせようとした。あれは彼なりの自分に対する愛情だったのだが、当時はあまり理解できずに苛立ったものだった。あれから10数年が経ち、リディアも成熟した女性となった。故郷のミストもエッジの支えで復興し、そのおかげで今はこうして彼の妻としてエブラーナにいる。

「さみしくねぇか…?」
「えっ?」

そう言ってエッジはリディアを抱き寄せる。

「…クオレに会いたいか?」

エッジの一言にドキッとする。

真月の戦いの際、崩れゆく真月には置いていけないと衝動的に連れて帰ったマイナスの幼少体のクオレ。リディアが引き取ってミストで暮らしていたため、エッジはプロポーズの際、クオレもリディアの家族としてエブラーナへ、と申し出た。しかしリディアがいなくなるミストの守りを盤石なものにするために、幻獣王夫妻の保護下の元、ミストに残ったのだ。

「ん…そうだね、元気にしてるのかな。」
「手紙のやりとりはしてんだよな?」
「うん。」

リディアが俯きながら小さく頷いたのを見たエッジは、優しく微笑んだ。

「…ミストに行くか?」
「えっ?」
「行こうぜ。お前の里帰りだ。」

リディアはエッジの申し出に驚いた。

「でも…エッジ忙しいし…。」
「んなもん何とかなるって。今まで俺がどうやってミストに行ってたと思ってんだ。」

自分を見つめるエッジの真面目な表情に、リディアは息が止まりそうになる。

「…じゃあ、行こうかな。」
「よし、また日を決めようぜ?明日仕事がどうなってるか確認すっからよ、お前もそうしてくれるか?」
「うん…。ありがとうエッジ。」

エッジはにっこりと笑った。
「俺はお前のことなら何でも受け止めたいんだよ。」
「…もう、バカ。」

そう言ってリディアはエッジに抱きついた。

「リディア。」
「ん?」

ちゅっ。

エッジがリディアに口づけした。するとリディアの頬がみるみる赤く染まった。
「もう、エッジ…。」
「へへ。」

本当ならばこの寝室にクオレも居て、3人で仲良く寝ているのだろうが、現実は自分とリディアの2人。エッジはそれはそれで幸せだったが、リディアがどう感じているのかが気がかりだった。無理矢理にでもクオレも連れてくればよかったのかもしれないが、ミストのためにとアスラに言われた手前、それはできなかった。ならばせめて時々クオレに会わせてやろうとエッジは考えたのだった。

「…俺にはこれぐらいしかお前とクオレにしてやれることはねぇからな。」
「…。」

リディアはエッジの気遣いを嬉しいと思いつつも、こうしてエブラーナに来てからも自分の故郷のことで気を遣わせていることを申し訳なく思った。

「エッジ…ありがとう。嬉しいよ。」

にっこり笑うリディアを見て、エッジはそっと彼女を抱き寄せ、柔らかな緑の髪を撫でてやった。2人は口づけを交わすとそのままベッドに倒れ込み、いつものように愛の営みを始めた。






―――数日後


「リディア、そろそろ行くぞ。準備はいいか?」
「うん。」

バロン国王セシルの厚意により、エブラーナに進呈された飛空艇が城の前に準備されていた。2人は飛空艇に乗り込み、エッジが舵を取った。

「よし、離陸するぞ。しっかりつかまっとけ。」

すっかり涼しくなった晩秋の空に飛空艇は舞い上がり、ミストへと航路を取った。




数時間後、エッジとリディアはミストに到着した。


春にここを離れて以来だったリディアは、すっかり秋の色に染まった故郷の景色を見て、感慨深い表情を浮かべた。

(リディア…ここはいつまでもお前の大事な故郷なんだな。)
エッジはリディアの表情をじっと見つめていた。


「…リディア?」
その声に振り向くと、真月の戦いの際、村を守った召喚の力を持つ少女だった。
リディアは駆け寄り、少女を抱き締める。

「久しぶりね!元気だった?」
「うん!今ね、クオレと遊んでたのよ。」

そう言って少女はリディアの手を引いた。するとリディアの姿を見たクオレは走ってリディアに抱きついた。
「クオレ、久しぶりね。元気?」
「元気だぞ。エッジは来ているのか?」

相変わらずの口調だが、エッジへの好意は前と変わらないようだ。
「ふふ、もちろんよ。」
「ようクオレ、しばらくだな。」
「遊んでくれ。」
「よし、分かった。けどその子も一緒にだぞ?」
「分かった。」

召喚の力を持った少女も加わり、3人は仲良く遊び始めた。その姿を見たリディアは、微笑みながら眺めた。

「リディア。」
リディアが振り返ると、そこには幻獣王夫妻がいた。
「幻獣王様、王妃様!お元気でしたか?」

リディアが2人に駆け寄った。
「おおリディア…しばらく見ない間にますます綺麗になったのう。」
「エッジ殿と仲良くやっていますか?皆あなたの幸せを願っていますよ。」

育ての両親と再会し、リディアは嬉しさでいっぱいだった。
「はい、エッジと仲良くやっています。王妃としてはまだまだですが…。」
「なに、焦ることはなかろう。エッジ殿はいいお方じゃ、きっとおぬしのことをしっかり支えてくれるじゃろう。」
「ほんと、いっぱい支えてもらってて…。クオレもみんなも元気そうで何よりです。」
「リディア、ミストの事は何も心配することはありません。あなたは今までこの村のために働いた分、これからは自分の幸せをつかむのですよ。」


幻獣王夫妻と話した後、リディアは久しぶりに会うミストの村人達と会話をし、里帰りを楽しんだ。結婚以来、大きな事件などはなく、いたって平和であることを知ったリディアはただただ安心した。この10数年の間に2度も月による被害を受けたため、平和な生活を送れることがどれだけ幸せであるかを噛みしめた。




時間はあっという間に過ぎ、日が暮れ始めた。もうすぐ晩秋の季節を迎えようとする空の色は、リディアがミストを離れた春と違い、ずっと暗い色だった。

クオレは久しぶりにエッジと目いっぱい遊び、ご満悦の様子だった。
「リディア、今日もエッジといっぱい遊んだぞ。」
「そう、よかったわね。」

娘のようなクオレの頭を撫でてやり、嬉しそうに話すリディア。その姿を見たエッジは胸をなで下ろす。これで少しはリディアとクオレを引き離してしまったことへの償いになっただろうか?ミストの幼い召喚士たちが成長した暁には、クオレをエブラーナへ呼び寄せることもできるかもしれない、エッジはそんな事を考えていた。


「なぁリディア、俺そろそろ帰らねえといけねえんだけど、お前はどうする?」
「えっ…あ、そうね。もういい時間よね。」

それを聞いたクオレはエッジの顔を見上げる。
「エッジ、もう帰るのか?」
「あぁ、一国一城の主は忙しくてな。…リディア、もしよかったら、お前は今晩ミストに泊まったらどうだよ?」

エッジの思いがけない申し出に、リディアは驚く。
「え?そんな…私も帰るわよ!」
「せっかくだしクオレともっと話したらどうだよ?次いつ来れるか分かんねぇんだし。何なら明日また迎えに来てやるぜ?」

リディアは心が揺れた。そうしたいところだが、自分はエブラーナの王妃。いくら国王である夫が許してくれるとはいえ、自分の故郷で油を売るなど許されないだろう。



「ううん、帰る!だって仕事あるもん。」
「…いいのかよ?」
「うん…。クオレ、ごめんね。私、もう帰らないといけないの。」

相変わらず表情は変わらないが、クオレは何か考えている様子だった。
「…リディア、またエッジと一緒に来てくれ。」
「うん。また来るわ。」


そこへ一人の女性がやって来た。外部から召喚魔法を習いに来ているというアリッサだった。
「アリッサ!」
「リディア、引きとめちゃってごめんね。クオレ、もう暗いんだから家に帰りなさい。」
「分かった。」

リディアは自分がミストを去った後も、クオレがどうしているか気がかりだったが、こうして自分の代わりに誰かがクオレの面倒を見てくれているのを見るとそんな気持ちも和らいだ。

「リディア、元気そうで何よりだわ。また来てね。」
「えぇ。そういえばもう幻獣王様と召喚の契約を交わしたのよね?すごいじゃない!」
「いえいえ、おまけしてもらえたのよ。」
そう言って笑うアリッサ。彼女もまた、ミストにとっての大きな希望であった。

新しい召喚士が確実に育っている。故郷の復興のために働いてきたリディアにしたら、自分の手から離れていってしまうのが少しばかりさみしい気もした。

「リディア…帰るか?」
エッジが声を掛けるとリディアは頷いた。エッジとリディアが帰ろうとすると、幻獣王夫妻やミストの村人達も見送りにやって来た。

「リディア、気を付けてね!」
「またいつでも来てね。」

変わらない温かな故郷の人々の言葉に、リディアは胸が熱くなる。

「みんな、今日はありがとう!また来るわ。クオレ…元気でね。」
「うむ。エッジも来てくれ。」
「ありがとな、クオレ。」
エッジは笑顔で答えた。



エッジとリディアは飛空艇に乗り、ミストを後にした。

名残惜しそうな表情で甲板に佇むリディアを見たエッジはどう言葉をかけてよいか考えた。するとリディアがエッジの隣にやって来た。
「エッジ、今日はありがとう。すごく楽しかったわ。」
「…そうか、ならよかった。」

自分のことを気遣い、里帰りを申し出てくれたエッジ。月の大戦後はミストの復興という自分の望みのために支援をしてくれ、真月の戦いの時は封印されてしまった幻獣達を憂うリディアを励まし、そして結婚した今でも自分の意思を汲み、尊重してくれる。クオレとは離ればなれになってしまったものの、リディアはもう数えきれないぐらいの幸せをエッジからもらっている。少し冷たいぐらいの夕暮れ時の秋の風に吹かれながら、今自分がこうしていられるのは、まぎれもなくエッジのおかげだとリディアが思っていると―――


「リディア。」
「ん?」
「また…ミストに行こうな。」

笑顔でそう言うエッジを見たリディアは、満面の笑みで頷いたのだった。


―完―

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