2014
04.20

「夜の八重桜」

近所にある八重桜を見ていたら書きたくなっちゃったんです…。ラブラブほのぼの系ですよ♪

前作までとは時系列がはずれていますが、また別の、季節ものTA後エジリディってことでご容赦下さいませ☆(^^ゞ



「夜の八重桜」







すっかり春めいた日々が続く中、夜を迎えたエブラーナ城では王妃リディアが今日のの仕事を終えた。すると部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「はぁい。」

ドアを開けるとエッジがいた。

「よ、リディア。仕事終わったか?」
「うん、今終わったとこ。エッジも終わったの?」
「おぅ。…あのさ、お前が良かったら、今から夜桜見に行かねぇか?」

「え、桜?」

確かもう時期的に桜は散ってしまってるはずだ。リディアが不思議に思っていると、エッジが微笑んだ。

「八重桜だよ。普通の桜より遅目に咲くから、今ちょうど見頃なんだ。」

リディアは結婚前、何度かエブラーナで桜見物をエッジと楽しんでいたが、普通の桜しか見たことがなかったのだ。

「そうなの?見に行きたい!」
「よしよし、そうこなくっちゃな。」


2人は手を繋いで城を出て、月の光がうっすら夜道を照らす中、八重桜が咲く場所へと向かう。


「桜って色んな種類あるんだね。八重なんて初めて聞いたなぁ。」

興味津々のリディアを見て、エッジは思わず笑みをこぼす。

「バロンやミストの方ではそもそも桜がねぇんだよな?あんないいもん見れねぇなんて、気の毒だな~。」

「ふふふ。」

(エッジの手、あったかいなぁ…。)

自国文化を誇らしげに語るエッジ。リディアはうんうんと頷いて夫の話を聞く。こうしてエブラーナの事を話す夫はとても嬉しそうで、それを見ているリディアも幸せな気分になるのだ。







「着いたぞ、ここだ。」


そこには可憐なピンクの花びらを何重にもたたえる、幾多もの美しい八重桜が咲いていた。

「わぁ、きれい…!」


夜でも花見を楽しめるよう、八重桜の並木道には小さな松明がいくつもセットされている。夜の春風にさわさわと吹かれ、光に浮かび上がるピンクの花びらは何とも幻想的で、リディアをたちまち魅了した。


「…やっぱりきれいだな。」


エッジがそう言うと、リディアは満面の笑みで頷く。

「うん、すごくきれい!エッジ、連れて来てくれてありがとう!」

「へへ…。本当はソメイヨシノの季節にお前と花見したかったけど、何かとバタバタしちまって、タイミング逃しちまったからなぁ。」

「そうだね…エッジ忙しかったもんね。」
「ま、俺は夜のベッドで桜みたいなお前の可愛い乳首見てたから、それで十分だったんだけどな。」

「なっ…!変態!」

顔を真っ赤にして怒ったリディアがニヤニヤするエッジをポカリと叩く。




2人が八重桜の並木道を歩いて行くと、花見を楽しむ国民達と出くわした。

「おぉこれはお館様!奥方様もご一緒で!」
「よぅ!楽しそうだな。」

気さくに国民に声をかけるエッジ。エブラーナは規模の小さい国だから、王族と一般国民の距離は近い。



「リディア様ー!」


大人達と花見をしていた子供達が寄ってきた。

「あら、こんばんわ。桜、とってもきれいね。」

「うん!僕達お父さんとお母さんと毎年ここに来てるんだよ!」
「うちもよ!皆と美味しいもの食べれるから、楽しみなんだ~。」

子供達の話を微笑みながら聞くリディア。親達もリディアに挨拶しにやって来た。

「リディア様、こんばんわ。よかったらこちらへどうぞ。エブラーナの地酒がありますよ。」

「うーん、少しだけいただこうかしら。…エッジみたいには飲めないしね。」
「ははは、お館様はお酒が好きでいらっしゃいますからね。」

リディアは案内された花見のスペースに腰掛け、エブラーナの地酒を飲んだ。

「んー…このお酒、なかなかキツイわね。」
「ビールよりもずっと強いですよ。うちの主人たらよく飲み過ぎてしまうもので…。」
「ふふ、そうなのね。」

リディアが大人達と会話していると、後ろの方から騒がしい声がしてきた。


「さぁお館様、始めますぞ~!」
「おぅ!かかってこい!」


エブラーナの男性達がエッジの周りに集まり、酒の飲み比べを始めたのだ。

次々に地酒を飲み干していくエッジ。
いい飲みっぷりに、国民達から歓声が上がる。


「わぁ~、お館様すごーい!」
「僕も大人になったらああやって飲みたいなぁ。」


子供達も楽しそうにその光景を眺める。

「もう、エッジったら…。」

リディアはエッジが久しぶりに酒を飲む姿を見て、少し心配そうに眺めていた。


飲み比べに勝利したエッジは、得意げな顔。

「はっはっはっ、やっぱり俺が1番だな!」

「はぁ…お館様、参りました。」
「もう無理だ…ううっ…。」
「いやぁ、私らオッサン組はもうかないませんなぁ。お館様、次は若い衆と勝負ですぞ!」
「お、いいねぇ!そいつら呼んでこい!」


お酒が入って上機嫌なエッジは、若い男性達とも飲み比べを始めた。

心配そうな表情のリディアに、子供達が話しかけてきた。

「ねぇねぇ、リディア様はお館様とすごく仲良しだよね!」
「ふふ、そうね。」

「喧嘩とかするの?うちのパパとママ、よく喧嘩するんだ~。」
「これ!そんな事を聞いてはいけませんよ!」

子供らしい質問に、リディアは思わず笑い出す。

「ふふふ…いいのよ、気にしないで。」
「はぁ…。」

子供の母親は恐縮した様子でリディアに軽く頭を下げる。

「そうねぇ、エッジと喧嘩するわよ。」
「そうなの?何で?」
「うーん、エッジが私のおやつのお饅頭食べちゃったり、お仕事で使おうと思ってたペンを持っていかれちゃったり、色々ね。」

「へぇ、そうなんだぁ。」
「リディア様はお館様に怒るの?」
「うん、怒るわよ。」


「じゃあどうやって仲直りするの?」

新たな質問に、少し頬を赤らめるリディア。

「喧嘩したらね、いつもエッジの方から『リディアすまねぇ、俺が悪かった』って言って謝ってくるのよ。」

「お館様が謝るの?」
「なんかいつも家老さんに怒られても適当に返事してるのにね。」

「そんな失礼な事を言うんじゃありません!…すいません、リディア様。」
「うふふ、小さい子はよく見てるわね。」

リディアは笑わずにはいられなかった。するとそこへエッジがやって来た。

「リディア~。」
「あら、エッジ。」

エッジがリディアの隣に座ると、子供達が彼に飛び付く。

「お館様ー!」
「ねぇねぇ、お酒の試合勝ったの?」
「おぉ、勝ったぞ!いっぱい酒飲んだぜ。」
「すごいねー!僕が大人になったら、お館様と勝負したいなぁ。」
「お、そうか。そりゃ楽しみだなぁ。」
「うん!僕頑張るよ!」

笑顔で子供達の頭を撫でてやり、会話するエッジ。リディアはこういう夫の姿を見ると、自然と笑顔になれる。堅苦しい事を嫌い、国王だからと傲慢な態度をとらない彼の姿勢は、妻として誇れるものだった。




「お館様、さっきね、リディア様がお館様と喧嘩するって言ってたのよ!」
「…へっ?」

無邪気な子供の発言に、リディアはドキリとする。

「…リディアは何を言ってたんだ?」

軽く引きつった表情でエッジが子供達に尋ねると、彼らはニヤニヤし出した。

「んとね、喧嘩してもお館様が謝ってくるから仲直りしてるって言ってたよ!」
「そうそう!」


口々に話す子供達を見て、エッジは深く頷いた。


「そうだぞ、俺はいつもリディアが怒ると頭を下げてるんだ。そうしねぇとこいつは許してくれねぇからな。」


それを聞いたリディアはムッとした。


「許すも何も、いつもエッジが悪いんじゃない。謝って当然よ!」

上から目線のリディアの一言に、エッジも負けじと言い返す。

「何だよ、お前が絶対謝らねぇから俺が謝るしかねぇんじゃねぇか。」
「私そんな鬼嫁じゃないもん!」
「鬼嫁だなんて言ってねぇよ。俺みたいに素直に謝る旦那は貴重なんだぞ?大事にしろよ?」
「何よその自分があたかも立派な人間みたいな言い方!」


エッジとリディアは民達の前でぎゃあぎゃあと喧嘩を始めるが、2人の全く敵意を感じない言い合いに、周りの大人達は微笑ましそうにクスクスと笑っていた。


しばらく喧嘩した後、エッジはふーと息をついた。


「あぁ、リディア…。分かった、俺が悪かったよ。すまねぇ。」
「もう…。」

喧嘩を終えた2人。周りの者達がクスクスと笑っているのに気付き、恥ずかしくなる国王夫妻。

「やっぱりお館様とリディア様は仲良しだね!」
「うん、リディア様の言った通り、お館様が謝るんだね!」


子供達にきゃっきゃと冷やかされ、エッジとリディアは見つめ合い、頬を赤らめた。


「ねぇ、お館様は家老さんに怒られてもあんまり謝らないのに、どうしてリディア様には謝るのー?」


子供というのは正直な上によく見ていると思わされる質問に、エッジは苦笑した。

「こらっ!何て失礼なことを…お館様、どうぞお許しを…。」

必死に詫びる両親だが、エッジはそんな事で怒ったりするような、器の小さい王ではない。

「ははは、こりゃ難しい質問だな。」

頭を掻きながら答えに困るエッジ。しばし何か考えた後、リディアをちらりと見る。


「それはな…。」


リディアはエッジがどう答えるのかと思っていると、ひゅうっと夜風が吹き、咲き誇る八重桜のピンクの花びらを揺らす。





「…俺は、リディアのことを愛してるからだぞ。」







リディアの頬が、たちまち真っ赤に染まった。




「きゃー!あいしてるだって!」
「かっこいー!」
「お館様、リディア様のことあいしてるんだー!」

「あ、リディア様の顔が真っ赤だよ!」
「えっ?そ、そうかしら?」

子供達に冷やかされ、うろたえてしまうリディア。



エッジの方を見ると、ひらひらと数枚の八重桜の花びらが散る中、彼はリディアを見つめて微笑んでいた。


「本当にもう…お館様、リディア様、度重なる御無礼をお許しくださいませ。」

子供達の親達が頭を下げる。

「あぁいいんだよ、気にすんな。なぁ、リディア?」
「あ、うん。エッジの言う通りよ、気にしないで。」







2人はその後もエブラーナの民達と共に花見と会話を楽しみ、春の夜を満喫した。







その帰り道。



「はぁ~、やっぱり花見はいいなぁ。酒は美味いし、皆と喋れて楽しいぜ。」
「もう…だいぶお酒飲んでたけど大丈夫なの?」
「大丈夫だって。あの程度ならまだモンスター達とも戦えるぜ?」



出会った頃と変わらない自信家ぶり。あれから10数年の時が経っても、エッジはエッジなのだと思うリディア。


「リディアは楽しめたか?」
「あ、うん。楽しかったよ、八重桜すごくきれいだったし、皆親切だしね。」
「そうか、そりゃ良かった。」

リディアの答えを聞いて、微笑むエッジ。

(あ…さっきと同じ笑顔。)


リディアは何となく恥ずかしくなり、エッジの腕にぴったりとくっつき、彼から視線をそらした。

「お、何だよ?…そんなに俺とくっついてたいのか?」

ニヤニヤしながらリディアを見るエッジ。リディアは答えに詰まる。

「…だって、エッジがあんなこと言うから…。」
「あんなことって?」



「…その、私のことを愛してるって…。」

エッジはニタリと笑った。

「何だ、もっと言って欲しいのか?」
「ち、違うもん!…あんな事皆の前で言うなんて恥ずかしいじゃない!」


リディアを見て、エッジは少しばかり黙ってしまった。



「恥ずかしいか?」
「恥ずかしいよ…。」


「…いいじゃねぇか、本当のことなんだし。」


リディアは頬を真っ赤に染めて、その場に立ち止まった。

「リディア?」


リディアは真っ赤になった頬に自分の手を当てて、下を向いていた。


エッジは彼女のあまりに初々しい反応に、くっと笑った。

「ったく、お前は可愛いなぁ。そんな事したらここで襲っちゃうぞ?」
「もう、バカ。」

ぷいっと顔を背けるリディア。本人は怒っているつもりだが、その姿はエッジのお気に入りで、むしろ逆効果であることを全く分かっていないのだ。



「…エッジ?」

エッジの温かい手が、リディアの肩を抱き寄せた。

「リディア、愛してるぞ。」

月の光の下で、優しい表情でリディアを見つめ、愛の言葉を贈るエッジ。


自分の心臓がドキドキと動き出したのを感じるリディア。


「…うん。私もよ…。」


そう言って、思わずエッジの胸に顔を埋めるリディア。

「へへ、可愛いなぁ…。」
「恥ずかしいんだもん…。」


エッジはリディアの柔らかな緑の髪を優しく撫でた。

「リディア…来年も桜見に行こうな?」
「…うん。」


リディアがエッジの胸から顔を離し、彼の顔を見上げると、彼の手が、そっと彼女の頬を包み込む。エッジはすっと口布を下ろし、リディアに顔を近付けていく。


「リディア…。」


「エッジ…。」





春の夜風が草木を揺らし、さわさわと音をたてた。


エブラーナ城へと続く道で、柔らかな月の光に照らされた愛し合う2人の影は、夜風にゆるりと吹かれながら、ゆっくりと重なった…。


―完―
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