2014
03.22

「ずっと一緒に 」 前編

ついに初投稿です!TAエンディング後のエッジとリディアのストーリー第1弾。性的描写はありません。どうぞお楽しみ下さい(^^)


「ずっと一緒に」 前編






真月での戦いが終わり、再び平和を取り戻した青き星。各国に戻った仲間達は自国の復興に他国の支援、多忙な生活を送っていた。マイナデスによる攻撃や流星による被害は大きかったものの、世界最大の軍事国家バロン、商業国家ダムシアンを中心に着々と世界の復興は進んでいる。


そんな中、いち早く復興を遂げたエブラーナ王国では、今日も家老の声が響く。


「若様!若様の決裁待ちの案件が大量だというのに、どちらへ行かれるのですか!」
「ちょっと修行の旅にな。ちゃんと戻ってくるから心配すんなって。」


そう言って、家老をかわして城を出ようとするエブラーナ王エッジ。


「あぁ、平和になったと思ったら…!またもや若様の放浪癖が…。」


そう嘆く家老であったが、行き先は予想がついているのだ。


「そんなに想っておられるのなら、早くエブラーナにお連れすれば良いではないのですか…。」


城を出ようとしたエッジにつぶやく家老。


「あ?何だって?」

「一国の主ともあろう若様が、かような行為を10年以上も続けるなど嘆かわしい…。最早我ら執政を行う者どもも、国民も反対することはありますまい。何せあのお方は若様と共に2度も我が国を救った恩人でございますゆえ。」

「な、何のことを言ってるんだよ。」


はぐらかそうとするエッジだったが、口布を着けていても分かるぐらい顔を赤らめている。


「まぁ若様がこのままでよいと言うのならば、無理にとは申しませんが。」

そう言って家老は城へと引っ込んで行った。



「そうは言ってもよ…。あいつにはミストがあるじゃねぇか…。」


かつてバロン王国の策略によって焼き払われ、壊滅状態だったミストの村。だが月の大戦後、リディアを始め、各国からの支援を受けて復興が進み、真月の戦いの時には召喚の力を持つ子供達がいたことが判明した。その子供達のおかげで被害はほとんどなく、リディアが真月に赴いている間、召喚の力を持たぬ者たちも協力し合い、村を守った。もはやリディアは最後の召喚士ではない。だからリディアがミストを離れることに大きな問題はないはずなのだが…。


(くそっ…俺は一体どうすりゃいいんだよ…。)



リディアが好きで好きでたまらない。
結婚して一生添い遂げたい。



自分の気持ちは明らかなのに、踏み出せない。リディアは何度もエブラーナに来ており、国民達とも親交がある。彼女もエブラーナを気に入ってるようだ。



"王が夢を見れぬようでは、民は幸せになれませぬーーー"



真月でのヤンの言葉が頭を過る。



何が邪魔しているのか?身分の違い?お互い自分の国でやるべきことがあるから?



(早く行かねぇと、日が暮れちまうな…。)


エッジの足は、ミストへと向かい始めた。


一方、ミストでは…。



今日はエッジが来る日だからと、リディアがエッジに食べてもらう食事を用意していた。




「こないだ来た時、美味しいって言ってもらえたしね。今日のメニューも気に入ってもらえるかな。」

エッジの顔を思い浮かべながら、鼻歌混じりで料理をするリディア。



いつからだろう、エッジに会えると思うと胸が躍るようになったのは。



エッジは口が悪くてお調子者。だけど本当は正義感が強くて心優しく、飾らずにストレートに自分の思いをぶつける。純粋で素直な性格のリディアには、彼のそんな性格が心地いい。一緒に過ごし、エッジが帰る時間になると、寂しくてたまらなくなる。だから真月の戦いの時は、不謹慎ながら彼の側にいれることが嬉しかった。もちろん、それをあからさまにできるリディアではなかったが…。



真月の戦いが終わってからも、エッジはミストに来てくれる。けれどこのままずっと同じ関係が続くのかと思うと、何故か胸が苦しくなるようになった。



リディアも分かっているのだ。自分はもはや最後の召喚士ではない。今は幼いながらも新しい召喚士達がいる。また、エッジのおかげで幻獣王リヴァイアと王妃アスラが幻界とミストを行き来するようになり、村を守るために自分が気を張らねばならぬことはなくなった。母代わりであるアスラからは、これからは1人の人間として、女としての幸せを見つけなさいと言われた。



だけど…。





(私…この気持ちをどうしたらいいのかな。どうやったらこの胸の苦しさから解放されるの?)



「リディア!」
「クオレ。」
「リディア、元気がないではないか。どうしたのだ?」
「ううん、何でもないわ。もうすぐエッジが来るわね。」
「うむ、今日もたくさん遊んでもらうぞ。」


真月から逃げる際、連れ帰ってきたマイナスの幼少体、クオレ。リディアと一緒に暮らしており、エッジが来るといっぱい遊んでもらえるため、彼の事を気に入ってるのだ。






そして数時間後…





「よっ、リディア!」
「エッジ!いらっしゃい。」
「クオレ、元気か?」
「元気だぞ。今日もいっぱい遊んでくれ。」
「あぁ。魔法は勘弁してくれよ?」
「分かっている。」
「リディアも外に出ようぜ。いい天気だ。」
「そうね。行きましょ。」



外に出ると、春の日差しが3人を包み込む。鳥達がさえずり、美しい空が広がっている。リディアの家から少し離れたところに公園のようなスペースがあり、その奥には森があり、格好の遊び場なのだ。



早速エッジとクオレが遊び始める。リディアは近くのベンチに腰掛け、2人の様子を微笑みながら見守る。



(エッジ…大丈夫かしら。仕事の合間を縫ってミストに来て、帰ったらまた仕事あるだろうし…。)






しばらくして、エッジとクオレがリディアのいるベンチのところにやってきた。


「なあリディア、俺もクオレも腹減ったんだけど、何か食わせてくれねーか?」
「うん!ご飯用意してあるよ。家に帰りましょ。」


3人はリディアの家へと向かった。


クオレがリディアに話しかける。
「リディア、さっきあっちの草むらできれいな花を見つけたぞ。」
「そうなの?じゃあお昼ご飯食べたらどこに咲いてるか教えてよ。」
「うむ。エッジがさっき、リディアに似合いそうなきれいな花だと言っていたからな。」
「えっ…。」
「…。」


エッジは少し顔を赤くして、視線をそらした。


(もう、エッジったら…。)





リディアの家で、昼食を取る3人。


「うーん、うまい!」


エッジがそう言うと、リディアは満面の笑みでエッジを見つめる。こうやってエッジに喜んでもらえることが、いつからかリディアの喜びになっていた。この人と一緒になれたら、どんなに幸せだろう。



しかし、こうして自分の元へ来てくれるとはいえ、エッジはエブラーナの王。どこかの貴族や王族の出身でもない自分が、彼の元へ行くことが許されるのだろうか。エッジが身分やしきたりを気にするような人ではないということは分かっていつつ、リディアは年を重ねるにつれて、そういった社会的な柵があるのだということを学んでいた。そしてそれは、本人達の気持ちだけではどうにもならないことがあるということも―――


食事を終えた3人は、再び公園へと向かう。


「ねぇ、エッジ。今日は何時ぐらいまでいられるの?」
「んー、そうだなぁ。」


リディアは勇気を出して切り出す。


「…もし、エッジが大丈夫なら、今夜はうちに泊まっていかない…?」
「え……あ……い、いいのかよ…?」
「うん…。だって最近はこっちに来ても、あんまり話す時間がないし…。」
「…そうだな。」

クオレがミストに来て以来、リディアがエッジと会話する時間はめっきり減った。クオレがエッジとの遊びに満足するころには、エッジがもう帰らねばならぬ時間になってしまうのだ。

「あっ、帰らなきゃならないなら帰ってくれていいの!エッジには王様の仕事あるんだもん…。」
「いや、別にそれは何とでもなるし…。」


嘘である。自分の執務室には決裁待ちの書類が山積みだ。しかし願ってもないリディアからの申し出に、エッジは戸惑いながらも全身が喜びに満たされているのを感じた。



――少しでも一緒にいたい。叶わぬ恋だと分かっているけれど。




公園についた3人は、さっきクオレが言っていた花を見に草むらへと入る。そこには可憐なピンク色の花びらをたたえる花が何輪も咲いていた。


「わぁ、きれいね。」
「リディアはこの花、好きか?」
「うん、好きよ。」
「ならこの花は、家に持って帰るぞ。」
「そうね。玄関に飾りましょう。」
「エッジもエブラーナに持って帰るか?」
「ん?あぁ、そうだな。」


エッジとリディアはクオレが摘んだ花を渡される。エッジは渡された花の中から1輪取り、リディアを見つめる。そして、彼女の緑色の美しい髪にそっと挿す。リディアがきょとんとしていると、


「やっぱり似合うな。」

「もう…、ふふ。」




(エッジ、大好き。)






やがて日が暮れ始め、リディアは夕食の準備をするために、先に家に戻った。
今夜はエッジと共に過ごせる。そう思うと胸が高鳴った。その後に訪れる、別れの寂しさが大きくなると知りつつも。



「ただいまー。」





「おかえり。あれから何して遊んだの?」
「森の中でかくれんぼして、それから…。」


リディアはクオレの話を聞いてやる。


リディアとクオレに血のつながりはない。だがその姿は母親と娘そのもの。エッジはそれを微笑ましく眺める。


「エッジ、ご苦労様。ご飯の前にシャワー浴びる?」
「あぁ、そうさせてもらうよ。悪りぃな。」
「うん、着替え用意しておくね。」

さすがのエッジも疲れたようだ。超人的な身体能力を持つクオレの遊び相手ができるのは、忍者としての鍛錬を受けたエッジだからこそ。並みの人間には不可能だ。


シャワーを浴びて戻ってきたエッジの目の前には、リディアが作った夕食が並んでいた。


「おぉ、こりゃまたうまそうだな!」
「えへへ、いっぱい食べてね。」

3人は談笑しながら食事をした。エブラーナであった出来事や、ミストには数か月前から外部より召喚魔法を学びに来ている者もいて、なかなかの腕前であること、そしてクオレが魔法を使ったがためにあわや大きな山火事が起こりかけたことなど、話題が尽きなかった。



こうしていたら、自分達は本当の家族みたい。こうやって一緒に過ごすことが、こんなにも幸せだなんて。
エッジもリディアも、幸せな気持ちでいっぱいだった。


(ミストは、リディアの大切な場所なんだな。)
(エッジ、王様として頑張ってるんだな。)

2人の心の片隅には、どうしても、素直な想いを止めてしまう何かがあった。そんなものは建前に過ぎないのに。



(後編へ続く)


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