2014
07.12

「Share with Me」★

TA後エジリディSS第13弾です。エッジを支えたいと思うリディアは…。「忍びの妻」の後日のお話です。


エロありです、ご注意下さい!









「Share with Me」








近いようで、遠い



私はあなたの1番近くにいるはずなのに―――













「エッジ、お帰り!」


厳しくなる冬の寒さの中、1週間の公務から帰ってきたエッジを笑顔で出迎えるリディア。

「おぅ、ただいま。」

そう言ってエッジは家臣と何やら話しながら王の間へと向かって行った。


(あれ…?)


いつもなら抱きしめて笑顔でただいまのチューをしてくれるのに。




リディアが王の間へ行くと、エッジと家老、数人の家臣達が何やらピリピリした雰囲気で話し合っている。


「待てよ、最初と話が違うじゃねぇか!」
「はぁ…。先方が言うには、最初からそんな条件は聞いていないと…。」
「ったく、タチの悪い奴らだな…。とりあえず全員執務室に集合だ。」
「はっ…!」



何やらトラブルのようだ。リディアはその場に取り残され、どうしたらいいか分からなかった。




エッジと結婚し、エブラーナ王妃となったリディア。しかし独り身が長かったエッジはほとんどの執務を自分1人でこなしてきたため、結婚してからもその状態が続き、リディアはあまり責任のない仕事しかしておらず、執政に関わることはなかった。





エッジ達が王の間を去った後、リディアは執務室へと向かい、ドアをノックしようとした。すると…


「冗談じゃねぇよ!ケタが一つ違うじゃねーか!」


エッジの声が響いてきて、リディアはビクッとする。家臣達が宥めながら話を続けた。


「事前に書面で条件は全て提示してあったのでそれを出すよう頼んだのですが、今は他の者が管理しているからここに持ってくることはできないと…。」

「くそッ、完全になめてやがるな…。」

「申し訳ございません!私どもの力が至らず…。次回の交渉の時は、何卒お館様のご同行をお願い申し上げます!」

「あぁ分かった。確かそいつらの拠点はバロンだったよな?セシルにどういう奴らなのか聞いておいた方がよさそうだな…。」

「確かに…。ではセシル陛下に書状をお送りする手配をいたします。」
「ん、頼む。」
「ははっ!では私共はこれにて…。」
「あぁ、ご苦労さん。」


家臣たちが執務室を後にした。すると深いため息をつくエッジ。


(エッジ…。)


1週間の公務を終えて疲れて帰ってきた途端に内政のことでひと騒動。しかし家臣達とて国王であるエッジの判断なしでは動けない。仕方ないことなのだが、上に立つものとしての辛いところである。


様子を見ていたリディアが執務室に入ろうとすると…


「リディア、入れよ。」


こんな時でも自分の気配をちゃんと感じ取っていることに驚くリディア。執務室に入ると、エッジはさっきまで話し合っていた一件の書類らしきものに目を通している。


「あの、エッジ…。」
「ん?」

リディアは何から話せばいいのか分からず、言葉に詰まってしまう。

「何だ、どうかしたのか?」

書類に目を向けたまま、エッジはリディアの方を見ようとしない。疲れていて機嫌が悪いのだろう。元々口の悪いエッジだが、今日はそれに輪をかけるように刺々しいものを感じ、リディアは萎縮してしまう。しかし思い切って笑顔で話しかける。

「ねぇ、お茶でも飲んで休憩しない?おいしいお菓子あるのよ。」

しかしエッジは顔を顰め、俯いた。

「悪りぃ、リディア。今それどころじゃねぇんだ。後にしてくれるか?」

低い声で発されるエッジの言葉にリディアはビクッとした。

「…そう、ごめんなさい。」

いつもなら嬉しそうに話に乗るか、忙しくて無理な場合は詫びながら頬にキスの一つでもしてくれるのに。

「…ねぇ、何か私にできることない?エッジ疲れてるでしょう?」

リディアが申し出るが、エッジの視線は書類に置かれたままだ。

「…いや、大丈夫だ。お前こそ仕事終わったのかよ?」
「あ、ううん…。」
「ならそっちを先にやれ。」
「…うん。」

リディアはいたたまれなくなり、執務室を後にした。


(エッジ…。)


執政のことで大変そうな夫を目の当たりにしたリディア。故郷のミスト復興のために10年近く働き、年を重ねて自立した大人の女性となったリディアにしたら、彼のために何もできない今の状況はもどかしい以外の何でもなかった。



「はぁ…とりあえず自分の仕事を終わらせなきゃね。」







そして夕食の時間。





「あ、エッジ。」
「リディア。」

王族用のダイニングルームにいたエッジはさっきと違い、穏やかな表情だった。リディアはホッとし、思わずエッジに駆け寄る。

「エッジ、さっきの仕事落ち着いたの?」
「んー、まぁな。」
「そうなのね、良かった。」

リディアの笑顔を見たエッジは、表情が緩む。


「リディア…さっきはすまねぇ。お前がせっかく茶でも飲もうって言ってくれたのによ…。」
「ううん、いいの。私の方こそ忙しい時にごめんね。」
「いや…俺が悪かった。」

エッジは侍女や家臣達のいる前だというのに、すっと口布を下ろしてリディアを抱き寄せて頬にちゅっとした。

「ただいまのチューしてなかったよな?ごめんな。」

恥ずかしがるリディアを見てニヤニヤするエッジ。家臣達はもう見慣れたもので、微笑ましそうにクスクス笑っていた。


「さ、飯食おうぜ。腹減ったぁ~!」
「もう、バカ。」











夕食後、エッジは再び執務室で自分の留守中に提出されていた報告書をチェックしていた。リディアは様子を伺いながら執務室に入る。



「ん、リディア。」
「ねぇ、エッジ…。」
「あ?」


「さっき皆と話してたのって…何の事だったの?」

心配そうにじっとエッジを見つめる翡翠色の瞳。エッジは何となく恥ずかしくなってしまった。

「ん…な、何だよそんな顔して。」
「エッジ…私に何かできることはないの?」

彼女の美しい瞳は潤み、唇は何か言いたげに微かに動いている。どう答えようか思案していると…

「エッジが疲れてるのに、何もできないのは嫌なの…。」


色白で華奢な手が、寒さと仕事で疲れきったエッジの手を包み込む。ほんわりと伝わってくる温もりが心地良くて、精悍な忍びの一族の長の表情が緩む。

「あぁ、リディア…お前は何も心配しなくていい。俺はお前がこうしてそばにいてくれるだけで疲れは吹き飛んじまうからな。」

昔と変わらない明るい笑顔を見せるエッジだが、リディアは彼が疲れ切って無理をしているのを感じていた。

「嘘ばっかり…。」
「あ?」
「だってさっき、あんなに怖い顔してたじゃない…。」

エッジは言い返せず、頭を掻く。


「ん…悪りぃ。」
「…謝ることないじゃない。」
「…。」

「疲れてるんなら、そう言ってよ…。」

俯きながら小さな声で自分を気遣うリディア。だがエッジは嬉しいながらも、愛する妻の前では絶対弱音を吐くわけにいかないというプライドがある。



「リディア…ありがとな。今日はもう早めに仕事切り上げるからよ、後で疲れに効くツボでも押してくれねぇか?お前の指圧、すげぇ気持ちいいからな~。」

「…うん。」

「そういや、今日の仕事は終わったのか?」
「終わってるよ。」
「ん、そうか。ならもう風呂入ってゆっくりしろよ。」

そっと抱き寄せられたリディアの唇に、エッジのそれがそっと重なった。

「…1週間ぶりだから、覚悟しとけよ?」
「もう、エッジ…。」
「へへへ…さぁ、風呂入って来いよ。」








その後1時間ばかり仕事をし、エッジは執務室を出た。

「さーて、風呂入って来るか…。」

公務で他国に行くとシャワーしかないことが多いため、1週間ぶりに我が家の風呂を堪能しようと鼻歌混じりで服を脱ぎ、浴室へ入った。湯船に入っている薬草の香りが鼻を掠め、思わず深呼吸する。

「はぁ~、この香りがたまんねぇんだよな~。」

檜の風呂椅子に座って髪と身体を洗うと、ざぶんと豪快に湯船に入る。

「ふぅ~…極楽だぜ。」

湯船の淵にもたれ、目を閉じる。忙しい生活の中でリラックスできる、貴重な時間である。





『だってさっき、あんなに怖い顔してたじゃない…』




しゅんとした顔でリディアが口にした言葉を思い出し、ふーとため息をつく。


(そりゃあん時はすげぇイライラしてたけど…俺、そんなに険悪だったのか…。)


いつもは自分を尻に敷く妻に怖いと言われるような姿を見せてしまった。彼女の顔を見れば元気になれるなど、嘘もいいところである。


(小せぇなぁ、俺…。)


リディアには心配をかけまいと努力してきたエッジだが、結婚して以来、徐々にボロが出てきてるように思えて決まりが悪い。

「ここは一発、男らしく決めてやるか…。」

1週間ぶりにこの腕の中でリディアを乱れさせてやろうと、ニヤリとするエッジ。体内の欲求に満ちたどす黒い血がドクドクと脈打つ。



風呂から上がり、水分補給をしながら急ぎ足で寝室に向かうエッジ。こうしている間も自身がリディアを求めているのが分かる。

(あぁ~、もうすぐだ…!!)

ゾクゾクと欲求を高ぶらせながら寝室に着くと、リディアがベッドの上に座って待っていた。エッジの掛け布団が上げられ、すぐに横になれるように準備されている。

「お館様、1週間のお仕事お疲れ様です。どうぞ横になられませ。お疲れに効くツボを押して差し上げまする。」


ニッコリと笑い、エブラーナ言葉でエッジを迎えるリディア。可憐な花のようなその笑顔に、忍びの一族の長の精悍な顔はたちまち緩む。

「おぉ~リディア、すまぬなぁ。某は嬉しいぞ。」

エブラーナ言葉で返答し、ぴょんぴょんと小さく跳ねながらベッドへと向かってくるエッジを見たリディアはクスクスと笑う。

「もう~、子供みたいね。」
「お前からの誘いが嬉しくねぇわけねぇだろ?」

ベッドに飛び乗ったエッジは早速リディアに抱きつき、すかさず頬にちゅっとする。彼女の頬の柔らかな感触と温もりを感じ、ますます気持ちが昂ぶる。

「柔らかいなぁ~、食べちゃうぞ~。」
「バカ。ほら、横になってよ。」
「んー…。」

曖昧な返事をし、リディアと頬を擦り合わせながら、徐々に体重を彼女にかけてベッドへと沈む。

「えっ、ちょっとエッジ…待ってよぉ!」
「ダメだ、待てねぇ。我慢の限界だ。」

リディアの寝間着の浴衣の襟元をぐっと広げ、首筋から鎖骨にかけて唇を這わせる。

「やぁっ…エッジお願い…待ってよぉ…。」

夫の愛撫に反応し、身体をピクピクとさせながら必死に訴えるリディアだが、エッジはお構いなしに行為を続ける。

「ねぇ、エッジ…やめてぇ…。」
「1週間も我慢したんだぞ?もうやめられねぇよ…。」

エッジの唇は鎖骨から下へと下がってゆき、リディアの胸のふくらみの上部を食み始めた。

「くくっ…柔らかいな…。」
「あっ…エッジ…やめて…!」

必死に身体をくねらせてエッジの愛撫から逃れようとするリディア。脚をバタバタとさせて胸を腕で隠し、首を左右に振る。

「…何そんなに嫌がってんだよ?」

さすがに様子が変だと思い、愛撫をやめ、リディアと視線を合わせる。その表情はご馳走を目の前にお預けを食らった不機嫌な獣のようで、思わずリディアは身震いしてしまう。

「ご、ごめんねエッジ…。あの…。」

そう言うリディアを見つめるエッジはどこか苛立った表情。疲れている上に、行為を中断されるのは男にとって、この上なく自尊心が傷つくのだから。

「何だよ?もしかして月のもんか?」
「ううん、違うの!…エッジに話があるの。」

リディアがエッジの表情に怯えながらも何かを必死に訴えようとしているのを見て、エッジは猛っていた自分を落ち着けようと身体を起こし、頭を掻きながらふーと息を吐いた。

「…悪りぃ、リディア。何だ?」

リディアも身体を起こし、乱れた寝間着の浴衣を直しながらエッジの表情が落ち着いてきたのを見計らって話し出す。



「あのね…私…エッジの仕事をもっと手伝いたいの。」
「何言ってんだよ、もう手伝ってくれてるじゃねぇか。」

「…もっとエッジが楽になれるように、執政関係のことにも関わりたいの。」



思いがけないリディアからの申し出に、エッジは咄嗟に言葉が出なかった。

「バ、バカなこと言うんじゃねぇ!そんなもんに関わったらお前の身体がいくつあっても足りねぇぞ?」

「…ダメ?」
「ダメだ。夜遅くまでの会議もあるし、何日間もよその国に行ったり、お前1人で判断しなきゃなんねぇ場面も出てくるぞ?」

「…全部が無理でも、今よりもっとエッジの力になれることがしたいの。」


真っ直ぐに自分を見つめるリディアの言葉で、どうやら本気らしいということを感じたエッジ。執政に関わるのは非常にタフであるため、リディアの身体のことを考えると何とかして諦めさせたい。しかし先日のように高圧的に出ればまた喧嘩になってしまうだろう。



「あー…リディア。あの…。」



頭をフル回転させてどう返すべきかを思案するエッジだが、仕事で疲れ切った頭は思うように働いてくれない。



言葉につまり、時間だけが過ぎてゆく。





自分をじっと見つめる、翡翠色の瞳。





何とかして思い留まらせなければ。
そうしないと、大変な仕事でリディアが身体を悪くしてしまう。




俺はこいつを守ってやると約束したのだから―――










「私…エッジが辛そうな顔をしてるのに何もできないのは嫌なの。お人形みたいにニコニコ笑って座ってるだけの王妃になりたくないの。」

「…別に今だって仕事してるんだしよ、お人形みたいってことはねぇだろ。」
「してるって言っても、補助的な仕事ばっかりだもん…。今日だって、エッジが留守の間に私が何かできていればあんなに大騒ぎにならなくて済んだんじゃないの?」

「…ん、それはそうかもしれねぇ。けどなリディア、執政ってのはこの国の全てを背負うんだ。すげぇ責任が重いんだぞ?俺はそのせいで寝れなかったり、辛くて辛くて仕方ないこともあったぜ?」







一国を背負うということ―――







内政、外交、家臣、国民。どれも疎かにすることは許されない。







出会った頃は年齢の割に落ち着きがなく、お調子者の王子だったエッジが落ち着いた大人の振る舞いをするようになったのは、紛れもなく一国を背負う国王としての立場と責任があってこそ。本質的な彼は昔と変わらないものの、リディアは国王としての彼の姿を見るたびに、自分との距離があるのを感じられずにはいられなかった。



「私…エッジのそばにいたいの。」
「…いるじゃねぇか。」
「そういう意味じゃなくって…!」


じっとこちらを見つめていた翡翠色の瞳から、涙が零れ出した。

「エッジがね…すごく遠いの。」
「…どういう意味だよ?」

ぐずり出し、次の言葉が出てこないリディアをそっと抱きしめると、甘く優しい彼女の香りがエッジの鼻を掠める。









いつでもこうやって、私のことを受け止めてくれるあなた




大好き



だから嬉しいことだけじゃなくて、辛いことも分けてほしいの―――








リディアの背中を優しくぽんぽんと叩くエッジ。俺はいつでもお前の話を聞いてやるよ、というエッジの思いが伝わってくる。







「…エッジはね、私の旦那さんで、1番近い人のはずなのに、私はエッジが大変な時に助けてあげられなくて、すごく距離を感じちゃうの。」
「俺はもう十分助けてもらってるぜ?結婚するまでは1人でやってたことをお前に助けてもらってるし、すげぇ嬉しいぞ。」

「助けてないよ…。」
「助かってるって。」
「助けてない!」



譲らないリディアを抱きしめながら、エッジは顔を顰める。

「…俺が助かってるって言ってるのに、お前は信じてくれねぇのか?」
「えっ…?」

ゆっくりとエッジと視線を合わせると、彼の顔は真面目だけれどどこか悲しそうに見えた。

「俺は大好きなお前とこうして一緒に過ごせて、仕事手伝ってもらえて、すげぇ楽になったし幸せだし感謝してる。だからこれ以上の事は望んでねぇ。…寧ろ幸せ過ぎて怖ぇぐらいなんだ。」

「…エッジ、嘘ばっかり。」
「なっ…嘘じゃねぇぞ!」

「辛いこと全部1人で背負ってるじゃない…。少しぐらい私に分けてよ。」

「…俺はお前に辛い思いはさせたくない。」
「私だってエッジに辛い思いしてほしくないもん!」


ヘトヘトの頭で紡ぎ出した返答だからなのか、何を言っても言い返されてしまう。エッジの思考回路はもう限界に達し、首を垂れてしまった。

「…リディア、悪りぃけどその話はまた明日にしてくれねぇか?俺、もう疲れちまったよ…。」

「…分かったわ。明日必ず話してね?」
「おぅ。」

エッジがベッドに横になるとリディアは掛け布団をかけてやり、自分も布団の中に入った。


リディアの華奢な手が、エッジの手をキュッと握る。

「リディア…?」
「疲れに効くツボ押してって言ってたじゃない。」
「…あぁ、じゃあ頼む。」


リディアはエッジの掌の真ん中あたりにある、疲労回復のツボをぐっと押した。

「くっ…!!」

あまりの刺激に顔を顰めるエッジ。相当疲れが溜まっているのだ。


(この話するの、今夜じゃなくても良かったかな…余計に疲れさせちゃったよね…。)


善は急げだと思ったものの、余計にエッジを疲れさせてしまい、罪悪感を感じるリディア。

「はぁ…リディア、反対側も押してくれよ。」
「うん。」

身体をリディアの方に向けたエッジが手を差し出すと、反対側の掌のツボがぐっと押された。

「うぉっ…!!」

刺激に眉をしかめ、上半身を捩るエッジ。面白いような可愛らしいようなその姿に、リディアは思わず笑みをこぼす。

「ふふふ…効いてる?」
「…おぅ。」

リディアが掌への刺激をやめると、エッジは一気に脱力した。

「ふはぁ~、すげぇ効いたぞ。ありがとな、リディア。」

リディアの頬にお礼のチューをした後は、彼女の柔らかな緑の髪を撫でるエッジ。




こうしていると自分達は仲良し夫婦なのに、昼間は疎外感を感じなければならない現実。大好きなエッジを助けたい一心だったのに、結果的に彼を困らせてしまった。

(これって、私のわがままなのかしら…。)



「…リディア。」

自分の申し出が正しかったのかどうかとリディアが思案していたら、エッジの深い色の瞳がこちらを見つめていた。

「…うん?」
「確認したいんだけどよ、お前はどんなに大変なことがあっても執政に関わりたいんだな?」

突然の問いかけに、リディアは言葉に詰まる。

「もし単なる思いつきで言ってるんなら、俺は絶対許さねぇぞ。」

エッジにしては珍しく強い語気に、リディアはビクッとする。


「あ…えと…。」


自分をまっすぐ見つめるエッジの精悍な切れ長の目。全てを見抜かれてしまいそうな気がして、鼓動が早まる。

「…どうなんだよ?」

迷いを感じ取ったかのように問い詰めてくるエッジ。リディアの手が微かに震え出す。

「…思いつきなんかじゃ、ないよ…。」

少し俯き、視線をそらすと、エッジの大きな手がぐいっとリディアの顔を上げさせる。

「俺の目を見て言え。じゃねぇと信用しねぇぞ?」




国王としての真剣な表情。







ついて行きたい
助けたい




自分はこの人の妻だと胸を張って言いたい





「…思いつきじゃないよ。ずっともどかしくて、何とかしてエッジを助けたいって思ってたんだもの。」

エッジはじっとリディアを見つめている。






どれほどの時間が経ったか、もう分からない。次に彼の口から出てくるのは一体どんな言葉なのだろうか。リディアはそればかりを考え、布団の中でドキドキする胸に手を当てる。

「…そうか、分かった。」

「分かったって…何が?」
「お前の意思はよく分かったってことだ。」

ぐっと抱き寄せられる、リディアの華奢な身体。

「エッジ…じゃあ…」
「早まるんじゃねぇ。」

自分の言葉に対して間髪入れずに反応する低い声が耳に響き、一瞬寒気のようなものを感じ、小さく身震いする。




エッジの腕の中は、とっても温かくて、1番落ち着ける場所。



でも、どうして?


どうして今夜はこんなにさみしい気持ちになるの?







エッジと自分の間にある壁。
結婚する前からずっとお互いに一番近い存在だったはずなのに。





エッジにぎゅっとしがみつくリディア。

「…何だよ、この甘えん坊が。」




「エッジ、さみしいよ…。」
「あ?」

エッジは自分が疲れていてリディアの言うことが理解できないのかそうでないのか判断できず、どう反応すべきか思案していると…


「今はこうして一緒にいてあったかいのに、また明日になればエッジは大変なことを抱えて1人で辛い思いするんでしょ?そんな姿見てたら私も辛いし、さみしいの…。」

「俺は辛くなんかない。」
「…さっき辛いって言ったじゃない。」

「それはお前と結婚する前のことだぞ。」







どうあっても自分はエッジに近付くことはできないのか?どうすれば彼を楽にしてやれるのかと考えていると…


「…エッジ?」

夫は寝息を立てていた。

(エッジ、寝ちゃった…。)


リディアはしがみついていた腕を緩め、エッジから身体を離す。疲れているのだから休ませてやらなければ、そう思って彼の掛布団を直し、ベッドサイドの明かりを消して自分の布団をかぶる。寝ようと目を閉じるが、ついさっきまで感情が高ぶっていたためか、目が冴えてしまい眠れない。寝返りを打ちたいが、音や気配に敏感な夫を起こしては悪いと思い、じっとするリディア。


(どうしよう…寝れないや。)




月の明かりもない暗闇の中で、ただ時間だけが過ぎてゆく。





聞こえてくる、規則的な夫の寝息。





音を立てないように寝返りを打ち、身体を彼の方に向ける。


(エッジが私よりも先に寝るのを見たの、初めてかも…。)

共に旅をしていた時からエッジはリディアより早く起き、夜寝るのは遅かった。結婚した今でも朝は稽古があるから早く起き、夜はリディアが寝付くまで起きててくれる。

(私、本当エッジに甘えてばっかり…。)


ふーとため息をつくリディア。すると…


「…まだ起きてんのか?」
「はっ、エッジ!…起こしてごめん。」

眠そうに目をこすったかと思うと、エッジの手はリディアの背中に伸びてきた。

「…っとにお前は手のかかる奴だなぁ…。」
「ごめん、エッジ…。」

リディアを自分の方に抱き寄せ、寝かしつけようと背中を撫でるエッジ。

「…ありがとう。ごめんね。」

エッジに身を寄せ、彼の寝間着の襟元にきゅっとしがみつくリディア。

自分が何をしても優しく包み込んでくれる夫。その分彼は自分の気持ちを抑えて我慢してくれているというのに。今だって寝ていたいに違いない。


「エッジ…寝ていいよ。」
「…お前が言うんじゃねぇよ。」
「私が寝かせてあげるから…。」
「そんな事されたら余計に寝れねぇっつーの。」

それどういう意味よ、と怪訝な顔をするリディア。

「ほれ、いい子はねんねしな。」
「もうっ…子供みたいに言わないで。」

リディアが顔を背けると、エッジは身体を起こし、彼女を見下ろした。

「本当に言うこと聞かねぇ奴だな。」

そう言うとエッジはリディアに覆いかぶさり、唇を重ねてきた。

「ん…。」

暗闇の中でほとんど何も見えず、その分いつもよりも触覚が敏感になっているのか、その柔らかさと温かさは特別な気がした。エッジの体温を感じながらすごくホッとするその感触に酔いしれ、リディアは全身がとろりと溶けそうだった。手を伸ばし、触覚を頼りに自然にエッジの首の後ろに腕が回ると、それに反応して掛け布団を片脚で蹴ってベッドの端に寄せてリディアを組み敷くエッジ。

「エッジ…?」
「…今度はやめねぇからな。」

リディアは耳元にエッジの熱い吐息がかかるのを感じた。耳朶が柔らかく噛まれたかと思うと、うっすら湿気を帯びた唇が首筋を這いながらそこを食んでいる。

「んっ…やだ…はぁっ…。」

くすぐったくて、身体を捩るリディア。寝間着の浴衣の襟元が大きく広げられるのを感じた直後、唇は鎖骨から胸元へと移動しながらきめ細かいリディアの肌を食む。エッジの表情も動きもよく見えない緊張の中、決して乱暴にせず、じっくりと優しくやってくるその刺激でリディアの身体はじわりと熱くなり、奥が疼く。

「いやぁっ…はぁん…。」

エッジの大きな手がリディアの乳房を揉みしだく。暗闇の中で微かに聞こえてくる息遣いと、汗ばんで熱のこもったその手からは、彼がリディアと触れ合う事を渇望していることが伝わってくる。


結婚するまでの10数年間、1週間ぐらい会えないのは珍しくなかったというのに、結婚してからはそれすら長く長く感じられてしまう。感じる部分を刺激され、どんどん押し寄せる快感に身を任せる。

「エッジ…気持ちいい…。」

そう言うと乳房の先端に息吹く蕾にエッジの熱い吐息がかかるのを感じ、ぞくぞくするような高揚感に駆られ、ますます身体の奥が疼いた。

「あッ…やんっ…。」

さっきまで胸元で感じていた感触が蕾を包み込み、熱く濡れた舌がねっとりとそこを舐め回す。先で弾くようにつつかれた蕾はぷくっと立ち上がり、キュッと吸い上げられた。

「あんっ!」

快感に耐えられず、高い喘ぎ声で応えるリディア。そうすると乳房が優しくさすられ、悶えるその姿を楽しむような、くくっという笑い声らしきものが聞こえてきた。

「もう…何笑ってるのよぉ。」
「お、聞こえてたのか。お前は鈍いから聞こえねぇと思ってたぜ。」


自分を見下す夫の発言に、思わず手で彼を叩こうとするが、夜の闇の中では空振りするだけだった。

「ははは、何やってんだよ。」
「…エッジ、見えてるの?」
「おぅ、見えてっぞ。忍びは暗い中でも大丈夫なように、目も発達してんだぜ?」
「…!」

ほとんど何も見えない緊張感を味わっていたのは自分だけだったなんて。何においても自分よりも優位に立つこの人を助けるなんて無理なのだろうかと思いしょぼんとしていると、もう片方の蕾が吸われているのを感じた。

「あっ…やぁん、エッジ…!」
「くくくっ…ずいぶん感じてるじゃねぇか。」

硬く立ち上がる蕾を指で摘まれ、嬌声を上げるとそれを楽しむかのようにまたリディアの乳房を揉みしだくエッジの手。

「んぁっ、やだぁっ…エッジのバカぁ…。」

身体をリディアに密着させたエッジは、脚の間でいきり立って熱を孕む自身を彼女の太腿になすりつけた。

「いやっ…。」

寝間着越しでも分かるぐらいのその存在感に、思わずピクンと反応するリディア。するとエッジの指がショーツ越しにリディアの秘所を弄る。

「お前の方はどうなんだ?」
「そんな事、言わせないで…。」

リディアの寝間着の浴衣の腰紐が解かれ、あっという間に取り払われると、ごそごそと衣擦れの音が聞こえてきた。するとリディアは臍のあたりにエッジの熱い吐息がかかるのを感じた。それはさっきよりもずっと熱く、速いペースの息遣い。御馳走が目の前で余裕がない餓えた猛獣を思わせる。


リディアも先程からの愛撫で、秘所の奥から温かな泉がとぷとぷと湧き出てきており、もういつでもエッジを受け入れられる状態にあった。エッジのうっすら汗ばんだ手がリディアの腰の辺りに触れたかと思うと、その手はショーツの両脇にかけられた。

「リディア…お前のここ、どうなってるんだよ?」


「…聞かないで、自分で確かめて…。」

エッジの手がリディアとの結合を阻んでいた薄布をずり下ろすと程よく太く、器用な指が内太腿に滑り込む。その指が露わになった小さな茂みをかき分けて秘所へと辿り着くと、空いた方の手は薄布を爪先までずらしていく。


秘所に辿り着いた指が花弁をくちゅ、と開いて熱を帯びたそこへ入り込んで少し内部を刺激すると、とろとろと蜜が溢れ出てきた。

「すげぇ…。」

低く小さな声でそう呟くと、リディアの脚を広げ、彼女の腰を掴む。潤いをたたえる花弁に熱く張り詰めた自身の先端を触れさせ、そのまま前へと腰を進めて柔らかなそこを押し広げた。

「あぁんっ…。」

圧倒的な存在感を放つ熱いそれは、1週間ぶりの結合で何となく痛みを感じさせたが、どんどん自分の奥に向かってくる内に快感へと変わり、リディアは甘く切なげな声を上げる。

「うぁ…。」

最奥に辿り着いたエッジは、よく潤った熱い内壁にぐっと纏わり付かれる快感に浸り、ため息のような声を漏らす。今夜はもうありつけないと思ったこの蕩けるような感覚に、悦びはひとしおだった。


「リディア…すげぇ気持ちいいぜ。」
「私もよ…すごく気持ちいい…。」


繋がった悦びを共有し、エッジの手がリディアの手を握って指を絡めると、熱い吐息を発し合う2人の唇が重なり合った。


夜の闇の中で何度も響く淫靡な口づけの音は、部屋の空気の色すら変えてしまいそうだった。エッジの欲求は高まり、もう止められないと言わんばかりに腰を揺らし始めた。

「んっ…んんっ、んっ…。」

唇が塞がれたまま動かれ、リディアの声はエッジの口の中でくぐもる。せり上がってくる久しぶりの快感に理性はどんどん消えてゆき、ただエッジから与えられる刺激に身を委ねようとする本能が強くなってくる。


快感に眉を寄せ、息を切らせながらエッジの腰に脚を絡めると律動は早くなり、大きな快楽の波がどんどん押し寄せてきた。


「あっ…ぁ…エッ…ジ、すごく感じちゃうっ…!」


その言葉通り、エッジへの締め付けがぐっと強まってきた。もっと深く来て欲しいと訴えるように、リディアの腰は自然とエッジの律動に合わせて彼の身体に擦り付けるように動き、内壁が彼を呑み込もうとひくひくと波打つ。


自分を求める動作に煽られたエッジの律動は止まらず、熱い存在はリディアの奥を激しく行き来して突き上げ、その刺激が脳髄に響き、意識は遠のいていく。

「あぁっ…あっ…はぁッ…。」

身体を揺らされながら必死に意識を保ち、暗闇の中で微かに見える夫の輪郭を頼りに、悶えながら彼の顔を見つめるリディア。エッジの逞しい腕が自分の身体をしっかりと抱きしめるのを感じると、リディアは手探りで彼の脇腹から手を滑らせて背中へと腕を回し、ぎゅっとしがみつく。


その動作と連動するようにエッジが擦れ合う熱と蜜が混じり合う中を激しく律動すると、内壁の不規則な収縮が繰り返された。

「あっ…あぁぁ…ッ!!」

リディアが達し、身体をビクビクと痙攣させるのを感じると、自身を締め上げられたエッジもそのまま達し、ぶるりと震えながら抑えていた欲求を吐き出した―――










「ふぅ…はぁ…。」



2人は達した時の体勢のまま、呼吸を整えていた。


エッジがベッドサイドのランプをつけると、気怠そうな表情でこちらを見つめるリディア。次第に彼女はホッとしたように微笑んだ。

「そんな可愛い顔すんじゃねぇよ~。」
「だって暗くてエッジの顔が見れなかったんだもん…。」
「へへへ…俺の顔、見たかったのか?」
「うん…ふふふ。」


笑い合い、口づけを交わした2人はまたしっかりと抱き合う。

「すごく気持ち良かった…。久しぶりで嬉しかったよ。」
「俺もすげぇ気持ち良かったぜ…。」


互いに満足していることを確かめ合うと、ちゅ、ちゅ、と軽い口づけを何度も交わす。






*****







「んー…眠い…。」

横たわり、事後の疲れに襲われるエッジがそう言うと、リディアは絶頂の余韻で程よく眠気を感じながら身体を起こし、掛け布団をかけてやった。

「疲れてるのに張り切るからじゃない…。」
「お前が寝れないって言うからじゃねぇか。」
「え…?」

「…ちょっとは眠くなっただろ?」
「…!」


リディアが言葉に詰まっていると、エッジはニヤリと笑った。

「ま、俺がしたくなったってのもあったけどな。」
「…それが1番の理由でしょ?」

リディアは恥ずかしそうに顔を背けたが、疲れて寝ているのを起こされ、眠れない自分のために体力を使わせてしまい、夫に申し訳ないという気持ちになっていた。


そっぽを向いていると、エッジの大きな手がリディアの髪を撫でてきた。

「こっち向けよ。」

黙ってエッジの方を向くと、彼はとても優しい笑顔だった。

「エッジ…。」

何も言わずにそのまま抱きしめられ、エッジの心地よい体温を全身で感じていると、彼の手はリディアの華奢な背中を優しくさする。

(気持ちいい…。)

エッジの首筋に顔を埋め、細い腕を彼の背中に回して同じように撫でると、彼がふっと笑う声が聞こえた。

「気持ちいい?」
「おぅ。…なぁ、リディア。」
「うん?」

「俺はな、仕事がどんなに大変でも夜こうしてお前を抱けばすげぇ元気になれるんだ。そうすりゃ何があったって乗り切れるし、大丈夫だ。だからお前は何も心配しなくていいんだぞ?」


自分を案ずるリディアを安心させようと、穏やかな声で発された言葉。


妻を説き伏せるのに、これ以上の言葉はないと思ったエッジが見たのは…


「何だよ、その顔は…。」


夫が辛いことをこれからも1人で我慢しようとしているのを見抜き、唇をぐっと結び、今にも零れ落ちそうな大粒の涙をいっぱいためた、翡翠色の瞳。

「うっ…うっ…。」

細い肩を震わせるリディアを見て、エッジは顔を顰める。自分がこの女性に惚れたきっかけでもあるその涙は、エッジの最大の弱点。


「少しでいいの…。」
「あ?」



「エッジの辛いこと…少しでいいから…分けて…。」



涙を流し、声を震わせながら訴える妻に、最早説き伏せるための言葉は浮かんでこなかった。







「…分かったよ。」

震えていた色白の肩は落ち着き、まだ頬に涙が残っているリディアの表情がみるみる晴れていった。

「エッジ…嬉しい…ありがとう!」

ぎゅっと夫に抱きつき、喜びを露わにするリディア。エッジは妻の背中を抱きながら精悍な眉を下げ、呆れ顔でふーと息をつく。

「お前は言い出したら絶対聞かねぇなぁ…。」
「だって…エッジが無理するんだもん。」
「してねぇよ。…それより、本当に覚悟はできてるんだな?いくらお前が相手でも、俺は執政の事となったら容赦しねぇぞ?それだけ責任が重いんだからな。」

「うん…エッジを助けられるんだもん、大丈夫!」



これでやっと、この人の妻だと胸を張って言えるようになる―――





「うふふ、エッジのほっぺた赤くなってる~。」
「…お前がそんな可愛い顔見せるからだろうが。」

花のような笑顔の妻を見て頬を赤くして視線を逸らすエッジ。何をしても愛おしいと思ってしまう妻と共に執政関係の仕事ができるのなら、もう少し穏やかな気持ちでいられるかもしれない。それも悪くないなと思っていると―――



ちゅっ。



「お館様、明日よりわたくしに執政の事をご指導下さいませ。」

にっこり笑うリディアからの口づけに、エッジの全身が熱くなった。


「…もう寝ようと思ってたのによ~!!」
「エッジ…!?きゃあぁっ!」




興奮したエッジは、第2ラウンドに突入した。














(俺…こいつには一生勝てねぇんだろうな…。)


2度の絶頂を迎え、自分の腕の中ですっと眠りに落ちた妻の安らかな寝顔を見たエッジは、ふーと息をつく。威厳のある国王となったエッジだったが、リディアにせがまれては折れるしかなかったのだから。


(でもありがとな、リディア…。)


照れ臭くて言えなかった、自分を案じてくれる妻への感謝の言葉を心の中で呟き、柔らかな彼女の髪を撫でながら自身も眠りに落ちてゆくエッジだった。



―完―

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